会計ビッグバンとは?導入の歴史や影響をわかりやすく解説
更新日: 2024.1.16
公開日: 2023.4.12
jinjer Blog 編集部
会計ビッグバンとは、1990年代後半から始まった日本における一連の会計制度改革のことです。会計ビッグバンにより、日本企業の会計制度は世界会計基準に準拠した新会計制度へ生まれ変わることに成功しました。
本記事では会計ビッグバンの内容や、日本企業にもたらした影響について解説します。
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1. 会計ビッグバンとは?
会計ビッグバンとは、経済活動や企業経営のグローバル化を受けて実施された会計基準の一連の改革のことです。日本の会計制度を世界基準に準拠させることを目的に、1990年代後半から2000年代初頭にかけて企業会計に関する原則・ルールに様々な変更が加えられました。
日本企業が海外での取引や資金調達をスムーズに進めるためには世界適に通用する財務諸表が必要です。しかし、旧来の日本の会計制度は世界会計基準から乖離しており、海外の経営者や投資家が正しい企業評価を行えないという欠点を抱えていました。
1990年代以降に行われた会計原則の変更により、現在は日本企業でも時価主義による資産計上や連結決済による企業評価といった世界基準に準拠した会計制度が実施されています。会計ビッグバンは日本の会計制度にとって大きな変換点であり、同時に日本企業が世界へ進出するために必要な改革であったと言えるでしょう。
2. 会計ビッグバンの歴史
会計ビッグバンと称される一連の改革の目的は、日本の会計制度のグローバル・スタンダード化です。日本では1990年代の後半から会計制度の世界基準への見直しが始まりました。
そもそも、国際会計基準が初めて設定されたのは1973年です。当時、世界中の企業でグローバル化の波が見え始めたことを受け、世界基準の財務諸表の必要性が問われるようになりました。そこで、世界各国の会計士団体などから構成される国際会計基準員会(IASC)が設立し、同時に世界初の国際会計基準(IAS)も設定されます。
一方、日本では1970年代以降も取得原価主義に基づく独自の会計制度に従って、財務諸表の作成を続けていました。これは日本が高度経済成長に入り土地や建物といった資産の価値が上がり続け、多くの企業が多額の含み益を抱えていたことに起因します。本業が儲からなくても、当時は資産の売却で容易に黒字を計上できたのです。
しかし、1990年代に入り日本経済のバブルがはじけると、状況は一変します。企業が今まで抱えていた含み益は消失し、逆に莫大な負債を抱えてしまいました。そのため、原価主義では正確な企業評価が難しくなり、時価主義による評価の重要性が高まります。
1990年代後半には時価主義と連結決済による企業評価へシフトするため、日本の会計制度を世界会計基準に近付ける様々な改革が実施されました。この会計制度の大改革(会計ビッグバン)により、日本企業には会計制度だけでなく経営手法そのものの革新が見られるようになったと考えられています。
3. 会計ビッグバン導入による影響
会計ビッグバンは日本の会計制度に大きな影響を与えました。国債会計基準への対応には当初こそ混乱が見られましたが、現在では日本の会計制度としてすっかり定着したと言えるでしょう。
ここでは会計ビッグバンがもたらした主な変化を5つ紹介します。
3-1. 時価主義会計による金融資産の評価
会計ビッグバンの中でも、特に企業会計への影響が大きいと言われているのが金融資産に対する時価会計の導入です。企業が保有する資産の中には、株式のように常に価格が変動する金融商品があります。
新会計基準では、価格が変動する金融資産をその時点での時価で評価することが原則です。このような考え方を時価主義と言います。
従来の会計制度では、保有する金融資産を取得時の原価で評価する方法が一般的でした。原価であればその資産の価値を領収書や契約書で客観的に評価できるためです。
しかし、株式等の金融資産は日々その価値が変動します。そのため、原価主義による会計では、貸借対照表に計上されない赤字を抱えている企業も少なくありませんでした。
時価主義では企業が保有する金融資産を決算時点での価格で評価し、その価格を貸借対照表に計上します。原価主義では帳簿外に隠れてしまう損益を、財務諸表に計上できることが時価主義のメリットです。
