時間外労働の上限規制とは?違反する具体例や超えないためのポイントを解説
更新日: 2024.4.12
公開日: 2021.11.12
OHSUGI
2019年4月、労働基準法の改正により「時間外労働の上限規制」が規定されました。従来も時間外労働には限度基準告示がおこなわれていましたが、強制力や罰則がなく、さらに特別条項付き36協定を締結することで、実質上限なく残業をさせることが可能でした。今回の法改正は、明確に時間外労働の上限を規定して罰則を設けることで、労働者の健康や権利を確保する内容となっています。
この記事では、法改正で規定された「時間外労働の上限規制」について注意点とともに解説します。よりよい労働環境を整えるためにも、正しい残業との向き合い方を押さえておきましょう。
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時間外労働の定義とは?知っておきたい4つのルール
残業時間は労働基準法によって上限が設けられています。
しかし、法内残業やみなし残業・変形労働時間制などにおける残業時間の数え方など、残業の考え方は複雑であるため、どの部分が労働基準法における「時間外労働」に当てはまるのか分かりにくく、頭を悩ませている勤怠管理の担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは労働基準法で定める時間外労働(残業)の定義から法改正によって設けられた残業時間の上限、労働時間を正確に把握するための方法をまとめた資料を無料で配布しております。
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目次
1. 時間外労働の上限規制とは?
上限規制を知らないまま従業員を働かせてしまうと、労働基準法違反となり、6ヵ月以下の懲役もしくは30万円下記の罰金が科されるおそれがあります。そのため、上限規制について知っておくことは、使用者にとって重要なことなのです。
まずは、時間外労働の上限規制について知識を身につけていきましょう。
1-1. 法定時間外労働と所定時間外労働の違い
時間外労働には2つの種類があり、一般的に時間外労働は「法定時間外労働」を意味しています。
法定時間外労働とは、労働基準法の第32条に定められた、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超過して労働させることを指します。例えば週に5日8時間働く会社の場合、これを超えた残業時間や休日出勤の分の労働時間が時間外労働に該当するというわけです。
他方で所定時間外労働とは、会社が法定労働時間内で定めた所定労働時間を超過して労働させることです。会社は、法定労働時間と週に1日もしくは4週に4日の「法定休日」さえ守っていれば、自由に労働時間を定めることができます。例えば、「週に4日×8時間=32時間」や「週に4時間×6日=24時間」という労働時間を定められるのです。
所定労働時間を超過して働いた場合でも、法定労働時間内であれば上限規制には抵触しません。上限規制は、法定労働時間を超過した場合にのみ適用されることを押さえておきましょう。
1-2. 時間外労働には上限規制がある
法定労働時間を超過して労働をする場合は、上限規制が適用されます。具体的な労働時間の上限は、下記のとおりです。
- 月間45時間
- 年間360時間
原則として、上記の時間を遵守して従業員を労働させないと、労働基準法違反となって罰則が課されるため注意しましょう。
なお、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合は、下記のように労働時間の上限規制が緩和されます。
- 年間720時間以内
※月45時間を超えられるのは年間6ヵ月まで - 2~6ヵ月平均80時間以内
- 月間100時間未満
※休日労働を含む
ただし上記は例外的な特別措置であり、原則は月間45時間以内に収めることが求められています。使用者は、上記の上限制限を遵守するようにしましょう。
1-3. 時間外労働は上限の範囲内でも「36協定が必要」
従業員に時間外労働をさせるときは、「時間外、休日労働に関する協定届(36協定)」を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられています。この36協定では、あらかじめ時間外労働に携わる業務の種類や、1日・1ヵ月・1年あたりの上限時間を定めておかなければなりません。
特別な理由があって労働時間の上限規制を緩和させたい場合は、「特別条項付き36協定」を締結することになります。ただし、特別条項付き36協定は期限が定められており、従業員への負担も大きいです。そのため、本当にやむを得ない理由がある場合のみ、適用させるようにしましょう。
2019年の法改正によって上限規制が適用されましたが、ぞれ以前は無制限に残業が可能でした。今でも長時間の残業をさせている企業もあるかと思いますが、罰則の対象になるので見直しが必要になります。当サイトでは、法改正前後での変更点や上限規制の内容をまとめた資料を無料で配布しております。自社が違法行為をしていないか不安な方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
2. 時間外労働の上限規制が猶予・除外されている業種とは?
