給与明細の「その他控除」って何?具体例や法定控除との違いを解説
更新日: 2025.4.16
公開日: 2025.4.16
OHSUGI
「給与明細に記載するその他控除に何を含めてよいのかわからない」
「その他控除の計算方法がわからない」
上記のお悩みはないでしょうか。その他控除は法定外控除などともいい、法律で定められた法定控除とは区別して給与明細を作らなければいけません。
本記事では、その他控除と法定控除の違いやその他控除に該当する控除の例、その他控除の計算方法などを解説します。
控除額のミスを予防する方法も解説するので、正確な給与明細を作るための参考にしてください。
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
・標準報酬月額の算定や月変にも対応しており、計算ミスを減らせる
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1. 給与明細のその他控除とは
給与明細のその他控除とは、会社が独自に控除する項目です。「法定外控除」や「協定控除」ともいいます。社会保険料や所得税などとは違い、法律で定められた控除項目ではありません。
その他控除を適用するには、労働基準法24条にもとづき、給与控除に関する労使協定が必要になります。会社と労働者代表の間で書面での締結がなされない限り、会社側は勝手にその他控除の項目を決められません。
その他控除に関する労使協定書には、以下の内容が必要です。
- 控除対象の具体的項目
- 控除をおこなう賃金の支払日
- 協定の有効期間
必ず労使協定書の内容に含めましょう。
2. その他控除と法定控除の違い
その他控除と法定控除の違いは、法律で控除が定められているかどうかです。
その他控除は法律で定められている項目ではなく、労使協定によって会社と労働者が独自に内容を取り決めます。そのため具体的な項目や金額は会社によりさまざまです。
一方、法定控除は法律で控除するよう決められており、主に以下が該当します。
- 雇用保険料
- 厚生年金保険料
- 健康保険料
- 介護保険料
- 所得税
- 住民税
法定控除は社会保険料と税金で構成されています。社宅費や労働組合費など、社会保険や税金に当てはまらないものはすべてその他控除です。
3. その他控除に該当する9つの控除の例
その他控除に該当する控除の例は以下のとおりです。
- 寮費・社宅費
- 労働組合費
- 財形貯蓄
- 持株会費
- 社内預金
- 親睦会費
- 社内旅行の積立金
- 会社が一時的に立て替えた際の返済金
- 従業員貸付制度の返済金
なお、会社によっては適応できない控除項目もあります。労使協定で明記していない場合は控除できない点を理解しておきましょう。
3-1. 寮費・社宅費
会社が従業員用の寮や社宅を保有している場合は、家賃や光熱費などをその他控除として給与から天引きします。
3-2. 労働組合費
会社に労働組合があり、従業員が労働組合に加入している場合は、組合費もその他控除に該当します。
3-3. 財形貯蓄
従業員が勤労者財産形成促進制度を利用している場合は、資産形成の一つとして給与から毎月控除し、契約先の金融機関に積み立てます。
3-4. 持株会費
会社に従業員持株会があり、従業員が会員である場合は、保有口数に応じて控除します。
3-5. 社内預金
従業員が社内預金を利用する場合は、給与から控除して会社が従業員の預貯金を管理します。
3-6. 親睦会費
親睦会のある会社では、会員を対象にその他控除として親睦会費を控除することがあります。使い道は親睦のための行事運営費や冠婚葬祭時の慶弔金などです。
3-7. 社員旅行の積立金
社員旅行のある会社では、従業員の給与から積立金を毎月控除し、社員旅行の宿泊費や交通費にあてる場合があります。
3-8. 会社が一時的に立て替えた際の返済金
給与の前貸しや休職中の社会保険料など、会社が従業員に対して立て替えた費用がある場合は、返済金をその他控除として給与から控除します。
3-9. 従業員貸付制度の返済金
従業員が会社からお金を借りられる「従業員貸付制度」がある場合は、返済金をその他控除として天引きする場合があります。
4. その他控除の計算方法
その他控除の計算方法は、会社と労働者が合意した協定内容によって異なります。法律で計算方法が決まっている法定控除と違い、会社による計算方法の指定が可能です。
一般的なその他控除の計算方法として、寮費や社宅費は実際の家賃に合わせて控除額を計算しましょう。財形貯蓄や社内預金などは従業員の希望に合わせて計算してください。
