雇用契約書の管理方法|保管期間はいつまで?労働基準法に沿った管理手順とは
公開日: 2025.8.4 jinjer Blog 編集部

毎年、新入社員の入社や契約更新で増え続ける雇用契約書。「適切な管理方法は?」「法律で定められた保管期間はいつまで?」とお悩みの人事労務担当者も多いのではないでしょうか。
雇用契約書は、企業のコンプライアンスと従業員との信頼関係の根幹をなす重要書類です。不適切な管理は、労務トラブルの際に不利な状況を招くだけでなく、法令違反に問われる可能性もあります。
本記事では、労働基準法に基づいた雇用契約書の正しい管理方法から、従業員数の多い企業が抱えがちな課題、そしてその課題を解決する電子化のメリットまで、具体的かつ網羅的に解説します。
目次
従業員を雇い入れる際は、雇用(労働)契約を締結し、労働条件通知書を交付する必要がありますが、法規定に沿って正しく進めなくてはなりません。
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1. なぜ雇用契約書の適切な管理が重要なのか?

まず、なぜ雇用契約書の管理が他の契約書と比べても特に重要視されるのか、その根拠となる2つの理由を解説します。
1-1. 法律(労働基準法)で保管が義務付けられているから
雇用契約書を含む労働関係の重要書類は、労働基準法第109条によって保管が義務付けられています。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
これに違反した場合、同法第120条に基づき30万円以下の罰金が科される可能性があります。労働基準監督署の調査などで指摘されることのないよう、確実な管理体制の構築が必須です。
1-2. 労務トラブルから会社と従業員を守るため
万が一、未払い賃金や不当解雇などを巡って従業員とトラブルになった際、雇用契約書は「どのような労働条件で双方が合意したか」を客観的に証明する重要な証拠となります。
すぐに提示できなければ、会社の正当な主張が認められなかったり、問題解決が長期化したりする恐れがあります。適切な管理は、会社と従業員の双方を守るためのリスク管理の基本です。
2. 【労働基準法】雇用契約書の保管期間と対象者

法律で定められた保管義務について、さらに詳しく見ていきましょう。
- 保管期間:原則5年間
法改正により、2020年4月1日から原則「5年間」の保管が義務付けられました。ただし、当面の間は経過措置として「3年間」とされています。(2025年7月現在) - 起算日(いつから数えるか):その従業員の「退職日」または「死亡日」
注意すべきは、起算日が「契約締結日」や「入社日」ではない点です。在籍中の従業員のものはもちろん、退職した従業員の雇用契約書も、退職日から3年(将来的には5年)間は保管し続けなければなりません。 - 対象者:すべての労働者
正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイトなど、雇用形態にかかわらず、雇用するすべての労働者の契約書が保管義務の対象となります。
3. 【書面編】紙の雇用契約書の具体的な管理方法と課題

ここでは、伝統的な紙媒体での管理方法と、特に従業員数が多い企業で顕在化する課題について解説します。
3-1. 紙の雇用契約書の管理手順
手順①:管理台帳を作成する
Excelなどで、全従業員の契約書情報を一覧化した「管理台帳」を作成します。これが検索の起点となります。記載すべき項目例は以下の通りです。
- 管理番号
- 氏名、部署
- 雇用形態(正社員、契約社員など)
- 入社年月日
- 契約更新日、次回更新予定日
- 退職年月日保管期限(退職日+3年 or 5年)
- 原本の保管場所(キャビネット番号など)
手順②:ファイリングルールを定める
管理台帳と連動させ、探しやすいルールでファイリングします。
- 例1(在職者): 「部署別」の大分類の中に「氏名の五十音順」でファイリング。
- 例2(退職者): 「退職年度別」にまとめ、その中を「氏名の五十音順」でファイリング。これにより、保管期限が来た書類を年度ごとにまとめて廃棄できます。
手順③:施錠可能な場所で保管する
雇用契約書は究極の個人情報です。誰でもアクセスできる場所ではなく、必ず施錠できるキャビネットや書庫で保管し、管理責任者を明確にしましょう。
3-2. 紙の管理が抱える3つの課題
従業員数が300名を超えると、上記の手順を徹底していても、以下のような課題が深刻化します。
課題①:物理的な保管スペースの圧迫
毎年増え続ける契約書は、オフィスのスペースを確実に圧迫します。退職後も3〜5年間保管し続ける必要があるため、その量は膨大です。
課題②:検索性の低さと業務非効率
「Aさんの雇用契約書を確認したい」と思っても、書庫へ行き、キャビネットの鍵を開け、膨大なファイルの中から探し出す…という手間と時間がかかります。これが担当者の業務効率を著しく低下させます。
課題③:紛失・情報漏洩のリスク
手作業での管理には、ファイリングミスや持ち出しによる紛失リスクが常に伴います。また、災害(火災、水害など)による物理的な消失リスクも避けられません。
4. 【電子化編】雇用契約書管理はシステムで効率化できる

紙の管理が抱える課題を根本から解決するのが、雇用契約書の電子化とシステムによる管理です。
電子帳簿保存法の要件を満たしたシステムを利用すれば、電子データが原本として認められ、紙の書類は破棄できます。ただし、そもそも雇用契約書を電子的に「作成・締結」する場合、つまり労働条件通知書を電子交付する際には、法律上の大前提があります。
それは、「労働者本人が、電子的な方法での交付を希望した(明確に同意した)こと」が必須であるという点です。本人の同意なく、企業が一方的に電子契約で手続きを進めることはできませんので、このことを前提として理解した上で見ていきましょう。
4-1. メリット①:保管スペース・コストが完全にゼロに
物理的な保管場所が不要になり、オフィススペースを有効活用できます。ファイルやキャビネットなどの備品コスト、書類を廃棄する際の溶解処理コストなども一切かかりません。
4-2. メリット②:「氏名」や「入社日」で一瞬で検索可能
PC上で従業員の氏名や入社日、雇用形態などで検索すれば、必要な契約書が瞬時に見つかります。退職者からの問い合わせや労務トラブルの際も、迅速な対応が可能です。
4-3. メリット③:入社手続き全体のペーパーレス化と迅速化
契約書の管理だけでなく、作成・配布・締結のプロセス自体を電子化できます。新入社員にシステム上で契約書を送付し、オンラインで同意を得ることで、印刷・製本・郵送・返送といった一連の手間と時間を大幅に削減できます。
4-4. メリット④:アクセス権限制御によるセキュリティ強化
「閲覧のみ」「編集可能」など、担当者ごとにアクセス権限を細かく設定できます。誰が・いつ・どのファイルにアクセスしたかのログも記録されるため、不正な持ち出しや情報漏洩を防ぎ、内部統制の強化に繋がります。
5. 非効率な紙管理から、戦略的な電子管理へ

本記事では、労働基準法に基づく雇用契約書の正しい管理方法と、書面管理が抱える課題、そして電子化による解決策を解説しました。
- 雇用契約書は労働基準法に基づき、退職後3年(将来的には5年)の保管義務がある。
- 紙での管理は、保管スペース、検索性、セキュリティの面で多くの課題を抱える。
- 電子化はこれらの課題を解決し、人事労務の業務効率を飛躍的に向上させる。
毎年繰り返される煩雑な雇用契約書の管理業務から解放され、より付加価値の高い戦略的な人事労務業務に時間を使いませんか?
従業員を雇い入れる際は、雇用(労働)契約を締結し、労働条件通知書を交付する必要がありますが、法規定に沿って正しく進めなくてはなりません。
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