私傷病休暇とは?企業側のメリット・デメリットや導入する手順を解説
更新日: 2024.11.10
公開日: 2024.11.10
OHSUGI
「私傷病休暇とは?」
「私傷病休暇を導入する際の企業側のメリットは?」
「私傷病休暇を導入する手順を知りたい」
上記の疑問をお持ちではありませんか。
私傷病休暇とは、業務を原因としないケガや病気を患った際に休暇を取得できる制度のことです。
私傷病休暇は、法律上の設置義務がありません。企業側が自由に設置できますが、導入する際は正しい手続きをおこなうことが必要です。
本記事では、企業が私傷病休暇を導入する際のメリット・デメリットについて解説します。また、私傷病休暇を導入する際の手順や注意点についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 私傷病休暇とは
私傷病休暇とは、業務を原因としないケガや病気を患った際に休暇を取得できる制度のことです。例えば、家庭環境が原因とされる精神疾患や、休日の交通事故による入院などを理由に利用できます。
私傷病休暇は、法律で設置が義務付けられていません。企業ごとに設置の有無や、有給もしくは無給の扱いとするかを定められます。
2. 私傷病休暇と公傷病休暇・傷病休暇の違い
私傷病休暇と公傷病休暇・傷病休暇は、言葉の意味に違いがあります。それぞれの違いについて、以下の表にまとめました。
傷病休暇 | ・従業員が病気やケガをした際に取得できる休暇制度の総称
・傷病休暇は「私傷病休暇」「公傷病休暇」に分けられる |
私傷病休暇 | ・従業員が業務を原因としない病気やケガをした際に取得できる休暇 |
公傷病休暇 | ・従業員が業務を原因として病気やケガをした際に取得できる休暇 |
傷病休暇とは、従業員が病気やケガをした際に取得できる休暇制度の総称です。傷病休暇は「私傷病休暇」と「公傷病休暇」に分けられますが、補償内容が異なります。
公傷病休暇は業務を原因とした際に取得できる休暇のため、労災保険の適用が可能です。一方、私傷病休暇は業務を原因としないため、労災保険は適用できません。
企業が傷病休暇を導入する際はそれぞれの取得条件を理解し、従業員に対して適切に案内することが求められます。
3. 企業が私傷病休暇を導入する3つのメリット
企業が私傷病休暇を導入するメリットは以下の3つです。
- 人材を確保できる
- 生産性の向上につながる
- 従業員の退職を防げる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
3-1. 人材を確保できる
企業が私傷病休暇を導入するメリットとして、人材を確保できる点が挙げられます。病気やケガを負ったとしても雇い止めされず、働き続けられる職場だと認識されるためです。
求職者は労働条件だけでなく、職場環境も重視しています。病気やケガの療養に専念しながら働き続けられる職場環境は、求職者にとって魅力的です。求職者を集客できるため、優秀な人材を確保できます。
3-2. 生産性の向上につながる
生産性の向上につながることも、企業が私傷病休暇を導入するメリットです。長期的に従業員を雇用できると、業務に必要なスキルを高められるため、効率よく業務をおこなえます。
業務効率が高まると無駄な作業が減るため、残業することもなく従業員のライフワークバランスを整えることも可能です。また、残業代や水道光熱費などのコスト削減も期待できます。
3-3. 従業員の退職を防げる
従業員の退職を防げることも、企業が私傷病休暇を導入するメリットです。病気やケガの療養と仕事を両立できると長期的に働き続けられるため、従業員の退職を防ぎ、離職率の低下につながります。
離職率を低下できると、人事採用にかかるコスト削減も可能です。コスト削減ができると、新規事業や人材育成などに投資もできます。
4. 企業が私傷病休暇を導入する2つのデメリット
企業が私傷病休暇を導入するデメリットは以下の2つです。
- 従業員の社会保険料を負担し続ける必要がある
- ほかの従業員の業務負荷が大きくなる可能性がある
それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
4-1. 従業員の社会保険料を負担し続ける必要がある
