法定四帳簿とは?電子化の可否・保存期間・規則を破った場合の罰則を解説
更新日: 2025.3.9
公開日: 2025.3.9
OHSUGI
「法定四帳簿とはなに?」
「法定四帳簿に関するルールが知りたい」
「法定四帳簿の規則を破るとどうなる?」
法定四帳簿について、上記の疑問をもつ人事労務の担当者もいるのではないでしょうか。
法定四帳簿は、労働基準法規定で定められた4つの帳簿です。労務管理の基本となる帳簿のため、制度を正しく把握し適切に対応しなければなりません。
本記事では、法定四帳簿の概要を解説します。保存のルールや違反した場合のペナルティについてもあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。
タイムカードや出勤簿などで勤怠管理をしてる場合、以下のような課題はないでしょうか。
- 打刻漏れの確認や労働時間の集計だけで数日かかってしまう
- 有給休暇の残日数確認の問い合わせ対応が業務を圧迫している
- シフトの収集や作成に時間がかかって他の業務ができない
そのようなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、勤怠管理システムの導入です。システムであれば打刻漏れを減らせるほか、労働時間は自動集計されるため、ミスと工数を減らすことが可能です。 このほかにも便利な機能で勤怠管理の工数削減ができるため、勤怠管理システムで何ができるか気になる方は、こちらからクラウド型勤怠管理システム「ジンジャー勤怠」の紹介資料をご覧ください。

1. 労働基準法規定の法定四帳簿とは
労働基準法規定で定められた法定四帳簿は、以下の4つです。
- 【労働者名簿】従業員の基本的な個人情報をまとめた帳簿
- 【賃金台帳】従業員の賃金計算のもととなる帳簿
- 【出勤簿】従業員の勤務状況を客観的に記録した帳簿
- 【年次有給休暇管理簿】従業員の年次有給休暇の付与・取得状況を管理する帳簿
いずれの帳票も、必須項目を設けていればフォーマットは自由です。
各帳簿の内容について詳しく解説していきます。
1-1. 【労働者名簿】従業員の基本的な個人情報をまとめた帳簿
労働者名簿とは、従業員の基本的な個人情報をまとめた帳簿を指します。労働基準法第107条により、従業員が入社した際に一人ひとり個別で作成し、情報に変更があれば都度改定する決まりです。
労働者名簿は、事業場単位で作成し、雇用形態にかかわらず原則としてすべての従業員に作成しなければなりません。
ただし、継続的に雇用しない日雇い労働者や、労働基準法上は労働者に該当しない会社役員・代表者については、労働者名簿の作成義務はありません。派遣労働者は、派遣元の企業側で名簿を作成します。
労働者名簿に記載が必要な項目は以下のとおりです。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 住所
- 従事する業務の種類
- 雇入年月日
- 退職(死亡)年月日
- 退職理由(死亡原因)
- 履歴
履歴には異動や昇進の情報を記載しますが、法令上は明確な記載範囲が定められていません。社内での異動状況を記載するとともに、必要に応じて社外の履歴や学歴情報などを記載しても問題無いとされます。
1-2. 【賃金台帳】従業員の賃金計算のもととなる帳簿
賃金台帳とは、従業員の給与状況をまとめた、賃金計算のもととなる帳簿です。雇用形態にかかわらず、事業場単位ですべての従業員の情報を作成するよう、労働基準法第108条により義務付けられています。
日雇い労働者や、役員報酬を受け取っている会社役員についても賃金台帳を用意しなければなりません。
賃金台帳に記載が必要な項目は以下のとおりです。
- 氏名
- 性別
- 賃金の計算対象期間(日雇い労働者は記載不要)
- 労働日数(勤務日数)
- 労働時間数(勤務時間数)
- 時間外・深夜・休日労働時間数
- 基本給
- 手当の種類・金額
- 税金や社会保険・企業年金・欠勤による減額などの控除項目・金額
賃金台帳は給与明細とは異なります。
給与明細は、従業員に対して給与額や内訳を通知するもので、所得税法に基づく書類です。保存の義務はありません。
一方の賃金台帳は、従業員への給与の支払い状況を記録し、従業員の権利や条件を保護するものです。労働基準法に基づき保存の義務があるので、適切に管理する必要があります。
1-3. 【出勤簿】従業員の勤務状況を客観的に記録した帳簿
出勤簿とは、従業員の勤務状況を客観的に記録した帳簿です。労働基準法上には明記されていませんが、労働基準法施行規則第54条の内容や、厚生労働省のガイドラインを根拠に作成が求められます。
出勤簿は、正確な給与計算がおこなえるだけの項目を設け、客観的に記録できるようにしておかなければなりません。
出勤簿の一般的な記載項目は以下のとおりです。
- 氏名
- 出勤日
- 労働日数
- 各出勤日の始業時刻・終業時刻・休憩時間
- 残業のあった日付と時刻・時間数
- 休日出勤のあった日付と時刻・時間数
- 深夜労働(22時から翌日5時)のあった日付と時刻・時間数
なお、出勤簿と似たものにタイムカードがあります。タイムカードは必ずしも正確な勤務時間であるとは限らないため、出勤簿の代わりにはできません。
