障害者雇用における法定雇用率の計算方法は?下回った際の対応方法を解説
更新日: 2025.7.31 公開日: 2025.3.6 jinjer Blog 編集部

障害者雇用における法定雇用率は、企業が守るべき重要な基準です。しかし、法定雇用率を達成できていない企業も少なくありません。
本記事では、法定雇用率の計算方法や未達成だった場合のリスク、下回った際の具体的な対応方法を詳しく解説します。未達成の状況を回避できるよう、法定雇用率への理解を深め、今後の取り組みに役立ててください。
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1. 障害者雇用における法定雇用率の計算方法


障害者雇用における法定雇用率の計算方法は、以下のとおりです。
必要な障害者雇用数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者の法定雇用率(2.5%)
常用労働者と短時間労働者とは、以下の条件下の労働者を指します。
| 週の所定労働時間 | |
| 常用労働者 | 30時間以上 |
| 短時間労働者 | 20時間以上30時間未満 |
民間企業における障害者の法定雇用率は、2025年5月時点で「2.5%」です。40人以上の従業員を雇用している企業は、障害者雇用をしなければなりません。
算出した数値を達成することが、障害者雇用促進法第43条で義務付けられています。
参考:障害者の雇用の促進等に関する法律 | e-Gov 法令検索
1-1. 2026年7月からの雇用率
障害者雇用における法定雇用率は2026年7月からは2.7%に引き上げられます。対象となる事業主に範囲にも変化が生まれます。2024年4月からは雇用している従業員が40.0人の事業主が対象でした。しかし、2026年7月からは対象事業主の範囲が37.5人以上に変化します。
1-2. 複数の事業所を持つ企業の雇用率
複数の事業所を持つ企業において、法定雇用率を達成する際の取り決めは、事業所単位ではなく企業全体での従業員数を基準にすることが求められます。具体的には、企業全体の従業員数が40人以上であれば、1人以上の障害者を雇用しなければなりません。これは、企業全体として障害者雇用が進むことを目的としており、各事業所での雇用率が個別に評価されることはありません。
1-3. グループ会社を持つ企業の雇用率
グループ会社を持つ企業においても、法定雇用率の達成には特殊な取り決めが適用されます。企業グループ算定特例(関係子会社特例)を適用することにより、グループ企業全体で障害者の雇用率の合算が可能です。この特例を活用するには、親企業が子会社を支配していること、障害者雇用推進者を選任していることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
具体的な条件として、親企業は子会社の意思決定機関(例えば、株主総会など)を支配している必要があり、議決権の過半数を有していることが求められます。また、関係子会社は、従業員数に応じて一定数の障害者雇用を行う必要があります。たとえば、167人未満の従業員を抱える関係子会社には障害者雇用の義務はありませんが、167人以上の従業員を有する場合、1人以上の障害者を雇用しなければなりません。
2. 障害者雇用数のカウント方法


