有給休暇の事前申請は義務化可能?有給申請は何日前まで?ルールも紹介
更新日: 2026.6.30 公開日: 2020.4.23 jinjer Blog 編集部

有給休暇の事前申請は制度化が可能ですが、ルールが曖昧なままだとトラブルの原因にもなりかねません。適切なルールを就業規則に明記し、社内に周知徹底することで、労使双方にとって円滑な休暇管理が実現できます。
本記事では、有給休暇の事前申請を制度化するための具体的な手順や、就業規則に盛り込むべき項目、当日・事後申請の扱いまで労働基準法に基づくわかりやすく解説します。
有休取得のルールがしっかりと社内で整備されていないため、人や部署によって申告のタイミングや内容がまちまちで管理が大変といったお悩みはありませんか?
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目次
1. 有給休暇の事前申請は義務付けやルール化ができる?


年次有給休暇の事前申請を制度化・義務付けることは可能なのか、まずは原則や制度化する場合に必要な手順を把握しておきましょう。
1-1. 労働基準法上は事前申請が原則
年次有給休暇の事前申請制は制度化・義務付けることが可能です。
労働基準法第39条第5項には次の規定があります。
【労働基準法第39条第5項】
使用者は、前各項による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
有給休暇は、本来「労働者の請求する時季」に応じて与えられる休暇です。つまり、あらかじめ時季を指定し、〇月〇日に取得したいと申し出ることによって、労働者は有給休暇を取得できます。これを「時季指定権」といいます。
一方、使用者は「事業の正常な運営を妨げる場合」があれば、労働者の指定した時季ではなく、別の時期に有給休暇を取得させることができます。この権利を「時季変更権」といいます。
しかし、事後に有給休暇の申請がおこなわれた場合、使用者は事前に事業への支障の有無を判断できず、時季変更権を適切に行使することが困難になります。そのため、使用者が「事業の正常な運営を妨げるかどうか」を事前に判断できるようにする観点から、有給休暇は事前申請による取得が原則とされています。
この他にも有給休暇については付与の要件や日数について労働基準法で定めています。労働基準法に定められた有給のルールを網羅的に確認しておきたい方は、次の記事をご覧ください。
▶有給休暇の労働基準法における定義|付与日数や取得義務化など法律を解説
1-2. 事前申請のルールは就業規則に明記する
有給休暇の事前申請を制度として運用する場合、そのルールを就業規則に定めておくことは有効とされています(電電公社此花電報電話局事件・昭和57年3月18日)。規定がない場合には、従業員に対して事前申請を徹底させることが難しくなるため、明確なルール整備が重要です。
また、事後申請に期限を設ける場合には、労働者に過度な不利益とならないよう、合理的な範囲で設定する必要があります。たとえ就業規則で定めた申請期限を過ぎた場合であっても、それのみを理由として有給の取得そのものを拒否することはできません。
さらに、急病や忌引きなど、やむを得ない事情がある場合には事後申請を認める運用をおこなっている企業も少なくありません。こうした例外的な取扱いについても就業規則に明文化しておくことで、運用上のトラブル防止につながります。
関連記事:有給休暇の義務化で就業規則を変更する場合の注意点と記載例
1-3. ルール変更後は従業員への周知が不可欠
有給休暇の事前申請を制度として運用するために就業規則を変更する場合には、労働基準法に基づき、その内容を従業員へ周知することが義務付けられています。これを「就業規則の周知義務」といいます。周知の具体的な方法については、労働基準法施行規則第52条の2で次のように定められています。
【就業規則の周知義務】労働基準法施行規則第52条の2
一 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は掲げる方法とする
二 書面を労働者に交付すること
三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
例えば、社内掲示板への掲示や書面の配布に加え、パソコンやタブレットなどを用いて、従業員がいつでも就業規則を閲覧できる環境を整備することが求められます。なお、適切に周知されていない就業規則は効力を持たず、従業員を拘束することはできません。
不要なトラブルを防ぐためにも、有給休暇の管理ルールなどを含めた就業規則の変更をおこなう際には、必ず従業員への周知を徹底することが重要です。また、新たな社内ルールを設ける場合には、法令に違反していないか事前に確認するようにしましょう。
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2. 有給休暇の申請ルールで決めるべきこと


