労働基準法第9条に規定された労働者について詳しく解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.10.4
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労働基準法は「労働者」を守るための法律です。労働者とは会社と雇用契約を結んでいる従業員のことで、正社員や契約社員、アルバイトなどさまざまな雇用形態があります。
しかし、事業主や役員、役員報酬をもらっている管理職などは会社と雇用契約ではなく委任契約を結んでいるため労働者になりません。
この記事では、労働基準法第条で規定されている労働者についての解説と、労働者と労働者ではない場合の違いについて解説しています。
▼そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
労働基準法とは?雇用者が押さえるべき6つのポイントを解説
目次
1.労働基準法第9条に規定された労働者とは?
労働基準法第9条には、以下のような記載があります。
“この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。”
[引用]e-Gov法令検索「労働基準法」
この労働者は会社の指揮監督下にあり、賃金が支払われる従業員のことです。
近年では、正社員以外の雇用形態が増えています。
労働基準法では「労働者」に該当しないのにも関わらず、労働者として扱ってしまった場合は罰則になる場合があるので、労働者の種類や条件を確認しておくといいでしょう。
2.労働基準法第9条に規定された労働者の種類
労働基準法では、労働者とは会社に雇用されていて賃金が支払われている者とあります。
労働者の種類は以下のものがあげられます。
- 正社員
- 契約社員
- 派遣社員(派遣元)
- アルバイト・パート
- 日雇い労働者
- 海外出張者 など
以上の6種類が労働基準法で定められている労働者です。
正社員だけではなく、契約社員や派遣社員などの就業期間が決まっている場合やアルバイト・パート、日雇い労働省などの就業日数が少ない場合も労働者に該当します。
ただし、派遣社員の取り扱いについては注意が必要です。
派遣社員は勤務先ではなく、派遣元の派遣会社のから賃金を受け取るため派遣会社の労働者になります。そのため、原則として就業規則などは派遣元の会社に従わなければいけません。
3.労働基準法第9条に規定された労働者に含まれない人
労働基準法の労働者に含まれない種類は以下の3つです。
- 事業主
- 役員報酬を得ている役員(賃金をもらっている役員は労災の対象者となる)
- 事業主の親族
労働者とは会社と雇用契約関係にある状態の従業員です。そのため、会社経営者の事業主は労働者ではありません。
そして、役員は委任契約関係、別の言い方をすると業務委託契約になります。雇用契約を結んでいない役員は労働者にはなりません。
また、事業主の親族の場合は少し複雑になります。親族が役員として働いている場合は、当然ではありますが労働者に含まれません。
しかし、勤務時間、休日日数、休憩時間、賃金などの決定がほかの従業員と同じで、同じように就労している場合は労働者として認められる場合があります。
個々の事情により労働者になるのか変わるため、労働者になるのか分からない場合は労働基準監督署に問い合わせて確認するのが確実な方法です。
3-1.管理職は労働者になる?
役員報酬を得ていない課長や係長などは、管理職であっても労働基準法では労働者になります。
ただし、経営者と同じような立場にあり、ほかの従業員と違い重要な職務内容を有する管理監督者は、労働基準法の一部が適用外になってしまう場合があります。
このような場合は労働基準法の一部が適用外になるというだけで、原則として労働者として扱われます。
管理職:管理職の労働時間・休憩時間や休日についての基礎知識を徹底解説!
4.労働基準法第9条で労働者と規定されると変わること
労働者は労働基準法に適用されますが、役員や事業主などの使用者は労働基準法の適用外になります。
しかし、労働者と役員は同じような環境で勤務する場合があるため、労働者と労働者ではない場合でなにが変わるのか覚えておくといいでしょう。
ここでは代表的なものを5つ解説します。
4-1.時間外労働の制限
労働基準法では、労働者は繁忙期などの臨時的な特別の事情がない場合は、時間外労働(残業)の時間を原則「月45時間」、「年間360時間」以内に収めるように規制されています。
また、特別な事情がある場合も時間外労働の時間は無制限ではありません。
特別な事情がある場合は「月100時間未満」、「年間720時間」を超えていけないと定められています。
これらの制限は労働者のみ適用されています。事業主や役員などは、時間外勤務の制限がなく、時間外手当がない場合があります。
4-2.労災保険
労災保険とは業務中や通勤途中に怪我や病気があった場合、治療費などを雇用契約を結んでいる会社が負担してくれる制度です。
労災保険が認められるかは、業務に関係があるところで怪我や病気になったかが重要なポイントです。
例えば、工場での作業中に重い荷物を持った時に腰を痛めた場合は労災が認められます。しかし、休憩時間にキャッチボールをしていて突き指をしたという場合などは業務外の行動となるため労災が認められません。
また、通勤途中の場合も同様です。
通勤中の怪我や病気は合理的な経路を利用している場合のみ労災として認められます。
正当な理由なく通勤経路を変えていたり、帰り道に寄り道をしたりしたときに、病気や怪我を負っても労災が認められない場合があるため注意しましょう。
関連記事:労働基準法に定められた災害補償が適用される労働災害と補償額
4-3.有給の義務化
会社は労働者に対し、入社日から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対し、10日間の有給休暇を付与しなければいけません。
有給休暇は正社員だけではなく、派遣社員やアルバイト、パートにも付与されます。
勤務日数によって付与される有給日数が変わるため、週に数回しか出勤しないパートの場合はその分だけ付与される有給日数が少なくなります。
役員の場合は雇用契約ではなく委任契約を結んでいるため、役員には年次有給休暇は付与されません。
関連記事:年次有給休暇とは?付与日数や取得義務化など法律をまとめて解説
4-4.「解任」と「解雇」の違い
役員は会社と委任契約を結んでいるため、会社都合で会社を去るときは解雇ではなく解任になります。
解任は株主総会で解任決議を行い可決されると認められます。
一方の労働者が会社都合で会社を去るときは、解雇になります。
解雇の場合は1ヶ月以上前に会社は労働者に対し、解雇通知をしなければいけない規定になっています。
4-5.就業規則
就業規則とは会社や労働者が守るべきルールを定めたものです。
就業規則は会社や従業員によってさまざまで、賃金の額や仕事内容、休日などが決められている非常に重要なものです。
労働者の場合は会社と雇用契約を結んでいるため、就業規則に従う必要がありますが、役員などのように委任契約の場合は就業規則に従う必要はありません。
ただし、大企業では役員用の就業規則である役員規定があることがあります。
関連記事:労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務
5.労働者の規定から外れる場合に対象外となる制度に注意
労働基準法では労働者は会社と雇用契約を結んでいる従業員と規定されています。事業主や委託契約の役員などは労働者には該当しません。
労働者は就業時間の制限や労災保険といった制度の対象となりますが、労働者でなくなると制度の対象外となります。
あとから大きなトラブルになるのを防ぐためにも、労働者から労働者ではなくなる場合にどのような変化があるのか覚えておくといいでしょう。
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