勤怠管理における遅刻早退の控除の取り扱いや処理の方法について
更新日: 2022.12.6
公開日: 2020.2.16
OHSUGI
「働き方改革」の推進にともない、企業は従業員の正確な労働時間の把握を求められています。そのような背景もあり、企業においては自社の勤怠管理の方法やルールを見直す機会が増えてきています。
今回は、正しい勤怠管理をおこなう上で、従業員が所定の労働時間に対して、遅刻早退などを理由に労働時間が不足した場合の正しい対処法と処理する際のポイントを紹介していきます。
関連記事:勤怠管理とは?目的や方法、管理すべき項目・対象者など網羅的に解説!
法律に則った勤怠管理をしていきたい方に向け、当サイトでは、法律で定められた勤怠管理の方法について解説した資料を無料で配布しております。
資料では2019年に改正された労働基準法に則った勤怠管理の方法も解説しているため、自社の勤怠管理が法的に問題ないか確認したい方は以下のボタンから「中小企業必見!働き方改革に対応した勤怠管理対策」のダウンロードページをご覧ください。
目次
1. 遅刻早退や欠勤があった場合は給料から控除して良い
企業の勤怠管理の担当者は、従業員の遅刻早退などで所定の労働時間に満たなかった際には、どのような処理をしているのでしょうか。正しい処理方法を解説していきます。
1-1. ノーワークノーペイの原則とは
基本的な賃金の支払いの考え方は、労働基準法第24条で「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」とされています。
例えば、従業員が9時出勤のところを10時に出勤し、9時から1時間分の労働力を提供していない場合にその分の賃金を支払う義務があるかといえば、そうではありません。
それが「ノーワーク・ノーペイ」の原則といわれています。つまり、従業員が労働をしていない時間は、企業も賃金を支払う必要はないということです。
また、早退や欠勤した場合もノーワークノーペイの原則が同じように適用されます。従業員が遅刻早退、もしくは欠勤し企業に労働力を提供していない時間分は給与を支払わなくても問題ありません。
2. 遅刻早退や欠勤による控除を正しく運用する方法
遅刻早退や欠勤に対して給与の控除をするには、就業規則に定めるなど必要な対応があります。法律違反とならないよう、適切に控除を運用するためのポイントを紹介いたします。
2-1. 就業規則に遅刻・早退の基準と控除ルールを定める
「何分遅れたら遅刻か」といった遅刻・早退の基準は労働基準法に特に定めがないため、控除を行う場合はその方法やどれくらいの時間から遅刻・早退になるのかを就業規則に明記する必要があります。
たとえば、遅刻早退や欠勤はいつまでに、誰に、どのような手段で届け出るのかや、当日に遅刻早退・欠勤をする場合はどのように連絡すればよいのかなどを定めます。後日、有給消化で対応可能か否かなどを記載してもよいでしょう。
遅刻早退などが常態化しないためにも、出勤時間の15分前には連絡する、遅刻早退届を提出する、連絡がなかった場合にはどのような対処をするなど、想定されるケースの対処法を就業規則に盛り込んでおくことをおすすめします。
2-2. 遅刻・早退による控除の計算方法を決める
労働基準法に賃金控除について定めがないため、控除する金額をどのように算出するかも各企業で決めなくてはなりません。
一般的な方法は、遅刻早退の場合は1時間あたりの基礎賃金に遅刻早退した分の時間数を掛け合わせるて控除する方法、欠勤した場合は月給を所定労働日数で割って出した1日あたりの賃金を欠勤日数分控除する方法ですが、独自に減算や加算を行って控除金額を決定する企業もあります。
必ず守らなくてはならない点は、15分や30分単位で切り捨てなどはせずに、1分単位で処理をすることです。そうでないと、労働基準法第24条に違反することになりかねません。
また、賃金控除の計算の際に注意しておきたいのは、固定残業代の扱いです。基本的に固定残業代は控除計算には含みませんが、含めたとしても違法ではないため、その旨を就業規則に明記しておきましょう。
2-3. 従業員への周知を行う
遅刻早退や欠勤による控除を就業規則に定めたら、必ず授業員への周知を行いましょう。ただ変更があったことを伝えるだけではなく、遅刻早退や欠勤する場合はどのように届け出をしたり連絡をしなければならないのか、ルールをしっかりと説明します。
控除について明記した就業規則の周知の徹底をしておけば、ノーワークノーペイの原則で、労働力が提供されていない時間分の賃金を控除する処置が可能になります。
関連記事:勤怠控除とは?計算方法と注意するべきポイントを紹介
3. 勤怠管理における遅刻早退の控除にあたって注意すべき点
遅刻・早退による給与控除を行う際には注意しておきたいポイントがあります。労働基準法に照らし合わせてみると、違法になりかねない控除もあるため、しっかりと把握しておきましょう。
