差引支給額とは?計算方法や注意点、年収の壁への対応を解説
更新日: 2026.6.2 公開日: 2024.1.12 jinjer Blog 編集部

差引支給額とは、従業員の給与から税金や各種保険料などを差し引いたものです。給与計算をおこなう際に必ず求める必要があるため、労務・会計を担当する方は意味や計算方法を把握しておきましょう。
差引支給額の計算には、税金の計算や控除額の算出、割増賃金などが複雑に絡み合っています。「どのように計算すればよいかわからない」と悩む方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、差引支給額の概要や計算方法を説明します。差引支給額を効率良く計算する方法も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな担当者の方には、人事労務から勤怠管理までが一つになったシステムの導入がおすすめです。
◆解決できること
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昇格や異動に伴う給与体系の変更も、人事情報と連携しているため設定漏れを防ぐことができる
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1. 差引支給額とは


差引支給額とは、従業員の給与から税金や各種保険料などを差し引いたもので、従業員が実際に手にする金額のことです。
世間一般でいわれている「年収」とは異なるため、意味を間違えないよう注意しましょう。
差引支給額は給与支給明細に掲載する必要があります。給与計算業務をおこなうなら、差引支給額の扱いや計算方法を正しく理解していなければなりません。
1-1. 「差引支給額」と「手取り」「総支給額」との違い
差引支給額と似たような言葉に、「手取り」や「総支給額」があります。
手取りとは、差引支給額の俗称のことです。差引支給額と同じく、従業員が実際に受け取る給与額を指します。
一方で、総支給額とは、企業が従業員に対して支払う賃金の総額のことで、諸手当やボーナス、給与などが全て含まれている状態です。税金や各種控除額が差し引かれていないという大きな違いがあります。
関連記事:給与所得とは?給与収入・手取りとの違いと計算方法をわかりやすく解説
1-2. 差引支給額の計算方法
差引支給額は、総支給額から所得税・住民税・保険料などの控除額を差し引くことによって求められます。計算式は以下のとおりです。
総支給額 – 控除額=差引支給額
雇用条件や地域によって若干の差異があるものの、総支給額の約8割が差引支給額になることが一般的です。
ただ、初任給の場合は住民税や社会保険料がまだ控除されないため、新しく雇用した従業員の支給額を計算する際は注意しましょう。
2. 差引支給額の計算に必要な控除額の内訳・計算方法


差引支給額の計算に必要な控除額の内訳は以下の4つです。
- 所得税
- 住民税
- 雇用保険料
- 社会保険料
以下でそれぞれについて解説し、詳しい計算方法を紹介します。
2-1. 所得税
所得税とは、1年間で得た所得に対して課せられる国税のことで、従業員の給与から控除されることが法律で義務付けられています。
所得税を求める際は、支給される給与の全額ではなく「課税所得額」にのみ課税される点に注意が必要です。課税所得額は、以下の計算式で求めます。
総支給額 – 必要経費 – 各種所得控除額 = 課税所得額
「各種所得控除額」とは、基礎控除や配偶者控除、扶養控除などのことです。
課税所得額を導き出せたら、課税所得額に所得税の税率をかけて所得税額を計算します。
課税所得 × 所得税の税率 = 所得税額
なお、平成27年分以後の「所得税の税率」は以下の通りです。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
2-2. 住民税
住民税とは、従業員が住む地域の都道府県・市町村に納める国税のことで、前年度の所得額をもとに計算されます。なお、住民税には、所得に応じて変動する「所得割」と、所得に関わらず一定額を徴収する「均等割」があります。住民税の計算式は、以下の通りです。
所得割額 + 均等割額(原則4,000円) + 森林環境税(1,000円) = 住民税
「所得割額」は、事前に計算する必要があります。計算式は、以下の通りです。
課税所得金額 × 税率(10%) – 税額控除額 = 所得税額
所得税のときと同様に、まずは課税所得額を計算します。その後、所得割の税率である10%をかけ、ふるさと納税やローンなどの税額控除額を引いて求めましょう。
均等割に関しては、 東日本大震災を踏まえて各自治体が実施する防災費用を確保するために、平成26年から令和5年までの10年間、1,000円引き上げられて5,000円(内訳は、市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)となっていました。
令和5年でこの措置は終了していますが、令和6年からは新たに森林環境税(1人年額1,000円)が発生しています。個人住民税の均等割に上乗せして課税されるため、これまでと同様の処理で問題ありません。
なお、森林環境税は温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止を目的としており、税収は全額が森林環境譲与税として都道府県及び市区町村へ譲与されます。
参考:個人住民税|総務省
2-3. 雇用保険料
雇用保険料とは、失業や何らかの理由で雇用の継続が難しくなった際に、安定した生活の確保を支援する保険料のことをいいます。雇用保険料の計算方法は、以下の通りです。
総支給額 × 雇用保険料率 = 雇用保険料
雇用保険料率は、毎年厚生労働省によって発表されます。なお、令和8年度の雇用保険料率は前年度より下がっています。事業によって雇用保険料率は異なるため、計算の際は厚生労働省の発表内容をご確認ください。
2-4. 社会保険料
社会保険は、健康保険・厚生年金保険・介護保険などのことです。怪我・疾病・出産・失業・障害・老齢・死亡など、さまざまなリスクに対して支払われます。
社会保険料の計算方法は、以下の通りです。
標準報酬月額 × 各種保険料率 ÷ 2 = 社会保険料
標準報酬月額とは、原則4〜6月の3ヵ月間の給与をもとに給料の月平均額を求めたもののことです。
社会保険料は企業と従業員が50%ずつ支払います。従業員が支払う分を求めるために、被保険者分(半額)を控除するようにしましょう。
なお、標準報酬月額と各種保険料は、全国健康保険協会の公式ホームページから確認可能です。
3. 扶養の年収制限は差引支給額と総支給額どちらが基準?


