労働保険の加入手続き方法と加入条件を確認!必要書類や期限、注意点を解説
更新日: 2026.5.29 公開日: 2021.10.22 jinjer Blog 編集部

労働保険とは、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険を総称した制度です。労働者を1人でも雇用した際には、事業主には、法律によって労働保険への加入が義務付けられています。
労働保険における「労働者」の定義を正しく理解していないと、労働保険の加入手続きを誤るおそれがあります。また、労働保険の対象は、職種や雇用形態を問わず原則として全従業員に及びますが、法人の役員や一部の同居家族従業員など、適用除外とされる場合もおさえるのが大切です。
この記事では、労働保険の基本的な仕組みを解説したうえで、企業に課される労働保険の加入義務や具体的手続きなどについて紹介します。
目次
従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
「これで合っているだろうか?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。
とくに、加入条件の適用拡大は2027年以降も段階的に実施されます。
◆この資料でわかること
- 最新の法改正に対応した、社会保険手続きのポイント
- 従業員の入退社時に必要な手続きと書類の一覧
- 複雑な加入条件をわかりやすく整理した解説
- 年金制度改正法成立によって、社会保険の適用条件はどう変わる?
この一冊で、担当者が押さえておくべき最新情報を網羅的に確認できます。煩雑な業務の効率化にぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 【企業】労働保険の加入手続き


正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態に関わらず、原則1人でも労働者を雇用している事業所は、労働保険の適用事業所となります。
その場合、事業主が成立手続きをおこない、労働保険料を納付しなければなりません。
ただし、暫定任意適用事業(農林水産業のうち一定の要件を満たす事業)に該当する場合、労働保険への加入の有無は、事業主と雇用されている労働者の意思に委ねられるため、あらかじめ留意しておきましょう。
労働保険は、労災保険と雇用保険から構成されますが、この2つは異なる制度です。それぞれ次のような目的・役割・手続き上の違いがあります。
労災保険と雇用保険の比較
|
保険の種類 |
目的・役割 |
手続き上の違い(届出先・主な書類) |
|
労災保険 |
労働者の業務中・通勤中における負傷、病気、障害、死亡などの災害に対して、労働者やその遺族を保護するために保険給付をおこなう。 |
・届出先:労働基準監督署 ・書類:保険関係成立届など |
|
雇用保険 |
労働者の失業、育児・介護などで雇用継続が困難な場合に、生活・雇用の安定や就職促進のため、被保険者に保険給付をおこなう。 |
・届出先:公共職業安定所(ハローワーク) ・書類:雇用保険適用事業所設置届など |
なお、労働保険(労災保険・雇用保険)は、健康保険・介護保険・厚生年金保険とあわせて、「広義の社会保険」とよばれる場面もあります。
2. 労働保険の加入手続き


労働保険の手続きは、事業の内容によって「一元適用事業」と「二元適用事業」の2つのパターンに分かれます。
- 一元適用事業:労災保険と雇用保険を同一に扱う事業で、一般的な企業など、多くの事業が該当します。
- 二元適用事業:事業の性質上、労災保険と雇用保険を別々に扱うもので、建設業や農林水産業などが該当します。
これらのうち、どちらに該当するかによって、「どこに」「いつまでに」「何の書類を」出すのかが変わります。ここでは、それぞれのケースで必要になる情報を整理して紹介します。
2-1. 一元適用事業の加入手続き
多くの企業が該当する「一元適用事業」では、労災保険と雇用保険の手続きを一元的におこなうのが特徴です。
具体的な手続きの全体像や必要な書類の構成を表にまとめました。実務の流れをイメージしてみましょう。
|
必要書類 |
提出先 |
提出期限 |
書き方・記入例 |
|
保険関係成立届 |
労働基準監督署 |
保険関係が成立した日の翌日から10日以内 |
|
|
概算保険料申告書 |
労働基準監督署・都道府県労働局・日本銀行(代理店も可能)のいずれか |
保険関係が成立した日の翌日から50日以内 |
|
|
雇用保険適用事業所設置届 |
公共職業安定所(ハローワーク) |
設置日の翌日から10日以内 |
|
