時間外労働とは?定義や上限規制、割増賃金の計算など原則ルールを解説
更新日: 2026.3.31 公開日: 2021.11.12 jinjer Blog 編集部

企業が従業員を働かせるうえで、業務の都合上どうしても時間外労働が発生する場面は少なくありません。時間外労働そのものは違法というわけではありませんが、労働基準法に定められたルールを守らずに運用すると、法令違反となってしまう可能性があります。
この記事では、時間外労働の定義や上限規制、割増賃金の計算方法など、企業として押さえておくべき基本ルールを解説します。時間外労働のポイントを押さえて、法令を遵守した労働環境の整備をおこないましょう。
目次
残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。
当サイトでは、時間外労働の定義や上限に加え、「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
資料では効率的な残業管理の方法も解説しているため、法に則った残業管理をしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1.時間外労働とは?


時間外労働とは、労働基準法に定められた「法定労働時間」を超えて働くことを指します。時間外労働という言葉自体は広く知られていますが、正確な意味を理解している人は意外と少ないかもしれません。
ここでは、これらの言葉の定義について解説します。
1-1. 法定労働時間と所定労働時間
「法定労働時間」とは、労働基準法で定められている法定の労働時間です。労働基準法第32条では、企業は従業員に「1日に8時間、1週間に40時間」を超えて労働させてはならないと定められています。[注1]
[注1]e-GOV|労働基準法
法定労働時間を超えて労働させる場合は、36協定を締結、管轄の労働基準監督署へ提出し、割増賃金を支給しなければなりません。
一方で、「所定労働時間」とは、企業が就業規則や雇用契約書などで独自に定めた労働契約上の労働時間を指します。所定労働時間は、法定労働時間の範囲内であれば、各企業で自由に定めることが可能です。例えば、月曜から金曜まで9:00〜17:00(休憩1時間)の定時を定めている企業では、「1日7時間・1週35時間」が所定労働時間となります。
つまり、「法定労働時間」は全国共通の基準であり、「所定労働時間」は企業ごとに異なる独自の基準ということになります。
法定労働時間を超えて(法定外残業が発生した)労働した場合には、通常の賃金の25%以上の割増賃金(125%)を支払う必要があります。一方、所定労働時間を超えていても法定労働時間の範囲内であれば、割増は不要で、通常通りの賃金(100%)を支払えば足ります。
1-2. 時間外労働と残業時間の違い
「時間外労働」と「残業時間」は、日常的には同じ意味で使われがちですが、使い方によっては異なる概念を指している場合もあります。
まず、時間外労働とは、労働基準法に定められているもので、前述の通り法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えておこなわれる労働を指します。
一方、残業時間とは、労働基準法上の正式な用語ではありませんが、実務上広く用いられている表現です。一般的には、所定労働時間を超えて働いた時間を指すことが多く、必ずしも全てが法定労働時間を超えるとは限りません。
このように、企業としては「残業=時間外労働」と単純に捉えず、法定労働時間を超えているのか、あるいは所定労働時間内にとどまっているのかを文脈に応じて適切に判断することが重要です。
1-3. 時間外労働(法定内残業/法定外残業)の計算例
時間外労働には残業代を支払いますが、割増率は法定内残業か法定外残業なのかによって異なります。
例えば、所定労働時間が9:00-17:00の7時間の企業で9:00-19:00まで労働した場合、残業時間全体としては「17:00-19:00」の2時間となります。
その内、「17:00-18:00」は所定労働時間を超えているものの法定労働時間内の労働であるため、割増が発生しない「法定内残業」です。
「18:00-19:00」が法定労働時間を超える時間外労働となり、25%以上の割増賃金が必要な「法定外残業」となるので間違えないようにしましょう。


