リカレント教育とは?意味や補助金などの支援制度を簡単に解説
更新日: 2025.7.11 公開日: 2024.5.29 jinjer Blog 編集部

リカレント教育は、学校教育を終えた後も必要に応じて学び直すことです。リカレント教育で得た知識やスキルを、業務に活かすことを目的とした教育制度なので、企業の生産性アップや業務効率化などの効果が期待できます。
また、リカレント教育を実施して従業員のスキルが上がると、仕事へのモチベーションアップや満足度が上がる効果も期待できるので、離職を防ぎ人材不足の解消につながるでしょう。
しかし、メジャーな教育制度ではないため「どのようにリカレント教育を導入すればいいのかわからない」という担当者の方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、リカレント教育の概要や補助金などの支援制度について解説します。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
1. リカレント教育とは

リカレント教育とは、学校教育から離れたあとも、個人のタイミングで学び直し、就職と学びを繰り返すことを指します。
欧米では勤めている職場を離れて学び直すことを指しますが、日本では勤めながら学習することもリカレント教育です。リカレント教育をおこなえば、業務に必要な能力やスキルを磨いたり資格を取得したりできます。
スキルアップだけでなく、さらなるキャリア形成にも役立つ教育です。社員の能力が向上してさらなる活躍が期待できるだけでなく、優秀な人材の育成にもつながります。
1-1. リカレント教育と生涯学習、リスキリングの違い
従業員が自ら学ぶことには、リカレント教育だけでなく「生涯学習」というものがあります。
リカレント教育と生涯学習の違いは以下のとおりです。
| 学習方法 | リカレント教育 | 生涯学習 | リスキリング |
| 目的 | 仕事に活かせるスキルを身につける | 人生を豊かに楽しむ | 社員に新しいスキルを習得させる |
| 内容 | 仕事で求められるスキルや能力を身につけて自己実現につなげるために学ぶ
社員の意思でおこなう |
仕事に限らず趣味やスポーツ、ボランティア活動など、充実した生活を送るために学ぶ | 社員を新しい部門に配属させたときや、現在の仕事で必要になるスキルを習得させるためにおこなう
会社側から学びの機会を提供する |
リカレント教育は、学習によって得た知識やスキルを仕事やキャリアに活かすことを目的としています。
一方で生涯学習の目的は、自分の人生を豊かにするために学ぶことです。仕事に限らず、趣味やスポーツなどのプライベートも含まれます。
リスキリングも業務のためのスキルを身につける点は同じですが、主導者が異なります。リカレント教育は社員の意思でおこなわれるものに対して、リスキリングは会社主導で業務に必要なスキルを習得する機会を提供するものです。
2. リカレント教育が注目されている理由

リカレント教育が注目されている理由は、以下の3つが挙げられます。
- 雇用の流動化の加速
- 人生100年時代への突入
- 終身雇用制度の崩壊
これらの理由に当てはまる課題がある企業は、対策の1つとしてリカレント教育の導入を検討した方が良いかもしれません。
ここでは、これら3つの理由について解説します。
2-1. 雇用の流動化の加速
リカレント教育が注目される背景の一つは、雇用の流動化の加速です。
近年では、キャリア形成やスキルアップのための転職が当たり前になりつつあります。そのため、自身の能力向上やキャリアアップを目指している社員は、自ら学び成長していくでしょう。しかし企業としては、優秀な人材の流出に対して対策を練らなければなりません。
企業側が、社員へ学び直しの機会を与えることに積極的になれば、人材の流出を防ぐことができます。また、社員がスキルを習得してくれれば、人材不足の解消にもつながるでしょう。
時代の変化に対応し、新たな専門知識を身につけてもらうためにも、リカレント教育の整備が重要視されています。
2-2. 人生100年時代への突入
人生100年時代への突入は、リカレント教育が注目されている背景の一つといえます。これまでの日本では学校で教育を受け、就職し定年を迎えるライフステージが形成されていました。
しかし平均寿命が伸びて少子高齢化社会の時代を迎えている現代では、定年を迎えても働く人が増加しているのが実情です。
そのため、生涯現役を視野に入れ社会に出てからもスキルアップを目指すことが必要になるでしょう。
人生100年時代に対応するためにも、学び直しを実施してスキルアップを目指すリカレント教育が注目を浴びています。
2-3.終身雇用制度の崩壊
一昔前までは、就寝雇用というのが日本の雇用制度の特徴でした。しかし、現在は終身雇用制度も崩壊しており、自分のスキルアップやキャリアアップのためには転職するというのが当たり前となっています。
終身雇用であれば、真面目に働いているだけで定年まで勤めあげることができます。しかし、安定した雇用が期待できない、自由に転職をすることが一般的になっているなどの理由から、従業員は自分でスキルアップを目指さなければなりません。
しかし、リカレント教育がない企業で通常の業務をこなしながら、独学でスキルアップを目指すのは難しいのが実情です。そのため、リカレント教育をおこなっている企業の人気が高まっていることから、人材雇用の観点からも企業のリカレント教育が注目されていると考えられます。
3. リカレント教育を導入するメリット

