休日手当とは?法的な取り決めと正しい計算方法を徹底解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.11.15
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従業員の健康的な毎日を守るためにも、本来なら休日には何事もなく休んでほしいのが企業としての本音でしょう。しかしときには、急なトラブルや業務の繁忙で、どうしても休日出勤が発生してしまう可能性はあります。
そこで最低限のケアとして忘れてはならないのが、休日だったはずの日に出てもらった分の手当です。休日手当の支給は、労働基準法によって定められている法的義務であり、必ず支払わなければなりません。
きちんと手当を付与していないと、違法として30万円以下の罰金が科せられてしまいます。従業員の適切な労働環境のためにも、しっかりと休日手当について正しく認識しておきましょう。
目次
1.休日手当とは法定休日出勤時の割増賃金
そもそも休日手当とは、法定休日に出勤した場合に、通常時も一定の比率を割増して支払う賃金を指します。法定休日とは、労働基準法第35条に定める「1週1回・4週4回以上」取得すべき休暇です。
仮に土日休みの週休2日としている場合には、土曜か日曜のいずれかが法定休日に該当します。法的には特に設定方法の規定はないため、いずれにしても問題ありません。なお法定休日の指定は法的義務ではありませんが、法定外休日における出勤時との賃金計算が異なる関係もあり、基本的にはあらかじめ決めておくのがベストです。
2.休日出勤には36協定が必須
休日手当が発生する労働をさせる場合には、大前提として事前に36協定を締結しておかなければなりません。時間外労働など、法定外での勤務を行わせる場合には、労働基準法第36条にもとづいた労使の合意が必要です。これがいわゆる「36協定」で、締結されたら所轄の労働基準監督署に届出をして、初めて法定外の休日や時間帯での労働が認められます。
36協定の基本をおさらいしておきたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
3.休日出勤数は法定時間外労働との合計に注意
休日出勤は、36協定があれば上限なく許されるわけではありません。そもそも時間外を含めて、法定外での労働には制限があるため注意が必要です。
まず時間外労働は、36協定を締結していた場合でも、月45時間・年間360時間を超えてはなりません。また臨時的な特別の事情がある際には、労使の合意のもとで超過できますが、年間720時間に収めることを規定としています。ちなみに月45時間を超える法定外労働は、6ヶ月以上はできません。
さらに法定外の時間外労働も休日出勤も発生するケースでは、いかなる時でも月間でそれぞれの合計を100時間未満にしなければなりません。なおかつ法定外労働が継続する際には、2~6ヶ月間の時間外・休日出勤合計を平均月80時間以内にする必要があります。
法定休日の出勤が生じる場合には、時間外労働の関連性にも気を付けておかなければなりません。
関連記事:休日手当が割増となる条件と計算方法を分かりやすく解説
4.休日手当は振替休日と代休で扱いが異なる
休日手当の支給については、例外的に相殺できる方法もあります。それが事前申請で取得する振替休日で、あらかじめ通常の勤務日と法定休日を入れ替えることで、休日手当の支払い義務がなくなるものです。
一方で休日出勤の後に代わりの休暇を取る「代休」では、休日手当は支給しなければなりません。
法定休日の出勤分は、事前か事後か対処のタイミングに応じて取り扱いが異なるため、十分に注意しておく必要があります。
5.休日手当の割増賃金の計算方法
では休日手当の割増賃金は、具体的にどのように算出するのか、具体的な計算方法も見ていきましょう。
まず法定休日に出勤した場合には、通常より3割5分以上割増した賃金を支払わなければなりません。また基本的に休日手当は時間単位で計算するので、該当する従業員が時給制であれば問題ありませんが、例えば月給制なら1時間あたりの平均賃金の算出が必要です。
それではここからは、具体的な数字の例を挙げて説明していきます。
5-1.月給制における休日手当の算出例
月給制の場合は、月給額を1年間での月あたりの平均所定労働時間で割って、時間単位の賃金を計算していきます。
まず実際に算出する際には、1年の暦日数(365日)から年間の所定休日数を引き、年間の労働日数を出します。
