時間外労働とは?残業との違いや上限規制・36協定、割増賃金の計算方法など基本を解説
更新日: 2026.7.2 公開日: 2021.11.12 (特定社会保険労務士)

企業では、業務の都合によりやむを得ず時間外労働が発生する場面が少なくありません。しかし、時間外労働はどの時間が対象になるのか、残業との違いは何か、正しく理解できていないケースも多いのではないでしょうか。
また、時間外労働には36協定や上限規制、割増賃金など、守るべきルールがあります。この記事では、時間外労働の定義や上限規制、割増賃金の計算方法など、人事・労務担当者が押さえておきたい基礎知識を解説します。時間外労働のルールを正しく理解し、法令を遵守した適切な労務管理に役立てましょう。
目次
残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。
当サイトでは、時間外労働の定義や上限に加え、「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
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1.時間外労働とは?


時間外労働とは、労働基準法に定められた「法定労働時間」を超えて働くことを指します。労働基準法では、原則として「1日8時間・1週40時間」を超えて労働させることはできません。
しかし、業務の繁忙期や突発的な対応などにより、法定労働時間を超えて働いてもらう必要が生じる場合もあります。そのような企業の場合、あらかじめ36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結し、労働基準監督署へ届け出ていなければ、従業員に時間外労働を命じることはできません。
また、時間外労働をおこなわせた場合には、通常の賃金に加えて割増賃金を支払う必要があります。さらに、時間外労働には上限規制も設けられており、企業は労働時間を適切に管理しなければなりません。
ここでは、時間外労働を正しく理解するために、言葉の定義について解説します。まず「法定労働時間」と「所定労働時間」の違いを押さえましょう。
1-1. 法定労働時間と所定労働時間
「法定労働時間」とは、労働基準法で定められている法定の労働時間です。労働基準法第32条では、企業は従業員に「1日に8時間、1週間に40時間」を超えて労働させてはならないと定められています。
参考:e-GOV|労働基準法
法定労働時間を超えて労働させる場合は、36協定を締結、所轄の労働基準監督署へ提出し、割増賃金を支給しなければなりません。
一方で、「所定労働時間」とは、企業が就業規則や雇用契約書などで独自に定めた労働契約上の労働時間を指します。所定労働時間は、法定労働時間の範囲内であれば、各企業で自由に定めることが可能です。例えば、月曜から金曜まで9:00〜17:00(休憩1時間)の定時を定めている企業では、「1日7時間・1週35時間」が所定労働時間となります。
つまり、「法定労働時間」は全国共通の基準であり、「所定労働時間」は企業ごとに異なる独自の基準ということになります。
法定労働時間を超えて(法定外残業が発生した)労働した場合には、通常の賃金の25%以上の割増賃金(125%)を支払う必要があります。一方、所定労働時間を超えていても法定労働時間の範囲内であれば、法律上は割増は不要で、通常どおりの賃金(100%)を支払えば足ります。
1-2. 時間外労働と残業時間の違い
「時間外労働」と「残業時間」は、同じ意味で使われることもありますが、厳密には異なります。
時間外労働とは、労働基準法で定められた法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えておこなわれる労働を指します。一方、残業時間とは法律上の用語ではなく、一般的には所定労働時間を超えて働いた時間を指すことが多いです。
例えば、所定労働時間が9:00~17:00(休憩1時間)の企業で9:00~18:00まで働いた場合、所定労働時間は超えていますが、法定労働時間である1日8時間以内に収まっているため、残業ではあるものの時間外労働には該当しません。18:00以降も勤務して1日の労働時間が8時間を超えた部分は、時間外労働に該当します。
このように、残業時間のすべてが時間外労働になるわけではありません。時間外労働に該当するかどうかによって、36協定の適用や割増賃金の支払いの要否が変わるため、企業は両者の違いを正しく理解しておくことが重要です。
2. 時間外労働の上限規制と36協定