|
雇用保険被保険者資格取得届 |
公共職業安定所(ハローワーク) |
資格取得の事実があった日の翌月10日まで |
一元適用事業所が労働保険に新規で加入する際は、まず労働基準監督署、次にハローワークという順序で手続きをするのが一般的です。
事業所の所在地を管轄する労働基準監督署へ、成立した日の翌日から10日以内に「労働保険の保険関係成立届」を提出することで、労災と雇用保険に共通の「労働保険番号」の交付を受けられます。
あわせて提出する「概算保険料申告書」は、労災分と雇用保険分を合算して申告します。成立日の翌日から50日以内が申告・納付期限です。
実務においては、書類不備による納付遅延などのトラブルを未然に防ぐため、この成立届と同時に一括で提出を済ませることが一般的です。
添付書類は次のとおりです。
- 履歴事項全部証明書(法人の場合)
- 貸借契約書(謄本の住所と実際の勤務地が異なる場合)
- 事業許可証、開業届、不動産契約書、工事契約書、公共料金の領収書などの事業場の事業実態を確認できる書類
労働保険番号の交付を受けたら、事業所の所在地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に、雇用保険適用事業所設置届と加入する従業員の雇用保険被保険者資格取得届を提出します。
雇用保険適用事業所設置届の提出期限は事業所を設置した日の翌日から10日以内、雇用保険被保険者資格取得届の提出期限は、資格取得の事実があった日の翌月10日です。
添付書類は次のとおりです。
- 履歴事項全部証明書(法人の場合)
- 貸借契約書(謄本の住所と実際の勤務地が異なる場合)
- 事業許可証、開業届、不動産契約書、工事契約書、公共料金の領収書などの事業場の事業実態を確認できる書類
- 労働保険関係成立届・労働保険概算保険料申告書の事業主控え
- 労働者名簿、出勤簿、賃金台帳などの労働者の雇用実態が確認できる書類
- 事業所の所在地がわかる地図
添付が省略できる場合もあるので、必要に応じて労働基準監督署・公共職業安定所に確認しましょう。
その後、雇用保険の加入条件を満たす労働者が生じたら、雇用保険被保険者資格取得届を用いてその都度手続きをおこなう必要があります。
2-2. 二元適用事業の加入手続き
建設業や農林水産業などが該当する「二元適用事業」では、業務の特性上、労災保険と雇用保険の手続きを別々に進めます。
それぞれの保険で提出先や期限が異なるため、具体的な申請の手順や窓口、必要書類の全体像ついて、まずはこちらの表で実務の流れを確認しましょう。
- 労災保険に関する手続き
|
必要書類 |
提出先 |
提出期限 |
書き方・記入例 |
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保険関係成立届 |
労働基準監督署 |
保険関係が成立した日の翌日から10日以内 |
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|
概算保険料申告書 |
労働基準監督署・都道府県労働局・日本銀行(代理店も可能)のいずれか |
|
建設・林業の場合は、単独有期事業または一括有期事業かで、労災の成立単位・取扱いが変わります。
- 雇用保険に関する手続き
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必要書類 |
提出先 |
提出期限 |
書き方・記入例 |
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保険関係成立届 |
公共職業安定所(ハローワーク) |
保険関係が成立した日の翌日から10日以内 |
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概算保険料申告書 |
都道府県労働局・日本銀行(代理店も可能)のいずれか |
保険関係が成立した日の翌日から50日以内 |
|
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雇用保険適用事業所設置届 |
公共職業安定所(ハローワーク) |
設置日の翌日から10日以内 |
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雇用保険被保険者資格取得届 |
公共職業安定所(ハローワーク) |
資格取得の事実があった日の翌月10日まで |
二元適用事業所の労働保険の新規加入手続きは、「労災保険」と「雇用保険」を別個の保険関係として扱い、それぞれに対して独立した手続きをおこなうのが特徴です。