ここでは時間外労働の上限規制が猶予もしくは適用除外されている業種について解説します。
2-1. 時間外労働の上限規制が猶予されている業種
時間外労働の上限規制に猶予期間が設けられている業種は次のとおりです。
- 建設業
- 運送業
- 医師
- 鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業
これらの業種は2024年3月31日まで、時間外労働の上限規制が猶予されています。しかし、2024年4月1日からは時間外労働の上限が規制されるため、運転手をはじめ自社の従業員の適切な勤怠管理を心掛けましょう。
2-2. 時間外労働の上限規制から除外されている業種
建設業や運送業といったように時間外労働の上限規制に猶予期間が設けられている業種がある一方、上限規制から適用除外されている業種もあります。時間外労働の上限規制から適用除外される業種は次のとおりです。
- 新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務
厚生労働省は上限規制の適用除外にあたる「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」について次のように定義しています。
専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいい、既存の商品やサービスにとどまるものや、 商品を専ら製造する業務などはここに含まれません。
引用:時間外労働の上限規制が適用除外とされている「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」(労基法36⑪)の具体的な範囲を教えてください。|確かめよう労働条件
新たな技術や商品などの開発についての業務は時間外労働の上限規制には当てはまりません。しかし、週40時間かつ月100時間勤務した場合は、医師の面接指導が必要です。
なお、新たな技術や商品などの開発についての業務以外にも管理職(管理監督者)も上限規制の対象とはなりません。
3. 時間外労働の上限規制に違反するケース
時間外労働の上限規制に違反すると罰則が科せられる可能性があります。時間外労働の上限規制に違反するケースとして、次の3つについて解説します。
- 36協定がなく従業員を残業させた
- 年間7回、時間外労働が月45時間を超えた
- ひと月の時間外労働が合計100時間を超えた
- 時間外労働の合計が2〜6ヵ月平均で80時間を超えた
3-1. 36協定がなく従業員を残業させた
従業員が時間外労働(残業)をするには、会社と36協定を結んでいることが条件です。そのため、36協定を締結していないのに従業員が時間外労働をすることは認められません。
36協定を締結していないにも関わらず従業員に時間外労働をさせた場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
3-2. 年間7回、時間外労働が月45時間を超えた
月の時間外労働は原則45時間です。しかし、特別条項付きの36協定を結んでいる場合、45時間を超える時間外労働が可能です。だからといって何時間でも時間外労働が認められるわけではありません。月45時間を超える時間外労働が認められるのは年間6回までです。そのため、月45時間を超える時間外労働が年間7回あった場合は上限規制に違反してしまいます。
3-3. ひと月の時間外労働が合計100時間を超えた
特別条項付きの36協定を結ぶことで、月の時間外労働時間が45時間を超えることが認められます。しかし、ひと月の時間外労働が100時間を超えることは認められません。そのため、ひと月の時間外労働が100時間を超えると法令違反とみなされかねません。
3-4. 時間外労働の合計が2〜6ヵ月平均で80時間を超えた
時間外労働の合計が2〜6ヵ月平均で80時間を超えた場合も法令違反として扱われます。そのため、従業員の時間外労働時間を普段から把握して、月の平均の時間外労働が80時間に収まるようにしましょう。
4. 時間外労働の上限規制を超えないためのポイント
この章では、上限規制を超過しないためのポイントを紹介します。
4-1. 現状を把握する
残業を上限規制内に収めるためには、現状を正しく管理することが肝心です。残業の原因となるのは、1つだけはありません。「仕事に集中していない人がいる」「業務が偏りすぎている」など、さまざまな要因が挙げられます。
どこでどうして残業が発生しているのかを把握できなければ、どれだけ使用者が取り組んでも残業を減らすことはできません。今の労働時間だけを見るのではなく、業務ごとに必要な時間を割り出し、削減できるように改善していくことを意識しましょう。
現状を把握して労働時間を管理するためには、業務フローの見直しと同時に勤怠管理システムを導入することがおすすめです。労働時間を正しく管理できて集計も簡単におこなえるため、労働時間の上限規制対策には最適です。
4-2. 残業を管理する
残業を管理することも、上限規制を遵守することには有効です。サービス残業が多い会社は、正確な労働時間の管理が難しくなります。法定を遵守して従業員の健康を維持するためにも、サービス残業はやめさせましょう。
また、残業を事前許可制にしたりノー残業デーを設けたりするなど、残業を減らすように取り組むことも有効です。ただし、残業を禁止するだけでは業務が圧迫されてしまいます。IT化や業務効率の改善など、従業員の仕事量を調整することも意識しましょう。
関連記事:ノー残業デーを導入するメリット・デメリットと継続のコツ | jinjerBlog
5. 時間外労働の上限規制が猶予・除外されている業種とは?
上限規制は、基本的にどのような会社にも適用される規定です。しかし、一部の業種では上限規制が猶予・除外されています。
最後に、時間外労働の上限規制が適用されない業種について見ていきましょう。
5-1. 時間外労働の上限規制が猶予されている業種
厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』にあるとおり、下記の業種では、2024年3月31日まで上限規制が猶予されます。
建設事業 |
災害の復旧・復興の事業に関しては、以下の規制が適用されない
|
自動車運転の業務 |
猶予期間後は、年間上限960時間となる ただし、以下の規制は適用されない
|
医師 | 具体的な上限時間は今後省令で定める |
鹿児島県および沖縄県における砂糖の製造業 |
以下の規制が適用されない
|
5-2. 時間外労働の上限規制から除外されている業種
新技術・新商品等の研究開発業務は、特殊な業務であるため上限規制の適用が除外されています。
ただし、1週間あたり40時間以上労働した時間が月100時間を超過した労働者に対しては、医師の面接指導が罰則付きで義務付けられました。使用者は面接指導をおこなった医師の意見を踏まえ、就業場所の変更や職務内容の変更、有給休暇の付与などの措置を講ずる必要があります。
6. 時間外労働の上限規制を遵守した労働環境を整えよう
残業を上限規制内に収めるためには、労働時間を適切に管理して残業を減らす工夫が必要です。勤怠システムを活用すれば労働時間を管理しやすくなるため、労働時間に課題に感じているのであれば、ぜひ検討してみてください。
残業時間は労働基準法によって上限が設けられています。
しかし、法内残業やみなし残業・変形労働時間制などにおける残業時間の数え方など、残業の考え方は複雑であるため、どの部分が労働基準法における「時間外労働」に当てはまるのか分かりにくく、頭を悩ませている勤怠管理の担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは労働基準法で定める時間外労働(残業)の定義から法改正によって設けられた残業時間の上限、労働時間を正確に把握するための方法をまとめた資料を無料で配布しております。
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