時間外労働には、労働基準法による上限が設けられています。企業は36協定を締結・届出することで時間外労働を命じることができますが、無制限に働かせることはできません。
この上限規制は働き方改革関連法によって2019年より順次導入されました。中小企業にも2020年から適用され、現在はすべての企業で対象となっています。
ここでは、36協定の基本的な仕組みと、時間外労働の上限規制について解説します。時間外労働を適正に管理するために、人事・労務担当者が押さえておきたい基礎知識を確認していきましょう。
2-1. 時間外労働をさせるには36協定の締結・届出が必要
「36協定」とは、企業が従業員に時間外労働や休日出勤をさせる前に、必ず届け出なければならない労使協定です。正式名称を「時間外・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法第36条に基づく労使協定であるため、一般的に「36協定(さぶろくきょうてい)」と呼ばれています。
企業は法定の労働時間を超え、または法定休日に従業員を働かせる場合は、事前に36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。届出をしないまま時間外労働をさせたときは労働基準法第119条に基づき、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されることがあります。
なお、36協定を締結していない状態で時間外労働を命じた場合、たとえ労働者が同意していても労働基準法違反となるため、注意が必要です。
関連記事:36協定届の提出方法とは?電子申請のやり方や注意点まで分かりやすく解説
2-2. 時間外労働の上限規制
時間外労働には、労働者の健康確保を目的として法律上の上限が設けられています。
原則として、36協定を締結した場合であっても、時間外労働は月45時間・年360時間以内に収めなければなりません。この上限は労働基準法で定められており、違反した場合には罰則の対象となります。
ただし、臨時的な特別の事情がある場合に限り、「特別条項付き36協定」を締結することで、例外的に上限を超える時間外労働が認められます。しかし、その場合でも次の上限を超えることはできません。
- 年720時間以内(休日労働を含まない)
- 単月で100時間未満(休日労働を含む)
- 2~6ヵ月平均で80時間以内(休日労働を含む)
- 月45時間を超えることができるのは年6回まで
このように、特別条項がある場合でも時間外労働には厳格な上限が設けられています。企業は36協定の内容と実際の労働時間を定期的に確認し、上限超過が発生しないよう適切に管理することが重要です。
関連記事:36協定の特別条項とは?働き方改革関連法との関係や時間外労働の上限に関する注意点
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3. 時間外労働の割増率


従業員に時間外労働をおこなわせた場合、企業は通常の賃金に加えて割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金は、労働基準法で定められた割増率に基づいて計算されます。
ただし、割増賃金の計算にあたっては、法定労働時間を超える「時間外労働=法定外残業」と、所定労働時間を超えていても法定労働時間内に収まる「法定内残業」を区別する必要があります。企業ごとに所定労働時間が異なるため、どこから割増賃金が必要になるのか判断を誤りやすい点に注意が必要です。
ここでは、割増率の基本的な考え方と計算方法について解説します。
3-1. 時間外労働・休日労働・深夜労働の割増率
割増賃金の有無や割増率は、労働の種類によって異なります。主な割増率は次のとおりです。
|
労働の種類 |
割増率 |
|
法定内残業(所定労働時間超~法定労働時間以内) |
割増不要(100%) |
|
時間外労働=法定外残業(1日8時間・1週間40時間の法定労働時間を超える残業) |
25%以上 |
|
法定休日労働(週1日または4週4日) |
35%以上 |
|
深夜労働(22時~翌5時) |
25%以上 |
|
時間外労働かつ深夜労働 |
50%以上 |
|
法定休日労働かつ深夜労働 |
60%以上 |
|
月60時間を超える時間外労働 |
50%以上 |
3-2. 法定内残業と時間外労働を区別して割増賃金を計算する
残業時間のすべてが、割増賃金の対象となる時間外労働に該当するわけではありません。所定労働時間を超えて働いた時間のうち、法定労働時間内に収まるものは「法定内残業」となり、割増率は不要です。
一方で、1日8時間・1週40時間を超える労働は、労働基準法上の時間外労働にあたります。この時間については、通常の賃金に加えて25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
例えば、所定労働時間が9:00~17:00(休憩1時間)の7時間の企業で、従業員が9:00~19:00まで勤務した場合、「17:00~19:00」の2時間が残業時間となります。
このうち、17:00~18:00の1時間は所定労働時間を超えているものの1日8時間の法定労働時間内に収まるため、「法定内残業」です。法律上の割増賃金は不要で、通常の賃金を支払えば足ります。
一方、18:00~19:00の1時間は、法定労働時間の8時間を超えるため、労働基準法上の時間外労働(法定外残業)に該当します。この時間については、25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。