2. 労働基準法による時間外労働の上限規制と36協定


法定労働時間を超える「時間外労働」が少しでも発生する企業では、労働基準法に基づく手続きと時間数の制限を遵守する必要があります。ここでは、労働基準法上の上限規制と、企業が従業員に時間外労働を命じる際に必要な36協定について解説します。
2-1. 時間外労働の制限とは
時間外労働の制限とは、労働基準法に基づき、企業が従業員に法定労働時間を超えて労働させる場合に守るべき「時間数の上限」を定めたルールです。
原則として、時間外労働は月45時間、年360時間以内に収めなければならず、この上限は36協定を締結している場合であっても超えることはできません。2019年の法改正により、この上限規制は法律上の義務として明確に位置付けられ、違反した場合には罰則の対象となります。
また、業務上やむを得ない臨時的な特別の事情がある場合に限り、特別条項付き36協定を締結することで例外的に上限を引き上げることが認められています。しかし、その場合でも「年720時間以内」「単月100時間未満」「2~6か月平均80時間以内」など、複数の厳格な条件を遵守しなければなりません。
時間外労働の制限は、労働者の健康確保を目的とした重要な規制であるため、企業は協定内容と実際の労働時間を常に照合し、上限超過が生じない管理体制を整えることが求められます。
2-2. 時間外労働に関する協定届「36協定」とは?
「36協定」とは、企業が従業員に時間外労働や休日出勤を指せる前に、必ず届け出なければならない労使協定です。正式名称を「時間外・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法第36条に基づく労使協定であるため、一般的に「36協定(さぶろくきょうてい)」と呼ばれています。
企業は法定の労働時間を超え、または法定休日に従業員を働かせる場合は、事前に36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。届出をしないまま時間外労働をさせたときは労働基準法第119条に基づき、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されることがあります。
なお、36協定を締結していない状態で時間外労働を命じた場合、たとえ労働者が同意していても労働基準法違反となるため、注意が必要です。
関連記事:36協定届の提出方法とは?電子申請のやり方や注意点まで分かりやすく解説
2-3. 時間外労働の上限規制
2019年4月の法改正により、時間外労働の上限は原則として以下のとおり法定化されました。(中小企業は2020年4月より適用)[注2]
- 月45時間以内
- 年360時間以内
月45時間・年360時間を超える時間外労働は、臨時的かつ特別の事情がない限り原則として認められていません。
この上限規制に違反した場合、労働基準法第119条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。[注2]厚生労働省|時間外労働の上限 規制わかりやすい解説
2-4. 特別条項付き36協定を締結した場合の例外
前述した「月45時間以内、年360時間以内」という原則的な上限を超える必要がある場合、特別条項付き36協定を締結するという例外的な手段があります。これは、業務上やむを得ない臨時的な特別の事情がある場合に限り、36協定に特別条項を設けることで、一時的に時間外労働の上限引き上げが認められる制度です。
ただし、特別条項付き36協定を締結した場合でも、以下のように厳格な上限が法律で定められており、すべての条件を満たす必要があります。
- 年720時間以内(休日労働を含まない)
- 単月で100時間未満(休日労働を含む)
- 2~6ヵ月平均で80時間以内(休日労働を含む)
- 月45時間を超えることができるのは年6回まで
このように、特別条項があるからといって無制限に時間外労働をさせられるわけではありません。法令に定められた条件を正しく理解し、適切な運用を心がけることが重要です。
関連記事:36協定の特別条項とは?働き方改革関連法との関係や時間外労働の上限に関する注意点
さらに、ここで押さえておくべきポイントとして、働き方改革の際に労働基準法の法改正もおこなわれたことがあります。内容としては、残業時間の上限規制だけでなく、有給休暇の取得義務など6つの項目が見直されました。
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3. 時間外労働の割増率


