親を社会保険の扶養に入れることは可能?条件や手続きを解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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親を社会保険の扶養に入れることは可能?条件や手続きを解説

手のひら

「従業員から親を社会保険の扶養に入れたいと相談されたが手続きがわからない」

「そもそも親が扶養の対象になるのか判断できない」

このようなお悩みはありませんか。親を社会保険の扶養に入れることは可能ですが、いくつかの要件を満たす必要があります。

本記事では、従業員の親を社会保険の扶養に入れるための条件や手続きをわかりやすく解説します。必要書類や提出先も解説するので、実務の参考にぜひご活用ください。

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1. 親を社会保険の扶養に入れることは可能

若い女性と年老いた女性

要件を満たせば、被保険者である従業員の親を社会保険の扶養に入れることは可能です。

社会保険とは、病気やケガ、出産、死亡、老齢、障害、失業などで生活が困難になった際に給付をおこない、国民の安心と生活安定を図る社会保障の制度です。
広い意味では、健康保険・厚生年金保険・介護保険・労災保険・雇用保険のことを指しますが、これらのうち労災保険と雇用保険を「労働保険」といい、健康保険と介護保険、厚生年金を「社会保険」と分類することもあります。
この中で親を扶養に入れる際に対象となる社会保険は、健康保険(介護保険)です。

そこで本記事では、親が社会保険である健康保険(介護保険)において被扶養者の認定を受ける際の手続きを解説します。

1-1. 被扶養者とは

扶養とは、年齢、障害、失業などによって自力で生活を維持することが難しい家族や親族を経済的に支援する仕組みです。扶養には、社会保険(健康保険法)上の扶養と所得税法上の扶養があります。

社会保険の被扶養者となった場合は、その被扶養者は自分自身で新たに社会保険に加入する必要がないため、保険料を払うことなく一定の保障を受けることができます。

関連記事:社会保険の扶養とは?加入条件と手続き、130万円の壁など年収要件も解説

2. 親を社会保険の扶養に入れるための条件

家

親を社会保険の扶養に入れるための条件について、詳しく解説します。

2-1. 収入要件(130万円・180万円)を満たすこと

まずは被扶養者認定を受ける親の年間収入が一定基準以下であることが必要となります。

60歳未満の親の場合、年間収入が130万円未満(かつ被保険者の収入の1/2未満)であること、60歳以上または障害年金受給者の親の場合、年間収入が180万円未満(かつ被保険者の収入の1/2未満)であることが要件です。

「収入」には年金、給与、事業収入などすべて含まれます。手続きの際、添付書類を提出することによって収入要件を確認します。

2-2. 生計同一であること

扶養認定を受ける場合、生計同一であることが必要となります。生計同一とは、家計が同一であること、つまり家計を共にしている関係を指します。主に以下のケースが該当します。

  • 被保険者と同居している場合
  • 被保険者と別居していても、仕送りなどにより生活費が送られている場合

なお、被保険者本人の親は同居または別居であることを問いませんが、配偶者の親(義父母)を健康保険の被扶養者として認定する際には、被保険者本人の親(実父母)とは異なり、被保険者と「同居」が必須条件となります。

2-3. 75歳未満であること

75歳になると後期高齢者医療制度の被保険者となるため、75歳未満であることも条件の一つです。

後期高齢者医療制度は、75歳以上の方(一定の障害がある場合は65歳以上)を対象とした独立した医療保険制度で、後期高齢者医療制度に加入すると、それまで加入していた健康保険から自動的に脱退となります。
そのため、新たに被扶養者の認定を受ける際にも、75歳未満であることが要件となります。

参考:被扶養者とは?|全国健康保険協会

3. 扶養手続きの方法

年齢の違う二人の男性

実際に親を扶養に入れる際の手続きにはどのような書類が必要となるのでしょうか。届出の方法とあわせて手続きの流れを解説します。

3-1. 必要書類を準備する

親を社会保険の扶養に入れるには、「被扶養者(異動)届(健康保険被扶養者(異動)届国民年金第3号被保険者関係届)」が必要です。

被扶養者(異動)届の主な記載事項は以下の通りです。

記載欄 記載事項 備考
事業主記入欄 届書提出日 会社側が日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)に提出する日
事業所整理記号 適用事業所台帳や雇用保険被保険者資格取得等確認通知書などに記載されているコード
事業主確認欄 親の収入を会社側が確認済みの場合は「確認」に丸をつける
事業主等受付年月日 会社側が被保険者から届書を受け取った日
被保険者欄 従業員の氏名や生年月日、個人番号など
収入 親を扶養に入れる被保険者の年収見込額を記入
その他の被扶養者欄 親の氏名や生年月日、続柄など
収入 親の年収見込額を記入

