所得税と住民税の違いは?高いのは?計算方法の違いについても解説
更新日: 2024.3.5
公開日: 2022.3.8
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私たちの生活にはさまざまな税金が関係していますが、最も身近な税金といえば消費税です。次いで身近な税金は所得税や住民税ではないでしょうか。どちらも所得を元に税額を計算するため、給与計算担当者の中には所得税と住民税を混同してしまっている方も少なくないでしょう。
そこで今回は、所得税と住民税がそれぞれどのような税金で、どのような違いがあるのかといったことや、その計算方法などについて詳しく解説します。
給与計算業務は税務リスクや労務リスクと隣り合わせであるため、
・税額が合っているか不安
・税率を正しく計上できているか不安
・自社に合った税金計算方法(システム導入?代行依頼?)がわからない
というような悩みをお持ちのご担当者様は多いと思います。
そのような方に向け、当サイトでは所得税と住民税の正しい計算方法、税金計算時によく起きるミスとその対策をまとめた資料を無料で配布しております。
本資料にて、税金計算のミスを減らしたり、効率化が図れる給与計算システムの解説もあるので、税金計算をミスなく効率的に行いたいという方は、こちらから「所得・住民税 給与計算マニュアル」をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 所得税と住民税の違い
所得税も住民税も、個人の1年間の所得額に応じてかけられる税金ですが、それぞれ納める先が異なる全く別の種類の税金です。
所得税と住民税、それぞれの税金にどのような違いがあるのか、さらに詳しく見てみましょう。
1-1. 国税と地方税の違い
税金は大きく分けると2種類あります。国に納める国税と、都道府県や市町村など地方公共団体に納める地方税です。このうち、所得税は国税、住民税は地方税に該当します。
さらに、国税・地方税には、納税義務者と納付者が同じである直接税と、納税義務者と納付者が異なる間接税に分けることができます。なお、所得税は国税の直接税、住民税は地方税の直接税です。
本来は、所得税も住民税も納税者義務者がそれぞれの納付先へ直接納税するものですが、会社員の場合は事業主が代わりに徴収して納税する仕組みとなっています。
1-2. 課税対象年度の違い
所得税はその年の所得に対して課税されるのに対し、住民税は前年の所得に基づいてその年の課税額が決まるといった違いもあります。
具体的に説明すると、所得税の場合、その年の所得額に対して年末調整または確定申告をおこなうことで、最終的な所得税額を確定させます。概算で支払った所得税額に過不足があった場合は、年末調整後または確定申告後に還付または控除します。
一方で、住民税の場合は、前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得に基づいて算出され、翌年の6月から翌々年の5月にかけて支払うこととなっています。
1-3. 税率の違い
日本の所得税は累進課税制度が採用されており、所得が増えるにつれて段階的に税率が上がる仕組みとなっています。税率は5%~45%の範囲で7段階に分けられており、所得に応じて税率を適用させます。さらに、平成25年から令和19年までの期間は、復興所得税(2.1%)が課せられているため、合わせて計算も必要です。
住民税については所得税と異なり、税率は一律10%です。このうち道府県民税(都民税)が4%、市町村民税(区民税)が6%となっています。
参照:No.2260 所得税の税率|国税庁
参照:個人住民税|総務省
1-4. 所得控除の違い
所得控除とは、税額を計算する際に一定の額を所得から差し引くことのできる制度のことです。所得控除ついても、所得税と住民税では金額に違いがあります。
例えば基礎控除で両者を比較してみると、所得税が16~48万円の控除額に対し、住民税は15~43万円の控除額となっています。
他の所得控除の項目でも金額が異なっているため、所得税と住民税の計算をおこなう際は、所得控除額を誤って適用させないように注意しましょう。
1-5. 均等割の有無の違い
住民税は所得に応じて課税される「所得割」と、所得に関わらず同じ自治体であれば皆一律に割り当てられる「均等割」の2種類から構成されています。均等割が非課税となる一部の人を除いては、所得のない人であっても、「均等割」を納付しなければなりません。
なお、均等割は平成25年から令和5年までの間、一律5,000円(市民税3,500円、県民税1,500円)となっています。
所得税についてはこの「均等割」がないため、住民税と異なり、所得が少ない場合は非課税となることがあります。
関連記事:所得税とは?納税方法や確定申告が必要な人・不要な人について解説
関連記事:住民税の納付方法|企業側がすべき手続きの流れをわかりやすく解説
2. 所得税と住民税の計算方法の違い
所得税と住民税の違いについておおよそ理解ができたところで、次はそれぞれの計算方法の違いについても詳しく見てみましょう。
2-1. 所得税の計算方法
所得税の計算は、まず1年間の総収入額のうち、課税対象となる「課税所得」を次の計算式で算出します。
①1年間の総収入額-必要経費-各種所得控除=課税所得
各種所得控除については、基礎控除や扶養控除などの「人的控除」と、生命保険料控除や地震保険料控除などの「物的控除」があり、所得税か住民税かによってもその控除額が変わります。詳しい控除額については国税庁のサイトにて確認ができます。
課税所得が算出できたら、次は「基準所得金額」を算出します。計算式は以下のとおりです。基準所得税額を求めるための速算表については、国税庁のサイトを参照してください。
②課税される所得金額×税率-課税控除額=基準所得金額
