人事異動の内示とは?いつ伝えるべきか適切な時期や伝え方を解説
「人事異動の内示の目的は?」
「人事異動の内示を知らせる適切なタイミングは?」
「人事異動の内示の伝え方について知りたい」
人事異動の内示について、上記のような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
内示とは社内人事の確定後、全従業員に周知する前に、該当の従業員に対し異動や転勤を伝えることです。前もって伝えることで、余裕をもって引越しや業務引き継ぎの準備ができます。
ただし内示の伝え方やタイミングによっては、従業員が内示に不満をもつ可能性があります。従業員とのトラブルを防ぐためにも、内示に関する正しい知識を理解することが大切です。
そこで本記事では、人事異動の内示に関する知識や伝える適切な時期・伝え方について解説します。
目次
昨今では、少子高齢化による労働人口の減少が年々激化しており、今後の採用・人材確保はますます難しくなるばかりです。
そんな中で、従業員の定着率をいかに上げるのかという課題が企業各社を悩ませる問題になっており、従業員の待遇改善のため、ボーナスや給与のベースアップを試みたとしても、
「そもそも物価高騰も進む中で、会社にもそんなに余裕はないし、単純な賃上げでは持続性がない...」
「支給額の分だけ税負担が増えるため、従業員の手取りは増えずに、思ったよりも効果が出ない」このように、会社の負担額は増える一方なのに、従業員満足度は上がらないという結果に陥りやすいのが現状です。
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1. 人事異動の内示とは|全従業員に通知する前に本人に異動を知らせること
内示とは、社内の人事異動が確定した後、全従業員に通知する前に、従業員本人に対し異動を知らせることです。一般的には、直属の上司や人事労務の担当者から知らされることが多いとされています。
内示の主な目的は、異動の準備期間を設けることです。例えば転勤が伴う場合、引越し先の物件探しなどをおこなわなければなりません。前もって内示を伝えることで、従業員は余裕をもって異動の準備ができます。
なお内示が知らされた従業員は、基本的に内示を断れません。ほとんどの企業の場合、就業規則に企業の業務命令に従うことが記載されています。
関連記事:人事異動とは?決め方やメリット・デメリットを徹底解説
2. 人事異動の内示と辞令・発令の相違点
人事異動の内示と辞令・発令の相違点について、以下のとおりにまとめました。
- 内示と辞令の相違点
- 内示と発令の相違点
2-1. 内示と辞令の相違点
人事異動の内示と辞令の相違点は、通知範囲と通知方法です。
通知の種類 | 通知範囲 | 通知方法 |
内示 | 人事異動をする従業員本人 | 口頭やメールなど |
辞令 | 全従業員 | 文書 |
まず、内示を通知する範囲が従業員本人である一方、辞令は全従業員へ通知をおこないます。また、内示の通知方法は口頭やメールなどが挙げられますが、辞令は企業側の正式な文書として通知されることがほとんどです。
2-2. 内示と発令の相違点
人事異動の内示と発令の相違点は、行動内容です。
行動内容 | |
内示 | 上司などが異動する従業員本人に対し、異動を知らせる |
発令 | 企業が公式に発表することを指示する |
まず、内示の行動内容は、従業員に対し異動を知らせることです。一方、発令の行動内容は発表を指示するとされています。
3. 人事異動の内示の5パターン
人事異動の内示は、以下5つのパターンに分けられます。
- 部署異動
- 転勤
- 出向
- 昇進もしくは昇格
- 降職もしくは降格
部署異動や転勤・出向の場合は、就業先が変更となるケースが多く、物件探しや引越しのために早めに内示を知らせます。
また昇進や昇格、降職や降格の場合においては、後任へ業務引き継ぎ準備のために、内示を知らせる場合が多いです。
なお降職・降格の場合は、家庭の事情や本人の希望による業務内容の変更が多いとされています。全従業員に伝える際は、誤解を招かないように通知しなければなりません。
4. 人事異動の内示を知らせる時期
人事異動の内示を知らせるタイミングは、企業ごとによって異なります。なぜなら、法律などで内示のタイミングが定められていないからです。そのため、参考になる一般的なケースを紹介します。
