勤怠控除とは?計算方法と注意するべきポイントを紹介
月給制にもかかわらず、いざ給料を貰ってみると1ヶ月分に満たないといったケースがあります。これは、なんらかの理由で労働時間が減ったことにより、月給からその分が減額された「勤怠控除」であることが考えられます。
今回は、どのような場合に勤怠控除が発生するのか、それがどういった方法で計算されるのか、どのような仕事についてもそれが適用されるのかなどを見ていきます。
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目次
1. 給与明細に記載される「勤怠控除」とは
給与明細に「勤怠控除」が記載され、固定給がマイナスとなるのは、規定の勤務時間を満たさなかった場合に発生します。
1-1. 遅刻・早退、欠勤時に引かれる額が勤怠控除
勤怠控除とは遅刻や早退、欠勤などによって、所定労働時間よりも実際の労働が少なかった時間分の賃金を、給与から差し引く仕組みです。
月給制は、1ヵ月の給与が定められている給与形態です。しかし、月給制には日給月給制や月給日給制などの給与形態があり、多くの企業で採用されているのは欠勤や遅刻、早退をすると勤怠控除される「日給月給制」や「月給日給制」です。
そのため、1ヶ月に定められた勤務時間を満たせなかった場合は、月給制であっても「勤怠控除」という形で給与が差し引かれることがあるのです。
1-2. 勤怠控除はノーワーク・ノーペイの原則に基づく
遅刻や早退、欠勤で労働しなかった時間が発生した場合、その分の賃金は支払わなくて良いとされています。これは、「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づくものです。
そもそも賃金とは、労働の対価として支払われるものです。したがって、労働がなかった時間に対しては賃金を支払う必要がないとするのが「ノーワーク・ノーペイ」の原則です。
遅刻・早退や欠勤によって労働がなされなかった場合は、その時間分の賃金を支払わない、つまり賃金を控除するのが一般的です。
2. 欠勤控除の計算方法
欠勤控除をするには1日あたりの賃金を算出する必要がありますが、これには4つの方法があります。それぞれの計算方法で控除額が変わってくるため、1つずつ解説していきます。
2-1. 月給額÷年平均の月所定労働日数×欠勤日数
1つ目の方法は、年平均の所定労働日数から日給を計算し、欠勤控除額を出す方法です。具体的な計算式は以下の通りです。
【欠勤控除額 = 月給与額 ÷ (月平均の月所定労働日数) × 欠勤日数】
※月平均の月所定休日日数=(365日-年間の所定休日日数)÷12ヶ月で算出
この計算方法では、1年を通して欠勤控除の金額が同じになるため、一度計算しておけば、後は欠勤日数をかけるだけで良いというメリットがあります。
一方で、例えば年平均の所定労働日数が20日で、欠勤した月の所定労働日数が21日であった場合、20日間欠勤すると、1日労働しているにもかかわらず、給与が0円になってしまうというデメリットが挙げられます。ただし、年間を通してみると、欠勤日数に対する控除額の総額に過不足がないため、違法とはなりません。
2-2. 月給額÷該当月の所定労働日数×欠勤日数
2つ目は、欠勤をした月の所定労働日数を使って日給を算出し、欠勤控除額を求める方法です。具体的な計算方法は、以下の通りです。
【欠勤控除額 = 月給与額 ÷ (該当月の所定労働日数 × 欠勤日数)】
欠勤した月ごとの所定労働日数を利用して日給を算出すると、月によって所定労働日数が異なるため、1日あたりの欠勤控除金額も月によって変動することに注意が必要です。
2-3. 月給額÷年の暦日数×欠勤日数
3つ目は、所定労働日数ではなく、休日なども含めた1年の暦日数で日給を求め、欠勤控除する方法です。
【欠勤控除額 = (年間給与額 ÷ 年の暦日数) × 欠勤日数】(年の暦日数は365日ないし366日)