また、必要に応じて以下の書類を添付する必要があります。

必要添付書類
続柄が確認できる書類 ・被扶養者の戸籍謄(抄)本

・住民票の写し(被保険者が世帯主で、被扶養者と同一世帯である場合に限る)

親の収入が確認できる書類 ・退職証明書

・雇用保険被保険者離職票

・雇用保険受給資格証

・雇用保険受給資格通知

・年金額の改定通知書

・直近の確定申告書

・課税(非課税)証明書

仕送り額が確認できる書類(親と別居している場合) ・預金通帳の写し

・振込証明書

・現金書留の控え

参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構

3-2. 管轄の年金事務所に提出する

上記記載の必要書類の準備ができたら、事業主は、その事実が発生した日から5日以内に日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)に提出します。

提出方法には、電子申請、郵送、窓口への持参の3つの方法があります。

3-3. 電子申請時の注意点

電子申請には「GビズID」または電子証明書が必要です。発行には2週間ほどかかるため、余裕をもって準備しましょう。

申請に不備があった際には差戻しとなります。事前に必要事項を正確に入力できていることを確認したうえで申請をおこなってください。

また、電子データで通知を受け取る場合、e-Govのマイページでの閲覧期限は90日間となっています。期限を過ぎるとデータが閲覧できなくなるため、必要なデータは事前にPCに保存しておくよう注意が必要です。

4. 親を社会保険の扶養に入れたときの保険料の変化

老夫婦とスーツの男性

親を扶養に入れた際に、被扶養者や被保険者の負担する保険料はどのように変化するのでしょうか?それぞれの保険制度毎に解説します。

4-1. 健康保険料(高額療養費への影響)

扶養に入った場合、被扶養者は自身で健康保険料を払う必要はなくなります。しかし、その一方で注意しておきたいのが「高額療養費制度」の自己負担限度額の算定方法です。

高額療養費制度とは、1ヵ月(歴月:毎月1日から末日まで)に医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。

扶養に入っている場合、この上限額が被扶養者本人の所得ではなく、扶養者である被保険者の所得を基準に決まります。そのため、扶養に入った結果、自己負担限度額が思いのほか高く設定され、医療費負担が増大するおそれがあります。

自己負担限度額は「70歳以上かどうか」と「所得水準」によって細かく区分されており、70歳以上では外来だけの限度額や、入院を含む月に世帯で合算できる限度額などの特例も設けられています。

高額療養費の世帯合算制度は、同じ健康保険に加入している世帯(被保険者と被扶養者)に適用されます。70歳以上の親を扶養に入れることで、世帯の医療費が抑えられる場合もあるため、扶養の加入有無は慎重な判断が大切です。

参考:高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省

4-2. 介護保険料

介護保険は40歳以上の全ての方が加入する制度です。被保険者は、第1号被保険者(65歳以上)と、第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の医療保険加入者の2種類に分かれ、これは健康保険の被扶養者においても同じ区分となります。

被保険者・被扶養者ともに40歳以上65歳未満の場合には、被保険者の給与・賞与から被扶養者分の介護保険料もまとめて天引きされます。

一方、被保険者が40歳未満の場合には、全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合、被扶養者分の負担はありませんが、健康保険組合は規約で負担を求める場合があります。被保険者が健康保険組合に加入している場合には組合に確認しましょう。

被保険者が65歳以上の場合には、本人・被扶養者どちらも原則年金から天引きでの納付(特別徴収)となります。
また、健康保険の被扶養者となれるのは75歳未満までです。65歳以上となると介護保険のみ個別に加入することとなりますので注意しましょう。

参考:年金Q&A(厚生年金の保険料)|日本年金機構

4-3. 厚生年金保険料

親が社会保険の扶養に入ることにより、被保険者の厚生年金保険の保険料が変わることはありません。なぜなら、厚生年金保険制度においては、被扶養者という考え方が存在しないためです。

また、「配偶者」を健康保険の扶養に入れる際、扶養(異動)届において国民年金第3号被保険者の手続きをともにおこないますが、これは「配偶者」に限りおこなわれる手続きです。すなわち、親を国民年金の3号被保険者とすることはできない制度となっています。

親を扶養に入れる際、厚生年金保険からの変更がある場合には、市町村にて国民年金保険への変更手続きをおこないましょう。

5. 親を社会保険の扶養に入れるメリット・デメリット

メリット

ここまで、親を社会保険の扶養に入れる際の要件、手続き、保険料の変化について案内しました。以下では、メリットとデメリットについてそれぞれまとめて解説します。

5-1. メリット

親を社会保険の扶養に入れる一番のメリットは保険料を抑えられることです。

健康保険の扶養に入ることで、国民健康保険に入る場合に必要となる親の保険料の負担がなくなります。

また、被保険者が40歳未満、被扶養者が40歳以上65歳未満で、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入の場合には、介護保険料の納付も不要となります。

