欠勤控除とは?該当するケースと計算方法・端数処理を詳しく解説
更新日: 2026.7.2 公開日: 2024.1.12 jinjer Blog 編集部

欠勤控除は、従業員が欠勤した時間分の賃金を給与から差し引く仕組みで、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいています。
しかし、その取り扱いが曖昧なままだと、思わぬ労使間トラブルに発展したり、意図せず労働基準法違反を招いてしまったりするリスクが潜んでいます。
本記事では、欠勤控除が適用される具体的なケースや、月平均勤務日数・暦日数を用いた具体的な計算パターン、端数処理の注意点を紹介します。
給与計算は、従業員との信頼関係に直結するため、本来絶対にミスがあってはならない業務ですが、計算ミスや更新漏れ、ヒューマンエラーが発生しやすいのも事実です。
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1. 欠勤控除とは

欠勤控除とは、勤怠控除ともよばれ、従業員に支給予定の給与から欠勤した時間分の賃金をマイナスする仕組みです。これは働いていない時間や日数については賃金を支払わないという「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づくものです。
一般的には、企業の就業規則に従って運用され、遅刻や早退、私的な理由による欠勤などが対象となります。ただし、ルールが明確に定められていない場合はトラブルにつながる可能性があるため、事前の整備が重要です。
関連記事:勤怠控除とは?計算方法と注意するべきポイントを紹介1-1. 欠勤控除と減給制裁の違い
欠勤控除は、実際に働いていない時間分の賃金を支払わないという「賃金計算上の調整」であり、懲戒処分にはあたりません。
これに対して減給制裁は、就業規則違反などに対する懲戒処分のひとつで、本来支払われるはずの賃金から制裁として一定額を差し引くものです。
なお、労働基準法では減給に上限が設けられており、1回あたりは平均賃金の1日分の半額まで、さらに総額でも賃金総額の10分の1以内と定められています。
関連記事:労働基準法第91条に規定された「減給の限度額」とは?法律上の意味や計算方法
1-2. 欠勤控除の適用可否(日給月給制・完全月給制)
欠勤控除の可否は、賃金体系によって異なります。日給月給制の場合、あらかじめ月給額が定められているものの、欠勤や遅刻・早退があった際には、その分の賃金を差し引く仕組みとなっているので、欠勤控除は原則として問題なくおこなえます。
これに対して、完全月給制では月額賃金が固定されており、特段の取り決めがない限り、欠勤があっても賃金を控除することはできません。同じ「月給制」であっても、その仕組みによって欠勤控除の可否が大きく異なるため、制度の違いを正しく理解し、慎重に取り扱う必要があります。
関連記事:日給月給制とは?月給制との違いやメリット・デメリットを詳しく解説
2. 欠勤控除はどのような場合に対象となる?

欠勤のすべてが控除の対象になるわけではなく、法令や就業規則に基づいて適用の可否が判断されます。ここでは、欠勤控除の対象となるケースとならないケースを整理します。
2-1. 欠勤控除の対象となるケース
欠勤控除の対象となるのは、基本的に「本来働く義務があるにもかかわらず、労務の提供がおこなわれなかった場合」です。具体的には、子どもの送迎による遅刻や早退、体調不良による欠勤などが該当し、無断欠勤も含まれます。
また、従業員が一時的な病気やけがで就業できない場合には、有給休暇の取得を案内することが考えられます。有給休暇は事前申請が原則ですが、やむを得ない事情がある場合には、当日申請や事後申請を認めるなど、実情に応じた柔軟な運用をおこなうことが望ましいでしょう。
また、産前産後休業や育児休業は、法令により労働義務が免除される期間にあたります。これらの期間中は賃金が支払われないケースが一般的ですが、出産手当金や育児休業給付金といった公的制度によって、一定の収入補填を受けられます。
関連記事:有給休暇の事前申請は義務化可能?有給申請は何日前まで?ルールも紹介
2-2. 欠勤控除の対象とならないケース
有給休暇を取得して休んだ場合、その日は欠勤として扱われません。さらに、時間単位や半日単位で有給休暇を利用できる制度があれば、遅刻や早退についても欠勤控除の対象外となる場合があります。
また、企業によって設けられているリフレッシュ休暇やボランティア休暇などの制度を利用して休んだ場合でも、それらが有給扱いであれば欠勤控除には該当しません。
加えて、経営不振による計画的な休業や設備トラブルによる操業停止など、企業側の都合で従業員を休ませる場合には、労働基準法に基づいて休業手当を支払う必要があります。ただし、自然災害などの不可抗力による休業については、この休業手当の対象には含まれません。
関連記事:労働基準法第26条の休業手当とは?適用条件や計算方法を解説
3. 欠勤控除の計算方法