パートやアルバイトで働く人の中には、社会保険の加入義務を回避することや、扶養内で働くことを目的として年収制限をする人がいます。
いわゆる106万円の壁、130万円の壁と呼ばれるものが原因で、このラインを超えてしまうと社会保険料が発生し、手取りが減ってしまうため年収制限をします。
なお、所得税が発生する103万円の壁は、2025年に実質的160万円の壁に緩和されており、106万円の壁も2026年10月、または2026年中に撤廃されることが見込まれています。また、130万円の壁についても、2026年4月に厚生労働省からの通達により実質的な緩和(労働契約で年収130万円未満と決められていれば、扶養内にとどまれるようになる)がされています。
このように年収の壁は撤廃や緩和が進んでいますが、従業員から年収制限の相談がある可能性は残っています。その場合は、必ず「総支給額」で計算し、従業員への説明やシフト調整をおこなうようにしましょう。
差引支給額(手取り)で計算してしまうと、年収制限を超えてしまい、社会保険料が発生することになります。
参考:労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて|厚生労働省
4. 差引支給額の計算をする際の4つの注意点


差引支給額の計算をする際は、以下の4点に注意する必要があります。
- 計算ミスに細心の注意を払う
- 時間外手当などの割増率に注意する
- 個人情報が漏洩しないよう厳重に管理する
- マイナス控除の際は適切に対応する
ここからは、それぞれ具体的に解説します。
4-1. 計算ミスに細心の注意を払う
差引支給額を計算する際は、計算ミスに注意しましょう。
差引支給額の計算は従業員の賃金や税金に関わる極めて重要な業務です。計算ミスが発生すると、従業員に誤った金額を支給し、トラブルや信頼の喪失を引き起こす可能性があります。
とくに、税額に誤りがあると確定申告や追徴課税が発生するおそれがあるため、細心の注意を払うことが必要です。企業の社会的信用を失いかねません。
複数人でチェックをおこなったり、何度も繰り返しチェックをおこなったりと、ミスが発生しない体制を整えることが重要です。
4-2. 時間外手当などの割増率に注意する
差引支給額の計算の際、時間外手当などの割増率に注意しましょう。
時間外労働や休日労働、深夜労働などに対する割増賃金の計算が必要な場合、以下のように条件ごとに割増率が変動するためです。
| 条件 | 割増率 |
| 1日8時間または週40時間を超えて労働 | 25% |
| 1ヵ月の労働時間が60時間を超えて労働 | 50% |
| 22時から翌5時までの労働 | 25% |
| 法定休日の労働 | 35% |
従業員が働いた日や時間により、上記の割増率が複雑に絡み合い、計算がより一層複雑になります。計算ミスを避けるために、注意深く各条件を確認することが重要です。
4-3. 個人情報が漏洩しないよう厳重に管理する
差引支給額を計算する際、社員の情報が個人情報保護の対象になるため、慎重に管理する必要があります。漏洩すれば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されたり、損害賠償義務を負ったりする可能性があるためです。
紙で情報を管理する場合は、物理的な安全性を確保するために厳重に保管しましょう。電子データでの管理の場合は、アクセス制限やパスワードの設定など、徹底的なセキュリティ対策が不可欠です。
4-4. マイナス控除の際は適切に対応する
マイナス控除の際は適切に対応しましょう。年末調整をおこなう際に控除額がマイナスになった場合は、原因に応じた対応が必要です。
マイナス控除とは、何らかの原因で給与明細の控除額がマイナスになることを指します。マイナス控除になれば、差引支給額にマイナス控除として記載されている金額を加え、従業員に支払われるのが一般的です。
マイナス控除になる原因として、給与計算の間違いや扶養家族の変更などが挙げられるでしょう。また、年末調整の還付対応も、マイナス控除として記載されます。
もし、計算の間違いが原因だった場合は、従業員への謝罪と速やかな修正対応が必要です。しっかり対応すれば問題ないため、焦らず冷静に行動しましょう。
5. 差引支給額の計算ミスをなくす方法


前述したように、差引支給額の計算ではミスがあってはなりません。しかし、残業や休日出勤などが発生した場合は割増賃金が発生し、計算が複雑になります。パートタイム労働者がいる場合は、労働時間の計算も個別に必要になるため、さらに計算は煩雑になるでしょう。
こうした複雑な計算でもミスをなくし、差引支給額の計算を効率化する方法としては_給与計算システムの導入が効果的です。
給与計算システムは、手入力や手計算によるミスを防ぎ、正確性を確保しながら業務を効率的に進められます。だれでも簡単に管理できるようになるため、業務内容や管理方法の属人化の解消にも役立つでしょう。
給与計算は、従業員の賃金や税金を扱う極めて重要な業務です。ミスが発生すると信用の喪失や刑事罰につながる可能性があります。
計算によるトラブルを防ぐためにも、給与計算システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
6. 差引支給額と総支給額の違いを理解して適切に処理をしよう


本記事では差引支給額の概要や計算方法を詳しく解説しました。差引支給額の取り扱いは総支給額と混同してしまうケースや、計算ミスによって大きな問題につながるケースもあります。抜けや漏れがないよう、控除の内訳や算定の方法などをしっかり復習し、正しい処理ができるようにしましょう。
差引支給額の計算でミスをなくし、効率化したいなら、給与計算システムの使用がおすすめです。給与計算業務の属人化の解消にもつながるため、給与計算に悩みを抱えている企業はぜひ導入を検討してみてください。



労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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