所得税と住民税の違いは?高いのは?計算・徴収方法の違いをわかりやすく解説
更新日: 2026.4.27 公開日: 2022.3.8 jinjer Blog 編集部

所得税と住民税はどちらも個人の所得にかかる税金ですが、納付先や計算方法が異なります。給与計算上の徴収方法にも違いがあるため、それぞれの特徴を正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、所得税と住民税の違いについて、納付先や課税対象の年度、税率、控除額、計算方法など、多角的な視点から詳しく解説します。また、年末調整や確定申告を通じた両者の関係性についても紹介します。
目次
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1. 所得税と住民税の違い


所得税も住民税も、個人の1年間の所得額に応じてかけられる税金ですが、それぞれ納める先が異なる全く別の種類の税金です。所得税と住民税の違いをわかりやすくまとめると次の表のとおりです。
|
項目 |
所得税 |
住民税 |
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税の区分 |
国に納める国税 |
都道府県・市区町村に納める地方税 |
|
課税対象年度 |
当年の所得に対して課税(例:2026年の所得 → 2026年に課税) |
前年の所得に対して課税(例:2025年の所得 → 2026年度に課税) |
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課税方式 |
申告納税方式(納税者が所得を申告して税額を確定) |
賦課課税方式(自治体が税額を計算して通知) |
|
税率 |
累進課税(所得が高いほど税率が上がる) |
比例課税(原則一律10%) |
|
所得控除 |
比較的控除額が大きい 例:基礎控除:最大95万円(令和7年分) |
比較的控除額が小さい 例:基礎控除:43万円(令和8年度) |
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均等割の有無 |
なし |
あり(一定額を一律で課税) |
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納付方法 |
源泉徴収および年末調整や確定申告 |
特別徴収または普通徴収 |
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非課税ライン(年収の壁) |
160万円(令和7年分) ※178万円(令和8年分見込み) |
110万円(令和8年度) ※119万円(令和9年度見込み) |
所得税と住民税、それぞれの税金にどのような違いがあるのか、さらに詳しく見てみましょう。
1-1. 国税と地方税の違い
税金は大きく分けると2種類あります。国に納める国税と、都道府県や市町村など地方公共団体に納める地方税です。このうち、所得税は国税、住民税は地方税に該当します。
さらに、国税・地方税は、納税義務者と納付者が同じである直接税と、納税義務者と納付者が異なる間接税に分けられます。なお、所得税は国税の直接税、住民税は地方税の直接税です。
本来は、所得税も住民税も納税者義務者がそれぞれの納付先へ直接納税するものですが、会社員の場合は事業主が代わりに徴収して納税する仕組みになっています。
1-2. 課税対象年度の違い
所得税はその年の所得に対して課税されるのに対し、住民税は前年の所得に基づいてその年の課税額が決まるといった違いもあります。
具体的に説明すると、所得税の場合、その年の所得額に対して年末調整または確定申告をおこなうことで、最終的な所得税額を確定させます。概算で支払った所得税額に過不足があった場合は、年末調整後または確定申告後に還付または納付します。
一方で、住民税の場合は、前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得に基づいて算出され、今年の6月から来年の5月にかけて支払うこととなっています。
1-3. 課税方式の違い
所得税には「申告納税方式」が採用されています。納税者が自ら所得や控除額を計算し、確定申告によって税額を確定させる仕組みです。ただし、会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者の場合は企業が年末調整をおこなうので、確定申告が不要となるケースが多くなります。
一方、住民税には「賦課課税方式」が採用されています。企業が提出する給与支払報告書や、個人が提出する確定申告書などの情報をもとに、自治体が所得や控除の内容を確認して税額を計算し、納税者へ通知する仕組みです。
このように、所得税は納税者が申告によって税額を確定させる税金であるのに対し、住民税は自治体が税額を決定して通知する税金である点に大きな違いがあります。
関連記事:給与支払報告書とは?書き方や提出先、期限、提出不要となる条件を解説
1-4. 税率の違い
日本の所得税は累進課税制度が採用されており、所得が増えるにつれて段階的に税率が上がる仕組みとなっています。税率は5%~45%の範囲で7段階に分けられており、所得に応じて税率を適用させます。さらに、平成25年から令和19年までの期間は、復興所得税(2.1%)が課せられているため、合わせて計算も必要です。
住民税については所得税と異なり、税率は一律10%です。このうち道府県民税(都民税)が4%、市町村民税(区民税)が6%となっています。
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
参考:個人住民税|総務省
関連記事:所得税の累進課税制度とは?年収別の計算事例や税負担軽減のポイントを紹介
1-5. 所得控除の違い
所得控除とは、税額を計算する際に一定の額を所得から差し引くことのできる制度のことです。所得控除についても、次のように所得税と住民税では控除額に違いがあります。