この計算方法を選択した場合、1年を通して控除額が同じであることに加え、給与を割る際の分母が大きくなるため、控除額が小さくなるという、労働者にとってのメリットがあります。したがって、従業員側の負担は減りますが、もし従業員が1ヶ月間すべて欠勤したとしても給与は発生するため、会社側にとってはデメリットとなることがあります。
2-4. 月給額÷該当月の暦日数×欠勤日数
毎月の暦日数から日給を計算し、欠勤控除する方法です。
【欠勤控除額 = (月給与額 ÷ 月間の暦日数) × 欠勤日数】
暦日数は毎月変わることから、控除の金額が一定では無くなることに加え、毎月日給を計算しなおす必要があるため、給与計算が煩雑になりがちな点に注意が必要です。
関連記事:欠勤控除とは?該当するケースと計算方法を詳しく解説
3. 遅刻・早退控除時の計算方法
従業員が遅刻や早退をし、労働時間が所定の時間よりも短くなった場合は、遅刻・早退した時間分だけ賃金を控除します。
遅刻・早退の控除をする場合は、1時間あたりの基礎賃金を算出し、その金額に労働がなかった時間をかけ合わせて控除金額を求めます。具体的な計算方法は、以下の通りです。
【遅刻・早退控除の対象とする月の給与額÷月平均所定労働時間数(*)×遅刻・早退の時間】
※月平均所定労働時間数 =(365 – 年間休日数)×1日の所定労働時間÷12
4.勤怠控除が発生するケースとは
勤怠控除(欠勤控除)が発生するシチュエーションはいろいろありますが、主なケースは以下の3つになります。
- 感染症による欠勤
- 体調不良による欠勤
- 家族の病気による遅刻や早退
では、それぞれのケースを詳しくみていきましょう。
4-1. 感染症による欠勤
新型コロナウイルスやインフルエンザなど、感染症の種類によっては一定の期間出社を控えるのが一般的です。そのため、感染症による自主的な欠勤は、勤怠控除の対象となります。
ただし、会社側から欠勤を指示した場合は勤怠控除になりません。会社都合による出勤停止の場合は、休業手当を支給しなければならないこともあるため、罹患したことを理由に、従業員が自主的に休みを申し出た場合は、勤怠控除が適用されます。ただし、会社側から出勤を控えるように指示した場合は、基本的に勤怠控除は適用されません。会社都合による欠勤は、休業手当を支給するケースもあります。
4-2. 体調不良による欠勤
頭痛や腹痛、熱っぽいなど体調不良で欠勤した場合は、遅刻・早退も含め勤怠控除の対象です。ただし、勤怠控除となるのは欠勤した時間分だけなので、遅刻や早退の場合は勤務しなかった時間だけを勤怠控除としなければなりません。
労働基準法では、遅刻や早退に関する勤怠控除の定めがなく、企業ごとの就業ルールによって規定されています。だからといって、遅刻や早退を1日欠勤扱いにすることはできないので、ノーワークノーペイの原則に則って1分単位で計算しましょう。
4-3. 家族の病気による遅刻や早退
子どもの急な発熱や高齢者の病気などで遅刻や早退をする場合は、本人の体調不良と同じく勤怠控除の対象となります。
ただし、少子高齢化による人手不足という視点からみると、家族の病気による遅刻や早退を勤怠控除にした場合、人材の流出が懸念されます。遅刻・早退の頻度にもよりますが、柔軟に対応できるように「有給休暇の事後申請」や「時間単位の有給休暇を取得」というような就業規則を整備しておくと、人材流出を防ぐことができるので検討してみましょう。
5. 勤怠控除で注意するべきポイント
勤怠控除は、「規定があいまい」「そもそも規定されていない」となると、労働者とのトラブルに発展する可能性があります。また、控除に関する認識の相違があると、会社への信頼が失われてしまうこともあるので、勤怠控除をおこなう場合は注意するべきポイントをチェックしておきましょう。
5-1. 就業規則に控除の詳細を明記する
賃金控除の計算式や欠勤・遅刻・早退による控除の適応要件など、控除の詳細を就業規則に明記する必要があります。
原則として、勤怠控除は就業規則に規定することで可能になります。
勤怠控除に関規定規定は労働基準法に定めが無いため、就業規則に控除が発生する条件や計算方法を明確にしておくことがトラブル回避の大事なポイントです。
5-2. 違法な勤怠控除とならないように注意!
