コアタイムなしのフレックスタイム制とは?導入メリット・デメリットも紹介
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.9.2
MEGURO
コアタイムなしのフレックスタイム制とは、出退勤時間が完全に自由なフレックスタイム制です。従来のフレックスタイム制よりも自由度は高くなるものの、勤怠管理担当の負担が増えたり、社員同士が顔を合わせる機会が減ったりする可能性があります。
導入の際は、自社にとってのメリット・デメリットをしっかりと見極めることが必要です。本記事では、コアタイムなしのフレックスタイム制の概要や導入のメリット・デメリット、さらには導入フローや導入のポイントを紹介します。
1. コアタイムなしのフレックスタイム制とは
コアタイムなしのフレックスタイム制は、大手企業が続々と導入を始めたことで注目を集めています。従来の「フレックスタイム制」とはどのような違いがあるのでしょうか。
具体的に見ていきましょう。
1-1. 完全自由裁量のフレックスタイム制
コアタイムなしのフレックスタイム制とは、コアタイムである「必ず出社しなければならない時間」を設けないフレックスタイム制です。「スーパーフレックスタイム制」とも呼ばれます。
従来のフレックスタイム制は、必ず出社していなければならない「コアタイム」と自由裁量の「フレキシブルタイム」で構成されていました。社員は会社が定めるコアタイムに合わせて出勤する必要があり、勤務形態選択の自由は一部制限されていたといえます。
コアタイムなしのフレックスタイム制は、この制限を撤廃した勤務形態です。社員がいつ出退勤するかは完全に自由裁量の範囲内で、フレックスタイム制よりも遙かに自由度は高いといえます。
1-2. 裁量労働制との違い
「勤務形態について労働者の自由裁量を認める」という点で、コアタイムなしのフレックスタイム制と裁量労働制は混同されがちです。しかし、裁量労働制は以下の点でスーパーフレックス制度と異なります。
- 法律で定められた一定の業務に従事する労働者に限定される
- 賃金は「みなし労働時間」によって支払われる
裁量労働制は、専門性が高いなどの特定業務に従事する社員が対象です。また、賃金支払は実労働時間に基づきません。あらかじめ労使で定めた労働時間分について、「働いた」とみなして支払われます。みなし時間より実労働時間が多くても少なくても、賃金は同じです。
関連記事:スーパーフレックス制度とは?導入の方法や注意点を解説
2. コアタイムなしのフレックスタイム制を導入する3つのメリット
コアタイムなしのフレックスタイム制を導入することで、社員の労働意欲が向上したり企業側の経営負担が減少したりといったメリットが考えられます。
具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
2-1. 個々の事情に即した働き方ができる
フレックスタイム制のコアタイムの撤廃は、社員の裁量に任される範囲がより広くなるということです。
社員は勤務に関する時間的な拘束に不都合を感じずに済み、肉体的・精神的負担が軽減されます。介護や育児との両立を迫られる社員も、働きやすくなるでしょう。
2-2. 業務効率が上がる
コアタイムをなくすことで、社員の出退勤時間は完全に自由となります。社員は自身の体調や予定・仕事量に応じて出社のタイミングを決められるため、高いパフォーマンスを出しやすくなります。
「体調が悪いのに我慢して働く」「PCの前で座っているだけ」が起こりにくく、業務の効率が上がるでしょう。
また、出退勤時間を自分で決めるとなれば、計画性も必要です。社員がこれまで以上に進捗管理を真剣に行うようになれば、全社的な業務効率化も期待できるかもしれません。
2-3. 優秀な人材を確保しやすくなる
コアタイムなしのフレックスタイム制が導入されている企業は、「社員目線の配慮がある企業」という印象を持たれやすくなります。求人を出す際は大きなアピールポイントとなり、優秀な人材を採用するのに有益です。
また、社員目線の施策を行ってくれる企業には愛情・愛着を感じるものです。企業と社員の間のエンゲージメントが高まって、離職者が出にくくなります。社員が「会社のために働こう」という気持ちになれば、社員全体の質が向上します。
3. コアタイムなしのフレックスタイム制を導入する3つのデメリット
コアタイムを設けない場合、社員間に連帯感が芽生えにくかったり、勤怠管理担当の負担が増えたりといった懸念があります。コアタイムなしのフレックスタイム制のデメリットについて見ていきましょう。
3-1. 社員間コミュニケーションの希薄化
そもそもコアタイムは、適切な社員同士のつながりを維持する目的があります。コアタイムがなくなることで上下・横のつながりが希薄化し、コミュニケーション不足に陥ることがあるでしょう。
