雇用契約書に角印は必要?法的効力や押印ルール、電子化のメリットを解説
公開日: 2025.8.4 jinjer Blog 編集部

人事労務担当者として、「雇用契約書に押す印鑑は角印で良いのか?」「そもそも法的に必須なのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか。特に、従業員数が多い企業では、新入社員の入社手続きのたびに大量の雇用契約書を用意し、一つひとつに押印する作業は大きな負担です。
結論から言うと、雇用契約書への角印の押印は、法律上の義務ではありません。しかし、企業の意思表示として、またトラブル防止の観点から、用いられるケースがあります。
この記事では、雇用契約書における角印の位置づけや押印の具体的なルールを解説します。その上で、多くの企業が抱える「紙と印鑑」の業務課題を解決する「電子化」という選択肢と、それによって得られる具体的なメリット、業務効率化について説明します。
人事労務担当者の実務の中で、従業員情報の管理は入退社をはじめスムーズな情報の回収・更新が求められる一方で、管理する書類が多くミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、人事異動の履歴や評価・査定結果をはじめ、管理すべき従業員情報は多岐に渡り、管理方法とメンテナンスの工数にお困りの担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 雇用契約書に角印は法的に必要か?


まず、最も重要な「雇用契約書と角印の法的な関係」について整理します。
1-1. 法律上の結論:角印がなくても契約は有効
労働契約法において、労働契約は労働者と使用者の「合意」によって成立すると定められており、書面の作成や押印は契約成立の必須要件ではありません。
また、民事訴訟法第228条4項では、「本人又はその代理人の署名又は押印があるとき」に文書が真正に成立したものと推定されると規定されています。これは「押印があれば本人の意思だと推定されやすい」ということであり、「押印がなければ無効」という意味ではありません。
つまり、法的には、会社と従業員の双方が内容に合意していれば、雇用契約書に角印が押されていなくても契約は有効に成立します。
ただし、雇用契約書の作成は任意である一方、労働基準法第15条により、企業は労働者に対して賃金や労働時間といった主要な労働条件を「書面で明示する義務」があります(※)。
そのため実務上は、この労働条件通知書と雇用契約書を一体化させた「労働条件通知書 兼 雇用契約書」という形式で、双方の合意を取り交わすのが一般的です。
(※)2019年の法改正により、労働者が希望した場合は、FAXや電子メール、Slack等のビジネスチャットツールでの明示も可能です。
1-2. 商慣習上の結論:押印するのが一般的
法律上は不要であるにもかかわらず、なぜ多くの企業が雇用契約書に角印を押すのでしょうか。それは、以下の理由による日本の商慣習が根強く残っていることが考えられます。
- 会社の意思表示の明確化: 角印を押すことで、「会社としてこの内容の雇用契約書を正式に発行・承認した」という意思を内外に示すことができます。
- 文書の信頼性・真正性の担保: 押印があることで、その書類が偽造されたものではないという一定の証明になり、従業員に安心感を与えます。
- 内部統制・管理: 誰が、いつ、どのような契約を承認したのかを形式的に示すことで、社内の承認プロセスが適切に行われたことの証左となります。
これらの理由から、特別な事情がない限り、雇用契約書には角印を押印するのが一般的と言えるでしょう。
2. 雇用契約書には「角印」と「丸印」どちらを使うべき?


では、雇用契約書に押すのは「角印」と「丸印(会社実印)」のどちらが適切なのでしょうか。
2-1. 角印と丸印の違い
まずは角印と丸印の違いから整理しておきましょう。
| 役割 | 用途 | |
| 角印(社印) | 「会社の認印」に相当 | 請求書や領収書、そして雇用契約書のように、会社が日常的に発行する書類に対して「会社が承認した」ことを示すために使われる |
| 丸印(代表者印・会社実印) | 法務局に登録された「会社の実印」 | 不動産取引や株式譲渡など、会社の経営に重大な影響を与える、極めて重要な契約に使われる。 |
2-2. 雇用契約書に用いるのは「角印」が一般的
雇用契約書に用いるのは「角印」が一般的かつ適切です。
丸印は会社の最も重要な印鑑であり、その押印には厳格な管理が求められます。多数の従業員と締結する雇用契約書に都度、丸印を使用していては管理が煩雑になり、セキュリティリスクも高まります。
したがって、会社の認印である角印を用いるのが一般的と言えるでしょう。
3. 雇用契約書の押印ルールと注意点