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所得控除 |
所得税(令和7年分) |
住民税(令和8年度) |
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基礎控除 |
最高95万円 |
最高43万円 |
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配偶者控除 |
最高38万円 ※老人控除対象配偶者は最高48万円 |
最高33万円 ※老人控除対象配偶者は最高38万円 |
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配偶者特別控除 |
最高38万円 |
最高33万円 |
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扶養控除 |
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特定親族特別控除 |
最高63万円 |
最高45万円 |
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障害者控除 |
27万円 ※特別障害者は40万円(同居:75万円) |
26万円 ※特別障害者は30万円(同居53万円) |
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寡婦控除 |
27万円 |
26万円 |
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ひとり親控除 |
35万円 |
30万円 |
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勤労学生控除 |
27万円 |
26万円 |
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社会保険料控除 |
支払った額 |
支払った額 |
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小規模企業共済等掛金控除 |
支払った額 |
支払った額 |
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生命保険料控除 |
最高12万円 |
最高7万円 |
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地震保険料控除 |
最高5万円 |
最高2.5万円 |
参考:個人住民税|東京都
参考:説明資料〔個人住民税について〕|内閣府
なお、令和7年度の税制改正により、基礎控除額の見直しや特定親族特別控除の新設などがおこなわれ、控除額の水準に変更が加えられています。
また、このほかにも「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」といった所得控除があります。これらも同様に所得から一定額を差し引く仕組みですが、総所得金額等(各種所得金額の合計額に純損失や雑損失などの繰越控除を適用した後の金額)により控除額が変動する可能性がある点に注意が必要です。
関連記事:所得控除とは?控除の種類や所得控除を受ける方法を解説
1-5. 均等割の有無の違い
住民税は、所得に応じて課税される「所得割」と、所得に関わらず定額で課される「均等割」の2種類で構成されています。ただし、生活保護を受けている人や、所得が一定以下の人などは、均等割・所得割のいずれも課税されず、いわゆる「住民税非課税世帯」となります。
均等割の標準額は、原則として4,000円(都道府県民税1,000円、市町村民税3,000円)です。これに加えて、国税として森林環境税1,000円が徴収されるため、合計で原則5,000円となります。
参考:個人住民税|総務省
関連記事:住民税非課税世帯とは?対象となる条件や優遇措置を解説
1-7. 納付方法の違い
所得税と住民税では、納付方法にも違いがあります。会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者の場合、所得税は毎月の給与から源泉徴収され、年末調整で税額が精算されます。また、自営業やフリーランスなどは確定申告により納付をおこないます。
一方、住民税は、企業が給与から天引きして自治体へ納付する「特別徴収」と、納税者本人が納付書などで自治体へ直接納付する「普通徴収」のいずれかで納付します。給与所得者については、原則として特別徴収により納付する仕組みとなっています。
関連記事:住民税の特別徴収とは?普通徴収との違いや手続きの流れを解説
関連記事:源泉所得税の納付方法は?おすすめの選び方・納付期限を解説
1-8. 非課税基準(年収の壁)の違い
所得税と住民税では非課税となる基準が異なります。そのため、所得税はかからなくても住民税は課税されるというケースが生じることがあります。
会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者の場合、給与収入からは給与所得控除の最低保障額65万円と基礎控除95万円を差し引くことができます。そのため、年収が160万円以下であれば課税所得が発生せず、所得税はかかりません。これがいわゆる「160万円の壁」とよばれるものです。
一方、住民税は自治体によって多少基準が変わりますが、例えば東京都23区で単身者の場合、合計所得金額が45万円以下であれば、均等割・所得割のいずれも非課税となります。給与収入のみの場合は給与所得控除65万円が適用されるので、年収110万円以下であれば住民税は非課税となります。この基準は一般的に「110万円の壁」とよばれています。
参考:個人住民税|東京都
関連記事:所得税は年収いくらから?年収160万円を超える場合や年末調整・確定申告の義務も解説!