欠勤控除の計算方法には、次のような方法があります。
- 月の平均所定勤務日数で算出する
- 1ヵ月の所定勤務日数で算出する
- 月の暦日数で算出する
- 遅刻・早退は月給額を勤務時間で割って算出する
それぞれ具体例を用いながら解説します。
3-1. 月の平均所定勤務日数で算出する
欠勤控除は、年間所定勤務日数をもとに、次のように月の平均所定勤務日数を用いて算出できます。
年間所定勤務日数 ÷ 12ヵ月 = 月の平均所定勤務日数
月の給料 ÷ 月の平均所定勤務日数 × 欠勤日 = 欠勤控除額
例えば、月の給料が25万円で、月の平均所定勤務日数が22日あり、5日欠勤したケースでの計算式は以下のとおりです。
25万円 ÷ 22日 × 5日 =56,818円(欠勤控除額)
この方法では、1日あたりの控除額が毎月一定となるため、月ごとに控除額が大きく変動しません。計算が簡単でわかりやすいことから、多くの企業で採用されています。
3-2. 1ヵ月の所定勤務日数で算出する
欠勤控除額を、1ヵ月の所定勤務日数を用いて算出する方法は次のとおりです。
月の給料 ÷ 1ヵ月の所定勤務日数 × 欠勤日 = 欠勤控除額
例えば、月の給料が25万円で、1ヵ月の所定勤務日数が24日のうち、4日欠勤したケースでの計算式は次のとおりです。
25万円 ÷ 24日 × 4日=41,666円
この計算方法の特徴は、月ごとに控除額が変動する点です。ゴールデンウィークや年末年始などの長期休暇がある月は、所定勤務日数が少なくなります。
そのため、同じ欠勤日数であっても、勤務日数が少ない月ほど1日あたりの単価が上がり、結果として控除額が高くなる点に注意が必要です。
3-3. 月の暦日数で算出する
欠勤控除は、次のように1ヵ月の暦日数を使っても算出可能です。
月の給料 ÷ 1ヵ月の暦日数 × 欠勤日 = 欠勤控除額
月給を25万円支給しており、1ヵ月の暦日数が31日で、5日欠勤したケースでの計算式は次のとおりです。
25万円 ÷ 31日 × 5日 = 40,322円
暦日とは、深夜0時から午後12時の間を一区切りとする一日のことです。月の暦日数とは、欠勤があった給料を計算する期間の実日数を指します。
なお、暦日数は月ごとに28日・30日・31日と異なるので、欠勤控除額も毎月変動します。そのため、都度計算が必要になり、やや手間がかかる点に注意が必要です。
3-4. 遅刻・早退は月の給料を勤務時間で割って算出する
遅刻・早退があった場合に欠勤控除額を算出する際は、次の式を活用しましょう。
1ヵ月の給料 ÷ 所定勤務時間 × 欠勤時間 = 欠勤控除額
遅刻や早退は、次の例のように月給を1ヵ月の労働時間で割ってから計算します。
| 月の給料 | 25万円 |
| 1ヵ月の労働日数 | 22日 |
| 1日の所定勤務時間 | 8時間 |
| 1ヵ月の遅刻・早退の時間 | 5時間 |
25万円 ÷ 176時間(22日×8時間) × 5時間 = 7,102円
欠勤していない時間分まで給料をカットすると、労働基準法に違反するおそれがあるため、間違えないように注意して計算しましょう。
関連記事:勤怠管理で遅刻や早退を管理するには?控除の方法と注意点を解説
3-5. 【ポイント】端数は従業員が有利となるように処理する
賃金の支払いについては、労働基準法第24条の「全額払いの原則」に基づき、賃金は原則として全額を支払う必要があります。そのため、欠勤控除の計算で発生する1円未満の端数は、原則として従業員に不利にならないよう処理することが重要です。
なお、1時間あたりの賃金額や割増賃金額に1円未満の端数が計算過程で生じた場合には、行政通達により、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる方法が認められています。不適切な端数処理をおこなうと、労働基準法違反となり、行政指導の対象となるおそれがあります。
さらに、悪質と判断された場合には、法律に基づき罰金や拘禁刑といった罰則が課されるリスクもあります。加えて、従業員から未払い賃金について損害賠償を請求される可能性もあるので、慎重な対応が必要です。
関連記事:給与計算で迷わない端数処理のポイント|小数点以下の計算ルールも解説
4. 欠勤控除を算出する際の注意点