従業員に時間外労働をおこなわせた場合、企業はその労働に対する割増賃金を支払わなければなりません。
ここでは、割増率の基本と、管理職への適用について解説します。
3-1. 割増賃金の3つの種類と割増率
割増賃金には、大きく分けて労働の種類ごとに3つの種類があります。それぞれ、以下のように割増率が定められています。[注3]
|
労働の種類 |
割増率 |
|
時間外労働(1日8時間・1週間40時間を超える残業) |
25%以上 |
|
休日(週1日または4週4日の法定休日勤務) |
35%以上 |
|
深夜(22時~翌5時の深夜勤務) |
25%以上 |
時間外労働が深夜に及ぶ場合は50%以上、休日勤務が深夜に及ぶ場合は60%以上の割増率が必要です。さらに、時間外労働の合計が「1ヵ月60時間」を超えた部分については、通常の25%に加えて追加の25%が加算され、合計で50%以上の割増率が適用されます。
3-2. 管理職(管理監督者)の割増賃金
労働基準法41条に定められる管理監督者(監督若しくは管理の地位にある者)は、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用除外とされています。そのため、管理監督者に該当する場合、原則として時間外労働や法定休日労働に対する割増賃金の支払い義務は発生しません。
ただし、これは職位や肩書だけで判断されるものではなく、経営者と一体的な立場にあるか、重要な職務権限を有しているか、労働時間の裁量が認められているか、待遇がその地位にふさわしいかといった実態を総合的に見て判断されます。
また、管理監督者であっても、深夜時間帯(22時から翌5時まで)に労働させた場合には、労働基準法第37条に基づき、深夜割増賃金の支払い義務が発生します。
管理監督者の範囲を形式的に決めるのではなく、法令と実態の両面から慎重に判断することが重要です。
3-3. 時間外労働の割増率と計算の基本ルール
時間外労働の割増賃金を正しく支払うためには、「どの時間が法定労働時間を超えているのか」を正確に切り分けたうえで計算することが重要です。
割増率は一律ではなく、労働の種類や時間帯によって異なるため、単純に残業時間の合計に25%をかければよいわけではありません。まず、1日8時間・週40時間を超えた部分が時間外労働となり、通常賃金に25%以上を加算します。さらに、深夜時間帯にかかる場合は深夜割増を加算し、月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増率が必要です。
計算にあたっては、所定労働時間超か法定労働時間超かを混同せず、勤怠データをもとに区分ごとに積み上げる運用が求められます。こうした基本ルールを社内で統一し、給与計算に反映させて未払いリスクを防ぎましょう。
4. 【制度別】割増賃金の計算方法