1-9. 【ポイント】令和8年度税制改正による所得税と住民税への影響は?
財務省が公表している「令和8年度税制改正大綱」では、給与所得控除の最低保障額と基礎控除の引き上げが、2年連続で実施される見込みとされています。ただし、基礎控除の引き上げは所得税のみを対象としており、住民税には反映されない見通しです。
これらの改正が予定どおり実施された場合、いわゆる年収の壁は、所得税については「160万円の壁」から「178万円の壁」へ、住民税については「110万円の壁」から「119万円の壁」へと引き上げられる可能性があります。
なお、政府はすでに令和8年度税制改正に関する法案を閣議決定し、国会に提出したと報じられています。今後は、改正内容や適用時期の動向を注視するとともに、必要に応じて早めに社内体制の見直しを進めていくことが重要です。
参考:令和8年度税制改正の大綱|財務省
参考:26年度税制改正法案を国会提出 所得税「年収の壁」178万円に|Yahoo!ニュース
関連記事:年収の壁とは?税金や社会保険の負担が生じる103万、106万、130万、150万の壁を解説
2. 所得税と住民税の決定の仕組み


所得税と住民税の違いについておおよそ理解ができたところで、次はそれぞれの計算方法の違いについても詳しく見てみましょう。
2-1. 所得税の計算方法
所得税の計算は、まず1年間の総収入額のうち、課税対象となる「課税所得」を次の計算式で算出します。
①1年間の総収入額 – 必要経費 – 各種所得控除 = 課税所得
課税所得が算出できたら、次は「基準所得税額」を算出します。計算式は次のとおりです。
②課税される所得金額 × 税率 – 課税控除額 = 基準所得税額
基準所得税額を求めるための速算表については、国税庁のサイトを参照してください。
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
基準所得税額の算出ができたら、税額控除を引き、所得税額を確定します。計算式については次のとおりです。
③基準所得税額 – 税額控除 = 所得税額
参考:No.1200 税額控除|国税庁
さらに、2037年までは、「復興特別所得税」を納付する義務があります。
④基準所得税額 × 2.1% = 復興特別所得税額
参考:個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁
関連記事:【企業担当者向け】所得税計算の仕組みとは?源泉徴収・年末調整のポイントを徹底解説
2-2. 住民税の計算方法
住民税は、先に述べたとおり、「所得割」と「均等割」の2種類で構成されており、それぞれ「都道府県民税」と「市区町村民税」に分かれています。
なお、一部の自治体では法令の範囲内で独自の上乗せ(超過課税)をおこなっている場合もあります。ここでは、標準的な税率をもとに、住民税の計算方法を説明します。
所得割は、課税所得に対して一律10%を掛けて求めます。この際、所得税と住民税で人的控除額に差があることを調整するための「調整控除」や、住宅ローン控除などの「税額控除」が適用されます。
均等割は、所得に関係なく一律で課される税金で、現行は都道府県民税1,000円、市区町村民税3,000円、森林環境税1,000円の合計5,000円です。
関連記事:給与計算における住民税とは – 住民税の計算方法・納付・注意点について解説
2-3. 【具体例】所得税・住民税計算シミュレーション
ここでは、所得税と住民税の金額を簡単なモデルケースでシミュレーションしてみます。前提条件として、独身の会社員で令和7年分の給与収入が400万円であるケースを想定します。
【所得税の計算(令和7年分)】
年収400万円の場合、給与所得控除は124万円となるため、給与所得は次のように計算されます。
276万円(給与所得) = 400万円 − 124万円
今回適用できる所得控除は、次の2つとします。
- 基礎控除:88万円(合計所得金額276万円のため)
- 社会保険料控除:60万円
これらを差し引くと、課税所得は次のとおりです。
128万円(課税所得) = 276万円 − 88万円 − 60万円
課税所得121万円は所得税の税率区分では5%に該当するため、所得税額は次のように計算されます。
64,000円(所得税) = 128万円 × 5%
