時短勤務はいつまで取れる?気になる基準と就業規則の決め方
更新日: 2024.11.15
公開日: 2021.11.12
OHSUGI
短時間勤務制度(以下、時短勤務)は、育児・介護休業法により定められた制度です。従業員からの申し出があれば、1日の所定労働時間を6時間とすることが法律で決められており、企業には対応が義務付けられています。
育児では「子が3歳に達するまで」、介護では「利用開始日から連続する3年以上の期間」が取得可能となっており、利用する期間は従業員の事情に合わせた個別の対応が求められます。
この記事では、時短勤務はいつまで取れるのか、また就業規則の決め方やフルタイム勤務に戻す際の注意点などを解説していきます。
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時短勤務とは?導入するための手順と問題点を解説
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1. 時短勤務がいつまで取れるかは育児・介護により異なる
時短勤務は育児・介護休業法により定められている制度ですが、いつまで取れるかは「育児時短勤務」か「介護時短勤務」かによって変わります。育児の場合は「3歳未満まで」、介護の場合は「3年以上の期間」となっており、同じ「3」というワードが出てくるため混同しやすいかもしれません。
ここでは、それぞれのケースの取得期限を解説します。
1-1. 子育ての場合:子どもが3歳未満の間まで
育児・介護休業法では、3歳未満の子どもを育てている従業員がいる場合、時短勤務制度を設けなければならないとしています。つまり、時短勤務が適用されるのは、「3歳になる誕生日の前日まで」となります。
ただし、対象となるのは1人の子どもだけではありません。例えば、2人の子どもがいる場合、上の子どもが3歳になったとしても、下の子どもが3歳未満であれば時短勤務が適用されます。
上の子どもが3歳になったからといって時短勤務を打ち切ってしまうのは、法令に違反することになるので、必ず兄弟がいないか確認するようにしましょう。
3歳以降の時短勤務は企業の努力義務
3歳以降の子を養育する従業員に対しては、法律上、導入が義務とされる制度は現在ありません。(2021年10月現在)
ただし、3歳から小学校入学前までの子を養育する従業員に対しては、下記の制度を整えることが厚生労働省により求められています。
- 育児休業に関する制度
- 所定外労働の制限に関する制度
- 短時間勤務制度
- 始業時刻の変更等の措置(フレックスタイムの制度、時差出勤の制度、養育する子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与)
これらはあくまでも「努力義務」となっているため、小学校入学以降の児童がいる従業員にも時短勤務を取らせたい場合は、企業独自で制度を整える必要があります。
1-2. 介護の場合:利用開始日から連続する3年以上の期間
介護が理由の時短勤務では、「利用開始日から連続する3年以上の期間」取得が可能となっており、「3年以上の期間で2回以上利用できる」とされています。つまり、取得期間に関しては法律上での決まりはないということです。
ただし、「3年以上取得可能」「2回以上利用できる」というのは法律で定められていることなので、企業側が「3年未満」や「利用は1回だけ」というような制限をかけるのは禁止です。
そのため、従業員から申し出があった場合、企業は上記の期間で時短勤務ができるようにしておく必要があります。
介護の場合は、法律上の取得期間が定められていないので、「いつまで時短勤務を取るか」は従業員と企業双方で話し合って決めることになります。
2. 時短勤務の期間は就業規則に記載する
時短勤務を取れる期間に関しては、育児は3歳未満までという法律上の上限がありますが、介護は法律上の上限がありません。また、実際に制度を利用する期間は、従業員の状況により判断が必要となるため、柔軟に対応する必要があります。
ただし、柔軟に対応といっても、もともとのルールが明確になっていないとトラブルになることもあるので注意しましょう。
ここでは、時短勤務の期間について、就業規則での取り扱いや運用方法を解説します。
2-1. 時短勤務の期間を就業規則で定める
育児・介護に関する時短勤務は法律で定めれている制度ですが、すべての従業員が取得対象条件や取得期間などの詳細を理解しているとは限りません。
制度自体を知らないせいで、申請ができなかったという従業員がいる場合、トラブルになってしまう可能性もあるので、導入の際には就業規則にしっかり記載しましょう。
特に取得期間はわかりづらいので、就業規則にきちんと明記したうえで、従業員へもしっかりと周知することが必要です。
また、労働時間や賃金の変更も含まれるため、労働者代表に意見書を書いてもらうこと、管轄の労働基準監督署への届け出も忘れないようにしてください。
2-2. 時短勤務の申請期限を就業規則で定める
時短勤務となる場合は、該当の従業員が担当している業務や作業を、他の従業員へ引き継がなければなりません。仕事内容によっては、人材を採用する必要がでてくる可能性もあるので、余裕をもって申請してもらうことも重要です。
申請から時短勤務開始までの期間が短いと、引き継ぎや代替え要員ができず業務に支障をきたすこともあるので、就業規則には申請期限も記載しておきましょう。
申請期限に関しては法律の定めがないので自由に決められますが、1ヵ月前後が一般的です。
2-3. 就業規則への記載例
取得期間や申請期限などを決めても、就業規則に正しく記載しなければ何の効力もありません。記載方法に規定はありませんが、担当者はもちろん従業員がわかりやすい内容にする必要があります。
そこで、ここでは記載例を紹介するので参考にしてみてください。
育児時短勤務の期間の記載例
育児時短勤務の期間の記入例は以下のような内容にしましょう。
(適用期間)