法定内残業と時間外労働(法定外残業)を混同すると、割増賃金の計算ミスや未払いにつながるおそれがあります。勤怠管理上も、単に残業時間として一括で集計するのではなく、2つを区別して管理することが重要です。
3-3. 管理職(管理監督者)の割増賃金
労働基準法41条に定められる管理監督者(監督若しくは管理の地位にある者)は、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用除外とされています。そのため、管理監督者に該当する場合、原則として時間外労働や法定休日労働に対する割増賃金の支払い義務は発生しません。
ただし、これは職位や肩書だけで判断されるものではなく、経営者と一体的な立場にあるか、重要な職務権限を有しているか、労働時間の裁量が認められているか、待遇がその地位にふさわしいかといった実態を総合的に見て判断されます。
また、管理監督者であっても、深夜時間帯(22時から翌5時まで)に労働させた場合には、労働基準法第37条に基づき、深夜割増賃金の支払い義務が発生します。
管理監督者の範囲を形式的に決めるのではなく、法令と実態の両面から慎重に判断することが重要です。
4. 時間外労働の割増賃金はどう計算する?


時間外労働が発生した場合、企業は法定の割増率に基づいて割増賃金を計算し、支払わなければなりません。ただし、実際の計算方法は、すべての企業で同じではなく、採用している労働時間制度や給与制度によって考え方が異なります。
例えば、通常の労働時間制と変形労働時間制では時間外労働の判定方法が異なり、また月給制・年俸制・時給制など給与制度によっても1時間あたりの賃金単価の算出方法が変わります。
ここでは、時間外労働に対する割増賃金の計算方法について、労働時間制度別・給与制度別に基本的な考え方を解説します。
4-1. 労働時間制度別に見る時間外労働の計算方法
割増賃金の計算方法は、労働基準法の原則を踏まえつつ、企業が採用している労働時間制度によって取り扱いが異なります。特に変形労働時間制やフレックスタイム制、裁量労働制などでは、時間外労働の判定単位や計算の考え方に注意が必要です。
通常の労働時間制
通常の労働時間制の場合、法令の原則どおり、1日8時間・週40時間を超える労働に対して割増賃金が発生します。
【例:定時 9:00~17:00(休憩1時間)の企業で、9:00~20:00まで勤務した場合】
|
時間帯 |
区分 |
割増率 |
|
17:00~18:00 |
法定内残業 |
割増不要(1.0倍) |
|
18:00~20:00 |
時間外労働(法定外残業) |
割増率25%以上(1.25倍) |
割増賃金計算式
(時給単価×1時間×割増率1.0倍)+(時給単価×2時間×割増率1.25倍)
変形労働時間制
変形労働時間制とは、業務の繁閑に応じて、一定期間内で労働時間を調整できる制度です。柔軟に勤務時間を設定できます。変形労働時間制では、一定期間の平均が法定労働時間以内に収まっていれば、特定の日や週で法定時間を超えても割増賃金の支払いは不要です。
ただし、法定休日に労働させた場合や、深夜時間帯(22時から翌5時)に労働が及んだ場合には、変形労働時間制であっても割増賃金の支払いが必要です。
制度の種類には「1ヵ月単位」「1年単位」「1週間単位」がありますが、ここでは「1ヵ月単位の変形労働時間制」の割増賃金の計算方法を紹介します。
【例:1ヵ月単位の変形労働時間制の場合】
時間外労働として割増賃金の対象になるのは、次の3つの時間の合計です。
|
判定基準 |
時間外労働となる時間 |
|
①1日 |
|
|
②1週間 |
|
|
③期間全体 |
|
関連記事:変形労働制でも残業代は出さないとダメ!知っておくべきルールとは
フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、3ヵ月以内の一定の期間内で、実労働時間をあらかじめ定めておき、その範囲内で従業員の裁量で日々の勤務時間を決めて働くことのできる制度です。フレックスタイム制では、総労働時間が法定労働時間を超えた場合に、清算期間の末日にまとめて割増賃金を計算します。
【例:清算期間1ヵ月の場合】
|
区分 |
計算方法 |
|
原則 |
清算期間の法定労働時間総枠を超えた時間×割増率1.25倍 <計算式> 実労働時間合計 – (40時間 ×対象月の暦日数 ÷ 7)×1.25 |
|
特例(完全週休2日制の会社で労使協定締結時) |
所定労働時間総枠を超えた時間×割増率1.25倍 <計算式> 実労働時間合計 – (所定労働日数×8時間)×1.25 |
なお、清算期間が1ヵ月を超えるフレックスタイム制の場合は、清算期間全体の法定労働時間の総枠に加え、各月の労働時間についても時間外労働の判定ルールがあります。1ヵ月ごとに週平均50時間を超えた時間は、その月の時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。
関連記事:フレックスタイム制で残業代は減る?残業の考え方や計算方法も紹介
裁量労働制
裁量労働制とは、業務の性質上、労働時間の算定が難しいとされる制度です。裁量労働制では実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた「みなし労働時間」が勤務時間として扱われます。
ただし、次のような場合には追加で割増賃金の支払いが必要です。
- 法定休日に勤務した場合:法定休日勤務時間×割増率1.35倍
- 深夜(午後10時~午前5時)に勤務した場合:深夜勤務時間×割増率0.25倍
4-2. 給与制度別に見る時間外労働の計算方法
割増賃金は、労働時間制度だけでなく、給与の支払い形態によっても計算方法が異なります。月給制や年俸制、日給制、時給制、歩合給制など、いずれの給与制度であっても、労働基準法に基づき時間外労働が発生した場合には、適切な賃金単価を算出したうえで割増計算をおこなう必要があります。
年俸制
年俸制であっても、時間外労働が発生した場合は、次の計算式によって1時間あたりの賃金単価を算出して割増計算をおこなう必要があります。
残業代=年俸額÷12ヵ月÷月平均所定労働時間×割増率×残業時間
【例】
年俸600万円÷12ヵ月÷月平均所定労働時間160時間=時給3,125円
→3,125円×割増率1.25倍×残業時間
関連記事:年俸制の残業代は支払い義務がある?不要なケースや計算方法を解説
月給制
月給制の場合、月給の固定給部分を月の平均所定労働時間で割って時給を算出し、割増計算をおこないます。
【例】
月給30万円÷月平均所定労働時間160時間=時給1,875円
→1,875円×割増率1.25倍×残業時間
日給制
日給制の場合、日給を1日の所定労働時間で割って時給を算出し、割増計算をおこないます。
【例】
日給12,000円÷所定労働時間8時間=時給1,500円
→1,500円×割増率1.25倍×残業時間
時給制
時給制の場合は、そのままの時給に割増率を掛けるため、最もシンプルな計算方法です。
【例】
時給1,200円×割増率1.25倍×残業時間
歩合給制
歩合給制であっても、法定労働時間を超えて働いた場合は、次の計算式にしたがって割増賃金を支払わなければなりません。
残業代=歩合給÷賃金算定期間の総労働時間数×割増率×残業時間
【例】
歩合給40万円÷1ヵ月の総労働時間200時間=時給2,000円
→2,000円×割増率0.25倍×残業時間
ここでのポイントは、歩合給自体(40万円)には「通常の賃金分」が既に含まれているとみなすため、追加で支払うのは「時間外割増分」の0.25のみを掛けるということです。
5. 時間外労働に関する過去の法改正