有給休暇の事前申請を制度化するには、申請のルールや取得方法を就業規則に記載する必要があります。
有給休暇の申請ルールを作成する際は、「申請方法」「申請期限」「当日申請」「事後申請」「時季変更権の行使」などについてルールを定めるとよいでしょう。一つずつ解説していきます。
2-1. 申請方法
有給休暇の申請については、「どの方法で」「誰に対して申請するのか」をあらかじめ明確に定めておくことが重要です。具体的な申請手段には次のようなものが挙げられます。
- 口頭
- 申請書
- コミュニケーションツール(社内メールやチャットなど)
- クラウドサービス
ただし、口頭のみの申請の場合は、日付の聞き違いや申請を受けた側の失念といったトラブルが生じる可能性があります。そのため、申請内容が記録として残る申請書やデジタルツールを活用することが望ましいでしょう。
また、いずれの申請方法を採用する場合であっても、有給休暇を取得する日付や時間(時間単位の取得を認めている場合)を必ず記載させるとともに、申請先となる担当者や承認者を明確にしておくことが必要です。
2-2. 申請期限
有給休暇の申請期限について、労働基準法では具体的な定めはなく、「取得希望日の何日前までに申請するか」は各企業が独自にルールとして定めることになります。
ただし、申請期限は、使用者が時季変更権を行使するか否かを判断するために必要な期間を設定する必要があります。
もし従業員が希望している有給取得日が繁忙期と重なっている場合、代わりの人材確保や業務量配分調整などをしなければなりません。そのことを考慮すると前日の申請では間に合わないでしょう。
逆に、使用者側が前もって業務の調整をしたいからといって1ヵ月前までの申請とした場合、従業員は有給休暇を使いにくくなってしまいます。業務上の合理的な必要性がないにもかかわらず取得を実質的に制限するような運用は、不当な取得妨害と判断され、労働基準法上問題となる可能性があります。
そのため、実務上は業務調整の必要性と従業員の取得しやすさのバランスを踏まえ、「取得日の3日前~1週間前程度」を申請期限として定めていることが多いようです。
2-3. 当日申請の扱い
有給休暇は原則として事前申請を前提としますが、体調不良や家庭の事情など、緊急性ややむを得ない事情がある場合には、当日申請を認めることも可能であり、違法ではありません。ただし、従業員との認識のずれやトラブルを防ぐためにも、あらかじめルールを整備し、就業規則に明確に定めておくことが望まれます。
また、当日申請であっても、有給休暇の取得によって「事業の正常な運営を妨げる場合」に使用者が時季変更権を行使できた判例もあります。
一方で、病気やけがをした子の世話をする場合や、入学式・卒園式への参加など一定の事由に該当するときは、要件を満たす従業員は育児・介護休業法に基づく「子の看護等休暇」を取得できます。
子の看護等休暇は、当日の申出や事後の書面提出でも認められるため、企業は原則として取得を拒めません。なお、子の看護等休暇を取得した場合の賃金については、法律上の有給義務はなく、原則として無給での取り扱いとなります。
関連記事:看護休暇とは?企業側のメリットや運用時の注意点を解説
2-4. 事後申請の扱い
有給休暇の事後申請は、原則として認める義務はありません。ただし、急な体調不良や予期せぬトラブルなどにより、事前申請が難しいケースも想定されるので、一定の範囲で事後申請を認めている企業もあります。
一方で、明確なルールがないまま運用すると社内秩序の混乱につながるおそれがあります。そのため、最低限の取扱いについては就業規則に定めたうえで、個別の事情に応じて柔軟に対応することが重要です。
2-5. 時季変更をする場合
時季変更権の行使については、あらかじめ具体的なケースを示しておくことが望まれます。労働基準法では「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り認められていますが、より実務上の判断がしやすいように、「繁忙期や決算期にあたる〇月」「退職者の発生により一時的に人員が不足している場合」など、想定される具体的な状況を明示しておくことが有効です。
2-6. 【注意】有給申請時に理由は必要ない
有給休暇は、労働者の心身のリフレッシュやワークライフバランスの確保を目的として、労働基準法により付与が定められている休暇です。有給休暇の取得は労働者の権利であり、原則として企業は労働者からの請求を正当な理由なく拒否することはできません。
そのため、有給休暇の取得にあたって理由の申告を求める必要はありません。仮に理由の記載を求める場合であっても、その内容をもって取得の可否を判断したり、取得を拒否したりすることは認められない点に留意が必要です。
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3. 有給休暇において事前申請のルールが違法となるケース