例えば年間出勤数を243日(年間所定休日122日)として、1日の所定労働時間が8時間だった場合。243日×8時間=1,944時間が年間の労働時間です。これを12ヶ月分で割ると、1,944時間÷12ヶ月=162時間となり、「162時間」が年間平均の月あたりの所定労働時間になります。
そして該当の従業員の給与を月給28万円とした場合、28万円÷162時間=1,728.39…円が時間単位の賃金です。
ちなみに端数は50銭未満を切り捨て、50銭以上1円未満を切り上げで考えるので、このケースでは「1,728円」に割増をして計算していきます。これを休日手当に当てはめると、1,728円×1.35=2,332.8円。つまり「2,335円」を休日手当における時間単位の賃金と考えます。もし8時間働いたのであれば、2,335円×8時間=1万8,680円が休日手当です。
ここまでの計算式をまとめると、以下のとおりになります。
<時間あたりの賃金>
月給÷{(1年間の暦日数-所定年間休日)×1日の所定労働時間÷12ヶ月}
⇒
28万円÷{(365日-122日)×8時間÷12ヶ月}=1,729円
<休日手当>
違う方向を向いている時間単位の平均賃金×1.35×実際に働いた時間数
⇒
1,729円×1.35×8時間=1万8,680円
関連記事:休日手当の計算ルールや間違えやすい5つのポイントを解説
6. 休日手当の計算エラーを防ぐためのベストプラクティス
休日手当の計算におけるエラーは、従業員の不満を引き起こすだけでなく、法律違反につながる可能性もあります。それを避けるために、以下のベストプラクティスをおすすめします。
6-1. 労働時間の正確な記録
労働時間の追跡は休日手当計算の根底にあります。これは手動で行うことも可能ですが、自動化された時間追跡システムを使用すると、時間の無駄を減らし、精度を向上させることができます。
6-2. 適切な賃金の計算
休日手当の計算は従業員の給与形態によります。時間給の場合は比較的単純ですが、月給の場合は時間当たりの賃金を計算する必要があります。これには1年間の所定労働時間と月給を用いる方法が一般的です。
6-3. 法定休日と会社指定の公休の明確な識別
休日出勤の労働時間には、法定休日と会社指定の公休で異なる割増賃金が適用されます。従業員がどの休日に出勤したのかを正確に把握し、それに応じた手当を支払うことが重要です。
7.もし法定休日ではない休日に出勤した場合
上記までの休日手当の割増に該当するのは、あくまで週1回の「法定休日」です。ではもし土日休みで法定休日を日曜としている場合、土曜に出勤した際には、どのような対処が必要なのでしょうか。
仮に1日の所定労働時間が8時間で、月曜~金曜まで週5日勤務した上で、土曜にも出勤したとします。このケースでは法定休日を「日曜」にしているため、この土曜出勤は「時間外労働」です。労働基準法では、1日8時間・週40時間の労働時間を上限としています。そのためすでに平日だけで労働基準法の限度に達しており、超過分に対しては時間外手当を支払わなければなりません。
ちなみに時間外手当の割増率は、2割5分以上です。この土曜出勤分の手当を算出する場合には、前述のとおりに時間あたりの賃金を出し、「1.25倍×勤務時間数」で計算します。
8.休日出勤で時間外もしくは深夜勤務が発生した場合
状況によっては法定休日に出勤した際に、所定時間を超えたり深夜になったりする可能性もあります。
もし休日出勤時に所定時間外労働になった場合は、通常どおりに時間単位の賃金×1.35×勤務時間の計算で問題ありません。ただし深夜(22時~5時)になった際には、別途深夜分の割増賃金が発生します。ちなみに深夜労働の割増は2割5分以上で、休日手当分と足して「1.6倍」での計算となるため、注意しておきましょう。
関連記事:時間外労働の割増率とは?計算方法や適用されない場合を解説
9.正確な認識できちんと適切な休日手当の支給を
従業員をしっかりとねぎらう意味でも、休日手当の認識を正しく持って、より適切な賃金を支払うことが重要です。また会社指定の公休と法定休日とでは処理が変わってくるため、きちんと確認しておかないと人件費に大きく影響してしまうでしょう。
さらに休日出勤で深夜になった場合も例外的な取り扱いが必要で、正確に対処しないと違法になってしまいます。少しややこしい部分もありますが、ぜひ本記事を参考に、休日手当の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
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