割増賃金の計算は、導入している労働時間制度や給与制度によって計算方法が異なります。ここでは、各制度に応じた割増賃金の基本的な考え方と計算方法を解説します。
4-1. 労働時間制度別の割増賃金の計算方法
割増賃金の計算方法は、労働基準法の原則を踏まえつつ、企業が採用している労働時間制度によって取り扱いが異なります。通常の労働時間制だけでなく、変形労働時間制やフレックスタイム制、裁量労働制などでは、時間外労働の判定単位や計算の考え方に注意が必要です。
通常の労働時間制
通常の労働時間制の場合、法令の原則通り、1日8時間・週40時間を超える労働に対して割増賃金が発生します。
【例:定時 9:00~17:00(休憩1時間)の企業で、9:00~20:00まで勤務した場合】
-17:00~18:00は定時を超える残業時間ですが、8時間以内のため割増不要
-18:00~20:00が法定労働時間を超える残業時間のため、25%以上の割増が必要
割増賃金計算式:(時給単価×1時間×割増率1.0倍)+(時給単価×2時間×割増率1.25倍)
変形労働時間制
変形労働時間制とは、業務の繁閑に応じて、一定期間内で労働時間を調整できる制度です。柔軟に勤務時間を設定できます。変形労働時間制では、一定期間の平均が法定労働時間以内に収まっていれば、特定の日や週で法定時間を超えても割増賃金の支払いは不要です。
ただし、法定休日に労働させた場合や、深夜時間帯(22時から翌5時)に労働が及んだ場合には、変形労働時間制であっても割増賃金の支払いが必要です。
制度の種類には「1ヵ月単位」「1年単位」「1週間単位」がありますが、ここでは「1ヵ月単位の変形労働時間制」の割増賃金の計算方法を紹介します。
【例:1ヵ月単位の変形労働時間制の場合】
時間外労働として割増賃金の対象になるのは、以下3つの時間の合計です。
①1日の法定労働時間(8時間)を超えた時間
- 所定労働時間が8時間以内の日は、実際に8時間を超えた分
- 所定労働時間が8時間を超えて設定されている日は、その時間を超えた分
②1週の法定労働時間(40時間)を超えた時間(①を除く)
- 所定労働時間が40時間以内の週は、実際に40時間を超えた分
- 所定労働時間が40時間を超える週は、その超過分
③期間全体での法定労働時間の総枠を超えた時間(①②を除く)
- 法定労働時間の総枠(40時間 ×(対象月の暦日数 ÷ 7))を超えた分
関連記事:変形労働制でも残業代は出さないとダメ!知っておくべきルールとは
フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、3ヵ月以内の一定の期間内で、総労働時間をあらかじめ定めておき、その範囲内で従業員の裁量で日々の勤務時間を決めて働くことのできる制度です。フレックスタイム制では、総労働時間が法定労働時間を超えた場合に、清算期間の末日にまとめて割増賃金を計算します。
【例:清算期間1ヵ月】
-原則(法定労働時間の総枠(40時間 ×(対象月の暦日数 ÷ 7))-総労働時間)×割増率1.25倍
-特例(完全週休2日制の場合、労使協定締結によって選択可能)
(法定労働時間の総枠(所定労働日数×8時間)-総労働時間)×割増率1.25倍
上記に加えて1ヵ月ごとの労働時間が、清算期間内の総労働時間を超えた場合には時間外労働となります。
関連記事:フレックスタイム制で残業代は減る?残業の考え方や計算方法も紹介
裁量労働制
裁量労働制とは、業務の性質上、労働時間の算定が難しいとされる制度です。裁量労働制では実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた「みなし労働時間」が勤務時間として扱われます。
ただし、以下のような場合には追加で割増賃金の支払いが必要です。
- 法定休日に勤務した場合:法定休日勤務時間×割増率1.35倍
- -深夜(午後10時~午前5時)に勤務した場合:深夜勤務時間×割増率0.25倍
4-2. 給与制度別の割増賃金の計算方法
割増賃金は、労働時間制度だけでなく、給与の支払い形態によっても計算方法が異なります。
月給制や年俸制、日給制、時給制、歩合給制など、いずれの給与制度であっても、労働基準法に基づき時間外労働が発生した場合には、適切な賃金単価を算出したうえで割増計算をおこなう必要があります。
年俸制
年俸制であっても、時間外労働が発生した場合は、以下の計算式によって1時間あたりの賃金単価を算出して割増計算をおこなう必要があります。
残業代=年俸額÷12ヵ月÷月平均所定労働時間×割増率×残業時間
【例】
年俸600万円÷12ヵ月÷月平均所定労働時間160時間=時給3,125円
→3,125円×割増率1.25倍×残業時間
関連記事:年俸制の残業代は支払い義務がある?不要なケースや計算方法を解説
月給制
月給制の場合、月給の固定給部分を月の平均所定労働時間で割って時給を算出し、割増計算をおこないます。
【例】
月給30万円÷月平均所定労働時間160時間=時給1,875円
→1,875円×割増率1.25倍×残業時間
日給制
日給制の場合、日給を1日の所定労働時間で割って時給を算出し、割増計算をおこないます。
【例】
日給12,000円÷所定労働時間8時間=時給1,500円
→1,500円×割増率1.25倍×残業時間
時給制
時給制の場合は、そのままの時給に割増率を掛けるため、最もシンプルな計算方法です。
【例】
時給1,200円×割増率1.25倍×残業時間
歩合給制
歩合給制であっても、法定労働時間を超えて働いた場合は、以下の計算式にしたがって割増賃金を支払わなければなりません。
残業代=歩合給÷賃金算定期間の総労働時間数×割増率×残業時間
【例】
歩合給40万円÷1ヵ月の総労働時間200時間=時給2,000円
→2,000円×割増率1.25倍×残業時間
5. 時間外労働に関する法改正