まず、労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークへ、それぞれ成立した日の翌日から10日以内に「保険関係成立届」を提出し、個別の労働保険番号の交付を受けます。
あわせて提出する「概算保険料申告書」も、労災保険分は労働基準監督署に、雇用保険分はハローワークにとそれぞれ別々に申告する点が、一元適用事業所との大きな違いです。
申告・納付期限は、原則として保険関係が成立した日の翌日から50日以内(単独有期事業の労災分は20日以内)に、それぞれの保険料を個別に納付します。
さらに雇用保険に関しては、成立届に加えて「適用事業所設置届」と対象従業員の「被保険者資格取得届」も管轄のハローワークへ提出が必要です。
実務においては、労災と雇用で異なる番号を別々に管理し、毎年の年度更新もそれぞれ別の書類でおこなう必要があります。
3. 【従業員】労働保険の加入手続き


企業として加入義務のある労働保険ですが、労災保険・雇用保険でそれぞれ従業員の加入条件が異なります。
ここでは、実務で迷いやすい従業員の労働保険加入条件について、詳しく解説します。
参考:労働保険の適用単位と対象となる労働者の範囲|厚生労働省
3-1. 労災保険の加入手続きは不要
労災保険は、事業主が労働保険関係成立届を提出することで、事業所単位で適用されます。一度この手続きをおこなえば、従業員を雇い入れるたびに個別の加入の届出をおこなう必要はありません。
労災保険の対象となるのは、正社員やパート・アルバイトといった雇用形態を問わず、賃金を受けるすべての労働者です。ただし、独自の補償制度がある船員保険の被保険者は、労災保険の適用対象外です。
なお、法人の役員や事業主と同居する親族も原則として対象外ですが、実態として指揮監督を受けて労働に従事し、一般労働者と同様の賃金を得ている場合は、例外的に加入が必要となるケースもあるため注意が必要です。
3-2. 労災保険の特別加入の手続き
中小事業主や一人親方が利用できる特別加入制度は、自身の業務中の怪我や病気に対して補償を受けるための制度です。
本来、労災保険は指揮命令を受けて働く労働者を対象としていますが、中小事業主はこの特別加入制度を利用することで労災保険に加入可能です。
労災保険でいう中小事業主は、労働者数が50人以下の金融業、保険業、不動産業、小売業を指します。さらに、卸売業やサービス業であれば100人以下、それ以外の業種では300人以下であれば中小事業主として認められます。
特別加入の手続きをおこなうには、次の要件を満たす必要があります。
- 労働保険事務組合への委託:労働保険の事務処理を「労働保険事務組合」に委託していることが前提です。
- 包括加入:事業主本人だけでなく、家族従事者や役員など、労働者以外で業務に従事する人全員を包括して加入させる必要があります。
- 都道府県労働局長の承認:事務組合を経由して、所轄の都道府県労働局長の承認を受けることで、初めて効力が発生します。
このように労災保険の従業員の加入手続きは不要ですが、事業主などの特別加入は別途申請が必要です。
3-3. 雇用保険の加入手続き
雇用保険は、労災保険とは異なり、加入要件を満たす従業員ごとにハローワークへの届け出が必要です。
3-3-1. 対象者
雇用保険の従業員の原則的な加入条件は、次の通りです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上継続して雇用されることが見込まれる
いずれの要件を満たしている労働者は、基本的に雇用保険に加入させなければなりません。
65歳以上の労働者は「一般被保険者」ではなく、「高年齢被保険者」の扱いになるので注意しましょう。
なお、例外として、加入条件を満たしていても、昼間学生や国・地方公共団体の事業に雇用される者など、雇用保険法の適用除外に該当する労働者は、雇用保険の加入対象外です。
また、日雇い労働者や季節的に雇用される短期雇用者なども、雇用保険の適用除外の対象ですが、「日雇労働被保険者」や「短期雇用特例被保険者」として雇用保険の加入対象となるケースもあります。正しく加入条件を理解し加入漏れがないようにしましょう。
関連記事:雇用保険とは?パート・アルバイトの加入適用や給付内容についてわかりやすく解説
3-3-2. 必要書類と提出先・提出期限
雇用保険の加入手続きでは、事業所を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に、「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
添付書類は次のとおりです。