親睦会費や社員旅行の積立金などは、必要な総額に合わせて会社側である程度自由に控除額を決められます。ただし、従業員全員が納得できる計算方法を設定し、控除額が具体的に何に使われるのか説明できるようにしましょう。
なお、具体的な控除項目に関係なく、その他控除はあらかじめ結んだ労使協定に従って計算しなければいけません。
労使協定の内容と異なる項目や金額を控除すると労働基準法違反となるため、人事担当者は自社の労使協定をよく理解し、正しい計算方法で給与を計算しましょう。
5. 控除額のミスを防ぐ6つの方法
控除額のミスを防ぐ方法は以下のとおりです。
- チェック体制の整備
- スケジュールの見直し
- 適材適所の人事
- 研修の実施
- 専門家への依頼
- 給与計算システムの利用
5-1. チェック体制の整備
控除額のミスを防ぐには、社内のチェック体制を整えましょう。
どれだけ経験の長い従業員でも、計算ミスをすることはあります。作業中のミスを完全に防ぐことは難しくても、ミスを発見できる体制を作ることで、毎月正しい控除額を算出可能です。
人為的なミスを防ぐため、ダブルチェック、できればトリプルチェックまでできる体制を整えましょう。
給与計算をおこなう従業員が一人しかいない場合は、チェックリストを作成してください。業務をおこなう際は必ずチェックリストで確認するよう習慣づけさせ、計算ミスや漏れを防ぎましょう。
5-2. スケジュールの見直し
控除額のミスを予防するには、締日から支給日までのスケジュールを見直しましょう。
締日から支給日までがタイトなスケジュールだと、余裕をもって作業ができず計算ミスの原因になります。
例えば、25日締め当月30日払いの場合、給与計算の時間が5日しかありません。どうしても当月払いにする場合は、控除額は翌月の給与から引くなどすると、経理や人事の担当者が余裕を持って控除額を計算できます。
翌月払いにしている会社でも、締日を過ぎてからの勤怠の変更があるなど、計算を複雑にする悪い習慣がないか確認しましょう。
5-3. 適材適所の人事
控除額のミスを防ぐには、従業員の適正を考慮した適材適所の人事を心がけましょう。
人には得手不得手があり、何かの分野で非常に優れている人も、苦手な作業ではミスを連発することがあります。法務や購買などで活躍している人も、控除額の把握など給与計算は苦手かもしれません。
本人の希望や適性検査の結果などをふまえ、適材適所の人事により控除額の計算ミスを予防しましょう。
5-4. 研修の実施
控除額のミスを防ぐため、とくに新入社員を対象に給与計算に関する研修をおこないましょう。
給与計算は単に出勤日数をもとに計算すればよいのではなく、労使協定や社会保険の知識に基づいた正しい処理が必要です。
さまざまなルールを理解したうえで支給額や控除額を計算できるよう、研修など学習の機会を設けてください。
一度の研修で終わるのではなく、定期的に理解度テストを実施したり、要点をまとめた資料を配布したりして、正しい知識を身につけさせましょう。
5-5. 専門家への依頼
控除額のミスを予防するには、専門家への依頼も方法の一つです。
税理士や社労士、経理代行サービスなど、給与計算を代理でおこなっている専門家は多数います。外注費は発生しますが、ミスが起きるリスクを大きく下げられる点がメリットです。
社内に給与計算に関する業務に適した人材がいない場合や、チェック体制が整えられない場合などに利用するとよいでしょう。
5-6. 給与計算システムの利用
控除額のミスを防ぐには、給与計算システムの利用も検討しましょう。
給与計算システムを使えば、控除額や税金の計算が自動でできるため、人為的なミスを予防できます。勤怠管理システムやソフトと連携できるものであれば、データの反映ミスもないためより正確な給与明細の作成が可能です。
コストや機能を比べ、自社に適した給与計算システムを使ってみましょう。
6. その他控除の内容を理解して正確な給与明細を作ろう
その他控除は会社が独自に控除する項目で、具体的な項目や計算方法は会社によって異なります。ただし会社が勝手に控除してよいのではなく、給与控除に関する労使協定の締結が必要な点に注意しましょう。
その他控除や法定控除など、控除額のミスを防ぐにはチェック体制の整備や給与計算システムの利用などがあります。
その他控除に該当する項目や計算方法をよく理解し、ミスのない正確な給与明細を作りましょう。
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