リカレント教育を導入するメリットは、以下3つです。
- 生産性がアップする
- 採用・育成コストの削減
- 社員のモチベーションアップ
ここでは、これらのメリットについて解説していきます。
3-1. 生産性がアップする
リカレント教育を導入すれば、個人だけでなく組織全体の生産性がアップするというメリットがあります。社員が新たな知識を身につけたりスキルアップしたりすることで、業務の効率化が期待できるためです。
また業務を効率化できれば、社員が新しいことに挑戦する機会が増えたり残業時間が少なくなったりすることも考えられます。
リカレント教育を実施して社員の能力が向上すれば、無駄な残業や業務を削減できることから、人件費削減を目指せるというメリットも得られるでしょう。
3-2. 採用・育成コストの削減
リカレント教育を導入して既存の社員を育成すれば、新規採用するよりもコストを下げられるというメリットがあります。また、既存の社員が自社に足りないスキルや知識を身につけることで、人材不足も解消できるでしょう。
もちろん、元から知識やスキルを保有した人材を、外部から採用するのも手段の一つです。しかし、社内のルールや業務の進め方を覚えてもらうのに時間がかかります。そもそも、現代は求人募集を出しても、優秀な人材はなかなか集まりません。
リカレント教育を社内に導入すれば、育成コストの削減や求人募集の業務負担も削減できるので、スムーズに仕事を進められるというのもメリットです。
3-3. 社員のモチベーションアップ
リカレント教育を導入することで、社員のモチベーションがアップするというメリットがあります。その理由は、企業が学びを支援する姿勢が、社員の「この会社にいれば成長できる」という実感につながるためです。
新しいスキルを身につけて活躍できるようになると、周囲から頼られる存在になり仕事への意欲が向上します。
また、学びの環境を整えてくれた会社に対して帰属意識が高まり、長く働いてくれる可能性が高まるでしょう。
4.リカレント教育を導入するデメリット

リカレント教育には、メリットがありますがデメリットもあります。
- 労働環境の整備が必要
- 学習効果がすぐにでない
- 他の社員の業務負担が増える
ここでは、これらのデメリットについて解説していきます。
4-1.労働環境の整備が必要
リカレント教育をおこなうためには、学習時間を捻出するための労働環境整備が必要です。
労働環境を整備するというのは、対象となる従業員の残業や出勤時間を減らすことです。業務内容によっては、業務負担の見直しも必要になるでしょう。
余裕をもって学習に取り組める労働環境であれば問題ありませんが、残業が多かったり休日出勤したりするような環境ではリカレント教育の実施は難しくなってしまいます。そのために、企業側で環境を整備する負担があるというのはデメリットかもしれません。
4-2.学習効果がすぐに出ない
リカレント教育は、学習効果がすぐに出ないというデメリットがあります。
新しいスキルや知識の習得というのは、当然ですが1時間や2時間でできるものではありません。学習内容にもよりますが、1ヵ月経っても、実際の業務に活かせないことがあります。
学習効果がすぐに出ないということは、生産性アップや業務の効率化にも時間がかかるということです。しかし、すぐに出ないとしても、いずれは学習効果が出て企業の生産性向上に役立ってくれるので、いずれはメリットを得られます。
4-3.他の社員の業務負担が増える
リカレント教育をおこなう従業員の残業時間や休日出勤を減らすには、リカレント教育をおこなわない社員のサポートが必要になるかもしれません。そのため、他の社員の業務負担が増えるというデメリットもあります。
場合によっては、業務負担が増えた社員が不満に思うケースもあるかもしれません。
しかし、このデメリットは希望する従業員にリカレント教育をおこなうこと、業務負担が増える社員には手当をつけることなどの工夫で回避することも可能です。
また、中には、リカレント教育についてよくわかっていないせいで不満を言い出す社員もいるので、制度の概要をしっかり周知することも重要です。
5. リカレント教育を導入する際のポイント

リカレント教育を導入する際のポイントは以下の4つです。
- 費用を補助する
- 学べる環境を整備する
- 評価制度を整える
- 適材適所への人材配置
学び直しが社員の大きな負担にならないように配慮する必要があります。
5-1. 費用を補助する
リカレント教育を導入する際は、学び直しに必要な費用を補助することがポイントになります。「自分で費用を出してまでスキルや知識を身につけたいとは思わない」と、考える社員がいるためです。
すべての費用を出さなくても、教育手当を出したり資格取得に応じて給与をアップしたりなど、金銭的な支援が必要になります。
具体的な金額や支援の内容を話し合い、企業として支援できる体制を整えましょう。
5-2. 学べる環境を整備する
リカレント教育を導入する際は、教育を受ける社員が学べる環境を整備ましょう。特に、業務と並行して学び直しを実施する場合は注意が必要です。
今まで通りの業務内容に学び直しが追加されると、他の社員に大きな負担がかかる可能性があります。残業が増えると、リカレント教育に不満を持つ社員が出てくるでしょう。
従業員が不満を持つと、モチベーションや生産性の低下などのリスクがあるので、リカレント教育を実施する社員の業務内容を調整して、学び直しに集中できる環境を作ることが大切です。
5-3. 評価制度を整える
評価制度を整えることは、リカレント教育を導入する際のポイントの一つです。教育の成果を会社にきちんと評価してもらえることがわかれば、真剣に取り組む社員が増える可能性があります。
より、学習に集中して成果を上げてもらえるよう、身につけたスキルや知識によって人事評価や給与が高くなるなどの評価制度を整備しましょう。
5-4.適材適所への人材配置
リカレント教育を修了した社員に対しては、習得した知識やスキルを活かせるよう、適材適所への人材配置をおこなうことも重要なポイントです。
学習によって得た知識やスキルが活かせないような部署では、社員のやる気も低下してしまいますし、生産性の向上や業務効率化などのメリットも得られません。
適材適所に配置するには、教育が終わってから配置を考えるのではなく、事前にどの部署が適しているかをしっかり検討し、修了時に配置できるようにしておくことが重要です。
6. リカレント教育の補助金や支援制度

