休日手当とは?割増賃金率の種類や計算方法、休日出勤でも手当が発生しない場合を解説
更新日: 2024.11.28
公開日: 2021.11.15
MEGURO
休日手当とは、就業規則などで休日と定めらている日に出勤したとき、支払われる割増賃金のことです。
労働基準法では、「法定休日」に出勤した場合、休日手当の割増が必要であるされています。
ここからは人事担当者向けに、労働基準法が定める休日手当が割増となる条件、ならない条件、休日手当の割増賃金の計算方法を詳しく解説します。
▼そもそも休日手当とは?となる方は、先にこちらをお読みください。
休日手当とは?法的な取り決めと正しい計算方法を徹底解説
目次
従業員に休日労働をさせた場合、割増賃金の計算はどのようにおこなうのか、残業扱いになるのかなど、休日労働に対して発生する割増賃金の計算は大変複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、休日出勤の割増賃金計算について徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日出勤の割増賃金計算が不安」「残業手当になるのか、休日手当になるのか分からない」という人事担当者の方は、ぜひこちらから「【労働基準法】休日・休暇ルールBOOK」をダウンロードの上、ご一読ください。
1. そもそも休日手当とは?
休日手当とは、従業員が休日に働いた場合に支払われる割増賃金のことです。
この手当は、休日労働という特別な状況に対する対価として、法定の割増率を適用して支給されます。休日には「所定休日」と「法定休日」の2種類があり、それぞれの休日に対する待遇が異なるため、正確な理解が求められます。
1-1. 休日労働と対価として割増率を乗じて支給する手当
休日労働に対する対価として支給される休日手当は、労働者が法定休日に勤務した場合に適用されます。この手当は、従業員が休日に働いたことに対して、通常の賃金に35%以上の割増率を乗じて計算されます。
したがって、休日出勤をした際には、通常賃金の1.35倍以上が支払われる必要があります。このように、休日手当は従業員の労働を適正に評価し、労働基準法によって制度化されています。
1-2. 休日には所定休日と法定休日の2種類ある
休日には、法定休日と所定休日の2種類があります。法定休日とは、労働基準法により定められた休日で、雇用主は労働者に対して毎週1日以上、または4週間に4日以上の休日を与える義務があります。
一方、所定休日は、企業が独自に設定する休日です。労働者にとっては、どちらも休日として認識されますが、割増賃金の計算には大きな違いがあります。
割増率の種類については次の章で詳しく解説していきます。
2. 休日手当における割増賃金率の種類
「法定休日」に出勤をした場合、割増賃金の支払いが必要となります。ここでは、労働基準法上、休日手当が割増となる条件を解説していきます。
2-1.法定休日に休日出勤した場合
休日には労働基準法で週に1日以上の取得が義務付けられている「法定休日」と、企業が任意で決定する「法定外休日」があります。
法定休日の労働は原則禁止ですが、36協定の締結により、働くことが可能となります。
但し、法定休日に行った労働に対しては、35%以上の割増賃金の支払いが必要です。そのため、法律上、休日手当を割増する必要があるのは、「法定休日に労働した場合」が該当します。
法定休日と深夜労働時間が重なる場合
法定休日に出勤した従業員が深夜に労働を行った場合、休日手当と深夜手当が同時に発生します。
労働基準法では、22時から翌5時の時間帯が深夜労働と定義されており、この時間に勤務する際には25%以上の割増賃金が必要です。そのため、法定休日における労働が深夜の時間帯に重なった場合、休日手当の35%以上に加えて深夜手当の25%以上が加算され、全体の割増率は60%以上になります。
これにより、深夜に働く従業員は、より高い賃金が保障されることになります。
時間外労働が60時間を超えた場合
時間外労働が60時間を超えた場合、割増賃金の割増率は50%以上となります。
これは、労働基準法に基づくもので、通常の時間外労働の上限は1か月45時間とされていますが、特別条項付きの36協定を締結している場合には、特別な理由がある時に限り、月45時間を超えることが可能です。