障害者雇用数のカウント方法は、以下のとおりです。
- 障害者雇用の対象となる障害者
- 等級別・労働時間別のカウント方法
- 重度障害者は1人を2人分としてカウント
2-1. 障害者雇用の対象となる障害者
障害者雇用の対象となる障害者は、以下のとおりです。
| 条件 | 障害の程度 | |
| 身体障害者 | 身体障害者福祉法による身体障害者手帳を所持していること | 障害の程度により、1~7の等級がある |
| 知的障碍者 | 都道府県知事が発行する療育手帳を保持していること | 障害の程度により、A~Cに区分される |
| 精神障害者 | 精神健康福祉法による精神障害者保健福祉手帳を保持していること | 障害の程度により、1~3級の等級がある |
障害を持っている従業員がいても、各手帳を保持していなければカウントの対象外です。身体障害者手帳の等級が1・2級の人と、療育手帳の区分がAの人は「重度」とみなされます。
精神障害者は、雇用上人数のカウント方法が変わることはありません。
2-2. 等級別・労働時間別のカウント方法
等級別・労働時間別のカウント方法は、以下のとおりです。
| 労働時間 | 30時間以上
(常用雇用労働者) |
20時間以上30時間未満
(短時間雇用労働者) |
10時間以上20時間未満 |
| 身体障害者 | 1 | 0.5 | – |
| 重度身体障害者 | 2 | 1 | 0.5 |
| 知的障害者 | 1 | 0.5 | – |
| 重度知的障害者 | 2 | 1 | 0.5 |
| 精神障害者 | 1 | 0.5もしくは1 | 0.5 |
短時間労働者の精神障害者は、以下の要件を満たした場合1人とカウントできます。
- 新規雇用から3年以内、もしくは精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内
- 2023年3月31日までに雇用され、精神障害者保健福祉手帳を交付されている
労働時間や等級によって、カウントの方法が変わります。
参考:精神障害者である短時間労働者に関する算定方法の特例措置|厚生労働省
2-3. 重度障害者は1人を2人分としてカウント
重度障害者を常時労働者として雇用する際は、1人を2人分としてカウントします。企業が重度障害者を雇用する際の負担を軽減し、積極的な雇用を促進するための措置です。
例えば、10人の障害者雇用が必要な企業が、重度障害者を5人雇用した場合、計算上は「10人」としてカウントされます。企業は正確に雇用数を把握し、適切に報告しなければなりません。
3. 法定雇用率が未達成だった場合のリスク

法定雇用率が未達成だった場合のリスクは、以下のとおりです。
- 納付金の支払い義務
- 行政指導の対象
- 企業名公表によるイメージの低下
3-1. 納付金の支払い義務
法定雇用率が未達成だった場合、不足人数に応じて1人あたり月額5万円の障害者雇用納付金の支払い義務が発生します。徴収の対象となるのは、常用労働者が100名以上の企業です。
常用労働者とは、以下の条件を満たしている従業員を指します。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 1年を超えて雇用されている労働者
徴収された納付金は、障害者雇用促進法にもとづき、障害者雇用を進めるための財源として活用されます。
3-2. 行政指導の対象
障害者の雇用義務を怠った場合、段階的に以下のような行政指導がおこなわれます。
| 指導内容 | 詳細 |
| 障害者の雇用入れ計画の作成 |
|
| 雇入れ計画の適正実施勧告 |
|
| 特別指導 |
|
| 企業名の公表 |
|
企業名の公表は、最も重い処分です。厚生労働省が報道者関係向けに報道発表するため、さまざまな媒体で取り上げられる可能性が高くなるでしょう。
裏を返せば、企業名の公表までに約3年の猶予があるともいえます。指導期間に法定雇用率を改善することが重要です。
3-3. 企業名公表によるイメージの低下
企業名が公表された場合、企業イメージの低下は避けられません。障害者雇用義務の未履行は、社会的責任を軽視しているとして、企業イメージに悪影響を与える可能性が高くなります。
顧客や取引先からの信用問題に大きく影響するでしょう。企業で働く従業員のモチベーションも低下しかねません。
さらに、メディアやSNSなどで批判が広まり、企業の否定的な意見が拡散するリスクもあります。
4. 法定雇用率が下回った場合の対応