今回は税額控除の適用がないものと仮定するため、所得税額は64,000円となります。なお、実際の納税額を計算する際には、この所得税額に復興特別所得税が加算される点に注意が必要です。
【住民税の計算(令和8年度)】
住民税の計算の際の給与所得は所得税と同様に276万円と計算できます。しかし、住民税の基礎控除は43万円であるので、課税所得は次のように計算されます。
173万円(課税所得) = 276万円 − 43万円 − 60万円
所得割は課税所得に対して10%の税率が適用されます。そのため、所得割は次のように計算できます。
173,000円(所得割) = 173万円 × 10%
これに均等割(5,000円)を加えると、住民税は17万8,000円で計算されます。なお、調整控除は考慮しないものとします。
今回の計算シミュレーションでは、所得税よりも住民税のほうが高い結果となりました。その主な理由としては、税率と控除額の違いが挙げられるでしょう。
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3. 給与計算における所得税と住民税の計算・徴収方法


所得税や住民税の決まり方を理解したうえで、次に実際の給与計算ではそれらの税金が毎月どのように差し引かれているのかを確認してみましょう。
3-1. 所得税は源泉徴収税額表を基に計算・徴収する
所得税は、従業員が給与を受け取るたびに企業が「源泉徴収税額表」をもとに計算し、あらかじめ天引きして納める仕組みになっています。税額表では、扶養親族の人数や社会保険料控除後の給与額などを基準に細かく税額が定められており、企業はその区分に従って毎月の源泉所得税額を算出します。
ただし、このとき差し引かれる所得税はあくまで概算であり、実際の年間所得や控除額とは必ずしも一致しません。そのため、年末には1年間の給与総額や保険料・扶養控除などの情報をもとに「年末調整」をおこない、過不足を精算して正しい所得税額を確定します。年末調整の結果、納めすぎていた場合は還付され、不足していた場合は追加で徴収されます。
このように、源泉徴収と年末調整の仕組みによって、原則として従業員自身が確定申告をする必要がなく、企業を通じて正確な所得税が納付されるようになっているのです。
関連記事:所得税とは?源泉所得税や定額減税など複雑な処理を詳しく解説
3-2. 住民税は特別徴収税額決定通知書を基に徴収する
企業は毎年1月末までに「給与支払報告書」を提出し、従業員の所得情報を市区町村に報告します。市区町村はこの情報をもとに、従業員ごとの住民税額を計算します。
その後、毎年5月頃に市区町村から企業へ「特別徴収税額決定通知書」が送られます。この通知書には、各従業員の年間住民税額と、その年6月から翌年5月までの毎月の徴収額が記載されています。企業はこれに基づき、6月以降の給与から住民税を毎月差し引き、納付します。
この従業員に代わって企業が住民税を徴収・納付する仕組みを「特別徴収」とよびます。なお、年度途中で入社や退職があった場合は、徴収方法を変更する手続きが必要になることもあります。
関連記事:住民税はいつから天引きして納付する?時期や手続き方法をわかりやすく解説
3-3. 納付期限は原則として翌月10日
給与から天引きした所得税・住民税は、原則として翌月10日までに納付する必要があります。具体的には、所得税は従業員の給与を支払った企業の所在地を管轄する税務署へ、住民税は従業員の住所地の市区町村へ納めます。納付が遅れると、延滞税や不納付加算税などのペナルティが発生する可能性があるため、期限を守ることが重要です。
なお、従業員が常時10人未満の事業所では「納期の特例」を利用することで、所得税・住民税を半年ごとにまとめて納付できます。ただし、申請をおこなわなければ特例は適用されないので、事前の手続きが必要です。
3-4. 【ポイント】賞与からは所得税のみ源泉徴収(住民税は徴収しない)
所得税については、毎月の給与とは別に定められている「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を基に税額を計算します。賞与は給与とは異なり不定期に支給される性質があるため、通常の給与用の源泉徴収税額表とは別に、賞与専用の計算方法が設けられています。
