休日出勤の振替休日は有給取得に変更できる?条件と注意点を解説
更新日: 2024.11.28
公開日: 2022.2.22
OHSUGI
従業員が休日出勤した場合、別の日に振替休日を取得させるのが一般的ですが、従業員によっては振替休日ではなく、有給取得への変更を希望する人もいます。
休日出勤を振替休日ではなく有給取得に変更できるか否かはケースによって異なりますので、自社ではどのように対応すべきか、あらかじめチェックしておくことをおすすめします。
今回は、振替休日を有給取得に変更できるケースや、休日出勤を有給取得に変更する際の注意点、有給取得した週に休日出勤した場合の手当について解説します。
関連記事:休日と休暇の違いとは?休みの種類や勤怠管理のポイント
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
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目次
1. 休日出勤を振替休日ではなく有給取得に変更できるケース
労働基準法第35条では、使用者は労働者に対し、毎週少なくとも1回の休日または4週間を通じて4日以上の休日を与えることを義務づけています。
そのため、従業員が休日出勤した場合は、労働基準法第35条に違反しないよう、何らかの形で休日を取得させる必要があります。
従業員が休日出勤した際に取得する休みは、大きく分けて「振替休日」「代休」「有給休暇」の3つがあり、それぞれ以下のような特徴があります。
- 振替休日:休日出勤する前に、あらかじめ別の労働日を休日に指定する方法。休日出勤に割増賃金は適用されない
- 代休:休日出勤した後に、別の労働日を休日にして相殺する方法。休日出勤に割増賃金が適用されるが代休を取得した日の給与支払はなし
- 有給休暇:使用者から賃金が支払われる休暇日のこと。休日出勤に割増賃金が適用され、有給休暇日にも賃金が支払われる
このうち、従業員が取得する賃金が最も多くなるのは「休日出勤を有給取得に変更するケース」です。
労働基準法第37条では、使用者が従業員を休日に労働させた場合、会社で定めた所定休日の場合は25%以上、労働基準法上で定めた法定休日の場合は35%以上割増賃金を支払うことと定めています。
ただ、振替休日はあらかじめ定められた休日と労働日を交換しただけなので、休日出勤しても割増賃金は適用されません。(休日出勤で残業した場合を除く)
代休の場合、事後に休日を申請するので休日出勤した分に関しては割増賃金が適用されますが、代休日そのものは無給となります。
一方の有給休暇は、休日出勤の事前・事後に関係なく賃金が支払われる上、休日出勤の代替として取得するものではないため、休日出勤分の割増賃金も支払われることになります。
同じ休日を取得するにしても、振替休日や代休に比べて受け取れる賃金の額が多くなるため、従業員にとってメリットの大きい方法といえます。
逆に企業にとってはコスト増になるため、振替休日を取得してもらうのが理想ですが、就業規則に「休日出勤した際は振替休日を取得する」といった旨のルールが記載されていなければ、振替休日に代えて有給休暇を取得することは可能です。
労働基準法第35条では、労働者に与える休日の日数に関する規定はあるものの、休日出勤した場合にどのような休日を与えるかについての規定は設けられていません。そのため、法で定められた休日(法定休日)さえクリアしていれば、休日出勤の振替休日を有給取得に変更しても法的な問題は生じないことになります。
参考:労働基準法|e-Gov法令検索
参考:労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令|厚生労働省
2. 休日出勤を有給取得に変更する際の注意点
振替休日を有給休暇に変更することは法律上問題ないものの、事前に注意すべきポイントが2つあります。誤ったやり方で変更をおこなってしまうと、法律に抵触したり、会社が不利益を被ったりすることがあるので、ここで紹介する注意点を必ず押さえておきましょう。
2-1. 有給休暇の取得期限に注意
労働基準法では、休日の取得方法や取得期限に関する明確な規定は設けられていませんが、同法第115条では次のとおり定められています。
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によって消滅する