4-1. 転居を伴う場合
異動や転勤・出向などの場合は、就業先の変更に伴う引越しが必要となります。従業員の家族にも関係してくるため異動する1〜2ヵ月前など、余裕をもったタイミングで内示を知らせるのが一般的です。
4-2. 転居を伴わない場合
昇進や昇格・降職や降格等で転居を伴いわない場合は、1ヵ月前〜数週間前に内示を知らせることが多いとされています。業務の引き継ぎ準備もあるため、遅くても1週間前には内示しましょう。
4-3. 業界などによる違いもある
また一部の業界や企業文化によっては人事異動の時期が異なるケースもあります。そのため内示のタイミングも異なります。
たとえば、IT業界ではプロジェクトベースの異動が多く、プロジェクト完了時に比較的短期間で内示されることが一般的です。一方、アパレル業界では夏や冬のセール後の時期に人事異動が多いため、そのあとに内示が発表されるケースが多くあります。
また、公務員の世界では幅広い部署を経験させるため、1年から3年周期で定期的に異動が行われ、4月1日付けで事例が発表されることが多いようです。そのため、対象者はおおむね3月の1〜2週目には内示が伝えられるケースが多いようです。
5. 人事異動の内示の伝え方|口頭・メールや書面で伝える
人事異動の内示の伝え方は、部署や上司・担当者によって伝え方が異なります。主な内示の伝え方は、以下の2つです。
- 口頭|従業員と一対一で話し合う
- メールや書面|内示の主旨を明確に伝える
5-1. 口頭で従業員と一対一で話し合う
まず人事異動が決まった場合、従業員本人に対して口頭で内示を伝える方法が挙げられます。従業員に対し、異動や転勤が決まった理由を明確に伝えられるからです。
内示を口頭で伝える場合は、周囲の従業員に聞かれないように注意しなければなりません。従業員のスケジュールを押さえたうえで、一対一で話し合う時間を設けましょう。
5-2. メールや書面で内示の主旨を明確に伝える
従業員と一対一で話し合うスケジュールが押さえられない場合は、メールや書面で内示を伝えましょう。文章で伝えることで、内示の詳細を正しく伝えられます。
ただし、一方的に内示を伝えても、従業員が困惑する可能性もあります。内示の主旨を明確に伝えることが大切です。
6. 人事異動の内示を伝える際に注意すべきポイント
人事異動の内示を伝える際に注意すべきポイントは、以下の5つです。
- 企業の内経営方針や経営戦略を伝える
- 人事異動を行う目的を明示する
- 異動先について明確に説明する
- 情報漏洩しないよう対策する
- 内示を断られた場合は理由を確認する
詳しく解説していきます。
6-1. 企業の内経営方針や経営戦略を伝える
人事異動の内示を伝える際には、従業員本人が企業の経営方針や経営戦略を深く理解し、それに基づいて異動の意図や目的を具体的に理解していることが重要です。人事異動は事業戦略や要員計画に基づいて行われ、組織力の向上を目指して適材適所の人員配置を行うことが求められます。適切な人員の配置は会社全体のパフォーマンス向上に直結し、従業員のモチベーションやスキルの活用にも寄与します。そのため、内示を伝える際には経営方針や経営戦略を十分に理解できる環境を整え、異動がどのように組織全体の目標達成に寄与するかを明確に伝えることが大切です。
6-2. 人事異動を行う目的を明示する
人事異動の内示を伝える際に最も重要なのは、異動の目的を社内で明確に共有することです。人事異動は単なる人員の配置換えではなく、会社の大きな事業や組織変革に基づいた戦略的な行動です。特に大きな変革が含まれる場合、その目的や背景、異動の意図を従業員にしっかりと説明することが不可欠です。
これにより、従業員は異動の必要性や意図を理解しやすくなり、組織全体での協力体制が整いやすくなります。また、異動に伴う新しいスキルや役割についての詳細な情報を共有することで、従業員が適切な準備を行い、自信を持って新しい職務に取り組むことができます。結果として、組織の一体感が向上し、異動の成功率も高まります。
6-3. 異動先について明確に説明する
上司や人事労務の担当者として従業員に明確な説明ができるように、内示の詳細を把握しましょう。現状の職場環境で満足している従業員の場合、内示を告げられたことで、企業に対し不安や不満を抱える場合があるからです。