一方、住民税は前年の所得を基に自治体が年間の税額を決定し、その金額を6月から翌年5月までの12ヵ月に分けて給与から徴収する「特別徴収」によって納付します。住民税はこのように毎月の給与から分割して徴収する仕組みであるので、所得税のように賞与に対して別途税額を計算して徴収する制度は設けられていません。
給与計算の実務では、このような所得税と住民税の仕組みの違いを正しく理解しておかないと、誤った税額計算や徴収漏れにつながる可能性があるため注意が必要です。
参考:No.2523 賞与に対する源泉徴収|国税庁
参考:所得税はボーナスからも徴収されていますが、住民税は徴収されていないのは、なぜですか|八潮市
関連記事:賞与(ボーナス)から引かれる源泉所得税の計算方法をわかりやすく解説
4. 所得税と住民税の相互関係と注意点


所得税と住民税は、国税と地方税という違いをはじめ、さまざまな点で異なります。しかし、まったく無関係というわけではありません。両者にはどのような関係があるのか、押さえておきましょう。
4-1. 住民税は所得税の確定申告情報を元に計算される
所得税は「申告納税方式」が採用されており、原則として自分で確定申告をおこない、納税します。確定申告の内容は税務署だけでなく市区町村にも通知され、住民税の計算に利用されます。
そのため、住民税は所得税の申告情報を基に賦課されることになります。つまり、所得税と住民税は性質の異なる税金ですが、どちらも同じ所得情報をもとに算出されるので、所得の申告が両方の税額計算の基礎になっているという関係にあります。
4-2. 年末調整をしていれば所得税の確定申告は原則不要
給与所得者(会社員やパート・アルバイト)の所得税は、原則として企業が年末調整によって計算・確定し、納税まで代行します。そのため、年末調整を受けた給与所得者は、通常、確定申告をおこなう必要はありません。また、企業が年末調整の結果を反映した「給与支払報告書」を従業員の居住する市区町村に提出することで、自治体は翌年度の住民税を計算できます。
ただし、給与収入がその年に2,000万円を超える場合など、年末調整の対象外となる従業員は、自分で確定申告をおこなう必要があります。また、副業による所得が20万円を超える場合や、医療費控除・雑損控除・寄附金控除などを受ける場合も、年末調整だけでは対応できないため、従業員自身による確定申告が必要です。
関連記事:年末調整の対象者とは?必要書類や確定申告との関係も解説
4-3. 副業所得が20万円以下の場合でも住民税申告は必要
年末調整を受けており、副業で得た所得が20万円以下の場合、原則として所得税の確定申告は不要です。しかし、住民税については、たとえ副業の所得が20万円以下でも申告が必要です。
本業の給与所得に加えて副業の所得を市区町村に申告することで、正確な課税額が算出されます。特に給与所得のみで年末調整を受けている場合は、副業の所得を申告しなければ、住民税に反映されません。
申告を怠ると、市区町村から問い合わせが入ったり、誤った課税額で住民税が課されたりする可能性があります。少額であってもほかに所得がある場合は、必ず住民税の申告をおこなうよう従業員に案内しましょう。
5. 入社・退職時に必要な所得税と住民税の実務手続き


従業員の入社や退職があった場合、企業は所得税および住民税に関するさまざまな実務手続きをおこなう必要があります。
これらの手続きは給与計算や年末調整、自治体への報告などと密接に関係しており、適切に対応しなければ税務上の誤りや事務処理の混乱につながる可能性があります。ここでは、入社時と退職時に企業が対応すべき主な所得税・住民税の手続きを整理します。
5-1. 【入社時:所得税】扶養控除等申告書を提出してもらう
従業員が入社した際には、原則として、その年に最初に給与の支払を受ける日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう必要があります。この書類は、給与から源泉徴収する所得税額を計算する際の基礎資料となる重要な申告書です。
扶養控除等申告書が提出されている場合、毎月の給与に対する所得税は源泉徴収税額表の「甲欄」を用いて計算されます。一方、この申告書が提出されていない場合には「乙欄」が適用されるので、通常よりも高い税率で所得税が源泉徴収されることになります。