しかし、この場合でも時間外労働が60時間を超えると、高い割増率が適用されるため注意が必要です。具体的には、所定休日に働いた時間と通常の出勤日の残業時間の合計が60時間を超えた場合、通常賃金の1.5倍以上の割増賃金が支払われることになります。
2-2. 所定休日に休日出勤した場合
法定休日に出勤した場合は35%以上の休日手当が支給されますが、所定休日に出勤すると通常の賃金が適用されます。
つまり、所定休日に働く場合は、通常の労働時間内の扱いとなり、割増賃金は発生しないため、労働時間の上限(1日8時間・週40時間)を超えた場合のみ25%以上の割増賃金が支払われることになります。このため、休日手当を適切に計算するためには、法定休日と所定休日の違いを理解することが重要です。
従業員に対して正確な給与計算を行うためには、法定休日と所定休日の違いや、それぞれの割増賃金の計算方法をしっかり把握しておくことが大切です。
2-3. 祝日に出勤した場合
祝日を休日として扱うかどうか、またその祝日が法定休日に含まれるかは、会社によって異なります。
そのため、祝日が法定休日と規定されている場合にのみ、休日労働の割増賃金率が適用されます。
法定休日でない祝日に出勤した場合は、その労働が時間外労働や深夜労働に該当するかどうかで取り扱いが変わります。具体的には、祝日の出勤が法定労働時間を超えた場合や深夜労働が含まれる場合、それぞれ25%の割増賃金が適用され、両方に該当する場合は合計50%の割増賃金率が適用されます。
2-4. 法定休日に休日出勤し、後に代休を取った場合
法定休日に出勤し、後に代休を取得した場合も、35%以上賃金を割増する必要があります。
また、振替休日ではなく、代休である点に注意しましょう。
代休とは、休日労働を行った代償として、与えられる休日のことです。代休を取ったのに割増賃金の支払いが必要である理由は、本来休むべき「法定休日」に働いていることに変わりがないためです。
万が一、法定休日に労働させたのに割増賃金を支払わなかった場合、労働基準法違反となり罰金または懲役刑が科される可能性もあります。また、起訴されなかったとしても、報告書の提出や管理方法の見直しなどの再発防止策を講じなければなりません。当サイトで無料配布している「休日・休暇ルールBOOK」では、休日・休暇の考え方や対応方法について詳しく解説しています。法定休日や割増賃金の支給条件について不安な点が残る方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
3. 割増率を用いた休日手当の計算方法
休日手当の割増賃金の計算では、それぞれの割増賃金率の確認が必要です。
【割増賃金率】
- 法定休日労働:35%以上
- 法定時間外労働:25%以上
- 深夜労働:25%以上
- 月60時間超の時間外労働:50%以上(※)
(※)中小企業は2023年4月より施行予定
休日手当の割増賃金を計算するには、1. 基礎賃金を算出する、2. 割増賃金率をかける、3. 法定休日労働の時間を確認、これらの工程により求められます。
3-1. 従業員の基礎賃金を算出する
割増賃金が必要な従業員の、1時間あたりの基礎賃金を下記により算出します。
「月給÷平均所定労働時間(1ヵ月あたり)」
所定労働時間は就業規則や労働契約書を確認しましょう。
月給を求めるには労働契約書などで定められた所定賃金を確認し、下記を足し引きして、正確な金額の把握が必要です。
月給に含めるもの
月給に含める手当の基準は次のとおりです。
- 労働の対価として支払われるもの
- 全従業員一律で支払われるもの
具体的には、次のような手当が該当します。
- 業務手当
- 地域手当
- 役職手当
そのため、「家族手当」を独身・既婚問わず、全ての従業員に一律の額を支給している場合、月給に含まれると判断します。
月給に含まれないもの
月給に含まれない手当は、次のとおりです[注1]
- 個人的事情に基づく手当(家族手当など)
- 臨時に支払われた賃金
- 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
これらの手当は、通常の勤怠や業務パフォーマンスに直接結びつかないため、基礎賃金の計算には含まれません。また、企業によっては、毎月一定の金額で支給される手当も、全ての従業員に同じ条件で支払われている場合でも、基礎賃金とはみなされないことがあります。
