労働基準法の適用除外となる人や勤務状況を分かりやすく解説
労働基準法の適用除外となる主な人には、同居する家族、一部の公務員が該当します。また、状況によって労働時間や形態が変わる農業や水産業の従事者、会社で重要な権限を持つ管理監督者には、労働時間、休日、休憩に関する労働基準法が適用されないと定められています。
ここからは労働基準法の適用除外となるケースに関して、対象者、職種、勤務状況に分けて解説していきます。
▼そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
労働基準法とは?雇用者が押さえるべき6つのポイントを解説
労働基準法総まとめBOOK
1. 労働基準法の適用除外となる人とは?
労働基準法の適用除外となる人は、労働基準法116条によって次のとおり定められています。
- 船員法で規定されている「船員」
- 同居の「家族」
- 「家事使用人」
本章では、これらの労働基準法が適用除外となる人に関して、詳しく解説していきます。
1-1. 労働基準法から適用除外される「船員」
船員は原則として労働基準法から除外されています。これは船上での生活が、使用者に拘束される労働時間としてみなされるため、労働基準法に定められている各基準から外れてしまうからです。
なお、船員として規定されるのは、船員法1条1項に該当する次の人物です。
日本船舶又は日本船舶以外の国土交通省令で定める船舶に乗り組む船長及び海員並びに予備船員をいう。
引用:船員法|e-Gov法令検索
船員法で規定されている船員以外は労働基準法が適用されるため、注意が必要です。
1-2. 労働基準法から適用除外される「家族」
同居する家族は労働基準法の適用が除外されます。従って、同居する家族のみで経営している企業では、労働基準法が適用されません。
労働基準法で定める労働者には、次の明確な基準が定められています。
- 使用者の指揮監督下で労働している事実がある
- 労働に対して報酬が支払われている
同居する家族が事業に参加し給与を支払った場合でも、生計を一にして同居している場合は、労働者の定義から外れます。ただし、家族以外の労働者がいる場合において、就労実態が他の労働者と同一であるときは、同居していても労働者として扱われるケースがあります。
また、家族以外の人間と同居していた場合であっても、労働者の基準のうちどちらか一方に該当すれば労働者とみなされます。
事業成長に伴い家族以外の労働力を雇う場合、家族と同じ扱いにすると労働基準法違反となる可能性があるので十分な注意が必要です。
1-3. 労働基準法から適用除外される「家事使用人」
家事使用人も労働基準法の適用から除外されますが、家政婦紹介所や家事代行サービスを介して雇った家事使用人には通常通り労働基準法が適用されるのがポイントです。
家事使用人として労働基準法から除外されるのは、事業主の家族で、家事に従事している場合のみです。家事使用人が労働者としてみなされるかどうかは、働き方の実態で決定されます。
2.労働基準法の適用除外となる職業
労働基準法から適用除外される人以外にも、労働基準法41条によって、労働時間・休憩・休日の取り決めから外れる職業が決められています。具体的には、農林・水産業に従事する人などが該当します。
また国家公務員法附則第16条で定められている通り、一部の公務員は労働基準法が適用されません。
本章では、労働基準法が適用されない職業とその理由について解説していきます。
2-1. 労働基準法41条により労働時間・休憩・休日が適用されない職業
労働基準法41条では、以下に従事する者を、労働時間・休憩・休日の適用から除外するとしています。
- 農業・林業など植物関連の職業に従事するもの
- 畜産業・水産業など動物の飼育や養殖の事業に従事するもの
- 機密事務取扱者
- 監視断続的労働従事者
監視断続的労働従事者に関しては、事前に労働基準監督署長の許可を得ている場合に限り、労働時間・休憩・休日の適用から除外されます。
労働基準法では労働者の過労防止を目的として、労働時間を1日8時間以内、1週間で40時間以内に決定し、時間外労働に対しては割増賃金を支払わなければならないと定めています。
また、1日で6時間を超える労働をおこなう場合は45分以上の休憩を、8時間以上の労働をおこなう場合には1時間以上の休憩時間を与えなくてはいけません。
さらに、1週間に1回の法定休日を与え、休日出勤に対しては割増賃金の支払いも必要となります。
しかし、農業や水産業、飼育業は、他の職業とは異なり、天候や季節的条件、動植物の生育などに労働時間を左右されやすいのが特徴です。そのため、これらの職業に関しては労働基準法41条で、労働時間や休日、休憩の制約を受けないと定めているのです。
関連記事:労働基準法第41条に基づく適用除外の項目と該当者について解説
2-2. 国家公務員法で労働基準法が適用されない公務員
国家公務員法附則第16条により労働基準法の適用から除外され、代わりに勤務時間法が原則適用されます。
ただし公務員の中でも労働基準法が適用される職種があったり、一部のみ除外または適用されたり、公務員の種類によって適用範囲が異なるのが特徴です。
労働基準法が適用される公務員の例としては、造幣局や国立印刷局の職員が挙げられます。また、公立教員や市役所職員などの地方公務員は、地方公務員法の制約を受けるため、労働基準法の一部から除外されます。
ちなみに公務員が労働環境改善や労働問題で悩んだ場合は、国家公務員は主に人事院へ、地方公務員一部を除き労働基準監督署に相談します。
3. 労働基準法の適用除外となる勤務状況
先ほど労働基準法41条で労働時間・休憩・休日の法令から除外される職業を紹介しましたが、勤務状況によっても労働基準法の適用の有無が異なります。
具体的には、管理監督者に該当する場合は労働基準法から除外される勤務状況に当たります。
3-1. 労働基準法から除外される勤務状況とは
除外される勤務状況として一般的に多いのが、「管理監督者」です。
管理監督者となった場合には、労働基準法のうち農業従事者や水産業従事者などと同じく、労働時間、休憩、休日に関する規定から除外されます。
ただし具体的に○○という位なら管理監督者となると定められているわけではなく、次の条件に該当する場合に、管理監督者として認められます。
- 重要な権限の付与や会議への参加実態がある
- 出勤、退勤に関して裁量権がある
- 相応の賃金が支払われている など
この管理監督者が労働基準法から除外されることを逆手に取り、名ばかりの役職名を与えて、給与や権限が伴わない管理職や店長職の処遇が度々問題沙汰となっています。
管理監督者とは、十分な権限や裁量権があり、その責任に伴う賃金が支払われている場合のみに認められるので注意しましょう。
関連記事:労働基準法第41条第2号に規定された管理監督者について詳しく解説
4. 労働基準法から除外される職業や勤務状況は明確に決まっている
ここまで労働基準法から除外される場合に関して、対象者、職種、勤務状況に分けて解説してきました。
注意したいのが、労働基準法の大部分の規定から外れる対象者と、労働基準法の一部の規定から外れる対象者がいる点です。例えば同居する家族を雇う場合は労働基準法そのものから除外されますが、農業経営者が労働者を雇った場合は、労働時間、休憩、休日の規則から外れるものの、それ以外の労働基準法は適用されます。
労働基準法は使用者と労働者の関係性を対等にし、適切な環境で働けるようにする法律です。労働基準法に違反した際は、罰金刑または懲役刑が科される可能性があるので十分注意しましょう。
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