また、配偶者や扶養親族の情報もこの申告書に基づいて管理され、源泉徴収や年末調整の基礎資料として利用されます。そのため、結婚や出産などにより扶養状況に変更が生じた場合には、従業員から速やかに再提出してもらうことが重要です。
参考:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁
関連記事:給与計算における所得税の計算方法とは?源泉徴収の仕組みも解説
5-2. 【入社時:所得税】前職の源泉徴収票を回収し年末調整に備える
年の途中で入社した従業員がいる場合は、前職で支払われた給与額や源泉徴収された所得税額を把握する必要があります。そのため、前職がある従業員には「源泉徴収票」を提出してもらいましょう。
企業が年末調整をおこなう際には、その年に支払われた給与の総額をもとに所得税額を再計算します。年の途中で転職している場合は、前職の給与や源泉徴収税額も含めて計算する必要があるので、源泉徴収票の内容を確認することが重要です。
なお、前職の源泉徴収票が提出されない場合は、企業側で前職の給与額を把握できないため、原則としてその企業で支払った給与のみを対象として年末調整をおこないます。その場合、前職分を含めた所得税の精算は、従業員本人が確定申告によっておこなうことになります。
関連記事:年末調整で源泉徴収票を提出しない従業員の対応方法とは?書類が必要な理由を解説
5-3. 【入社時:住民税】特別徴収・普通徴収の状況を確認する
入社した従業員については、住民税の徴収方法が「特別徴収」か「普通徴収」かを確認する必要があります。
前職がある場合、住民税が給与から天引きされる特別徴収の状態であったときは、転職後も特別徴収を継続するために手続きが必要になることがあります。この場合、基本的には退職時に作成された給与所得者異動届出書をもとに、転職先の企業(自社)が自治体へ提出すると、特別徴収を引き継ぐことが可能です。
一方、退職時の手続きによって普通徴収に切り替わっているケースもあります。企業としては、従業員に通知されている「住民税決定通知書」や自治体からの連絡を確認し、給与天引きの対象となるかどうかを把握することが重要です。
関連記事:住民税決定通知書とは?見方や再発行の方法、ふるさと納税との関係も解説!
5-4. 【退職時:所得税】源泉徴収票を交付する
従業員が退職した場合、企業は「源泉徴収票」を作成し、退職日から1ヵ月以内に本人へ交付する必要があります。源泉徴収票には、その年に企業が支払った給与額や源泉徴収した所得税額などが記載されます。
この書類は、退職後に転職した際に転職先で年末調整を受ける場合や、従業員自身が確定申告をおこなう際に必要となる重要な資料です。そのため、退職手続きの一環として、退職後できるだけ速やかに交付することが望まれます。
参考:No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁
関連記事:源泉徴収票の発行の仕方とは?いつ発行するか、どこでもらえるか解説
5-5. 【退職時:住民税】給与所得者異動届出書を作成・提出する
住民税を特別徴収していた従業員が退職した場合、企業は「給与所得者異動届出書」を作成し、従業員が居住している自治体へ提出する必要があります。
この届出書は、特別徴収の対象となっていた従業員に退職や転職などの異動があったことを自治体へ通知するための書類です。提出することで、住民税の徴収方法を特別徴収から普通徴収へ切り替えるなど、今後の徴収方法に関する手続きがおこなわれます。
なお、退職時点で未徴収の住民税が残っている場合には、退職時の給与や退職金から一括徴収する方法のほか、普通徴収へ切り替えて本人が納付する方法など、状況に応じた対応が必要になります。
また、従業員が転職する場合は、異動届出書に必要事項を記入し、退職者を通じて転職先の勤務先へ提出することで、転職先の企業が手続きをおこない、住民税の特別徴収を引き継ぐことが可能です。
関連記事:退職者の住民税特別徴収の手続きは?会社がおこなうべき対応を解説
6. 所得税と住民税に関して従業員からよくある質問と説明ポイント


所得税と住民税はどちらも給与に関係する税金ですが、仕組みや課税方法が異なるため、従業員から疑問が寄せられることも少なくありません。ここでは、企業の人事・給与担当者がよく受ける質問と、その説明ポイントについて解説します。
6-1. 所得税と住民税はどちらが高いですか?
