過重労働とは?長時間労働との違いや企業が実施すべき対策を紹介
更新日: 2025.8.28 公開日: 2024.10.19 jinjer Blog 編集部

過重労働とは、社員の心身に大きな負荷がかかる労働のことです。残業や休日出勤の多さが原因で発生する働き方を指します。
過重労働を放置していると、最悪の場合社員の過労死や自殺を招く可能性があるため、早急に対策が必要です。
「しかし企業でどのような対策を実施すればいいのかわからない」と、お悩みの方もいるでしょう。
そこで本記事では、過重労働と長時間労働の違いや発生する原因について解説します。企業がすべき対策も紹介するので、過重労働を防止したい方はぜひ最後までお読みください。
目次
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1. 過重労働とは


過重労働とは、労働者に身体的・精神的に大きな負荷がかかる労働を指します。たとえば長時間の残業や休日出勤、頻繁な出張が重なると、過重労働に陥りやすい状況といえます。
過重労働がつづけば、労働者は疲労がたまり、重大な健康障害を引き起こしかねません。最悪の場合、過労死や自殺を招く恐れもあるでしょう。
厚生労働省でも、過重労働と脳・心臓疾患の発症には強い関連があるとの見解を示しています。時間外労働・休日労働が月に45時間を超えて長くなるほど、脳・心臓疾患のリスクは高まることから、過重労働の是正に向けた対策が進められています。
企業としても健全な経営を維持するために、過重労働に対する正しい理解と適切な対応が必要です。
参考:過重労働による健康障害防止のための総合対策について|厚生労働省
1-1. 過重労働の現状
厚生労働省が発表している「令和6年版過労死等防止対策白書(概要版)」によると、週労働時間が40時間以上の労働者のうち、60時間以上の労働者の割合は8.4%となっています。過去数年において横ばい傾向にあり、政府が掲げる5%の目標は依然として遠い道のりです。
一方で、脳・心臓疾患による労災認定は216件と、4年ぶりに200件を上回りました。死亡件数も58件と前年より増加しており、精神障害に関しても同様の傾向が見られます。
労災認定が増加傾向にあることから、今後は過重労働の是正に向けた取り組みを求める動きが一層活発になると予想されるでしょう。
2. 過重労働と長時間労働の違い


過重労働と長時間労働の違いは、身体・精神に負荷があるかどうかです。長時間労働は、法定労働時間である「1日8時間・週40時間」を大幅に超えて働いている状態を意味します。
「何時間以上働いたら長時間労働」のように明確な基準はありません。
一方で過重労働は、労働者の心身に大きな負荷がかかる労働を指します。強いストレスを感じたり脳や心臓に影響を及ぼしたりする可能性がある状態です。
残業が多いことや休日出勤が当たり前の状態は、心身の負荷を強める原因の一つとなります。長時間労働が過重労働につながっているといえるでしょう。
3. 過重労働の目安となる3つの基準


3-1. 過労死ライン
過労死ラインとは、健康障害のリスクが高まるとされる時間外・休日労働時間の目安を指したものです。時間外・休日労働が月に45時間を超えると徐々に健康障害のリスクが上昇し、下記いずれかの時間に達すると、非常に危険な状態と判断されます。
- 時間外・休日労働が月100時間超
- 時間外・休日労働が2〜6ヵ月平均で月80時間超
脳・心臓疾患にかかる労災認定の基準が元になっていることから、健康障害が起きた際に上記いずれかの時間に達していた場合は、業務と疾患の関連性が高いとみなされます。
3-2. 時間外労働の上限規制
時間外労働の上限規制とは、会社が命ずることができる時間外労働の上限時間のことです。原則として、「1日8時間、週40時間」を越えて労働させることはできませんが、労使協定を結ぶことで「1ヶ月45時間、1年間360時間」命ずることができます。
これ以上の時間は特段の事情がない限り、働かせることはできません。罰則付きの規制のため、違反すると社員の健康障害のリスクが高まるだけでなく、「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科される可能性もあります。
3-3. 長時間労働者への面接指導が必要な基準
長時間労働させた社員に対して、労働安全衛生法では医師による面接指導の実施を雇用主に義務付けています。対象者は、月の時間外・休日労働が80時間を超えており、疲労の蓄積がみとめられる社員です。本人からの申し出に応じて、医師による面接指導を実施しなくてはいけません(高度プロフェッショナル制度適用者は除く)。
過重労働による健康障害を予防する目的があるため、企業は社員が80時間超えて働いていないか適切な労働時間の管理が必要です。
4. 過重労働が発生する原因3選


過重労働が発生する原因は以下のとおりです。
- 業務量と人員配置のバランスが悪い
- 長時間働くことが当たり前になっている状況がある
- 業務の効率化を図っていない
過重労働を未然に防ぐためにも、発生する原因を把握しておきましょう。
4-1. 業務量と人員配置のバランスが悪い
業務量と人員配置のバランスが悪いと過重労働になりやすいです。厚生労働省が発表している「我が国における時間外労働の現状」の所定外労働が必要となる理由で、以下の回答が多く見られました。
- 業務量が多いため
- 人材が不足しているため
- 予定外の仕事が突発的に発生するため
時間外労働が発生している原因の大半が、人材不足と業務量の多さでした。また長時間労働の職場の特徴では「一人あたりの仕事量が多い」「一部の人の仕事が偏りがち」などの回答が多いです。
特定の社員が長時間労働を強いられている状況もあることがわかります。上記の結果から、業務量と人材配置のバランスの悪さは過重労働の原因になるといえるでしょう。
参考:我が国における時間外労働の現状 ①年間総実労働時間|厚生労働省
4-2. 長時間働くことが当たり前になっている状況がある
過重労働が発生する原因として、長時間働くことが当たり前になっていることが挙げられます。
企業内で長く働くことが評価される風潮が残っていると、仕事が終わっていても帰れない状況を作りかねません。
また「周囲が残業しているから自分もまだ仕事をしないといけない」と、考える社員が出てくるでしょう。
残業する機会が増えることで長時間労働が当たり前になり、過重労働につながります。
4-3. 業務の効率化を図っていない
業務の効率化を図っていないことが、過重労働を発生させる原因です。例えば以下のような業務のデジタル化を実施していない職場は、非効率な働き方をしている場合があります。
- 打ち合わせをオフラインのみで実施している
- 議事録や資料を印刷して配布している
打ち合わせをZoomなどのオンラインで実施すれば、移動時間がなくなるため労働時間を削減可能です。議事録や資料はデータで共有すれば、印刷にかかる手間や時間を削減できるでしょう。
過重労働を防ぐためにも、業務の効率化は必須です。
5. 過重労働がもたらす2つのリスク