時間外労働に関するルールは、法改正により、近年大きく見直されています。人事・労務担当者は、現在適用されている制度だけでなく、どのような改正がおこなわれたのかも把握しておくことが重要です。
主な法改正の内容は次のとおりです。
|
施行時期 |
改正内容 |
法律 |
|
2019年4月 |
時間外労働の上限規制が適用開始 ※大企業のみ |
働き方改革関連法 (労働基準法) |
|
2020年4月 |
中小企業への時間外労働の上限規制の適用開始 |
働き方改革関連法 (労働基準法) |
|
2023年4月 |
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を中小企業でも50%以上に引き上げ |
働き方改革関連法 (労働基準法) |
|
2024年4月 |
建設業・ドライバー・医師などへの時間外労働の上限規制の適用開始 |
働き方改革関連法 (労働基準法) |
|
2025年4月 |
育児のための所定外労働の制限(残業免除)の対象が「3歳未満の子」から「小学校就学前の子」まで拡大 |
育児・介護休業法 |
働き方改革関連法による時間外労働の上限規制や、中小企業における月60時間超の割増賃金率引き上げは、多くの企業に影響する重要な改正です。また、育児と仕事の両立支援の観点から、残業免除制度の対象範囲も拡大されています。
人事・労務担当者は、自社に適用される制度を確認し、就業規則や勤怠管理の運用が最新の法令に対応しているか定期的に見直しましょう。
6. 時間外労働を適切に管理するためのポイント


ここまで解説したように、時間外労働には36協定の締結・届出や上限規制、割増賃金の支払いなど、さまざまなルールがあります。しかし、制度を理解しているだけでは適切な運用はできません。
実際の現場では、社内ルールを整備し、勤怠管理システムへ反映し、管理職や従業員へ周知したうえで、継続的に労働時間を確認していくことが重要です。
ここでは、人事・労務担当者が時間外労働を適切に管理するためのポイントを解説します。
6-1. 就業規則・残業申請ルールを整備する
時間外労働を適切に管理するためには、まず社内ルールを整備することが重要です。
就業規則や賃金規程には、時間外労働の取扱いや割増賃金の計算方法を定めておきましょう。また、残業申請の対象となる時間を「法定外残業に限定するのか、法定内残業も含めるのか」といった範囲や、承認フローも明確にしておく必要があります。
さらに、残業申請は事前申請制とすることで不要な時間外労働の抑制にもつながります。緊急対応や突発業務など例外的なケースについてもルール化しておくことで、現場ごとの判断のばらつきを防ぐことが可能です。
6-2. 勤怠管理システムで時間外労働を正しく集計する
時間外労働を適切に管理するためには、労働時間を正確に把握できる仕組みが欠かせません。
勤怠管理システムの設計では、まず法定内残業と法定外残業を区別して集計できるよう設定しましょう。時間外労働の基準を「所定労働時間」に設定してしまうと、法定内残業と法定外残業が混在し、割増賃金計算や36協定管理に支障が出るおそれがあります。
また、休憩時間の控除方法や打刻修正の権限、直行直帰時の扱いなども時間外労働の集計に影響します。事前に整理しておくことがおすすめです。
システム設定が不適切な場合、時間外労働の集計ミスや割増賃金の計算誤りにつながるおそれがあります。法令に沿った労働時間管理ができるよう、自社の運用に合わせて設定内容を確認することが大切です。
6-3. 管理職や現場担当者へルールを周知する
時間外労働の管理は、人事部門だけで完結するものではありません。実際に部下へ業務指示をおこなう管理職や現場責任者がルールを理解していなければ、長時間労働や未払い残業の原因になる可能性があります。
そのため、時間外労働の定義や上限規制、残業申請の方法、割増賃金の考え方などを定期的に周知し、判断基準を統一することが、安定した時間外労働管理につながります。特に管理職には、「部下の残業時間を管理する責任がある」という認識を持ってもらうことが大切です。
6-4. 時間外労働を定期的にモニタリングする
ルールを整備し、システムを導入した後は、実際に適切な運用ができているかを継続的に確認する必要があります。
例えば、月45時間・年360時間といった時間外労働の上限に近づいている従業員がいないか、特別条項付き36協定を締結している場合は、年6回までという回数制限や、単月100時間未満・複数月平均80時間以内といった上限を超えていないかを定期的に確認しましょう。
また、部署別・従業員別の時間外労働時間を集計することで、長時間労働が発生しやすい業務や組織上の課題を把握しやすくなります。時間外労働のモニタリングは、法令違反を防ぐだけでなく、業務改善や生産性向上につなげるためにも重要です。
労働時間管理の相談を受けるなかで、「残業時間は把握していたが、正確な上限管理ができていなかった」という企業は少なくありません。特に月45時間は確認していても、年360時間の累計や特別条項の回数まで追えていないケースをよく見かけます。
また、長時間労働問題は人事部門だけでは解決できず、現場の管理職の協力が不可欠です。管理職も定期的に時間外労働の状況を確認する仕組みを作ることをおすすめしています。
例えば、「月30時間を超えたら管理職へ通知する」といったルールを設けるだけでも、上限超過の予防につながります。勤怠管理システムのアラート機能も活用しながら、上限を超えてから対応するのではなく、「超える前に気付ける状態」を作ることが重要です。
7. 時間外労働の労働基準法違反になるケースと罰則