- 労働者名簿:採用日の確認のため
- 出勤簿:雇用の実態を確認するため
- 雇用契約書など:週の所定労働時間や雇用期間を確認するため
なお、期限までに提出する際は、添付書類を省略できることがあります。
提出期限は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までです。
3-3-3. 手続きの注意点
万が一加入漏れが発覚した場合、過去に遡って加入手続きをおこないます。
しかし、雇用保険料が給与から天引きされていた賃金台帳などの証明がない限り、原則として最大2年前までしか遡れません。
2年以上の期間、加入が漏れていた場合は、従業員の受給資格期間が不足するなどの重大なトラブルに発展するため、期限内の届出を徹底しましょう。
また、外国人労働者を雇用する際も、日本人と同様の加入条件です。ただし、加入手続きにあたっては、ハローワークに提出する資格取得届が「外国人雇用状況の届出」を兼ねるため、在留資格や在留期間、在留カード番号などを記載する必要があります。
在留資格の内容によっては加入対象外となるケースもあるため、個別に確認しましょう。
4. 労働保険の加入手続きを怠るリスク


労働保険の加入手続きを怠ると、企業にとって多方面でリスクを招く可能性があります。ここでは、加入手続きを怠った場合に生じる具体的なリスクについて解説します。
4-1. 行政指導や是正勧告の対象となる
従業員を雇用しているにもかかわらず労働保険に加入していない場合、企業は法的なリスクを負うことになります。具体的には、労働基準監督署や公共職業安定所(ハローワーク)から、労働保険未加入の是正を求める行政指導や是正勧告を受けることがあります。
労働保険徴収法第42条に基づく行政の指導に従わず、必要な報告をおこなわなかったり、意図的に虚偽の内容で報告したりした場合には、同法第46条に基づき、事業主に対して6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が課される可能性もあります。
参考:労働保険の保険料の徴収等に関する法律(労働保険徴収法)第42条、第46条|e-Gov法令検索
4-2. 過去に遡って保険料が徴収される
労働保険への加入手続きをおこなわない企業に対しては、政府が職権により手続きをし、労働保険料やその他必要な金額を認定し決定します。この場合、未加入だった過去の期間(最大2年間)に遡って保険料が徴収され、手続きを怠ったことに対する10%の追徴金もあわせて課されます。
その結果、経済的な負担が増大し、経営に影響を及ぼす可能性があるでしょう。さらに、労働保険料や追徴金が未納の場合には、国税徴収法の例により財産の差押えなど強制的な回収手段が取られるリスクもあります。
4-3. 労働災害が発生した場合に給付額を徴収される
事業主が故意または重大な過失により労災保険の手続きを怠っていた期間に起きた労働災害について、労働者に対する給付が必要となった場合、政府は労災保険の給付をおこないます。
この労災保険の給付にかかった費用の全額または一部については、労働基準法に基づく補償の範囲内で、企業に対して返済を求められることがあります。
具体的には、未加入の性質に応じて、次の金額を労働基準法の補償範囲内で企業が直接負担しなければなりません。
- 指導などを受けてもなお未加入であった「故意」の場合は給付額の100%
- 労災保険の適用事業所となったときから1年を経過してなお未手続きであった「重大な過失」の場合は給付額の40%
つまり、手続きを怠ったことにより生じた財政的な負担を、最終的に事業主が負う可能性があるということです。
関連記事:労働基準法に定められた災害補償が適用される労働災害と補償額
4-4. 事業主向けの助成金を受給できない
労働保険への加入手続きを怠ると、労働に関わる助成金を受け取れない可能性があります。例えば、雇用調整助成金やキャリアアップ助成金は「雇用保険の適用事業主であること」が受給条件のひとつです。
そのため、受給したい助成金があっても、労働保険の加入手続きをおこなっていなければ、制度上の受給資格を満たすことができません。
結果として、助成金を申請できず、不測の事態による従業員の雇用維持や企業の経営改善に活用できないおそれがあります。
4-5. 従業員トラブルにつながる
企業が労働保険に加入していない場合、従業員との信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があります。
法令を遵守していない企業と認識されることで、従業員の不信感が増し、仕事への意欲や企業への帰属意識が低下するおそれがあります。その結果、生産性の低下や離職率の上昇につながる可能性もあるでしょう。