1-4. 【年次有給休暇管理簿】従業員の年次有給休暇の付与・取得状況を管理する帳簿
年次有給休暇管理簿とは、各従業員の年次有給休暇の付与状況と取得状況を管理する帳簿です。2019年4月から義務化された新たな帳簿で、従業員ごとに個別で作成する必要があります。
作成が必要なのは、10日以上の年次有給休暇が付与される従業員です。該当社員は、年5日の有給休暇の取得が必須のため、有給休暇の消化状況を管理する目的で使用されます。
年次有給休暇管理簿上、以下の項目は必ず設定しなければなりません。
- 年次有給休暇の付与日(基準日)
- 年次有給休暇の取得日
- 取得した年次有給休暇の日数(基準日より1年間)
年次有給休暇管理簿は、有休管理簿や年休管理簿と略されることもあります。比較的歴史の浅い帳簿ですが、見落としのないよう適切に管理しましょう。
2. 法定四帳簿の保存に関するルール
法定四帳簿には、適切に保存する義務があります。
各帳簿は2020年4月より、改正労働基準法第109条によって5年間の保存が義務化されました。現在は経過措置として3年間の保存でも構いませんが、将来を見据えた対応が必要です。
退職金の請求に関する時効が5年間(労働基準法第115条)であることからも、本来は5年間の保存が望ましいとされます。賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合には、該当帳簿については現時点でも7年間の保存が必要です。
帳簿ごとに、以下の起算日が設定されています。
帳簿 | 保存期間の起算日 |
労働者名簿 | 従業員の退職・解雇・死亡日 |
賃金台帳 | 従業員の最後の賃金を記入した日 |
出勤簿 | 従業員の最後の出勤日 |
年次有給休暇管理簿 | 年次有給休暇を付与した期間が満了した後の日 |
法定四帳簿は、紙面・電子データいずれの媒体でも保存可能です。フォーマットは、Microsoft ExcelやGoogle スプレッドシートなどを利用して自作しても、市販の勤怠管理システムを利用しても問題ありません。
ただし、提出が必要になった際にすぐに対応できる保存方法と管理体制が必須です。
3. 法定四帳簿の不備が指摘されやすい内容
法定四帳簿の不備が指摘されやすい内容については、以下のとおりです。
- 帳簿を作成していない(年次有給休暇管理簿の義務化を知らない場合など)
- 帳簿に記載漏れがある(賃金台帳の残業時間や出勤簿の始業・終業時刻など)
- 保存期限前に破棄する(従業員の退職時に労働者名簿を破棄するなど)
- 事務委託した会社に賃金台帳を預けたままで自社ですぐに確認できない
不備が指摘されやすい事例については、厚生労働省が公開している以下の資料にも記載されています。適切に管理できるよう徹底しましょう。
4. 法定四帳簿の提出が求められるケース
法定四帳簿の提出が求められるのは、以下のようなケースです。
- 従業員を雇用する際の雇用保険の手続き時
- 従業員が離職する際の失業保険の手続き時
- 助成金(キャリアアップ助成金や雇用調整助成金など)の申請時
- 健康保険・厚生年金保険の被保険者報酬月額変更届の手続き時
- 労働基準監督署による監査時
法定四帳簿が求められる可能性が高いのは、企業側が従業員や雇用に関してなんらかの手続きをおこなう際です。また、労基の監査対象になった際にも提出を求められることがあります。
違反すれば、次項に説明するようなペナルティの対象となるため注意が必要です。
5. 法定四帳簿の規則を破った場合の罰則
法定四帳簿の規則を破った場合、年次有給休暇管理簿を除き、労働基準法第120条に基づいて30万円以下の罰金刑になることがあります。
帳簿の未保管や記載漏れのほか、労働基準監督署の監査時に帳簿の提出を拒否した場合や、虚偽の記載をした帳簿の提出時にも処罰の対象です。ルールを押さえ、適切に法定四帳簿を管理しましょう。
6. 法定四帳簿のルールを守って企業運営の健全化に役立てよう
法定四帳簿は、従業員の労務管理をおこなう際に基本となる4帳簿です。規定のフォーマットはありませんが、各帳簿に記載すべき項目や保存期間が定められています。
法定四帳簿に不備がある場合には、罰則の対象となるため注意が必要です。ルールを把握し、企業運営の健全化に役立てましょう。
タイムカードや出勤簿などで勤怠管理をしてる場合、以下のような課題はないでしょうか。
- 打刻漏れの確認や労働時間の集計だけで数日かかってしまう
- 有給休暇の残日数確認の問い合わせ対応が業務を圧迫している
- シフトの収集や作成に時間がかかって他の業務ができない
そのようなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、勤怠管理システムの導入です。システムであれば打刻漏れを減らせるほか、労働時間は自動集計されるため、ミスと工数を減らすことが可能です。 このほかにも便利な機能で勤怠管理の工数削減ができるため、勤怠管理システムで何ができるか気になる方は、こちらからクラウド型勤怠管理システム「ジンジャー勤怠」の紹介資料をご覧ください。



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