時間外労働に関しては、割増賃金の引き上げや上限規制に関わる規制の改正がおこなわれています。
ここでは、再度確認しておきたい法改正について解説します。
5-1. 【2024年4月~】建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制
時間外労働の上限規制は、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用されています。
しかし、現状の労働形態を加味して、すぐに適用が難しいと判断された「建設事業」「タクシードライバーや物流などの自動車運転の業務」「医師」「鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業」については、猶予期間が与えられました。
この猶予期間はすでに終了しており、2024年4月1日からは建設業やドライバー、医師等にも時間外労働の上限規制が適用されています。
ただし、すべて一律の上限規制が施行されているわけではなく、業種によっては例外があります。
参考:建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制(旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務)|厚生労働省
各業界ごとに適用される上限は異なります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:働き方改革による残業規制の最新情報!上限時間や違反した際の罰則を解説
5-2. 【2023年4月~】中小企業の月60時間超え時間外労働の割増賃金率が50%以上に引き上げ
2023年4月1日から、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率引き上げが施行されています。
2023年3月までは大企業だけが対象でしたが、2023年4月からは中小企業も対象となっており、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は共に50%となりました。
引き上げに該当する中小企業は、下記の1.または2.を満たしているかどうかで判断されます。
業種
- 資本金の額または出資の総額
- 常時使用する労働者数
|
業種 |
資本金の額または出資の総額 |
常時使用する労働者数 |
|
小売業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
|
サービス業 |
5,000万円以下 |
100人以下 |
|
卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
|
上記以外のその他の企業 |
3億円以下 |
300人以下 |
参考:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省
5-3. 【2025年4月~】所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
2025年4月1日より、育児・介護休業法の一部が改正され、育児のための所定外労働の制限(残業免除)の対象となる子の範囲が拡大されます。 これまで3歳に満たない子を養育する労働者が対象でしたが、改正後は小学校就学前の子を養育する労働者も会社に請求することで所定外労働の制限を受けられるようになります。
これは、小学校就学前の子を持つ親が、仕事と育児の両立をしやすくするための措置です。所定外労働とは、会社で定められた所定労働時間を超えて働くことを指します。
この改正により、対象となる労働者から請求があった場合、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、会社は所定労働時間を超えて労働させることはできません。 請求は1ヵ月以上1年以内の期間で、開始予定日の1ヵ月前までにおこなう必要があります。
6. 時間外労働で必要な社内ルール設計


時間外労働に関する法令や上限規制を理解していても、社内ルールとしての整理が不十分な場合、現場運用とのズレやトラブルにつながるおそれがあります。特に就業規則や残業申請ルール、勤怠管理システムの設定内容が曖昧なままでは、適切に管理しているつもりでも法令違反と判断されるケースも少なくありません。
そこでここでは、時間外労働を前提とした社内ルール設計の考え方を解説します。
6-1. 就業規則・残業申請ルールで整理すべき時間外労働のポイント
就業規則や残業申請ルールを設計する際は、「法定労働時間を超えた労働のみを時間外労働として扱う」という原則を明示することが重要です。そのうえで、残業申請の対象となる時間を法定外残業に限定するのか、所定外労働も含めるのかを社内で統一しておく必要があります。申請対象を曖昧にしたまま運用すると、割増賃金の要否や管理責任を巡って混乱が生じやすくなります。
また、事前申請を原則としつつ、緊急対応など例外的なケースの扱いをルール化しておくことで、実態に即した運用が可能です。時間外労働の定義、申請範囲、承認フローをセットで整理することが就業規則設計の基本です。
6-2. 勤怠管理システム導入時に明確にすべき時間外労働の定義
勤怠管理システムの設計では、「何を基準に時間外労働を自動判定させるか」を最初に決めましょう。
基準を「所定労働時間」に設定してしまうと、法定内残業と法定外残業が混在し、割増賃金計算や36協定管理に支障が出るおそれがあります。そのため、法定労働時間を基準に時間外労働を区分する設計が前提となります。
また、休憩時間の控除方法や打刻修正の権限、直行直帰時の扱いなども時間外労働の集計に影響します。システム設定は「運用を楽にするため」ではなく、「法令に沿った判断が自動でできるか」という視点で設計することが重要です。
6-3. 現場への時間外労働ルールの伝え方
時間外労働のルールを現場に説明する際は、制度用語をそのまま伝えるのではなく、社内ルールとしてどう扱うのかを明確にする必要があります。特に、所定外労働と時間外労働の違い、割増賃金が発生する条件、残業申請が必要な時間帯などは、管理職が正しく理解していないと誤った指示につながります。
そのため、人事としては「申請が必要な残業」「割増賃金の対象になる残業」「36協定の管理対象となる残業」を整理したうえで、共通の説明資料や運用ルールを用意することが有効です。現場ごとの解釈に任せず、判断基準を一本化することが、安定した時間外労働管理につながります。
7. 時間外労働の労働基準法違反になるケースと罰則