具体的には、次のような手当が該当します。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当、など。
具体的な例で解説すると、通勤手当は、実際の通勤費用に応じて支給されるため、必ずしも月給に含まれるものではありません。これは、対象となる従業員の通勤距離や交通機関の選択によって異なるからです。
また、臨時に支給される賞与や特別手当も、通常の月給には含まれません。このように、月給に含める手当は、支給基準や状況に応じて明確に定義されることが重要です。
[注1]厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金とは?」,(参照 2021-10-17)
関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など基本を解説
3-2. 割増賃金率をかける
基礎賃金が分かったら、必要な割増賃金率をかけて計算します。
ここでは基礎賃金2,000円を例に休日手当を割増した賃金を計算します
法定休日出勤のみの割増賃金
2,000円×1.35倍=2,700円
割増率は法定休日に出勤した場合に適用される割増率であり、この場合は35%の割増が必要です。
また、所定休日や祝日に出勤した場合は、割増率が異なることも覚えておく必要があります。それぞれのケースにおいて、正確な計算を行うためには、対象となる休日や労働時間を明確にしておくことが重要です。
関連記事:時間外労働の割増率とは?計算方法や適用されない場合を解説
3-3. 法定休日労働の時間をかける
最後に、法定休日の労働時間を確認し、3-2.で算出した賃金(2,700円)をかけて給料を計算します。労働時間が8時間の場合は、下記のとおりです。
2,700円×8時間=21,600円
上記が、法定休日労働のみの場合の賃金です。基本的な計算方法となりますので、必ず押さえておきましょう。
4. 法定休日と他の割増率が重なった場合の計算方法
次に、法定休日と他の割増賃金が重なった場合をみていきます。状況を正確に把握し、適切な給与計算を行うことで、従業員の権利を守るだけでなく、企業側の法的なリスクを軽減することができますので正しく理解しておきましょう。
基礎賃金2,000円を例に解説します。
4-1. 法定休日労働に加えて深夜労働だった場合
法定休日労働では、所定労働時間を超えても時間外労働としてカウントしません。
そのため、法定休日の割増賃金で計算します。ただし、深夜帯は深夜割増の支払いが必要です。
例えば、法定休日の午後2時から午後11時まで働いた場合、
【法定休日出勤分】
2,000円×1.35倍=2,700円
2,700円×8時間(午後2時~午後10時)=21,600円…(1)
【法定休日出勤+深夜労働分】
2,000円×1.60倍(※)=3,200円
(※)法定休日労働割増35%、深夜労働割増25%
3,200円×1時間(午後10時~午後11時)=3,200円…(2)
(1)+(2)=24,800円
上記が1日の賃金となります。
4-2. 法定休日出勤後、代休を取得した場合
法定休日出勤の後、代休を取得した場合、代休1日分の基本給は支払われないため、休日手当の割増分のみ支払います。
2,000円×0.35倍=700円
8時間×700円=5,600円
上記が休日手当の割増分となります。
これらの計算を正しく行い、間違いがないよう給与計算を進めることが大切です。
4-3. 法定休日労働に加えて60時間の残業を超えた場合
また、法定休日労働に加えて60時間の残業を超えた場合、割増賃金の計算は複雑になります。1か月の時間外労働が60時間を超えると、割増賃金率は50%以上に引き上げられ、特別な取り扱いが必要です。
労働基準法では、原則として1か月の時間外労働は45時間、1年で360時間を超えてはなりませんが、36協定を締結している場合は、特別な必要に基づいて一時的にこれを超えることが許可されます。
このとき、所定休日に働いた時間と通常の出勤日での残業時間の合計が60時間を超えると、通常賃金の1.5倍以上の割増賃金を支払う必要があります。したがって、法定休日労働を含む給与計算を行う際には、特に注意が必要です。
関連記事:休日手当の計算ルールや間違えやすい5つのポイントを解説
5. 休日手当の割増が発生しない場合はどんな時か?