控除の内容や金額は人によって異なるので、所得税と住民税のどちらが高くなるかは一概には言えません。一般的には、所得が低い人ほど「所得税<住民税」となりやすく、所得が高い人ほど「所得税>住民税」となる傾向があります。そのため、所得の少ない人は住民税の負担が相対的に重く感じられることがあるでしょう。
所得税は課税所得に応じて税率が変わる累進課税制度(5%~45%)で、所得が高くなるほど税率も高くなります。一方、住民税の所得割は原則として一律10%です。また、住民税には所得に関係なく課される「均等割」があり、これも低所得者にとって負担の一因となります。
6-2. 住宅ローン控除・ふるさと納税はどちらの税金から控除されますか?
住宅ローンやふるさと納税については、所得税と住民税で控除を受けられる制度があります。それぞれ「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」と「寄附金控除」とよばれ、通常の控除とは仕組みが異なります。
住宅ローン控除では、年末時点のローン残高に応じた一定額が、まず所得税から控除されます。控除しきれない分については、住民税からも一定の上限内で控除されます。会社員の場合、ローンを組んだ初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で控除手続きが可能です。
参考:所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方|総務省
ふるさと納税(寄附金控除)については、自治体に寄附した金額のうち、2,000円を除く全額(※上限あり)が所得税・住民税から控除されます。控除を受けるには原則として確定申告が必要ですが、会社員の場合はワンストップ特例制度を利用すれば確定申告を省略できます。ただし、ワンストップ特例制度を利用する場合、所得税からの控除はおこなわれず、その分も含めて翌年度の住民税から控除されます。
住宅ローン控除とふるさと納税を同時に利用する場合、住宅ローン控除の住民税からの控除上限の関係で、ふるさと納税をワンストップ特例制度で手続きした方が有利になることがあります。一方で、減税額に影響がない場合は、ワンストップ特例ではなく確定申告をおこなうことで、所得税からの還付を受けられるため、現金を早めに手元に戻せる可能性があります。
6-3. 退職金からも所得税と住民税は徴収されるのですか?
退職金は所得税と住民税が課されます。しかし、「退職所得」に区分されるため、給与や賞与といった「給与所得」と計算・徴収方法が異なります。
まず、所得税については、退職金の支給時に源泉徴収されます。この際、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職所得控除を反映した税額で源泉徴収されます。申告書を提出していない場合は控除が適用されず、税額が高くなる可能性があるので注意が必要です。
参考:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
次に、住民税も退職金に課されますが、支給時に差し引かれ、退職した年の1月1日時点で住んでいた市区町村に納付されます。住民税の課税方式は、原則として現年分離課税主義に基づき、退職所得のみを対象に計算されます。そのため、給与所得とは別に課税される点が特徴です。また、「普通徴収」を選択している場合でも、退職金は「特別徴収」によって徴収されるので注意が必要です。
参考:地方税法第328条~第328条の7|e-Gov法令検索
関連記事:退職金にかかる税金は?計算方法や退職金控除についても解説
7. 所得税と住民税の違いを理解して正確な計算と説明ができるようにしよう


所得税と住民税はいずれも個人の所得に課される税金ですが、納付先や計算方法には違いがあります。例えば、所得税は国に納めるのに対し、住民税は居住する自治体に納める必要があります。また、税率や控除額、課税の仕組みも異なるため、正確な計算には注意が必要です。
このような違いを踏まえ、給与計算や年末調整を正確におこなうには、必要な情報を入力するだけで自動計算してくれる給与計算ソフトの活用が効果的です。これにより、納税ミスを防ぎつつ、業務効率の向上も期待できます。



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