法定雇用率を下回った場合は、以下のような対策が必要です。
- ハローワークを利用する
- 障害者専用の転職エージェントを利用する
- 特別支援学校に求人募集をかける
4-1. ハローワークを利用する
ハローワークに求人情報を提出し、条件に合う障害者の求職者を紹介してもらう方法があります。障害者を雇用する多くの企業が、活用している方法です。
ハローワークは、企業向けに相談サポートをおこなっています。障害者を初めて雇用する企業でも、親身に相談に乗ってもらえるでしょう。
経験やスキルなど、さまざまな障害者がいるため、任せたい業務や人物像を明確にしておくことが重要です。条件や資格などの、詳細項目を記入しておくとよいでしょう。
4-2. 障害者専用の転職エージェントを利用する
障害者専用の転職エージェントを利用して、障害者を雇用する方法もあります。企業と障害者の間に専任のエージェントが介入し、マッチングしてくれるサービスです。
経験豊富でスキルの高い障害者が見つかりやすい点がメリットですが、優秀な人材は採用競争が激しくなります。大手企業などが、高待遇の求人を出しているケースが多いためです。
そのため、転職エージェントを経由しての採用は、コストがかかる可能性があります。
4-3. 特別支援学校に求人募集をかける
特別支援学校に求人募集をかける方法もあります。特別支援学校は、障害の種類や症状に応じた専門的な教育をおこなっている教育機関です。
特別支援学校には、就職を希望する障害者の生徒がいます。学校とのつながりができるため、継続的に求人募集をかけられるでしょう。
障害者のできることとできないことが採用前にわかりやすい点がメリットですが、就業経験がない障害者がほとんどです。そのため、採用後は丁寧な指導が必要になるケースが多くなります。職場体験やインターンシップなどの制度を設けてもよいでしょう。
5. 法定雇用率以上の障害者を雇用するメリット


法定雇用率以上の障害者を雇用するメリットとして以下が挙げられます。
- 障害者雇用調整金の受給
- 企業のブランドイメージ向上
- 報奨金制度
5-1. 障害者雇用調整金の受給
企業が法定雇用率を超える人数の障害者を雇用することで、障害者雇用調整金を受け取ることができる場合があります。障害者雇用調整金は、企業が法定雇用率を超えて障害者を雇用することを奨励するための政府からの支援金であり、障害者を雇用する企業にとって経済的な負担を軽減する重要な制度です。
5-2. 企業のブランドイメージ向上
法定雇用率以上の障害者を雇用することは、企業のブランドイメージを向上させる要因となるでしょう。特に、近年では企業の社会的責任(CSR)が注目され、社会貢献に積極的な企業は消費者や取引先からの信頼を得やすくなっています。障害者雇用に取り組むことで、企業は社会的に責任を持った存在として認識され、ブランドイメージの向上に繋がります。
5-3. 報奨金制度
障害者を雇用することに対して、企業が報奨金を受け取る制度も存在します。報奨金制度は、障害者雇用を積極的に進める企業を奨励するために設けられており、障害者の雇用を増やすためのモチベーションにつながるでしょう。
報奨金は、障害者を新たに雇用する際や、障害者雇用数が増加した場合に支給されることがあります。企業にとっては、雇用コストの一部を補填できる形となり、報奨金を活用することで障害者雇用にかかる経済的負担を軽減することが可能です。
6. 障害者雇用促進法の今後の展望


障害者雇用促進法は、障害者の社会参画を支援するために改正が続けられています。法定雇用率は、これまで数回の引き上げがおこなわれてきました。
今後も、障害者の社会参画のために段階的な引き上げが検討されています。また、対象障害者の範囲も検討されており、雇用の幅が広がる可能性も考えられるでしょう。単に法定雇用率をあげるだけではなく、働き方の質を高めることも重要視されています。
総じて、障害者雇用促進法は今後、より多くの障害者が社会で活躍できる仕組みを積極的に取り入れる方向へ進むと予想されるでしょう。企業は経営陣を筆頭に、企業全体で障害者を迎え入れる準備を整えておくことが重要です。
7. 障害者雇用における法定雇用率の理解を深めよう


障害者雇用における法定雇用率の計算方法は、以下のとおりです。
必要な障害者雇用数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者の法定雇用率(2.5%)
法定雇用率が未達成の場合は、障害者雇用納付金の支払いが求められたり、行政指導を受けたりします。最終措置で企業名が公表されると、企業イメージが悪化し信用を失うリスクがあるため、企業は社会的責任を果たさなければなりません。
法定雇用率を理解し、自社の雇用状況を把握することは、法律を順守するだけではなく、企業価値の向上にもつながります。積極的な取り組みにより、障害者が活躍できる環境を整え、多様性のある企業文化を育みましょう。



人事労務担当者の実務の中で、従業員情報の管理は入退社をはじめスムーズな情報の回収・更新が求められる一方で、管理する書類が多くミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
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