有給休暇の計画的付与制度(計画年休)とは?導入方法や注意点を紹介
更新日: 2026.8.5 公開日: 2024.12.26 jinjer Blog 編集部

2019年の法改正により、企業には年5日の有給取得義務が課されました。その対応策のひとつが、あらかじめ年次有給休暇の取得日を定める「計画的付与制度(計画年休)」です。
本記事では、計画的付与制度の基礎知識や時季指定との違いをわかりやすく解説します。また、一斉付与・交代制付与・個人別付与の3つの方式や、労使協定の締結、就業規則の整備など、導入方法についても紹介します。
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1. 有給休暇の計画的付与制度(計画年休)とは


有給休暇の計画的付与制度とは、従業員の年次有給休暇の取得日を事前に計画的に割り当てる制度です。
2019年4月施行の働き方改革関連法により、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者には、年5日以上の有給を取得させることが企業に義務付けられました。従業員が自ら5日以上取得しない場合は、企業が取得時季を指定して休暇を取得させる必要があります。
計画的付与制度では、従業員が自由に取得できる5日分を除いた有給を対象にできます。例えば、年間20日の年次有給休暇が付与される場合、最大15日まで計画的付与が可能です。
また、前年度からの繰越分を含めて計画的付与をおこなうこともできます。ただし、従業員が自由に取得できる年5日分は必ず確保しなければならないので、有給保有日数が5日以下の従業員には適用できません。
関連記事:有給休暇の5日取得義務で就業規則は変更が必要?手続きや罰則、記載例を解説
1-1. 計画的付与制度の導入によるメリット
現場で働く従業員は、職場の雰囲気や人手不足などから、有給休暇を取得しにくいと感じるケースが少なくありません。有給休暇の計画的付与制度を導入すれば、あらかじめ休暇日が決まるため、周囲に気兼ねなく休暇を取得しやすくなります。
また、有給休暇を取得しやすい職場環境は働きやすい企業としての評価につながります。その結果、従業員満足度や定着率の向上が期待できるほか、採用活動においても企業の魅力をアピールしやすくなるでしょう。
さらに、従業員の希望に任せて有給休暇を取得させると、特定の時期に休暇が集中し、業務に支障が生じるおそれがあります。計画的付与制度を活用すれば休暇取得の時期を分散できるので、業務への影響を抑えながら、計画的な人員配置や安定した業務運営を実現できるでしょう。
なお、令和7年度の調査ではこの制度を導入している企業は40.8%にとどまっています。一方で、制度を導入している企業の年次有給休暇の平均取得率は、導入していない企業と比べて8.6ポイント高いというデータもあります。そのため、有給取得率向上を図るうえでも、有効な制度といえるでしょう。
参考:令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省
1-2. 計画的付与と時季指定の違い
計画的付与と時季指定は、どちらも年次有給休暇の取得を促進する制度ですが、制度の目的や対象、運用方法には次のような違いがあります。
| 項目 | 計画的付与 | 時季指定 |
| 目的 | 有給休暇の計画的な取得促進 | 年5日の取得義務の履行 |
| 対象 | 年次有給休暇のうち5日を超える部分 | 年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員の5日分 |
| 取得日の決定 | 労使協定に基づき計画的に決定 | 従業員の取得時季に関する意見を聴いたうえで企業が指定 |
| 根拠 | 労働基準法第39条第6項 | 労働基準法第39条第7項 |
時季指定とは、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対し、企業が取得時季を指定して、年5日の有給休暇を取得させる制度です。ただし、従業員がすでに年5日以上の有給休暇を取得している場合、時季を指定する必要はありません。
一方、計画的付与は、労使協定に基づき、有給休暇の取得日をあらかじめ定める制度です。計画的付与による取得日数も年5日の取得義務に算入されるため、有給の取得促進と年5日の取得義務への対応を効率的に進められるでしょう。
関連記事:年次有給休暇の基本をわかりやすく解説!付与日数や取得要件も紹介
1-3. 有給休暇の計画的付与制度がある会社は半数以下
有給休暇の計画的付与制度は、年次有給休暇の取得率を上げるために効果的な制度です。しかし、この制度を導入している企業は、令和7年度の調査では40.8%にとどまっています。4割程度の企業でしか導入されていない状況です。
しかし、年次有給休暇の平均取得率を見てみると、有給休暇の計画的付与制度を導入している企業は、導入していない企業よりも8.6%高い(平成20年)というデータがあります。また、同資料では「全体の約3分の2の労働者は年次有給休暇の取得にためらいを感じて」いるともされているため、制度を導入することで、こうした心理的影響による年次有給休暇取得率の低さを改善できるでしょう。
2. 有給休暇の計画的付与制度の導入方法


