介護業界の人事評価の特徴とは?必要性・メリット・一般的な評価項目を解説
更新日: 2025.5.1
公開日: 2025.4.20
jinjer Blog 編集部
「介護業界の人事評価の特徴を知りたい」
「介護業界の人事評価でも活用される人事評価シートについて知りたい」
上記のようにお悩みの方も多いでしょう。
介護業界の人事評価の特徴は、数値で評価しにくい定性的な事柄に関する評価が多いことです。
本記事では、介護業界の人事評価の特徴や必要性、メリットや一般的な評価項目、厚生労働省による介護キャリア段位制度について解説しています。
そのほかに、介護業界の人事評価でも活用される人事評価シートの概要も解説しているため、ぜひ参考にしてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 介護業界の人事評価の特徴
介護業界の人事評価の特徴は、従業員の数値で評価できない事柄や要素に対して評価する機会が多いことです。一般的な評価基準に加えて、以下のような介護業界に適した定性的な評価基準が多く採用されています。
コミュニケーション能力 | 利用者に対しては聞く力や共感力、表情・声色・身ぶり手ぶりによる非言語的コミュニケーション能力などを評価し、従業員間では正確な報告・連絡・相談ができるかどうかなどを評価する |
専門スキル | 習得している介護の専門知識や安全な介護のために必要な技術などを評価し、知識や技術の活用の有無についても評価する |
協調性 | チームでおこなう業務が多いため、自分の都合に関係なく周囲と協力して働けるか、ほかの人の意見を聞いたり尊重したりするかなどを評価する |
上記のほかに、従業員のモチベーションや思考力、判断力や責任感など定量評価が難しい事柄について評価する企業も多いです。
2. 介護業界の人事評価の必要性
介護業界の人事評価の必要性は高いです。少子高齢化が進むなか介護業界の人手不足は深刻ですが、人事評価の導入は採用における人材確保や従業員の人材育成に役立ちます。
客観性の高い評価基準や明確な処遇決定は、従業員の労働意欲・貢献意欲・満足度などを高めるため離職者の減少にもつながるでしょう。
一般的に人事評価の導入の際には、評価基準や評価項目など処遇へ反映される事柄のほかに、以下のような事柄も従業員へ周知します。
企業理念 | 企業の価値観・存在意義・方針などについて整理して文章化したもの |
ビジョン | 将来に企業が実現したい具体的な目標や姿について文章化したもの |
求める人物像 | 理想的な従業員像で、企業が求める能力や資質を備えている |
上記の浸透により、認識を共有しつつ全従業員が働くため、組織としての一体感が増すでしょう。
人事評価の存在や求める人物像の外部への周知により、企業イメージの向上や採用ミスマッチの減少が期待できます。
3. 介護業界の人事評価のメリット
介護業界の人事評価のメリットは、以下の4つです。
- 人材の確保・育成
- 定着率の上昇
- 従業員のモチベーションの向上
- サービス品質の向上
各メリットの詳細を解説します。
3-1. 人材の確保・育成
介護業界における人事評価のメリットの一つは、人材の確保・育成です。人事評価を未導入の場合と比べて、適正な評価や評価結果を反映した処遇決定を期待できる点が採用で有利に働き、人材の確保が容易でしょう。
また、評価や処遇のために積極的・主体的に業務遂行する従業員が増加するため、人材育成にも役立ちます。指導者側の責任感が一層強くなり指導の質が向上することも、人材育成に有益です。
3-2. 定着率の上昇
介護業界の人事評価のメリットには、定着率の上昇もあります。人事評価による客観的な評価や納得感のある処遇決定により、従業員の労働意欲や満足度が上昇するためです。
人事評価の周知において等級基準・賃金などを明示すると、従業員が将来の等級や処遇の目標を立てやすくなります。結果、やりがいを感じる従業員や働き続けたいと考える従業員が増えるため、定着率が向上するでしょう。
3-3. 従業員のモチベーションの向上
従業員のモチベーションの向上も、介護業界の人事評価のメリットです。業務遂行における努力や貢献度が評価され、評価結果が賃金・賞与などの決定に反映される明確な処遇決定が労働意欲を向上させます。
介護業界では数値評価が難しい業務も多いため、人事評価を未導入の場合、評価者の個人的見解による評価だと疑う従業員もいるでしょう。
しかし、人事評価を導入した場合、未導入の場合と比べて客観的な評価を実感する従業員が増加します。結果、従業員のモチベーションアップにつながるでしょう。
3-4. サービス品質の向上
介護業界の人事評価のメリットとして、サービス品質の向上も挙げられます。人事評価の導入により人材育成が円滑に進み、優秀人材の定着率も向上するため、常に高い品質のサービスを提供できるでしょう。
業務中の努力が評価されるため、自身の意思にもとづいて積極的に行動する従業員が増えることもサービス品質の向上につながります。
4. 介護業界の人事評価の一般的な評価項目
介護業界の人事評価の一般的な評価項目は、以下のとおりです。
- コミュニケーション能力
- 職務遂行力
- 介護技術
- 意欲
- 姿勢
- 協調性
- リーダーシップ
- 法令遵守
定性評価に適した項目が多いですが、次の評価や制度を組み合わせると定量評価を実現できます。