特に懸念されるのは、必要な情報共有ができなくなることです。コアタイムをなくす際は、コミュニケーション・情報共有の仕組みをしっかりと確立する必要があるでしょう。
3-2. 全社的な適用が困難なケースがある
自由出社が認められるとはいえ、社外とつながりの強い業務に関わる社員は難しいかもしれません。取引先の勤務時間に合わせて出社するとなれば、どうしても個人の都合は後回しになりがちです。
たとえば営業・広報などの渉外業務が多い部門でコアタイムを撤廃する場合は、業務内容・管理方法の見直しが必要です。
3-3. 勤怠管理が難しくなる
社員ごとに出退勤時間が異なると、勤怠管理が複雑化します。従来のような一括管理は難しく、個別に見る分時間もかかるでしょう。
また、フレックスタイム制では、退勤時間だけを見ても個々の残業の有無が判断できません。残業計算もより複雑になり、勤怠管理の手間は大幅に増大します。
勤怠管理をいかに効率的に行うかは、非常に重要なポイントです。
関連記事:スーパーフレックス制度とは?導入の方法や注意点を解説
4. コアタイムなしのフレックスタイム制の導入方法
コアタイムなしのフレックスタイム制を導入するには、「就業規則等への規定」「労使協定で所定の事項を定めること」が必須です。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
4-1. 就業規則への記載
まずはフレックスタイム制についての詳細を就業規則に記載しなければなりません。
就業規則には「フレックスタイム制が適用される社員の始業および終業の時刻については、社員の自主的決定に委ねるものとする」という一文を入れましょう。
これは、労働基準法第32条第3項に基づく決まりです。
関連記事:フレックスタイム制に関わる就業規則のポイント・記載例を紹介!
4-2. 労使協定の締結
フレックスタイム制の導入では、以下の項目について労使協定を結ばなければなりません。
- 対象となる労働者の範囲:全社員または一部
- 清算期間:上限3ヵ月
- 清算期間における総労働時間:所定労働時間
- 標準となる一日の労働時間
- コアタイム(任意)
- フレキシブルタイム(任意)
上記について労使協定を締結すれば、フレックスタイム制の導入が可能となります。ただし、清算期間が1ヵ月を超える場合は、労使協定届を管轄区の労働基準監督署長に提出しなければなりません。
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「フレックスタイム制の分かりやすい解説&導入の手引き」
関連記事:フレックスタイム制に関する労使協定のポイントを解説
5. コアタイムなしのフレックスタイム制を成功に導く2つのポイント
コアタイムなしのフレックスタイム制を安易に導入すると、社内に混乱を招くだけとなるかもしれません。特に勤怠管理が煩雑化する点については、しっかりと対策を取っておきましょう。
導入前に取っておきたい対策について紹介します。
5-1. 勤怠管理ツールを導入する
全社的にコアタイムなしのフレックスタイム制を導入した場合、管理自体が非常に煩雑になります。そのため、フレックスタイム制に対応できる勤怠管理ツールを導入するのがおすすめです。
勤怠管理ツールなら、イレギュラーな勤務形態に対応できるものも少なくありません。社員の情報を全て一元管理できるため、残業代の計算等も簡単です。
部署別・職種別に管理できるものも多いため、勤怠管理を効率的に行えるでしょう。
5-2. 積極的に社員コミュニケーションの場を設ける
コアタイムなしのフレックスタイム制で懸念される情報共有のしにくさ・コミュニケーションの取りにくさは、社内のコミュニケーションツールを見直すことで解消できます。
Web会議ツールや社内チャット機能などを活用し、常にお互いの状況が分かるようにしておきましょう。雑談専用の会議室を設けるなどをしておくと、対面で会えない社員とも密なコミュニケーションを取りやすくなります。
6. コアタイムなしのフレックスタイム制の導入は適切な勤怠管理がカギ
コアタイムなしのフレックスタイム制は、必ず出勤しなければならない「コアタイム」を設けないフレックスタイム制です。
出退勤時間が完全に自由裁量に任されるため、社員は柔軟な働き方が可能となります。個々のライフワークバランスが整い、パフォーマンス向上が期待できるでしょう。
ただし、コアタイムなしのフレックスタイム制は企業にとって「勤怠管理の煩雑化」という問題もあります。導入の際は、適切な勤怠管理ツールの導入が欠かせません。
機能や価格等を比較して、自社に合うツールを選択しましょう。
関連記事:フレックスタイム制とは?清算期間の仕組みやメリット・デメリットを解説
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