休日・休暇を取得する権利(請求権)は「その他の請求権」に該当すると考えると、有給休暇の取得期限は権利が発生してから2年間ということになります。
ただ、休日出勤の振替休日を有給取得に変更するにあたり、取得期限を通常と同じ「2年以内」とすると、1週間に最低でも1日、4週間で4日以上の休日を与えることを規定した労働基準法第35条に抵触するおそれがあります。
そのため、休日出勤の振替休日を有給取得に変更する場合は、あらかじめ就業規則などで取得期限を「1ヵ月以内」などと設定し、4週間で4日以上の休日を取得できるようにしましょう。
2-2. 休日出勤の振替休日を有給取得に変更できないケースもある
休日出勤の振替休日は、就業規則に規定がない限り、原則として有給取得への変更が可能ですが、一部例外もあります。
有給休暇は労働基準法第39条で規定された労働者の権利ですが、その対象となるのは、雇用の日から起算して6ヵ月間継続勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した労働者です。
パートやアルバイトでも有給休暇は付与され、条件に応じて有給日数は増えますが、雇用日から6ヵ月が経過していない場合や、出勤日数が全労働日の8割に満たない場合は、使用者が労働者に有給休暇を付与する義務は生じません。
上記の要件を満たさない従業員が、休日出勤の振替休日を有給取得に変更したいと申し出てきても、代替となる有給休暇がない以上、変更は不可能となるので注意が必要です。そのため、もし有給休暇の取得を認めてしまった場合は、 有給取り消しの旨を伝えましょう。
その際、当該従業員には有給休暇を取得する権利がない旨と、その理由をきちんと説明しておくと、無用な労使間トラブルを避けることができます。
3. 有給取得した週に休日出勤した場合の手当はどうなる?
従業員を休日出勤させた場合、労働基準法第37条に基づき、原則として割増賃金を支払う必要があります。
ただし、ここでいう「休日出勤」とは、労働基準法第35条で規定された法定休日(1週間に1日以上、4週間で4日以上の休日)に労働させることを意味しています。
例えば土日休みの週休2日制を導入している企業において、土曜日に8時間(休憩時間除く)の休日出勤をおこなったとします。
便宜上は「休日出勤」となりますが、日曜日に休んでいれば「1週間に1日以上」という法定休日の要件を満たしているので、土曜日の休日出勤は労働基準法上の「休日出勤」には該当しません。
ただし、月~金までの5日間それぞれで、休憩時間を除く1日8時間の仕事に従事していた場合、労働基準法第32条で規定された「1日8時間、週40時間」の法定労働時間の上限に達しているため、土曜日の休日出勤は「時間外労働(割増賃金25%以上)」に該当します。
ところが、同じ条件で金曜日に有給休暇を取得した場合、平日の実働時間は月~木曜日までの32時間(8時間×4日間)のみとなります。
土曜日に8時間の休日出勤をおこなったとしても、法定労働時間である週40時間を超えないため、土曜日の出勤は「時間外労働」に該当せず、割増賃金の適用対象外となります。
休日出勤が労働基準法上の休日出勤あるいは時間外労働に該当するか否かは、その週(あるいは4週間)で取得した休日の日数や、その週の実働時間によって決まるため、会社で定めた「所定休日」と混同しないよう注意しましょう。
4. 休日出勤の振替休日を有給取得に変更する場合は、賃金の計算方法に注意しよう
従業員に休日出勤をおこなわせた時は、何らかの方法で休日・休暇を取得させる必要がありますが、取得の方法によって賃金の計算方法は大きく異なります。
振替休日の場合は本来の労働日と交換するだけなので、割増賃金は発生しませんが、有給取得に変更した場合は、休日出勤分の割増賃金が発生する上、有給分の賃金も支給する必要があります。
就業規則で「休日出勤の際は振替休日を取得する」といった規定がない場合、「振替休日を有給取得に変更したい」という従業員の申請を却下することはできないので、有給取得への変更を申し出られた場合は、振替休日とは異なる方法で勤怠管理および給与計算をおこなうようにしましょう。
関連記事:休日出勤の振替休日は強制できない?割増賃金が必要?運用ルールの注意点
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
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