さらに、労働保険の加入手続きをおこなっていない企業では、労災発生時の従業員への労災給付や、失業・育休時の雇用保険上の給付などが遅延する可能性があります。
このような状況は、従業員との間でトラブルや従業員や遺族からの損害賠償請求などの訴訟が発生する可能性を高める要因にもなり得ます。
労働保険は、雇用形態を問わず1人でも労働者を雇用した時点で加入義務が発生します。「試用期間中だから」「アルバイトだから不要」といった誤解が実務では非常に多く、加入漏れの原因になりがちです。
未加入が発覚した場合、最大2年分の保険料が遡って徴収されるうえ、10%の追徴金も課されます。さらに深刻なのは、未加入期間中に労災事故が起きた場合です。故意と判断されれば給付額の100%、重大な過失でも40%を事業主が直接負担しなければなりません。
手続き自体は、一元適用事業であれば労基署からハローワークの順で進める流れです。
提出期限(成立届は10日以内、概算保険料申告書は50日以内)を遵守するため、労働者の採用が決まった段階で労働保険の手続きの準備をすることが重要です。
5. 労働保険の加入手続きで押さえたいポイント


働き方の多様化の影響などによる法改正によって、労働保険の適用範囲が拡大しています。
労災保険の特別加入の適用範囲の拡大や、雇用保険の適用要件引き下げに向けた動きなど、従来の基準では対応できないケースの増加が見込まれます。
労働保険の加入漏れは重大な法的リスクや労使トラブルに直結します。企業の法的リスクを回避し、業務効率化に重要な電子申請の活用を含め、実務を円滑に進める方法を解説します。
5-1. 労災保険の加入対象が拡大傾向
近年、働き方の多様化に伴う2024年11月の法改正により、企業等から業務委託を受けているフリーランス(特定フリーランス事業)について、業種・職種を問わず労災保険の特別加入制度を利用できるようになりました。
労災保険は本来、雇用契約を結ぶ労働者が対象です。しかし、実態が労働者に近い層を保護するため、ITエンジニアなどの特定職種に限られていた枠組みが大幅に緩和されています。
フリーランス保護新法の施行に合わせた今回の改正により、以前は対象外だったライターやデザイナーなどの幅広い職種でも、業務中の事故や傷病に対する補償を受けられます。
これまでは特定の職種ごとに加入を認める形式でしたが、現在は特定受託事業者であれば、業種を問わず加入することが可能です。
なお、実際の加入手続きについては、個人が直接労働局へ申し込むのではなく、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じておこなう仕組みとなっています。
参考:令和6年11月1日から「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました|厚生労働省
5-2. 雇用保険の加入条件も拡大へ
2024年の雇用保険法改正により、被保険者の要件である週の所定労働時間が現在の「20時間以上」から「10時間以上」へと2028年10月に引き下げられることが決定しました。
働き方の多様化で週20時間未満の労働者が増加する中、短時間労働者にも失業時の生活保障や教育訓練給付、育児や介護との両立支援を等しく提供することが本改正の目的です。
労働者の自立と雇用の安定を広く支える一方で、企業側には適用拡大に伴う保険料負担の増額や従業員への事前周知といった負担増が生じるため、早めの対策が必要です。
参考:令和6年雇用保険制度改正(令和10年10月1日施行分)について|厚生労働省
5-3. 電子申請(e-Gov)の活用で業務効率化
労働保険の加入手続きは、従来の書面提出だけでなく、電子申請でもおこなうことが可能です。
電子申請を活用すれば、書類の提出に伴う手間や郵送コストを削減できるだけでなく、画面上の入力チェック機能などにより、記載漏れや単純な入力誤りの発生リスクを減らせます。
また、申請履歴を確認できることや、自動計算機能を利用できることから、手続きの正確性を高めながら業務の効率化も図れるでしょう。
近年はe-Govと連携する便利な人事労務システムも多いため自社に最適なものを選び、事前の利用者登録を早めに済ませることでスムーズに手続きを進められます。
参考:労働保険 保険関係成立(継続)届 電子申請操作マニュアル|厚生労働省
6. あわせて知りたい|労働保険の基礎知識


最後に、労働保険の特別加入制度や労働保険料の年度更新など、労働保険の加入手続きとあわせて押さえておきたい基礎知識を解説します。
6-1. 中小事業主が利用できる特別加入制度とは?