一方、親が70歳以上の場合には、高額療養費制度の世帯合算が適用されるため、医療費の負担が軽減される可能性があります。保険者が健康保険組合の場合、規定によっては、法定給付に上乗せした付加給付が受けられる場合もあるため、加入する組合に確認しましょう。

5-2. デメリット

親を社会保険の扶養に入れることによるデメリットとして、収入の制限がかかる点が挙げられます。年間収入の条件は60歳未満の場合は130万円未満、60歳以上または障害者の場合は180万円未満となっています。

この収入には、給与所得だけでなく、年金、不動産収入なども含まれ、これらを上限額内に抑える必要があります。

6. 親を社会保険の扶養に入れる際の5つの注意点

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親を社会保険の扶養に入れる際にはどのようなことに注意をすればよいのでしょうか。5つの注意点をご説明します。

6-1. 親が兼業していないか確認する

親を扶養に入れる際には、兼業していないかを確認しましょう。

扶養に入る際の要件には収入の要件があります。収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金、不動産所得が含まれます。

収入は、過去の収入ではなく、「扶養認定を受ける時点および認定された日以降の年間の見込み収入額」で判断します。そのため、加入日以降に兼業によって得る収入がないか、ある場合にも、兼業を含めた収入額で条件をクリアできているかを確認しましょう。

6-2. 税法上の扶養手続きと混同しない

扶養には、社会保険上の扶養と税法上の扶養があり、それぞれ要件と手続きが異なるため混同しないように注意が必要です。

税法上の扶養控除を受けるためには、勤務先(給与支払者)に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する必要があります。親を扶養に入れる際には、その異動が生じた後、最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出しなければなりません。

例えば、4月15日に親御さんを扶養に入れることになり、給与支払日が毎月25日の場合、4月25日の給与支払日の前日である4月24日までに提出することになります。

参考:A2-1給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁

6-3. 別居中の親は仕送り状況を確認する

別居中の親を扶養に入れる際は、仕送りの状況が要件を満たしているかの確認が必要となります。

社会保険の扶養の条件においては、親への仕送り額が親の収入を上回ることが必要です。仕送り状況は、扶養認定後も継続的に確認されるため、仕送り状況の記録を必ず保存しておきましょう。

全国健康保険協会(協会けんぽ)では毎年10月上旬〜11月上旬に被扶養者資格の再確認を実施しており、別居の親を扶養している場合には直近1ヵ月分の仕送り実績(振込明細や通帳コピーなど)の提出が求められます。

あわせて、退職金や保険金満期などの臨時収入を含め、親の収入に変動がないかを定期的にチェックし、常に扶養要件を満たしていることを確認しましょう。

参考:事業主・加入者のみなさまへ「令和6年度被扶養者資格再確認について」|全国健康保険協会

6-4. 片方の親だけを社会保険の扶養に入れられない場合もある

被保険者の加入する健康保険が健康保険組合の場合、規約によっては、両親のうち片方の親だけを社会保険の扶養に入れることができないケースがあります。

例えば、両親が同居していて、父親の年収が400万円、母親の年収が100万円の場合、母親の年収だけを見れば社会保険の扶養に入ることは可能です。しかし、両親の年収を合計すれば、被保険者である子どもの支援がなくても生計が維持できると判断された場合、母親は社会保険の扶養に入ることができません。また、退職金や貯蓄などで生計を立てている場合も社会保険の扶養に入れないことがあります。

扶養認定の細かい条件は健康保険組合ごとに異なります。具体的な要件は必ず加入先の組合へ問い合わせて確認しましょう。

6-5. その他の控除枠も周知する

従業員の親が社会保険と所得税の扶養の対象外であった場合には、その他の控除枠の提案も可能です。

社会保険料控除や生命保険料控除などの「所得控除」は、親が社会保険上の被扶養者かどうかは関係しません。

ただし、控除を受けるためには、被保険者(従業員)が実際に親の保険料を負担していることが必要となります。生命保険料控除については、保険の契約者が従業員本人(または生計を一にする配偶者その他親族)であること、生計を一にする配偶者その他親族であることも要件となります。

親を社会保険上の扶養に入れられない従業員であっても、活用できる控除制度を周知し、税負担を軽減できる方法を検討しましょう。

参考:「日本国内に住所を有する被扶養者の認定事務」にかかるQ&A|日本年金機構

参考:令和6年分年末調整Q&A|国税庁

7. 正しく法律を理解して親の扶養手続きをおこなおう

老夫婦と若い女性

従業員の親を社会保険の扶養に入れることは可能です。親を社会保険の扶養に入れるには、さまざまな要件を満たさなくてはなりません。

要件を確認して手続きをするだけでなく、可能な限り従業員に扶養の注意点も伝え、従業員にあった保障を選択できると良いでしょう。

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