前述したとおり、人事異動の内示にはさまざまな種類があります。スキルや能力を評価した昇進や昇格、現場フォローのための異動など、企業によって人事異動を命じる理由はさまざまです。
内示が出たことによる従業員の不安や不満を解消するために、内示の詳細を明確に伝えられるように準備してください。
関連記事:やってはいけない人事異動とは?退職やモチベーション低下を避けるコツ
6-4. 情報漏洩しないよう対策する
内示は機密情報と同様に取り扱う企業が多いため、情報が漏洩しないように対策しましょう。内示の詳細が社内に広まった場合、トラブルに発展する場合があるからです。
例えば重要なポジションの人事異動があった場合、現場に混乱を招く場合もあります。さらに、取引先や株主に影響を与えることも懸念しなければなりません。
その結果、内示の取り消しに至る場合もあります。上司や人事労務の担当者として内示を伝える際は、従業員に対して内示を口外してはならない旨の理由を添えて正しく伝えましょう。
6-5. 内示を拒否・断られた場合は理由を確認する
もし従業員から内示を断りたい・検討したいと言われた場合は、拒否できない旨を伝える前に、理由を確認しましょう。
内示を断る理由が家庭の事情(育児や介護など)の場合、異動や転勤などを配慮する必要があるからです(育児・介護休業法の第二十六条)。
従業員が内示を断る明確な理由を伝えたにもかかわらず内示を命じると、企業への不信感が高まります。その結果、離職につながる可能性もあるでしょう。
人材確保が重要視される現代において、能力やスキルがある人材が離職するのは企業にとって避けるべきです。上司や人事労務の担当者は、従業員が内示を拒否する理由を把握したうえで、内示が適切であるのか再度検討してください。
参照:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第二十六条 | e-Gov法令検索
7. 人事異動に関連する抑えておくべき法律
また人事異動によって従業員とトラブルが発生してしまうことを避けるためには、法律に則って人事異動を執り行う必要があります。
ここでは抑えておくべき法律を解説します。
7-1. 労働契約法第3条
労働契約法第3条は、労働者と使用者間の契約に関する基本原則を規定しています。人事異動においても、この法律を遵守することが必要です。
特に労働者が入社時に職種や勤務地を特定して契約している場合、転勤や異動を実施するには契約の範囲内でなくてはいけません。
契約外の配転命令は労働契約法第3条第5項の配転命令権の濫用として法令違反となる可能性があるため、慎重な対応が求められます。
7-2. 男女雇用機会均等法第6条
男女雇用機会均等法第6条は、人事異動において重要な法的基準です。
同条では、労働者の配置、昇進、降格、教育訓練において性別による差別を禁止しています。従って、人事担当者や管理職の方々が異動を検討する際には、性別に関する公平性を確保することが不可欠です。
この法律の遵守は、企業の信頼性向上にも直結します。また、具体的な内示方法や時期についても、この法的基準を踏まえることが求められます。
注意点として、内示の際に性別に関する差別や偏見が含まれないよう、レビューや複数の視点からの確認が推奨されます。
参考:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|e-GOV法令検索
7-3. 育児・介護休業法第26条
育児・介護休業法第26条は、労働者が育児や家族の介護をおこなっている際の配置には配慮を必要とする規定です。特に人事異動においては、労働者の育児や介護の状況を十分に考慮することが求められます。
この法律に基づき、使用者は労働者が育児や介護のために休業を取得する場合、その期間中や休業終了後の異動についても適切に対応する義務があります。
これにより、労働者が家庭の事情を十分に考慮しながら業務を続けられる環境を整えることが重要となります。
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律|e-GOV法令検索
8. 人事異動を見直す際のポイント
また現在の人事異動制度をよりよく改善していきたいという方には、制度を見直す際のポイントを紹介します。