実際に紙の雇用契約書に角印を押印する際の、一般的なルールと注意点を解説します
3-1. 押印の位置はどこが正しい?
押印の位置に法的な決まりはありませんが、一般的には以下の場所に押印します。
- 署名欄への押印: 会社名や代表者名が記載された末尾の署名欄に、文字と印影が重なるように押印します。これを「被せ印」や「重ね印」と呼びます。
- 割印(わりいん): 会社と従業員がそれぞれ1部ずつ契約書を保管する場合、2部の契約書を少しずらして重ね、両方の書類にまたがるように押印します。これにより、2つの文書の関連性・同一性を示します。
- 契印(けいいん): 契約書が複数ページにわたる場合、ページの綴じ目や継ぎ目に押印します。これにより、ページの抜き取りや差し替えを防ぎます。
3-2. 誰が押印してもよいのか?
角印は「会社の認印」であるため、必ずしも代表取締役が自ら押印する必要はありません。実務上は、人事労務部門の責任者や担当者が、会社の規定に基づいて押印業務を行うケースがほとんどです。
ただし、誰でも自由に押印できる状態は内部統制上問題があるため、「印章管理規程」などで押印の権限者や管理ルールを定めておくことが望ましいでしょう。
4. 雇用契約業務を電子化することで”押印”を効率化できる


先述の通り、法律で交付が義務付けられている労働条件通知書も、現在では従業員の同意があれば電子的に交付することが認められています。
こうした法改正も後押しとなり、雇用契約業務そのものを電子化し、根本から効率化する企業が増えています。ここでは、従来の雇用契約の締結がどのように労務担当者の業務を圧迫しているのかを整理していきます。
4-1. 従来の雇用契約書の締結における課題
ここまで角印のルールを解説してきましたが、従業員数が300名を超えるような企業では、この「紙と印鑑」のプロセスが大きな負担となっているのではないでしょうか。
- 準備・印刷の工数: 雇用契約書を2部ずつ印刷し、関連書類とセットにする作業。
- 製本・押印の工数: 複数ページの契約書を製本し、1枚ずつ契印を押し、署名欄に角印を押し、2部まとめて割印を押すという手作業。
- 郵送・回収の工数: 従業員へ郵送し、返送を待って回収・確認するまでの時間とコスト。
- 管理・保管の工数: 回収した大量の契約書をファイリングし、施錠されたキャビネットに保管するスペースと手間。
これらのルーティン業務に、人事労務担当者の貴重な時間が奪われていませんか?その解決策が、雇用契約書をはじめとする入社手続き書類の「電子化」です。
電子契約サービスや書類配布システムを導入することで、これまで当たり前だった押印作業そのものが不要になります。
4-2. 雇用契約書の締結を電子化するメリット
電子化による企業のメリットを具体的に見ていきましょう。
- 押印・製本業務がゼロに: PC上で契約書データを作成・送信するだけ。物理的な押印作業は一切発生しません。
- コストの大幅削減: 紙代、インク代、郵送費、保管用のキャビネットや倉庫費用が不要になります。
- リードタイムの短縮: 郵送にかかっていた数日間が不要に。即日で契約締結が完了することも可能です。
- コンプライアンス強化: 誰が・いつ・何に合意したかの記録(ログ)が正確に残り、検索も容易なため、管理体制が強化されます。
「捺印作業の手間をなくしたい」「入社手続きのペーパーレス化を進めたい」とお考えの責任者様にとって、書類の電子化はもはや特別な選択肢ではなく、企業の競争力を高めるための必須施策と言えるでしょう。
5. 角印の知識を活かし、より効率的な雇用契約の締結へ


本記事では、雇用契約書における角印の役割について解説しました。角印は契約の有効性に必須ではありませんが、企業の公式な意思を示す重要な役割を担っています。しかし、その押印プロセスは、特に従業員規模の大きい企業にとっては大きな業務負担です。
もし雇用契約書だけでなく、労働条件通知書や身元保証書、給与振込同意書など、入社時に発生するあらゆる書類の作成・配布・回収業務に課題を感じているなら、書類配布に特化したシステムの導入が効果的と言えるでしょう。



人事労務担当者の実務の中で、従業員情報の管理は入退社をはじめスムーズな情報の回収・更新が求められる一方で、管理する書類が多くミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
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