第〇条
育児時短勤務を利用する者は、1回につき、1ヵ月以上1年以内の期間について申請できる。
(手続き)
第〇条
育児短時間勤務を利用する際は、原則として当該勤務予定日の1ヵ月前までに、短縮を開始する日と終了する日を明らかにし、育児短時間勤務申出書により会社に申し出なければならない。
なお、期間は「労働者との話し合いにより決定する」などでも問題ありません。
また、3歳以上でも時短勤務を利用できるように定めたい場合は、別途「会社が認めた場合、小学校○年修了まで育児短時間勤務を利用できる」など記載しましょう。
介護時短勤務の期間の記載例
介護時短勤務の期間の記載例は以下の通りです。
(適用期間)
第〇条
介護短時間勤務を利用する者は、利用開始日から3年の範囲内で2回まで、従業員本人の申し出に基づく、連続した3ヵ月以上の期間を個別に定める。
(手続き)
第〇条
介護短時間勤務を利用する際は、原則として当該勤務予定日の2週間前までに、短縮を開始する日と終了する日を明らかにし、介護短時間勤務申出書により会社に申し出なければならない。
介護時短勤務は上限が定められていないため、期間は個別に決定するほうが望ましいでしょう。
回数に関しては、期間内で2回以上と定められているため、就業規則で2回までと定めても問題ありません。ただし、企業独自に1回とすることはできません。
また、突発的に介護が必要となるケースも考えられるため、申請期限も2週間前とするのが一般的です。
3. 時短勤務からフルタイムに戻す際の注意点
時短勤務の期間が決まっているとしても、従業員の状況によっては、期限を待たずにフルタイムへの変更を希望する場合があります。例えば、1年間の申請だったとしても、経済的な理由から早めにフルタイムに戻すケースもありえます。
「申請した期間中はフルタイムに戻れない」という決まりはないので、担当者の方はフルタイムに戻す場合の対応を把握しておかなければなりません。
ここでは、フルタイムに変更する際の注意点を解説します。
3-1. フルタイムへの希望は速やかに対処する
従業員から「時短勤務を終了してフルタイムへ変更したい」との申し出があった場合は、速やかに対処しましょう。
ただし、その際には本人の意志だけでなく、本当にフルタイムに対応可能か、子や家族の状況も合わせて聴取するのが望ましいです。
フルタイムへの変更は、他の従業員の配置変更や業務変更が伴うため、万が一「やっぱり無理でした」となると多くの従業員に迷惑をかけるので、状況を確認してから対処するのがベストです。
もし、フルタイムに変更したいとの申し出があり、正当な理由なく時短勤務を強要した場合「時短勤務を申請したことを理由とする不利益な取り扱い」に該当します。
また、本人の意志に反した、時間外労働・深夜業の制限も、「不利益な取り扱い」に該当するため注意しましょう。
3-2. 不利益な取扱いの禁止
時短勤務を申請したことを理由とする不利益な取り扱いには、下記の事項が含まれます。
- 解雇
- 減給
- 賞与の不利益な算定
- 人事考課の不利益な算定(降格や昇進をおこなわないなど)
- 契約社員の契約更新を行わない
- 正社員からアルバイトなど労働契約内容の変更を強要
故意でなかったとしても、従業員本人の意思に反した雇用形態の変更は、上記の禁止事項に抵触するため注意しましょう。
3-3. 労働者の配置に関する配慮
家族に介護や育児が必要な者がいる従業員に対して、フルタイム勤務変更後に転勤や部署換えなどの配置換えをする際は、特に配慮するよう法律で定められています。(配慮義務)
具体的には、下記のことへの配慮が求められます。
- 労働者本人の意志を汲み取る
- 労働者の介護・育児が必要な家族の状況を把握する
- 転勤した際の介護・育児の代替手段の有無を確認する
特に、労働者に対して「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる」転勤命令は、裁判の結果で無効となったケースも存在するため、必ず本人の意志や状況を確認することが重要です。
参考:全情報|全基連(公益社団法人全国労働基準関係団体連合会)
3-4. 給与・社会保険料などの変更
時短勤務からフルタイムへの変更の際は、下記のとおり、給与計算や社会保険料の計算が変わってきます。
- 所定労働時間の変更
- 残業代の発生
- ボーナスの査定
- 社会保険料の変更
時短勤務中の社会保険料は、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」が適用されます。
フルタイムに変更すると、時短以前よりも残業を減らした場合など従前の標準報酬月額から変更となる可能性もあるため、人事担当者は特に注意しましょう。
関連記事:時短勤務時の給料はどうなる?知っておきたい減額率の考え方
関連記事:時短勤務における社会保険の取り扱いや間違えやすいポイント
4. 時短勤務制度を導入して働きやすい環境を整えよう
介護・育児休業法では、育児時短勤務は「子が3歳に達する日まで」、介護時短勤務は「介護時短勤務の開始日から連続する3年以上の期間」に取得できるようにすることが法律によって義務付けられています。そのため、会社都合で対応しないというのは違法になるので、従業員の状況を定期的に確認して、申請があった場合は速やかに対応できるようにしておきましょう。
また、時短勤務を導入する際は、就業規則への明記が必要な他、人事や労務などの部署では給与計算などが変則的になる点にも注意しなければなりません。
時短勤務は企業や担当部署への負担が大きい制度ですが、従業員のワークライフバランスを保ち、離職を防げる制度でもあるので積極的に導入して働きやすい環境を整えましょう。
「社内で時短勤務をした例が少ないので、勤怠管理や給与計算でどのような対応が必要か理解できていない」とお悩みではありませんか?
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