時間外労働に関しては、法令に違反をしてしまいがちなケースやその罰則についても正しく理解をしておく必要があります。
ここでは、労働基準法違反になるケースと罰則について解説します。
7-1. 36協定を締結・届出せず時間外労働をさせた場合
36協定を締結・届出しないまま従業員に法定労働時間を超える時間外労働をさせた場合、労働基準法第36条および第32条に違反します。
この違反に対しては、労働基準法第119条により「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が科される可能性があります。まずは労働基準監督署からの指導や是正勧告を受け、それにも従わない場合には送検されることを覚えておきましょう。
また、労働基準関係法令違反として企業名が公表されるリスクも伴います。厚生労働省では、主要な労働基準関係法令違反があった事業場について公表しており、一度公表されると企業の信用失墜につながり、採用活動や取引にも悪影響を及ぼす可能性があります。
7-2. 時間外労働の上限を超えて働かせた場合
時間外労働の上限規制を超えて従業員を働かせた場合、労働基準法違反となり、罰則の対象となります。これは、労働基準法第36条第6項に定められている時間外労働の上限時間に違反するためです。
この違反に対する罰則は、労働基準法第119条により「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。
時間外労働の上限規制は、労働者の健康確保を目的とした重要なルールです。企業は、36協定で定めた時間外労働の上限時間を遵守し、労働時間を適切に管理する義務があります。特別条項を設けて一時的に上限を超えて労働させる場合でも、その適用要件や手続きは厳格に定められており、違反すれば罰則の対象となります。
7-3. 残業代・割増賃金の未払いがあった場合
残業代や割増賃金が未払いとなっている場合、労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)に違反します。これに対する罰則は、労働基準法第114条により、未払いの賃金に加え、労働者の請求により同一額の賦課金を命じられることがあります。さらに、労働基準法第119条により「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が科される場合もあります。
残業代や割増賃金の未払いは、単なる計算ミスとして済まされず、企業の法令遵守意識が問われる重大な問題です。したがって、企業は労働時間の正確な把握と、適切な割増賃金の計算・支払いを徹底することが不可欠です。
8. 時間外労働は労働基準法を遵守して適切に運用しよう


時間外労働とは、法定労働時間である「1日8時間・週40時間」を超えて従業員に労働させることを指します。時間外労働にはさまざまなルールが定められており、36協定の締結や上限時間の遵守などの要件を満たしていない場合は、労働基準法違反となる可能性があるため注意が必要です。
また、時間外労働をおこなわせた場合には、法定の割増賃金を支払う義務があります。労働形態にかかわらず、時間外労働に対する適切な割増賃金の支払いは避けられません。
企業は労働時間を適切に管理し、法律に則った賃金支払いを徹底していきましょう。



残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。
当サイトでは、時間外労働の定義や上限に加え、「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
資料では効率的な残業管理の方法も解説しているため、法に則った残業管理をしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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