3-2. 連結財務諸表による経営評価
1999年度より「連結財務諸表原則」が適用された結果、グループ経営の企業では連結財務諸表を企業評価の中心とする見方が一般化しました。連結財務諸表とは、グループ会社全体の税務状況や企業成績を統合して作成される財務諸表のことです。
会計ビッグバン以前は、グループ内企業それぞれが単独の財務諸表を作成し、個別に企業評価をする見方が一般的でした。しかし、グループ内企業はそれぞれ補完関係にあり、一社の経営不振がグループ会社全体に悪影響を及ぼす事態も考えられます。投資の観点からも個別財務諸表ではグループ会社全体の経営リスクが把握できない点が問題視されていました。
連結財務諸表であれば、グループ会社全体を一つの会社とみなして現状の把握が可能です。また、連結財務諸表はグループ会社全体の財務状況を統合して表示するため、損失の移管といったグループ内での不正会計が起こるリスクも少なくなります。
3-3. 退職給付会計の導入
企業が従業員に支払う退職金や年金の会計処理も、会計ビッグバンによって影響を受けた項目の一つです。
従来の日本企業の退職給付会計では、退職給付の支払方法(一時金か年金か)や積立て方法(内部積立か外部積立か)により異なる会計処理が行われていました。また、積立金が不足している、退職給付の実態が財務諸表に反映されていない、といった問題点も指摘されていました。
これらの問題点を踏まえ、新会計基準では以下のようなる原則が定められています。
- 退職一時金も年金も一律で「退職給付金」として処理する
- 退職給付金を実態に則して貸借対照表、損益計算書に計上する
新会計基準で退職給付金を計上する際は、従業員の現時点までの労働の対価として支払われる退職金と、将来的に支払う退職金の両方について計算が必要です。
なお、現在までの退職金は既に企業の支払いが確定しているため債務として認識されますが、将来的に支払う退職金は支払いが不確定のため引当金(退職給付引当金)として扱います。
3-4. 税効果会計の導入
1998年10月に公表された「税効果会計に係る会計基準」に従い、公開企業など特定要件に該当する企業では税効果会計の適用が必須となりました。税効果会計とは、企業会計上の損益と税務上の損益に差異がある場合に、法人税等の税金を期間配分することで金額の矛盾を解消する会計手法のことです。
多くの場合、損益計算書上の税引き前当期純利益(=収益-費用)と税務上の課税所得(=益金-損金)は一致せず、そこから算出される法人税額にも差異が生じます。これは企業会計と税務会計では上計できる収益と費用の項目が異なるためです。
税効果会計では、企業会計から算出された税引き前当期純利益と税務上の課税所得のズレを「法人税等調整額」の勘定科目で調整し、納めるべき法人税額を確定させます。これにより、企業会計上の正確な当期純利益の把握が可能です。
3-5. キャッシュフロー計算書の導入
現在では財務三表のうちの一つとして定着したキャッシュフロー計算書も、実は会計ビッグバンの流れの中で提出が義務付けられるようになりました。キャッシュフロー計算書とは、営業活動、投資活動、財務活動それぞれにおける資金の流れを示す表です。貸借対照表、損益計算書と合わせて財務三表と呼ばれます。
どれだけ利益を計上したとしても、手元に現金がなければ企業経営は上手くいきません。特にバブル崩壊後は土地や建物などを担保に金融機関の融資を受けることが難しくなり、企業のキャッシュフローがより重視されるようになりました。
また、企業の損益は必ずしも現金の収支差額と一致しません。表面的には利益が出ているように見えても、資金繰りは火の車というケースもあるでしょう。キャッシュフロー計算書により資金の流れを可視化することで、経営者やステークホルダーは適切な判断を下せるようになります。
4. 会計ビッグバンにより日本に国際会計基準が定着
会計ビッグバンは、1990年代後半から見られる日本の会計制度の大改革です。主に国際会計基準への準拠を目的とした改革が試みられたことで、時価主義や連結決算による企業評価は日本でもすっかり定着しました。
なお、会計基準は時代に合わせて常に変化しています。最新の会計基準にも対応できるよう、現行の会計基準に対する理解を深めていきましょう。
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