過重労働がもたらすリスクは以下のとおりです。
- 社員に健康障害が発生する
- 法的に罰せられる可能性がある
過重労働が発生すると、社員から訴えられたり法的に罰せられたりする可能性があるため注意が必要です。
5-1. 社員に健康障害が発生する
過重労働は、社員に以下のような健康障害が発生する可能性があります。
- 睡眠不足によるメンタルの不調
- 精神状態の悪化によるうつ病の発症
- 集中力の低下による業務中の怪我
時間外・休日労働が月45時間を超過すると、脳・心臓疾患の発症との関連性が強まるとされています。また疲労が蓄積されることで、業務中の集中力がなくなり怪我やミスが発生する可能性が高まるでしょう。
健康障害の影響により、最悪の場合は過労死するケースもあるため、過重労働を解消する取り組みが必要になります。
5-2. 法的に罰せられる可能性がある
労働基準法で定められた労働時間「1日8時間・週40時間」を守らずに社員に過重労働を強いた場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。これは、時間外労働の上限規制に違反した場合も同様です。
さらに、労働契約法における安全配慮義務違反として、社員に損害賠償請求される可能性もあります。
厚生労働省では2015年に悪質な過重労働を取り締まる「過重労働撲滅特別対策班(かとく)」を設置し、監視の目を強化させています。過去にはかとくの強制捜査をうけて書類送検された例もあることから、過重労働させないための対策が必要です。
6. 過重労働を防ぐための対策


過重労働を防ぐための施策は以下のとおりです。
- 社内の意識改革をおこなう
- 業務内容と人員配置を見直す
- 健康管理体制を整備する
- 評価制度を見直す
- 勤務間インターバル制度を導入する
過重労働を防止したい方は、ぜひ参考にしてください。
6-1. 社内の意識改革をおこなう
過重労働を防ぐためには、社内の意識改革をおこなう必要があります。社内で残業や休日出勤が当たり前の状況がある場合、経営陣や管理職が率先して意識改革に取り組むことが大切です。
管理職が残業を減らす動きを見せたり、休みを取得することを推進したりすれば、社員も同じ行動を取るでしょう。
また意識改革と同時に、残業が少ない社員が評価される制度などを取り入れれば、過重労働の防止に効果的です。
6-2. 業務内容と人員配置を見直す
業務内容と人員配置を見直すことで、過重労働の防止につながります。1人あたりの業務量や特定の社員に仕事が偏っている状況がないかなどを把握することが大切です。
もし人手不足で現時点の労働者では改善できない場合は、システムの導入や一部業務の外注化を検討しましょう。
会社の利益や売上にとって必要のない業務を削ることで、労働時間の短縮につながります。
6-3. 労働時間を正しく管理する
労働時間を正しく管理すれば、過重労働を防げます。残業時間や休日出勤の状況を正しく把握することで、過重労働が発生する前に対策が立てられるためです。
例えば時間外勤務が多い社員に対して、以下のような対策が考えられます。
- 有給を取得させる
- 業務量を調整する
しかし社員がタイムカードを押してから業務に戻っている状況などが発生すると、労働時間を正しく管理できません。会社全体で時間外労働を削減する意識をもつことで、過重労働の防止につながります。
6-4. 評価制度を見直す
一部の職場では、長時間働くこと自体が熱意や努力の証とみなされ、労働時間の長さが高評価につながるケースも見受けられます。しかし、こうした風土は過重労働を助長しかねません。
近年では、有給休暇の取得状況や業務の効率性といった「成果と働き方のバランス」に注目した評価へ移行する動きが広がっています。評価制度をこうした方向へ見直すことで、長時間労働を抑制し、健全な働き方を促進することができるでしょう。
6-5. 勤務間インターバル制度を導入する
勤務間インターバル制度とは、勤務終了から次の出勤までに一定の休息時間を確保する制度のことです。2019年の法改正により、企業にはこの制度の導入が努力義務として位置づけられました。休息時間が確保されることから、長時間労働の抑止や過労防止に効果的な制度です。
インターバル制度を導入することで、従業員の疲労回復が進み、健全な働き方の定着にもつながるでしょう。
関連記事:勤務間インターバル制度とは?導入方法や助成金をわかりやすく解説
7. 施策をもとに過重労働を防ごう


過重労働は施策をもとに防止しなければなりません。過重労働を放置していると、社内で過労死や自殺が発生する可能性があります。
大切な社員を失うだけではなく企業のイメージが低下し、新入社員の減少につながるでしょう。労働時間を正しく管理したり、業務内容や人員配置の見直しをしたりすることで過重労働は防げます。
もし時間外勤務や休日出勤が多い状況にある場合は、現時点でできる対策を早急にはじめましょう。



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