基準所得税額の算出ができたら、税額控除を引き、所得税額を確定します。計算式については次のとおりです。税額控除についても国税庁のサイトで確認ができます。
③基準所得税額-税額控除=所得税額
さらに、2037年までは、「復興特別所得税」を納付する義務があります。
④基準所得税額×2.1%=復興特別所得税
関連記事:所得税の計算方法は?計算を効率良くおこなう方法や年収が変わった場合について
2-2. 住民税の計算方法
住民税は、先にご説明したとおり、所得に応じて課税される「所得割」と、同じ自治体であれば所得に関わらず皆一律に割り当てられる「均等割」の2種類で構成されています。
また、一部の地域においては法令の範囲内において独自の上乗せをしている場合もありますが、ここでは「所得割」と「均等割」の2つの合計額から成る住民税の計算方法をご紹介します。
最初に、所得割も均等割も、実はそれぞれ「都道府県分」と「市区町村分」で構成されています。分かりやすく式に表すと次のようになります。
所得割(都道府県分+市区町村分)+均等割(都道府県分+市区町村分)=住民税
では、まず所得割について計算をしましょう。所得税と同様に1年間の総収入額から各種控除額を引き、「課税所得」を算出します。各種控除額については自治体のホームページや窓口から確認してください。次に、課税所得に所得割額を掛けます。
なお、基本的に所得割額は税率が一律10%になっており、内訳は、道府県民税(都民税)が4%、市町村民税(区民税)が6%です。つまり、所得が多ければその分所得割額も多くなり、納税額も多くなります。
計算式としては、次のようになります。
①(総収入額-各種控除×4%)+②(総収入額-各種控除×6%)+均等割-調整控除=住民税
ここにある、調整控除とは、所得税から個人住民税への税源移譲に伴って、所得控除額が小さいことにより、住民税の課税所得金額が増額することに対しての緩和措置によるものです。調整控除は「所得税の人的控除金額」と「市県民税の人的控除の差額」と年間の合計所得金額で計算をおこないます。
さらに、調整控除は、合計課税所得金額が200万円以下の場合については、人的控除の差額のうち、適用のある控除の金額を合計した金額と、合計課税所得金額のいずれかの小さい額の5%(市民税3%・県民税2%)にあたる金額となります。
一方、合計課税所得金額が200万円を超える場合は、人的控除の差額のうち、適用のある控除の金額を合計した金額より合計課税所得金額の200万円を控除した金額相当になります(5万円を下回る場合には5万円)の5%(市民税3%・県民税2%)。
そして、均等割についての計算です。均等割は先にお伝えしたとおり、同じ自治体であれば皆一律に割り当てられます。具体的な金額としては、道府県民税(都民税)が1,500円、市町村民税(区民税)が3,500円の計5,000円が標準となります。
ただし、自治体によっては金額が異なることがあるため、各自治体の窓口やホームページで確認することをおすすめします。
当サイトでは、住民税の計算方法を図を用いてわかりやすく解説した資料を無料で配布しております。
また、本資料には上記の内容以外にも、本記事で解説した所得税と住民税の違いや気を付けるべきポイントもまとめておりますので、税金に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「所得・住民税 給与計算マニュアル」をダウンロードしてご確認ください。
3. 所得税と住民税どちらが高い?
ここまで所得税と住民税の計算方法をご紹介してきましたが、所得税と住民税の計算方法は似てはいるものの、控除額や税率が異なるため、最終的な税額も異なってきます。税率は、所得税の場合は課税所得に応じて異なり、課税所得が高くなれば税率も高くなります。
一方、住民税の場合、所得割額の税率は所得に関わらず一律10%です。つまり、人それぞれ適用のある控除が異なりますので、一概にどちらが高いとは言えませんが、考え方としては、所得の低い人の方が「所得税<住民税」となり、所得が高い人の方が「所得税>住民税」となる傾向にあるといえるでしょう。
4. 住宅ローン・ふるさと納税が控除されるのは?
住宅ローン減税制度やふるさと納税制度による所得税・住民税の税額控除は、従業員からの問い合わせが多い内容でもあるため、ここで控除の仕組みについて押さえておきましょう。
住宅ローン減税制度は、住宅ローンの年末残高の1%を最大13年間にわたり所得税から控除できる制度です。毎年40万円が上限となっており、所得税で控除しきれなかった分は、住民税からも一部控除できる仕組みとなっています。
会社員の場合、ローンを組んで1年目は確定申告、2年目以降は年末調整で税額控除の手続きをしなくてはいけません。
ふるさと納税制度については、自治体に寄付した額のうち、2,000円を除く全額が所得税と住民税から控除される制度です。税額控除を受けるには、原則確定申告が必要ですが、平成27年4月よりワンストップ特例制度が利用できるようになりました。
この制度を利用すれば、確定申告をしなくて済みますが、控除を受けられるのが住民税のみとなるため、所得税でも控除を受けたい場合は、本人自らが確定申告をする必要があります。
5. 所得税と住民税の違いを押さえて正しく納付しよう
所得税と住民税は似ている部分もありますが、納付先や計算方法に微妙な違いがあることがおわかりになったかと思います。税率や控除額、計算方法などが異なるため、所得税や住民税の計算は必要事項を入力すれば自動計算される計算ソフトやクラウドサービスの利用がおすすめです。
税金によって計算式には違いがあるということを理解し、正しい計算で正しい納付ができるようにしましょう。
関連記事:ふるさと納税の仕組みと5つのメリットや現状を解説|digmar
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