勤怠控除をすること自体に、法的な問題はありません。ただし、控除できるのは欠勤・遅刻・早退などで「実際に働けなかった時間分」のみです。欠勤したことに対するペナルティーとして、働かなかった時間分以上を控除するというのは違法となります。
一方で、就業規則に「減給」を懲戒処分として定めている場合、総額が「月給の10%以下」であれば減給扱いとすることが認められています。
5-3. 欠勤しても控除にならない場合がある
「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づき、基本的には会社を休むとその分の賃金が給与から差し引かれます。ただし、会社都合の休業や有給休暇の場合はこの例外です。たとえば、感染症にかかった従業員に対して、会社側から休業を指示した場合は、欠勤しても控除にならないので間違えないようにしましょう。
勤怠控除の運用にあたっては、労働時間と賃金は就業規則に必ず記載しなければならない事項であるという定めが労働基準法にあるため、就業規則に記載する必要があります。記載する際には、欠勤控除についてどのようなルールを設けるか、計算方法も含めて各企業の判断で明記しなければなりません。
なお、労働者が無断欠勤を繰り返した場合は、欠勤控除の他に「減給」をおこなうことができます。減給金額には上限があり、1日あたりの平均賃金の半額を超えない範囲で設定するようにしましょう。
5-4. 各種手当の勤怠控除を検討する
欠勤控除とは、元々支払う予定の賃金から、欠勤した分の賃金を差し引いて給与を支払うことを表しています。これは、「労働者が働いていない分は、会社側が賃金を支払う義務が無い」といったノーワーク・ノーペイに基づいた考え方に基づいています。
就業規則に控除のルールを明記したり、実際に運用をしたりする際に気をつけておきたいのは、基本給に含まれない各種手当を控除の対象とするかどうかです。どの手当を控除の対象とするかは各企業で決めることができますが、一般的な各種手当と欠勤控除の関係は以下のようになっています。
手当の内容 | 欠勤控除するかどうか | |
通勤手当 | 通勤に要した費用を支給する手当 | 労働に連動しているので、欠勤控除する場合が多い |
家族手当 | 家族を持つ労働者に支給する手当 | 労働とは直接連動しないので、欠勤控除しない場合がある |
扶養手当 | 配偶者や子供など、扶養家族を持つ労働者に支給する手当 | 労働とは直接連動しないので、欠勤控除しない場合がある |
住宅手当 | 労働者の住宅にかかる費用を補助する目的で支給する手当 | 労働とは直接連動しないので、欠勤控除しない場合がある |
資格手当 | 業務に役立つ資格を取得・保有している労働者に支給する手当 | 資格保有者に毎月支払っている場合、毎日の勤務に関係しているため、欠勤控除する場合が多い |
役員報酬 | 取締役や監査役といった役員に対して支給する手当 | 原則欠勤控除の対象にならないが、欠勤が長期間の場合は取締役会で役員報酬の減額を決定できる |
傷病手当金 | 病気や怪我により4日間以上連続して欠勤となった労働者に対し、保険者が支給する手当 | 労働とは無関係のため対象外 |
欠勤する日があった場合の賃金控除額は、以下のような計算式で算出します。
賃金控除額=(基本給+諸手当)/月の所定労働日数×欠勤した日数
賃金控除額=(基本給+諸手当)/月の所定労働時間×欠勤した時間
上記はあくまでも一般的な例なので、「通勤手当は欠勤時に控除する」「終日休んだ場合は欠勤」「遅刻・早退の場合は不就労控除」など、従業員の働き方や勤務状態に合わせて、適切な勤怠控除のルールを決めましょう。
5-5. フレックスタイム制や変形労働時間制での欠勤控除
一般的な定時出社・退勤の場合は単純に欠勤した日数分を差し引きますが、日ごとの労働時間を企業が設定する変形労働時間制やシフト制、フレックスタイム制で働いている場合は控除方法が異なります。
このうち、変形労働時間制とシフト制では、企業が設定した1日あたりの労働時間を差し引きます。
労働者が労働時間や始業・終業時刻を決められるフレックスタイム制では、基本的に欠勤控除は適用されませんが、不就労分は給与から控除します。つまり、実労働時間が精算期間の総労働時間未満の場合、コアタイムの有無にかかわらず、足りない時間数は実質的に欠勤扱いとなるため、給与計算の際には注意が必要です。
6. 勤怠控除を実施する前に自社の就業規則を確認しよう
勤怠控除は義務化されていないため、すべての企業で必ずしもおこなわれているものではありません。しかし、控除をしないと遅刻や早退、欠勤などが増える懸念があるため、多くの企業でおこなわれているのが現状です。
勤怠控除は、勤務形態によっても控除方法が異なるので、実施する場合は間違えないよう注意が必要です。
基本的に、控除対象は企業の就業規則で定められているはずなので、自社における勤怠控除の有無や対象範囲を知りたい場合は、就業規則を確認しておきましょう。
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