等級制度 | 職務レベル別に区分した各等級の役割・求める行動を定め、等級ごとに評価内容や報酬などが決まる仕組み |
5段階評価 | 各評価項目で等級別に設定した達成基準に対する従業員の能力レベルに応じる5段階の評価点により採点する仕組み |
例えば、評価項目が職務遂行力・小項目が記録と報告、一般従業員の等級の達成基準が「必要な記録と報告が正確にできる」の場合です。以下の5つのレベルから従業員の能力に近いものを選び、レベルに応じた評価点を付与します。
5 | 超えている |
4 | 十分相当している |
3 | 相当している |
2 | 不足している |
1 | まるで不足している |
全小項目の点数の合計で、職務遂行能力の評価項目の評価点数を決定します。
5. 介護業界の人事評価で活用したい人事評価シート
介護業界の人事評価で活用したい人事評価シートとは、職業能力の現状レベルや不足している能力が明確になるチェック形式の評価シートです。職種・職務・レベル別に設定された職務遂行基準から、現状の評価対象者の職業能力レベルに合うものを選び、該当の人事評価シートを使い評価します。
職業能力の判定基準となる評価シートと、詳細な評価基準が記載されたサブツールシートの2点セットです。評価シートには、職業能力別に職務遂行の基準が設定されており、それぞれに自己評価欄と上司評価があります。
部下の自己評価後に上司が評価する方法が一般的です。部下の強みや弱み、部下と上司の認識の違いが明らかになるため、人事評価後のフィードバックや人材育成にも役立ちます。
厚生労働省によると、職業能力評価シートは人事評価にも活用できるツールです。在宅介護業の人事評価に活用できるシートも用意されており、カスタマイズもできます。
6. 介護職員の人事評価に役立つ厚生労働省の介護キャリア段位制度
介護職員の人事評価に役立つ厚生労働省の介護キャリア段位制度とは、2012年にスタートした職業能力のレベル認定制度です。
以下のようなレベル区分があり、レベル別に設定された知識・実践的スキルの両面で評価されます。
4 | 介護福祉士の資格取得 | チーム内でリーダーシップを発揮でき、一人前の仕事ができる能力がある |
3 | 介護職員初任者研修修了・実務者研修修了 | 指示がなくても一人前の仕事ができる能力がある |
2 | 護福祉士養成課程または実務者研修修了 | 一定の指示にもとづき一定水準の仕事ができる能力がある |
1 | 職業準備教育を受けた水準の能力がある |
知識は認証の育成プログラムの履修による評価、実践的スキルはOJTを通じて評価する仕組みです。OJTとは人材育成手法の一つで、実際の業務を通じて職場の上司や先輩が部下に指導します。
なお、評価・OJT指導を実施する評価者になるためには、属性要件への合致・評価者講習の修了などの条件を満たさなければなりません。
7. 介護業界に適した人事評価制度を導入しよう
介護業界の人事評価の特徴は、数値で評価しにくい事柄や要素に関する評価が多いことです。
しかし、等級制度や5段階評価を組み合わせて評価すると、定量評価を実現できます。厚生労働省が活用を推奨する人事評価シートも段階評価のため、客観的な評価を期待できるでしょう。
介護業界の人事評価の導入には、人材確保や人材育成、従業員のモチベーションや定着率の向上など多岐にわたるメリットがあります。人材不足が深刻化している介護業界では、上記のメリットを期待できる人事評価の必要性が高いです。
本記事で解説した介護キャリア段位制度や一般的な評価項目なども参考にしつつ、ぜひ介護業界に適した人事評価制度の導入を検討してください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
人事・労務管理のピックアップ
-
【採用担当者必読】入社手続きのフロー完全マニュアルを公開
人事・労務管理公開日:2020.12.09更新日:2024.03.08
-
人事総務担当が行う退職手続きの流れや注意すべきトラブルとは
人事・労務管理公開日:2022.03.12更新日:2024.07.31
-
雇用契約を更新しない場合の正当な理由とは?伝え方・通知方法も紹介!
人事・労務管理公開日:2020.11.18更新日:2025.04.24
-
法改正による社会保険適用拡大とは?対象や対応方法をわかりやすく解説
人事・労務管理公開日:2022.04.14更新日:2025.05.16
-
健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届とは?手続きの流れや注意点
人事・労務管理公開日:2022.01.17更新日:2025.05.12
-
同一労働同一賃金で中小企業が受ける影響や対応しない場合のリスクを解説
人事・労務管理公開日:2022.01.22更新日:2025.04.23
人事評価の関連記事
-
1on1は意味ないもの?失敗する理由や抱える課題・解決策を解説
人事・労務管理公開日:2025.05.17更新日:2025.05.09
-
1on1で話すことがないといわれた場合は何を話す?ネタ切れした際のトーク例や面談のコツを紹介
人事・労務管理公開日:2025.05.17更新日:2025.05.09
-
評価制度がない会社とは?メリットや査定方法を解説
人事・労務管理公開日:2025.04.21更新日:2025.05.01