有給休暇における事前申請のルールは、企業が自社の就業規則に基づいて制定しますが、場合によってはそのルールが違法となることがあります。具体的には、企業が定めた申請手続きが実質的に有給取得を阻害するような内容である場合です。詳しくみていきましょう。
3-1. 申請方法がわかりにくく事実上取得を妨げている場合
有給休暇の申請方法がわかりにくい場合、結果として労働者の有給取得を実質的に妨げていると判断される可能性があります。例えば、申請方法や申請先が十分に周知されておらず、従業員がどのように手続きをおこなえばよいのかわからないケースが該当します。
また、手続きが過度に複雑で、事前申請が現実的に困難となっている場合にも注意が必要です。具体的には、多数の書類提出を求めたり、複数段階の承認プロセスを経なければならななかったりする運用が挙げられます。このような仕組みは従業員に過度な負担を与え、有給休暇の取得をためらわせる要因となるおそれがあるので注意しましょう。
3-2. 企業の休暇取得の承認に不当に長い時間がかかる場合
従業員が有給休暇の事前申請をおこなっているにもかかわらず、企業側がこれを受け付けない、または承認手続きに不必要に長い時間を要する場合、結果として労働者の有給休暇取得を実質的に制限していると判断される可能性があります。
例えば、承認が遅れることで予定の調整が困難となり、やむを得ず取得を見送らざるを得ない状況が生じるケースが挙げられます。また、事前申請の期限を過度に長期間前に設定している場合も、実質的に取得を困難にしていると評価され、法令上問題となるおそれがあるので注意しましょう。
3-3. 申請期限を理由に有給取得を認めない場合
就業規則で有給休暇の申請期限を定めている場合でも、期限を過ぎたことだけを理由に、有給休暇の取得を一律に拒否することはできません。労働基準法上、企業が有給休暇の取得日を変更できるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。
「時季変更権」を適法に行使できる場合を除き、従業員が希望する日に有給休暇を取得させる必要があります。申請期限後に申し出があった場合には、まず期限を過ぎた事情を確認し、可能な範囲で希望日に取得できるよう配慮することが大切です。あわせて、必要に応じて今後は申請期限を守るよう注意喚起をおこなうことで、円滑な運用につなげられるでしょう。
4. 有給休暇をスムーズに申請・取得してもらうには?


有給休暇の事前申請手続きを整備するだけでなく、取得しやすい環境づくりや管理業務を効率化する仕組みを導入することで、より円滑かつ適切な有給休暇管理が可能になります。ここでは、有給休暇をスムーズに申請・取得してもらうためのポイントを紹介します。
4-1. 計画的付与制度を活用する
有給休暇を取得しやすい職場環境を整える方法として、「年次有給休暇の計画的付与制度」の活用が挙げられます。この制度は、労使協定を結べば、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、企業があらかじめ取得日を指定できる仕組みです。
例えば、夏季休暇や年末年始に合わせて一斉取得日を設定したり、部署ごとに交代で取得日を割り振ったりすることで、業務への影響を抑えながら計画的な休暇取得を促せます。
従業員にとっても、あらかじめ休暇の時期が決まることで予定を立てやすくなり、有給休暇を取得する際の心理的な負担を軽減する効果が期待されます。ただし、計画的付与制度を導入するには労使協定の締結が必要であり、対象となる日数や運用方法について明確に定めておくことが重要です。
関連記事:有給休暇の計画的付与制度とは?導入方法や注意点を紹介
4-2. 有給管理機能付きの勤怠管理システムを導入する
有給休暇の事前申請・承認や残日数の管理を紙やExcelでおこなっている場合、管理負担が大きくなり、取得漏れや運用ミスが発生しやすくなります。そのため、有給管理機能を備えた勤怠管理システムを導入することも有効です。
勤怠管理システムを活用すれば、従業員はパソコンやスマートフォンから簡単に有給休暇を事前申請でき、管理者もオンライン上で承認や残日数の確認をおこなえます。さらに、有給休暇の付与日数や消化状況を正確に管理できるので、法令遵守の強化や労務管理の効率化にもつながるでしょう。
関連記事:有給休暇5日の取得義務化とは?時間単位の扱いから対応方法や罰則まで解説
5. 有給休暇の事前申請は義務付け可能!就業規則に記載して周知しよう


有給休暇の事前申請は、企業が円滑に業務を運営し、必要に応じて「時季変更権」を適切に行使するために重要であり、就業規則に定めることで義務化が可能です。運用にあたっては、申請期限や方法を明確にし、従業員へ周知を徹底しなければなりません。
ただし、申請期限の超過のみを理由に取得を一律拒否することや、複雑な手続きで取得を妨げることは違法となるおそれがあるので注意が必要です。勤怠管理システムを活用し、従業員が心理的負担なくスムーズに休暇を申請・取得できる環境を整えることが、トラブル防止と適切な労務管理につながります。
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