有給休暇の計画的付与制度を導入するには、労働基準法に基づく手続きを適切におこなう必要があります。ここでは、制度導入に必要な手続きとポイントを解説します。
2-1. 労使協定を締結する(届出は不要)
計画的付与制度を導入するには、企業と労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者との間で労使協定を締結する必要があります。労使協定には、主に次のような事項を定めます。
| 項目 | ポイント |
| 計画的付与の対象者 | 育児休業・産前産後休業を予定している従業員や、定年退職など退職日が決まっている従業員など、対象外とする従業員を定めます。 |
| 対象となる年次有給休暇の日数 | 従業員が自由に取得できる5日を除いた残りの日数を対象とします。対象日数は企業の実情に応じて設定できます。 |
| 計画的付与の方法 | 「一斉付与方式」「交代制付与方式」「個人別付与方式」など、具体的な付与方法や手続きを定めます(詳細は3章で解説します)。 |
| 有給休暇日数が不足する従業員への対応 | 新規採用者など、計画的付与日に充てる年次有給休暇が不足する従業員の取り扱いを定めます。 |
| 計画的付与日の変更 | 計画的付与日の変更が想定される場合は、変更できる条件や手続きについて定めておくとよいでしょう。 |
参考:計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き|厚生労働省
なお、計画的付与に関する労使協定は、36協定のように労働基準監督署への届出は不要です。ただし、労使協定書は適切に作成・保管するとともに、従業員がいつでも確認できるよう周知しておきましょう。
2-2. 就業規則に明記する
計画的付与制度を導入する場合は、就業規則にも制度の内容を定めておきましょう。あらかじめ運用ルールを明確にしておくことで、従業員との認識の相違やトラブルを防ぎやすくなります。
【就業規則の規定例】
労使協定に基づき、各労働者が有する年次有給休暇のうち、労働者が自由に取得できる5日を除いた残りの日数については、あらかじめ取得時季を定め、計画的に付与することがある。
参考:計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き|厚生労働省
また、常時10人以上の労働者を使用する事業場で、制度導入に伴い就業規則を変更した場合は、労働者代表の意見書を添付のうえ、変更後の就業規則を所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。あわせて、変更した就業規則を従業員へ周知することも必要です。
関連記事:就業規則の変更手順とは?届出義務や提出・周知方法を解説
3. 有給休暇の計画的付与の種類


有給休暇の計画的付与には、主に次の3つの方式があります。
| 種類 | 内容 |
| 一斉付与方式 | 企業全体で一斉に有給休暇を取り、休業日とする方法 |
| 交代制付与方式 | 班やチームが交代で有給休暇を取る方法 |
| 個人別付与方式 | 個人の希望を基に有給休暇の取得日を決める方法 |
一斉付与方式では、企業全体で一斉に休暇を取ります。飛び石連休の平日や、お盆、年末年始などの長期休暇に合わせて実施されるケースが一般的です。
交代制付与方式では、業務に必要な人数を確保しつつ、交代で有給休暇を取ってもらいます。繁忙期や閑散期などを考慮して計画できるため、従業員の休暇により業務が圧迫されることを避けられるでしょう。
個人別付与方式は、労使協定で定めたルールに基づき、従業員の希望に基づいて設定する方法です。従業員の私的な事情で休みを取れるため、従業員の満足度も高まります。
3-1. 従業員は計画的付与された有給取得を拒否できる?
有給休暇の計画的付与制度では、労使協定に基づいてあらかじめ年次有給休暇の取得日が定められている場合、原則としてその日に有給を取得させる必要があります。
実際に、適法な労使協定に基づき制度が導入・運用され、その内容も労働基準法の趣旨に沿っている場合には、反対する少数派労働組合の組合員にも計画的付与の効力が及ぶと判断された判例があります(福岡高等裁判所平成6年3月24日判決・三菱重工業長崎造船所事件)。
そのため「その日は働きたい」「別の日に有給休暇を取得したい」といった理由のみで、従業員が計画的付与を拒否することはできません。制度を円滑に運用するためには、労使協定の締結前に十分な協議をおこなうとともに、就業規則の内容を従業員へ丁寧に周知することが重要です。
4. 有給休暇の計画的付与制度を導入する際の注意点