欠勤控除は給与計算の中でもトラブルになりやすい項目です。従業員との認識のズレや法令違反を防ぐためには、事前のルール整備と適切な運用が不可欠です。ここでは、欠勤控除をおこなう際に押さえておくべき主なポイントを解説します。
4-1. 欠勤控除のルールを就業規則に明記する
欠勤控除の計算方法は、あらかじめ就業規則に明確に定めておくことが重要です。例えば、控除額を算出する際に「所定労働日数で割るのか」「暦日数で割るのか」といった基準が曖昧なままだと、従業員との間で給与計算に関するトラブルが生じるおそれがあります。
また、各種手当の取り扱いについても注意が必要です。通勤手当や住宅手当などについては、欠勤時に控除の対象とするかどうかは一律に決まっているわけではなく、それぞれの手当の性質や支給目的を踏まえて判断する必要があります。そのため、手当ごとの取り扱いについても事前にルールを明確に定めておくことが求められます。
4-2. 控除後の給与が最低賃金を下回らないようにする
欠勤日数分を差し引く「減額方式」を採用すると、控除額が大きくなりすぎて、結果的に最低賃金を下回るケースがあります。例えば、月給を「月の平均所定勤務日数」で割って1日あたりの欠勤控除額を算出する方法を用いる場合、その月に数日しか出勤せず、残りを欠勤したケースでは注意が必要です。
【具体例】
- 基本給:20万円
- 月の平均所定勤務日数:20日
- その月の所定労働日数:23日(うち4日出勤、19日欠勤)
この場合、欠勤控除額は「19万円 = 20万円 ÷ 20日 × 19日」となり、その月の支給額は1万円です。仮に1日8時間労働とすると、4日間の労働時間は合計32時間となり、支給額1万円を時給換算すると約313円となってしまいます。
このように欠勤日数が多い場合には、欠勤日数を基準に差し引くのではなく、「1日あたりの給与額 × 出勤日数」で支給額を算出する加算方式を採用することが有効です。あわせて、「一定以上の欠勤がある場合は、欠勤日ではなく出勤日を基準に給与を計算する」といった内容を就業規則に明記しておくことも重要です。
関連記事:労働基準法に基づく最低賃金とは?その基準や違反への罰則を解説
4-3. 固定残業代の扱いをあらかじめ明確にする
固定残業代(みなし残業代)を採用している場合、欠勤があった際の取扱いについては、あらかじめ就業規則で明確に定めておくことが重要です。欠勤に応じて固定残業代を減額するのか、あるいは欠勤があっても満額支給するのかによって、実際の給与額は大きく異なります。
ただし、固定残業代は通常「一定時間分の時間外労働の対価」として月単位で設定されるものであるため、これを日額に分割して欠勤控除をおこなう場合には、その性質との整合性が問題となる可能性があります。制度の設計によっては、固定残業代が実質的に日単位の手当であると解釈されるリスクも否定できません。
そのため、実務上は、こうした解釈リスクや労務トラブルを回避する観点から、欠勤があった場合でも固定残業代については控除をおこなわず、満額支給とする運用が採られることもあります。
4-4. 給与明細に欠勤控除の内容をわかりやすく記載する
欠勤控除をおこなう場合は、その内容を給与明細にわかりやすく記載することが重要です。例えば「欠勤日数」や「控除金額」が一目で確認できるようにすることで、従業員の理解を得やすくなります。
そのため、欠勤控除は基本給や各種手当とは区別し、専用の控除項目として明示することが望まれます。見やすく整理された形で記載しておくと、不明点による不信感や問い合わせも生じにくくなるでしょう。
4-5. 税金や社会保険料の計算方法に注意する
欠勤控除によって給与額が変動すると、税金や社会保険料の計算にも影響が及びます。とくに社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は標準報酬月額を基準に算出されるため、一時的な給与減額がどのように反映されるのかを理解しておくことが重要です。
また、所得税は欠勤控除後の給与額を基礎に源泉徴収されます。一方、住民税は前年の所得に基づいて課税されるので直接的な影響は小さいものの、欠勤控除の額が大きい場合には給与から住民税を控除しきれない可能性があります。その場合、従業員本人が納付する「普通徴収」へ切り替えが必要になることもあるため注意が必要です。
関連記事:【図解】給与計算ガイド!業務の流れやポイントを解説!
5. 欠勤控除の仕組みを理解して適正な給与計算をしよう

欠勤控除は、実際に労務提供がなかった時間分の賃金を給与から差し引く重要な仕組みです。しかし、その運用にあたっては、ルールが不十分だと労使間で認識のズレが生じたり、労働基準法違反につながったりするリスクもあります。
こうしたトラブルやミスを防ぐためには、自社の就業規則に計算方法を明確に定め、従業員に対する透明性を確保することが重要です。適切なルール整備をおこない、正確で公正な給与計算を実現しましょう。
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