号俸とは?等級との違いや決め方・注意点をわかりやすく解説
更新日: 2024.3.6
公開日: 2024.2.13
OHSUGI
号俸(ごうほう)とは、従業員の給与を決める手段の一つです。勤続年数によって給与が変動するため、給与の管理がしやすく公正性を確保しやすい特徴があります。
ただ、業績の変化に対応しにくく、従業員一人ひとりの能力が反映されにくいというデメリットも拭えません。制度について詳しく理解し、注意点を把握して正しく導入・運用しなければ、従業員のモチベーション低下につながるでしょう。
そこで、この記事では号俸制を導入するメリット・デメリットや決め方、注意点を解説します。号俸制の導入を考えている企業や、すでに号俸制を実施している企業に勤めている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 号俸(ごうほう)とは
号俸とは、現在の従業員の給与を決定する制度の種類のことです。勤続年数や年齢、場合によっては年間の評価によって基本給が決まります。
そのため、賃金や昇給額を管理しやすい点が特徴です。しかし、業績の変動が発生しても給与を変更できなかったり、従業員の能力を給与に反映することが難しかったりという特徴もあります。
号俸は、「俸給表」として公務員の給与に使用されることが一般的です。ただ、民間企業でも数多くの企業で採用されており、とくに大手企業によく見られます。
2. 号俸と等級の違い
号俸と等級は、どちらも従業員の給与を決定するための基準として賃金制度に使用されていますが、それぞれ意味が異なります。
号俸は、従業員の勤続年数・年齢によって基本給が決まる仕組みです。公務員の給与などに使用されており、年功序列制度が取られます。
一方で等級は、従業員の職務内容や責任の程度に応じて基本給が設定される仕組みです。等級制度では、各等級に求める仕事レベルが明確に定義され、従業員のスキルや経験に基づいて等級が決定されます。
3. 号俸制の3つのメリット
号俸制の主なメリットは、以下の2点です。
- 賃金や昇給額の管理がしやすい
- 賃金管理の公正性を証明しやすい
- 従業員が仕組みを理解しやすい
それぞれ具体的に解説します。
3-1. 賃金や昇給額の管理がしやすい
号俸制を取り入れるメリットとして、賃金の額を管理しやすい点が挙げられます。
従業員の勤続年数にあわせて、1年ごとに1号ずつ上がる簡単な仕組みだからです。号俸表や俸給表と従業員の勤続年数を照らし合わせるだけで、すぐに現在の賃金を把握できます。
賃金の額や昇給額の管理がしやすいと、賃金管理をより正確におこなうことが可能です。給与のミスを防げる点はもちろん、従業員から給与に関する説明を求められた際もすぐに対応できます。
3-2. 賃金管理の公正性を証明しやすい
号俸制は、従業員に賃金管理の公正性を証明しやすい点も魅力といえます。号俸制は賃金の序列化によって従業員の現在の給与が明確に示されているからです。
例えば、号俸表や俸給表には、勤続年数や等級による賃金がそれぞれ明確に定められています。「従業員が何年働いていて、どの役職についているか」という簡単な情報だけで賃金を把握可能です。
つまり号俸制は、賃金の全体額と昇給額の両方を機械的に管理できます。評価が影響する給与決定方法に比べ、賃金管理の公正性を確保しやすい点が魅力です。
3-3. 従業員が仕組みを理解しやすい
号俸制のメリットとして、従業員が理解しやすい点も考えられます。自分の給与明細と号俸表・俸給表と照らし合わせることで、給与に対する処遇が明確に理解できることが理由です。
自分の給与状況をすぐに理解できるため、より安心して働けます。また、昇級までの段取りや目標設定もしやすいため、従業員のモチベーションの向上にもつながるでしょう。
4. 号俸制の2つのデメリット
号俸制のデメリットは、以下の2点です。
- 業績変動への対応が難しい
- 個々の能力が評価されにくい
以下、それぞれ詳しく解説します。
4-1. 業績変動への対応が難しい
号俸制は、業績変動が発生した際に対応が難しいというデメリットが考えられます。
賃金表によって給与が明確に固定されており、状況に合わせて柔軟に調整ができないことが理由です。そのため、業績が悪化した場合、従業員の給与が企業の財務にとって重荷となる可能性があります。