有給休暇の計画的付与制度は、労使協定により年次有給休暇の取得日をあらかじめ定められる便利な制度ですが、運用を誤ると労務トラブルにつながるおそれがあります。ここでは、制度を導入・運用する際に押さえておきたい主な注意点を解説します。
4-1. 年次有給休暇が付与されていない従業員への対応
入社後間もないなどの理由で年次有給休暇が付与されていない従業員は、計画的付与の対象にはできません。
しかし、企業全体を休業とする一斉付与方式を採用する場合などには、これらの従業員も休ませる必要があります。その場合は、次のような対応が考えられます。
- 特別休暇(有給)を付与する
- 企業都合による休業として休業手当を支給する
参考:計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き|厚生労働省
なお、休業手当は法律上「平均賃金の60%以上」の支給で足りますが、通常の賃金より支給額が少なくなるケースがあります。
そのため、従業員の不利益を避ける観点から、有給の特別休暇を付与したり、通常賃金相当額を支給したりするなど、実情に応じた制度設計を検討するとよいでしょう。
関連記事:有給休暇の日数を雇用形態別に解説!発生条件や付与タイミング、最大日数は?
4-2. 計画年休の変更(時季変更)は原則として認められない
計画的付与制度では、労使協定によってあらかじめ年次有給休暇の取得日を定めます。そのため、通常の年次有給休暇のように企業が時季変更権を行使して取得日を変更することはできません。
ただし、災害や事業運営上のやむを得ない事情などにより、計画的付与日を変更する必要が生じる場合もあります。そのため、あらかじめ労使協定に計画的付与日を変更できる場合や変更手続きについて定めておくことが重要です。
関連記事:時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説
4-3. 退職予定者がいる場合の取り扱い
定年退職や自己都合退職などにより、計画的付与日より前に退職することがあらかじめわかっている従業員については、計画的付与の対象外とすることが一般的です。
例えば、計画的付与日までに退職する予定であれば、計画年休を取得する機会がなくなり、計画的付与の対象とすることが適当でないためです。そのため、労使協定で退職予定者を対象外とする旨を定めておくことで、制度を円滑に運用できます。
なお、退職予定者が保有する有給については、退職日までに本人から取得の請求があれば、通常はその取得を認める必要があります。
関連記事:有給休暇の買い取りは違法?認められる例外と実務対応、トラブル事例を解説
5. 有給休暇の取得率を上げるには?


計画的付与制度では、労使協定に基づいて事前に有給取得日を定めるため、従業員が希望する日に休暇を取得できない場合があります。また、指定した取得日は原則として変更できないので、急な業務の増加などに柔軟に対応しにくい点も課題です。
そのため、特別休暇の導入など、従業員が必要なタイミングで休暇を取得しやすい環境づくりをあわせて進めることが重要です。有給休暇の取得率向上に向けては、次のような取り組みが効果的です。
5-1. 有給休暇を取りやすい雰囲気や環境を作る
有給休暇取得の妨げになりやすいのは「休むと迷惑をかけてしまう」「他の人が取得していないから言いにくい」などの心理的な要因が多いです。
自主的に有給休暇を取得してもらうためには、有給休暇の取得を推進して取得しやすい雰囲気や環境を作ることが大切です。
上司がしっかりと有給休暇を取得したり、有給休暇を取る意義や必要性へ理解を深めたりするだけでも、有給休暇の申請がしやすくなります。
厚生労働省が配布しているポスターや資料を利用した啓蒙活動も有効です。
5-2. 有給休暇の取得目標を設定する
明確に数値を決めて、有給休暇の取得目標を設定することも有効です。
わかりやすい目標を設定することで「そろそろ有給休暇を取っておこう」と自主的に考えられるようになり、目標達成に向けて業務や予定を調整できるようになるでしょう。
プライベートの予定も組みやすくなるため、ワークライフバランスも改善しやすくなります。
目標設定は部署や職種、職位などに分けて決めるようにしましょう。全国平均や自社のこれまでの取得率と比較できると、よりわかりやすいです。
5-3. 有給休暇の取得率を可視化する
「どれくらい有給休暇を取得できているか」が目に見えるようになると、目標達成に向けて動きやすくなります。「思ったよりも取っていなかった」と自然と気づければ、ギリギリになってまとめて有給休暇を取るようなことも減るはずです。
可視化することは有給休暇の管理にも役立ちます。有給休暇の取得実績だけでなく、取得予定日がわかることで「だれがいつ休むか」がリアルタイムで見れるようになるでしょう。
また、一定期間の有給休暇取得目標を設定し、未達になりそうな場合はアラートを出すシステムもあるため、そうした機能を活用すればより一層有給休暇の取得率が上がっていきます。
6. 計画的付与制度を活用し有給休暇の取得を促進しよう


有給休暇の計画的付与制度は、従業員の有給取得を促進し、年5日の取得義務化に効率的に対応できる有効な制度です。導入により、従業員が気兼ねなく休める環境が整い、定着率の向上や安定した業務運営などの効果が期待できます。
一方で、導入には従業員が自由に取得できる5日分を残すこと、労使協定の締結、就業規則への明記といった法的要件を満たす必要があります。



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