企業が私傷病休暇を導入するデメリットとして、従業員の社会保険料を負担し続ける必要があることが挙げられます。私傷病休暇中の場合でも従業員は企業に雇用されているとされ、社会保険の加入条件を満たしているためです。
通常、社会保険料は、従業員と企業で負担されます。もし、私傷病休暇中に賃金を支給しない場合は、社会保険料の負担について検討が必要です。
企業側で社会保険料を負担するか、従業員に社会保険料を振り込んでもらうかを選択し、従業員に周知しましょう。
4-2. ほかの従業員の業務負荷が大きくなる可能性がある
ほかの従業員の業務負荷が大きくなる可能性があることも、企業が私傷病休暇を導入するデメリットです。従業員が少ない企業や部署の場合、一人あたりの業務量が増える可能性があります。
業務量が増えると、業務効率やモチベーション低下を引き起こしやすいです。休暇している従業員の復帰目処がたたない場合は、現場の状況を確認したうえで、人員補充や業務量の調整などを検討してください。
5. 私傷病休暇を導入する手順
私傷病休暇を導入する手順は以下のとおりです。
- 私傷病休暇の取得条件や日数などを検討する
- 従業員に私傷病休暇について伝達する
- 就業規則に私傷病休暇に関する内容を記載する
私傷病休暇を社内に導入する際は、取得できる対象者や日数、賃金の有無などを検討しましょう。全従業員もしくは正社員のみ対象とするのか、具体的な条件を設定してください。
具体的な条件を設定できたら、私傷病休暇について従業員に伝達しましょう。私傷病休暇の申請方法についても提示できると、従業員のスムーズな利用につながります。就業規則を変更する際は、従業員の意見書を作成してください。
従業員の意見書を作成できたら、就業規則に記載します。就業規則を新しく作成した場合や内容を変更した場合は、労働基準監督署への提出が必要です。
以下の記事に就業規則を変更した場合の提出方法や注意点についてまとめているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:就業規則の変更届の提出方法と気をつけるべき4つの注意点
6. 私傷病休暇を運用する際の2つの注意点
私傷病休暇を運用する際の注意点は以下の2つです。
- 年次有給休暇の取得を阻害しない
- 復職手続きは健康状態を確認して慎重に判断する
それぞれの注意点について詳しく解説します。
6-1. 年次有給休暇の取得を阻害しない
私傷病休暇の運用は、年次有給休暇の取得を阻害しないように注意しましょう。
年次有給休暇は、労働基準法に定められている休暇制度です。従業員を雇用してから6ヵ月間勤務し、8割以上出勤している場合は年次有給休暇が付与されます。
年次有給休暇が1年間に10日付与された場合は、年5日以上の年次有給休暇を取得させなければなりません。私傷病休暇を取得する従業員がいる場合は、年5日以上の有給を取得しているか確認しましょう。
以下の記事に年次有給休暇に関する基礎知識をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:年次有給休暇とは?をわかりやすく解説!付与日数や取得時期も紹介
6-2. 復職手続きは健康状態を確認して慎重に判断する
私傷病休暇を取得した従業員が復職する際は、健康状態を確認したうえで慎重に判断しましょう。健康状態が改善していないにもかかわらず復職すると、再度体調を崩す可能性があります。
復職前に産業医の面談をおこなったり、医師からの診断書を確認したりして、復職できるかどうかを慎重に判断してください。
7. 私傷病休暇を導入して働きやすい職場をつくろう
私傷病休暇とは、業務を原因としないケガや病気になった際に休暇を取得できる制度です。法律による設置義務はないため、企業によって設置の有無が異なります。
私傷病休暇を導入すると、働きやすい職場だと認識されるため、優秀な人材の確保につながりやすいです。また、生産性の向上や従業員の退職を防ぐことも期待できます。
企業側にもメリットのある私傷病休暇を導入し、従業員の働きやすい職場をつくりましょう。
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