リカレント教育の補助金や支援制度は以下の3つです。
- 人材開発支援助成金
- 教育訓練給付制度
- 文科省によるリカレント教育推進事業
これらの支援制度を有効活用して、リカレント教育を実施しましょう。
6-1. 人材開発支援助成金
リカレント教育をおこなう企業は、人材開発支援助成金を活用できます。人材開発支援助成金とは、計画的に人材育成をおこなう会社を支援する助成金です。雇用している社員の育成に取り組みたい会社が活用できます。
社員に対して、業務に関連する学習を計画に沿って実施した場合、学習にかかる費用や学習期間中の賃金の一部を助成できる制度です。
人材開発支援助成金では、以下の7つのコースが用意されています。
- 特定訓練コース
- 一般訓練コース
- 特別育成訓練コース
- 教育訓練休暇付与コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能訓練コース
- 障害者職業能力開発訓練コース
例えば、中小企業が特定訓練コースを選択した場合の経費助成の助成率は45%です。また1時間あたり760円の賃金助成が受けられます。
企業の規模や各コースで助成額・助成率が異なるので、自社で活用したいコースの内容をきちんと調べてから申請しましょう。
6-2. 教育訓練給付制度
リカレント教育を実施する際は、教育訓練給付制度を活用できます。教育訓練給付制度とは、労働者または離職者のスキルアップを支援するための制度です。
教育を受けるための費用が、受講中や受講が終了した後に一部支給されます。厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受講した人が対象です。
指定の講座については「厚生労働大臣指定教育訓練指定講座検索システム」から確認できます。対象となる教育訓練は3種類あり、以下のようにそれぞれ給付率が異なるため注意が必要です。
| 教育訓練の種類 | 給付率 | 対象となる講座の例 |
| 一般教育訓練 | 20%(上限10万円) | ・TOEIC
・簿記 ・ITパスポート |
| 特定一般教育訓練 | 40%(上限20万円) | ・大型自動車第一種、第二種免許
・税理士 |
| 専門実践教育訓練 | 50%(年間上限40万円)+20%(年間上限16万円) | ・社会福祉士
・看護師 ・保育士 ・美容師 |
専門実践教育訓練では、一定の要件を満たせばプラスで20%の支援が受けられるため、最大70%です。ハローワークから申請できます。リカレント教育の対象社員には、申請するように促しましょう。
6-3.文科省によるリカレント教育推進事業
リカレント教育に関しては、補助金があるだけでなく、文科省が下記のような「リカレント教育推進事業」というバックアップもおこなっています。
- 教育訓練給付金
- 高等職業訓練促進給付金
- キャリアコンサルティング
- 公的職業訓練(ハロートレーニング)
- 就職・転職支援の大学リカレント教育推進事業
これらの事業の中で、自社の従業員でも活用できるものがあれば、教育に関する企業の負担を減らすことができます。負担を軽減しながら従業員のスキルアップができるというのは、企業にとって一石二鳥です。
また、ウェブサイト「マナパス」には従業員が利用できる講座も紹介されているので、文科省の事業をうまく活用して、負担なくリカレント教育を取り入れていくことが可能です。
参考:「学び」に遅すぎはない! 社会人の学び直し「リカレント教育」|政府広報オンライン
7. リカレント教育で社員のスキルアップを図ろう

リカレント教育は、学校教育が終わった後も各個人のタイミングで学び直し、就労しながら学習することを指します。
近年の日本では、雇用の流動化の加速や人生100年時代への突入に伴い、リカレント教育が注目されています。そのため企業は、時代の変化に対応するために、社員に対して学びの機会を与える必要があります。
リカレント教育をおこなうには、労働環境を整えたり、場合によっては学習費用の一部を負担したりしなければならないので、企業にとってはデメリットに感じることもあるかもしれません。しかし、その反面社員のスキルアップや生産性の向上などのメリットも得られるので、採用・育成コストの削減を目指す企業は導入を検討してみることをおすすめします。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
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