時間外労働に関しては、法令に違反をしてしまいがちなケースやその罰則についても正しく理解をしておく必要があります。
ここでは、労働基準法違反になるケースと罰則について解説します。
7-1. 36協定を締結・届出せず時間外労働をさせた場合
36協定を締結・届出しないまま従業員に法定労働時間を超える時間外労働をさせた場合、労働基準法第36条および第32条に違反します。
この違反に対しては、労働基準法第119条により「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」という罰則が科される可能性があります。まずは労働基準監督署からの指導や是正勧告を受け、それにも従わない場合には送検されることを覚えておきましょう。
また、労働基準関係法令違反として企業名が公表されるリスクも伴います。厚生労働省では、主要な労働基準関係法令違反があった事業場について公表しており、一度公表されると企業の信用失墜につながり、採用活動や取引にも悪影響を及ぼす可能性があります。
7-2. 時間外労働の上限を超えて働かせた場合
時間外労働の上限規制を超えて従業員を働かせた場合、労働基準法違反となり、罰則の対象となります。これは、労働基準法第36条第6項に定められている時間外労働の上限時間に違反するためです。
この違反に対する罰則は、労働基準法第119条により「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。
時間外労働の上限規制は、労働者の健康確保を目的とした重要なルールです。企業は、36協定で定めた時間外労働の上限時間を遵守し、労働時間を適切に管理する義務があります。特別条項を設けて一時的に上限を超えて労働させる場合でも、その適用要件や手続きは厳格に定められており、違反すれば罰則の対象となります。
7-3. 残業代・割増賃金の未払いがあった場合
残業代や割増賃金が未払いとなっている場合、労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)に違反します。これに対する罰則は、労働基準法第114条により、未払いの賃金に加え、労働者の請求により同一額の賦課金を命じられることがあります。さらに、労働基準法第119条により「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が科される場合もあります。
残業代や割増賃金の未払いは、単なる計算ミスとして済まされず、企業の法令遵守意識が問われる重大な問題です。したがって、企業は労働時間の正確な把握と、適切な割増賃金の計算・支払いを徹底することが不可欠です。
8. 時間外労働は労働基準法を遵守して適切に運用しよう


時間外労働とは、法定労働時間である「1日8時間・週40時間」を超えて従業員に労働させることを指します。時間外労働にはさまざまなルールが定められており、36協定の締結や上限時間の遵守などの要件を満たしていない場合は、労働基準法違反となる可能性があるため注意が必要です。
また、時間外労働をおこなわせた場合には、法定の割増率に基づいた割増賃金を支払う義務があります。法定内残業と時間外労働を正しく区別し、適切に賃金計算をおこなうことも重要です。
企業には、労働時間を正確に把握し、時間外労働の上限管理や割増賃金の支払いを適切におこなうことが求められています。就業規則の整備や勤怠管理システムの活用を通じて、法令を遵守した労働時間管理体制を構築していきましょう。



残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。
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