また、業績が大幅に向上した場合も、従業員の給与に反映しにくい制度です。企業の業績が向上しているにもかかわらず給料に反映されなければ、従業員のモチベーションが下がる恐れがあります。
4-2. 個々の能力が評価されにくい
号俸制は、従業員の個々の能力が評価されにくいデメリットが存在します。
号俸制の特性上、どうしても勤続年数や年齢が給与に与える影響が大きいからです。個々の従業員が業務に対してどの程度の能力を発揮し、どれだけの成果を上げたかといった評価が、なかなか給与に反映されません。
その結果、「どれだけ仕事をしても給料が上がらないなら、手を抜こう」などと考える従業員が発生する恐れがあります。従業員のモチベーションをどのように維持するのかが重要な課題です。
5. 号俸の決め方・上がり方
ここからは、号俸制でよく使用する「号俸表」と「段階号俸表」の決め方・上がり方を解説します。
- 号俸表の決め方・上がり方
- 段階号俸表の決め方・上がり方
5-1. 号俸表の決め方・上がり方
号俸表は、「号俸」と「等級」で作られています。号俸は勤続年数が影響し、等級は従業員の職務内容や責任の程度に応じて設定される仕組みです。
号数は、勤続年数や年齢などに応じて1号・2号・3号と序列化され、1年間で1号ずつ上がります。
一方で等級は、主任、係長などの役職に合わせて、1等級・2等級と序列化され、昇進によって上がる点が特徴です。
5-2. 段階号俸表の決め方・上がり方
段階号俸表は、号俸と等級で構成された号俸表に評価ランクを加えて昇給号数を決定する賃金評価方法のことを指します。
見た目はほとんど号俸表と同じですが、号俸ごとの金額の差が小さいうえ、昇格についても記載されている点が特徴です。
段階号俸表は、人事評価の結果に基づいて昇給号数が決定されます。高評価を獲得した従業員ほど、昇給額が大きくなる仕組みです。
例えば、人事考課の結果がA評価であれば4号、B評価であれば3号、C評価であれば2号、D評価であれば1号分昇給します。勤続年数や年齢のほか、評価によっても号数が変化する点が特徴です。
参照:3種類の賃金表について解説!段階号俸表・複数賃率表・賃金ゾーン|ヒューマンリソースコンサルタント
6. 号俸制を実施する際の2つの注意点
号俸制を実施する際は、以下の2つの点に注意しましょう。
- 昇給の仕組みを明確にする
- 成果主義的な視点も加味する
それぞれ具体的に解説します。
6-1. 昇給の仕組みを明確にする
号俸制を導入する際は、できる限り昇給の仕組みを明確にしましょう。どのように昇級がおこなわれるのかを明確にすることで、従業員が人事制度に納得しやすくなるからです。
とくに、段階号俸表を用いた評価は複雑になりやすいため、事前に評価方法について説明しておくことで従業員とのトラブルを避けられます。一人ひとりのモチベーションがアップし、組織の生産性向上にもつながるでしょう。
また、評価結果と賃金表を照らし合わせてひと目で確認できるようになるため、従業員の賃金も管理しやすくなります。
6-2成果主義的な視点も加味する
号俸制を導入したいなら、成果主義的な視点も加味しましょう。号俸制の年功序列に対して、「どれだけ成果を残しても評価されないから手を抜こう」と考える従業員を減らせるからです。
仕事による成果が直接評価につながれば、従業員は自分の成果が直接報酬に反映されると感じてくれます。従業員のモチベーション向上はもちろん、組織への忠誠心や職場への満足度が高まり、離職率も減らせるでしょう。
7. 号俸への理解を深めて正しく運用しよう
号俸制を実施するなら、理解を深めて正しく運用しましょう。従業員の成果を蔑ろにした評価をしたり、評価基準の説明を怠ったりすれば、モチベーション低下につながる恐れがあります。
適切な運用をおこなうことで、賃金や昇給額を正しく管理することが可能です。賃金管理の公正性も確保できるため、従業員の給与に関する理解も得られるでしょう。号俸制を実施するなら、仕組みや注意点を必ず理解しておいてください。
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