同じ休日でも、「法定外休日」では、労働基準法上、賃金を割増する必要はありません。また、管理・監督者は法定休日に出勤しても、休日手当の割増は必要ありません。
5-1. 法定外休日に休日出勤した時
週1回の取得が義務付けられている「法定休日」ではなく、会社が任意で定める「法定外休日」に労働しても、労働基準法上、割増賃金の支払いは必要ありません。
例えば、日曜日が法定休日、土曜日が法定外休日の会社では、土曜日に働いても、休日手当として賃金を割増する必要はない、ということです。
ただし、法定外休日に働いた時間は、全て労働時間として換算されているということに注意する必要があります。
そのため、もし労働時間が1週間で40時間を超過しているのであれば別途、時間外労働の割増賃金(25%)は必要です。
さらに、当日午後10時~翌午前5時までの労働は深夜割増賃金(25%)の支払いも合わせて必要です。
5-2. 振替休日を取得し、休日出勤した場合
法定休日の労働でも、前もって振替休日を申請している場合、休日手当の割増は不要です。
振替休日では、あらかじめ「休日」と「労働日」を交換したものと考えられるため、そもそも、休日労働とは見なされないためです。ただし、法定休日を振替られるようにしたい場合、就業規則に予め規定することが求められます。
このように、「本来休日であった日に労働している」という点は同じでも、代休と振替休日では手当の金額が異なります。そのため、人事担当者はこの2つの違いを正確に把握して、給与計算や労働管理をおこなわなければなりません。
振替休日は、代休と違い、あくまでも「労働していない日」を「労働日」として扱うため、振替休日を適用することで、法定休日の手当が発生しない仕組みとなっています。この点については、労働契約書や就業規則に詳しく記載し、従業員にも周知徹底することが望ましいです。
そして、振替休日を取得する際には、事前に申請を行うことが重要であり、労働者もこのルールを理解して適切に利用する必要があります。
下記の記事では振替休日の概要はもちろん、振替休日を取得する際のルールや注意点についても解説しているので、振替休日について正しく理解しておきたい方はぜひご覧ください。
当サイトでは、労働基準法に沿った正しい知識(休日、代休、振替休日など)を理解していただけるように、図を用いて解説した資料を無料で配布しております。不安な点がある担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
5-3. 管理監督者が法定休日に出勤した場合
労働基準法上の管理監督者に該当する者は、残業代や休日手当の支払いは不要です。要件は下記のとおりです。
- 労働時間・休憩・休日の規制の枠組みを超えて活動が必要な、重要な職務内容・責任・権限を有していること。
- 勤務形態が労働時間の規制になじまないこと。
- 賃金などについて地位にふさわしい待遇がなされていること。
一般的には「経営者と一体的な立場」であるものを管理監督者と規定しています。
これらの条件に当てはまるものについては、自身の裁量により労働を行うため、労働時間の規定が適用されません。
ただし、「店長」や「営業課長」など、肩書のみで、管理方法が通常の従業員と変わらない「名ばかり管理職」では、休日手当の割増が必要です。
そのため、呼称ではなく、職務の実態により判断しましょう。
関連記事:管理職の労働時間・休憩時間や休日についての基礎知識を徹底解説!
5-4. みなし残業制を導入している場合
みなし残業制を導入している場合、企業は実際の残業時間に関わらず、一定の時間外労働を行ったものとして、給与に固定残業代を含めて支給します。
この仕組みにより、所定休日の出勤を含む時間外労働が設定されたみなし残業時間内であれば、割増賃金を別途支払う必要はありません。
ただし、法定休日に出勤した場合は、休日手当として35%の割増賃金を支払わなければならず、みなし残業制が適用される範囲には注意が必要です。
6. 法定休日や時間外の割増率を理解して正しく休日手当を計算しよう
休日手当は、「法定休日」か「法定外休日」なのか、「代休」か「振替休日」かなど、割増条件により、多数の計算パターンが存在します。
また、就業規則で別途、法定外休日の割増条件を定めている場合、そちらの計算も必要です。
休日手当に該当するのか、それとも時間外労働として処理するのか、正しく把握し、対処しましょう。
従業員に休日労働をさせた場合、割増賃金の計算はどのようにおこなうのか、残業扱いになるのかなど、休日労働に対して発生する割増賃金の計算は大変複雑です。
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「休日出勤の割増賃金計算が不安」「残業手当になるのか、休日手当になるのか分からない」という人事担当者の方は、ぜひこちらから「【労働基準法】休日・休暇ルールBOOK」をダウンロードの上、ご一読ください。
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