労災保険は本来労働者を保護する制度で事業主や役員は対象外ですが、中小規模の事業では現場で労働者と同様の業務に従事することも多いため、任意加入として「特別加入制度」が認められています。
このうち、中小事業主などが利用できるのが「第1種特別加入制度」です。特別加入が承認されると、あらかじめ申請した所定労働時間内に、労働者と同様の業務をおこなっている間に発生した業務災害・通勤災害について、原則として労災保険から給付を受けることができます。
労災保険における「中小事業主等」とは、次の要件を満たす中小規模の事業主本人およびその事業に従事する家族従事者・役員などです。
常時使用する労働者数が、事業ごとに次の基準以内であることが要件です。
- 金融業・保険業・不動産業・小売業:常時50人以下
- 卸売業・サービス業:常時100人以下
- 上記以外の業種:常時300人以下
これらの規模要件を満たす事業の事業主と、当該事業に従事する家族従事者やほかの役員などで、労働者以外の方が「中小事業主等」として第1種特別加入の対象です。
事業主がこの特別加入制度の利用を希望する場合は、あらかじめ労働保険事務組合に事務手続きを委託するなどの所定の要件を満たしたうえで申請手続きが必要です。
6-2. 労働保険料の計算方法と年度更新
労働保険料の精算と申告を年に一度おこなう重要な手続きを「年度更新」とよびます。労働保険料は、労災保険料と雇用保険料をあわせた保険料です。具体的には、「その年度(4月1日〜翌年3月31日)に従業員へ支払った賃金総額」に、業種ごとに定められた「保険料率」を乗じて計算します。
計算式と計算例は次のとおりです。
労災保険料=労災保険の算定基礎賃金総額×労災保険料率
雇用保険料=雇用保険の算定基礎賃金総額×雇用保険料率
労働保険料合計=労災保険料+雇用保険料
賃金総額には、基本給・各種手当・賞与・残業代などを含め、結婚祝金や見舞金、出張旅費など実費弁償的なものは含めません。労災保険分は事業主が全額負担し、雇用保険分は事業主と労働者が各率に応じて負担します。
年度更新では、この賃金実績に基づき前年度分の確定保険料を精算するとともに、当年度に見込まれる賃金額を基礎として概算保険料を申告・納付します。
年度更新は、労働保険に加入する全ての事業が対象で、毎年6月1日から7月10日までの間に、労働保険料の申告をします。
なお、年度途中で初めて雇用した場合や、従業員が退職して1人も従業員がいなくなった場合、保険関係の成立もしくは消滅から50日以内に申告をおこなう義務があります。
6-3. 労災保険料の計算方法
労災保険の計算式は次のとおりです。
労災保険料=労災保険の対象となる賃金総額×労災保険率
労災保険率とは、労災保険料を計算するための割合です。業務中の災害リスクに応じて事業の種類ごとに定められています。
令和8年度の労災保険率は、次の表のとおりで、令和6年度より変動ありません。
労災保険料は、全額事業主が負担します。例えば、従業員の賃金総額が5,000万円で、食料品製造業(労災保険率:5.5/1,000)に分類される場合、事業主が負担すべき労災保険料の計算式は次の通りです。
事業主が負担すべき労災保険料:5,000万円 × 0.55% = 27万5,000円
労災保険率は、労災リスクに応じて業種ごとに大きく異なるので、正しい保険率を適用し、労災保険料を計算することが大切です。
5-4. 雇用保険料の計算方法
雇用保険料の計算式は次の通りです。
雇用保険料 = 雇用保険の対象となる賃金総額 × 雇用保険料率
なお、賃金総額の定義は、労災保険料の計算のときと同様です。しかし、計算に使用する保険料率は異なります。
令和8年度の雇用保険料率は、次の表の通りで、令和7年度から引き下げられています。
雇用保険料は、事業主と従業員で按分して納める必要があります。例えば、従業員の賃金総額が3,000万円で、一般事業に該当する場合、事業主と従業員それぞれが負担すべき雇用保険料の計算式は次のとおりです。
事業主が負担すべき雇用保険料:3,000万円 × 0.85% = 25万5,000円
従業員が負担すべき雇用保険料:3,000万円 × 0.5% = 15万円
このように、労災保険料と雇用保険料の計算方法には違いがあります。
雇用保険料は事業主だけでなく、従業員も負担しなければならないため、従業員に支払う給与・賞与などから天引きして納める必要があります。
関連記事:雇用保険料の計算方法は?保険加入後の計算時期や計算するときの注意点
7. 労災・雇用保険それぞれの手続きを正しく理解して労働保険へ加入しよう


労働保険は、労働者の雇用や生活を守るために、国が定めた制度です。労災保険は業務上の病気やケガによって働けなくなってしまった労働者やその家族や遺族の生活を守るための保険制度です。
一方、雇用保険は失業や育児・介護で休業した場合に、再就職支援や雇用継続のため収入の減少に対する支援をおこなうことが目的です。
適切な対応や日々の確実な手続きは、従業員の安心感につながるだけでなく、法令順守を重んじる姿勢として企業の信頼感を大きく向上させます。
パートやアルバイト、派遣労働者などを新たに雇い入れた際、その労働者が雇用保険加入の条件を満たす場合は、手続きを忘れずにおこないましょう。



従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
「これで合っているだろうか?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。
とくに、加入条件の適用拡大は2027年以降も段階的に実施されます。
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育休中に給料や手当はもらえる?育児休業給付金や育児休暇の制度設計を解説
人事・労務管理公開日:2025.12.26更新日:2026.04.27

