3-1. 控除は遅刻・早退があった時間分だけ行う
給与控除を行う大原則は、遅刻・早退があった時間分だけ、欠勤があった日数分だけ行うことです。
ノーワーク・ノーペイの原則では、労働が提供されなかった時間分は賃金を支払う必要がないとしていますが、反対に考えると労働が提供された時間分は必ず賃金を全額支払わなければならないということになります。
したがって、労働しなかった時間以上に賃金を控除をしてはならず、たとえば10分の遅刻を15分の遅刻に切り上げて給与を控除することはできません。
そもそも、残業を含め労働時間は1分単位で管理・記録し、給与計算も1分単位で行わなければならないため、あわせて確認しておきましょう。
3-2. 給料の控除と制裁のための減給は別物
遅刻早退や欠勤の控除と似た対処に「減給」があります。控除と減給は同じものだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、両者は異なる概念です。
控除は労働がなかった時間分の賃金を給与から差し引くことですが、減給は懲戒処分の一つであり、労働しなかった時間分を超えて賃金を減らすことが可能です。前者は労働基準法に特に定めはありませんが、後者は減給できる上限金額が労働基準法で定められています。
減給する際には労働基準法第91条で「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と明記されていますので、それに則った対処をおこなうようにしましょう。
3-3. 遅刻・早退回数に応じて欠勤扱いや有休消化にかえることはできない
ノーワーク・ノーペイの原則や労働基準法第91条に照らし合わせて考えると、「3回遅刻したら欠勤扱いとして1日分の給与を減給する」「遅刻を5回したら有給休暇が1日減る」といったペナルティを設けることはできません。
たとえば、15分の遅刻を3回した場合に控除していいのは45分ぶんの賃金であって、1日分の賃金を減給することはできません。
また、有給休暇は遅刻回数によらず、雇い入れ日から半年が経過していて出勤率が8割以上であれば付与されるものであり、労働者の権利であるため、これを遅刻回数によってはく奪することは不当な取り扱いになります。
もし無断欠勤や遅刻早退の多い社員への制裁を考えるのであれば、人事考課や給与査定の項目として遅刻早退の回数や欠勤日数を加えるとよいでしょう。
ただし、欠勤した場合に事後申請で有給休暇とすることは違法ではないため、社内で有給休暇の事後申請を認めているのであれば、そのルールが欠勤した場合にも適用されるのかを規定するとよいでしょう。
3-4. 控除が適用されない給与体系もある
ここまで遅刻早退や欠勤による賃金控除について詳しくご説明しましたが、控除が適用されない給与体系もあるため注意が必要です。
賃金控除が適用されないのは「完全月給制」です。完全月給制では遅刻早退や欠勤の有無にかかわらず、毎月定められた月給を支払う給与形態ですので、賃金控除を行うことはできません。自社の給与形態が完全月給制でないかを確認してから、控除の制度を定めましょう。
4. 遅刻や早退の処理は勤怠管理システムがおすすめ
従業員の遅刻早退などの勤怠管理の対応は、煩雑な作業になることも多く、計算ミスなども起こりやすくなります。
正確な給与計算をおこなうためにも、勤怠管理システムを利用することで、それらの面倒な作業から解放されます。
4-1. 勤怠管理システムで効率化できることとは
勤怠管理システムを導入すれば、さまざまなインターフェイスで打刻ができ、労働時間を正確に把握することができます。遅刻や早退の申請などもネットワーク上で申請可能です。
また、給与計算のシステムと連携することで給与計算の手間を省くことができ、業務の効率化が期待できるでしょう。
このように勤怠管理システムは、ほかのシステムと連携することでデータの一元管理が可能になり、煩雑な作業も軽減されます。
また、企業の勤怠管理者の負担も減り、計算ミスなどのリスクも軽減されるため、おすすめです。
関連記事:勤怠管理システムとは?はじめての導入にはクラウド型がおすすめ
5. まとめ
従業員が遅刻早退をした際の対応を解説してきました。企業は、従業員に賃金の全額支払い義務がありますが、労働力を提供していない場合は「ノーワークノーペイ」の原則が適用されます。
賃金を控除する際には控除してはいけない手当や、1分単位で控除するなど運用するには注意すべきポイントもありますので注意しましょう。
賃金控除に関しては、労働基準法に明記されていないため、企業の就業規則の整備が必要です。従業員の正確な労働時間を把握し、煩雑な給与計算を処理するためにも勤怠管理システムの導入をおすすめします。
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