8-1. 適材適所を意識する
人事異動を行う際には、会社の目標達成をサポートするために適材適所を意識することが重要です。適材適所を実現するためには、まずどの部署や部門にどのようなスキルを持つ人材が必要かを具体的に明確にしましょう。その次に、企業内に現時点でどのようなスキルや適性を持つ従業員がいるかを詳細に把握します。これにより、各従業員が最も高いパフォーマンスを発揮できる配置が可能となります。例えば、営業部門には対人スキルやプレゼンテーション能力が高い人材が求められ、開発部門では専門的な技術知識や問題解決力が必要です。また、従業員の意向やキャリアパスも考慮に入れることで、モチベーションを維持しつつ最適な配置が行えます。適材適所の配置によって、従業員の能力を最大限に引き出し、会社全体の効率と成果を向上させることが可能です。
8-2. モチベーションが下がった従業員のフォローできる制度にする
モチベーションが下がっている従業員に対しては、フォローアップの制度として人事異動を打診してみてもいいでしょう。異動は社員にとって大きな転機であり、スキルを身に着けるステップにもなりますので、モチベーションの低下が検知された従業員には応募制の人事異動を用意することを検討しましょう。
一方で新しい環境に適応するまでは多くの不安が伴います。
定期的な面談を行うことで従業員の不安を軽減し、モチベーションを維持するために有効です。また、適切なサポートを提供することで、従業員が新しい環境にスムーズに適応できるようになります。社員のフォローは異動前後のケアとして非常に重要です。
8-3. 対象の従業員へ丁寧な説明ができるフローを設計する
内示の際の説明フローを確立し、従業員に納得してもらえるような丁寧な説明を用意することは重要です。異動の基準や選定方法において、透明性を持って説明することで、従業員の信頼を得られます。さらに適度な期待を示すことも重要です。
新しい役割に対する期待やサポート体制も詳しく説明し、従業員が異動先での新しい挑戦に意欲を持ち続けられるようにします。このように、従業員が納得しやすい説明を行うことで、人事異動において円滑な移行が期待できます。
8-4. 業務の引継ぎを効率的な型化する
業務の引継ぎは、人事異動の際の重要なプロセスであり、負担でもあります。そのため、効率的に行うためには引継ぎの手順化やフォーマットがあれば、よりスムーズに異動の準備を整えやすくなります。
まず、現在の業務内容を詳細に洗い出します。その後、属人化している業務をリストアップし、共有・引継ぎに必要な時間や引継ぎ先を具体的に決定します。この段階でスケジュールや必要なリソースを明確にし、上司に報告して承認を得ることで、引継ぎ作業全体がスムーズに進行します。このように型化された手順と明確なコミュニケーションを通じて、引継ぎプロセスを効率化しましょう。
9. 人事異動の内示は適切な時期・伝え方を選ぼう
内示とは、社内人事の結果を全従業員に伝える前に、異動や転勤をする従業員に知らせることです。
内示を知らせるタイミングは、異動や転勤の1〜2ヵ月前が一般的とされています。伝える方法に決まりはないため、口頭やメール・文書を用いて、内示の詳細を正しく説明しましょう。
また内示は就業規則に則り、従業員の拒否が認められていません。ただし家庭の事情(育児や介護)などが理由で、内示を拒否できるケースもあります。
上司や人事労務の担当者は、従業員の家庭環境に寄り添ったうえで、内示を検討・通知することが大切です。
昨今では、少子高齢化による労働人口の減少が年々激化しており、今後の採用・人材確保はますます難しくなるばかりです。
そんな中で、従業員の定着率をいかに上げるのかという課題が企業各社を悩ませる問題になっており、従業員の待遇改善のため、ボーナスや給与のベースアップを試みたとしても、
「そもそも物価高騰も進む中で、会社にもそんなに余裕はないし、単純な賃上げでは持続性がない...」
「支給額の分だけ税負担が増えるため、従業員の手取りは増えずに、思ったよりも効果が出ない」このように、会社の負担額は増える一方なのに、従業員満足度は上がらないという結果に陥りやすいのが現状です。
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