派遣契約書とは?【派遣先企業向け】種類・法的義務と管理のポイント
公開日: 2025.8.4 jinjer Blog 編集部

派遣社員の受け入れをご担当される人事労務担当者様の中には、「派遣会社から送られてくる契約書の種類が多くて、違いがよく分からない」「派遣先として、どこまで管理責任を負うべきか不安」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
労働者派遣は、派遣先企業、派遣元企業(派遣会社)、派遣社員の三者間で成り立つ特殊な形態のため、契約関係も複雑になりがちです。特に、派遣先企業には労働者派遣法に基づく様々な義務が課せられており、契約書の内容を正しく理解し、適切に管理することは、コンプライアンス上、極めて重要です。
本記事では、専門的な視点から、派遣先企業のご担当者様が知っておくべき派遣関連の契約書の種類と、それぞれの法的な位置づけ、そして管理上の注意点について解説します。
目次
雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
いざという時に慌てないためにも、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 労働者派遣における契約の全体像


まず、労働者派遣に関わる「登場人物」と「契約の流れ」の全体像を把握しておくことが大切です。
- 派遣元企業(派遣会社)と派遣社員: 両者の間で「雇用契約」が結ばれます。
- 派遣先企業と派遣元企業: 両者の間で「労働者派遣契約」が結ばれます。
派遣先企業と派遣社員: 両者の間には直接の雇用契約はありませんが、派遣先は派遣社員に対して業務上の「指揮命令」を行います。
このように、派遣先企業は派遣社員に直接給与を支払うわけではありませんが、日々の業務を指揮命令する立場として、労働者派遣法上の様々な責任を負うことになります。その責任範囲を明確にするためにも、契約書の内容が重要となるのです。
2. 派遣先企業が関わる2つの主要な契約書


派遣先企業のご担当者様が、実務上、主に取り扱うことになる契約書は、主に以下の2種類です。
2-1. 労働者派遣“基本”契約書
労働者派遣基本契約書は、派遣元企業との間で、継続的な派遣取引を行う上での基本的なルールを定める契約書です。
法的義務として労働者派遣法で作成が義務付けられているわけではありません。
作成する目的と内容としては、派遣料金の算出方法や支払条件、秘密保持義務、損害賠償、契約解除の条件など、個別の派遣契約を結ぶ前に、企業間取引の土台となる事項を取り決めておきます。実務上は、トラブルを未然に防ぐために、ほとんどのケースで締結されます。
派遣先としてのチェックポイントは、派遣料金の条件はもちろん、派遣社員がトラブル等を起こした場合の責任分界点など、自社にとって不利益な内容になっていないかを確認しましょう
2-2. 労働者派遣“個別”契約書
労働者派遣個別契約書は、個々の派遣契約、すなわち「誰が」「いつからいつまで」「どのような条件で」働くのかを具体的に定める、極めて重要な契約書です。
法的義務として、労働者派遣法第26条に基づき、作成が法的に義務付けられています。
作成する目的と内容としては、派遣社員の具体的な業務内容、就業場所、就業日・時間、休憩時間、派遣先の指揮命令者、苦情処理の申し出先など、法で定められた主要な事項を記載する必要があります。
派遣先としての重要性は、この個別契約書に記載された内容が、派遣先が派遣社員に指示できる業務範囲の法的根拠となります。ここに記載のない業務を依頼することは、契約違反(偽装請負などを問われるリスクも)となるため、厳格な遵守が求められます。
3. 契約書ではないが重要な「派遣先管理台帳」


契約書と合わせて、派遣先企業に作成と3年間の保存が義務付けられているのが「派遣先管理台帳」です。(労働者派遣法第42条)
これは、派遣社員一人ひとりについて、適正な就業が確保されているかを管理・記録するための台帳です。派遣社員の氏名、派遣元事業主名、派遣就業した日、始業・終業時刻、休憩時間、苦情の処理状況などを記録する必要があります。
この台帳の作成・管理は、派遣先企業の明確な法的義務であり、労働局の調査などでも確認される重要書類です。
4. 派遣先企業が遵守すべき契約上の注意点


契約書や台帳の管理にあたり、派遣先企業のご担当者様が特に注意すべき点をいくつかご紹介します。
4-1. 契約範囲外の業務依頼は禁止
繰り返しになりますが、個別契約書で定めた業務内容を超える業務を派遣社員に依頼することはできません。
業務内容の変更が必要な場合は、必ず派遣元企業を通じて、契約内容の変更手続きを行う必要があります。
4-2. 契約の自動更新は不可
労働者派遣契約は、期間の定めのある契約であり、自動更新は認められていません。
派遣期間を延長する場合は、その都度、派遣元企業との間で新たに個別契約を締結し直す必要があります。
4-3. 「抵触日」と「3年ルール」の管理
原則として、同じ事業所の同じ組織単位(課など)で、同一の派遣社員を受け入れられる期間は、最大3年です。
この期間制限を超える最初の日を「抵触日」といい、派遣先企業はこの抵触日を適切に管理する義務があります。抵触日を超えて受け入れを継続すると、法令違反となりますので、厳重な管理が求められます。
4-4. 遵守すべき契約上の注意点
派遣先企業は、労働者派遣契約を締結するにあたり、あらかじめ派遣元会社に対して、比較対象となる自社の労働者(通常の労働者)の待遇に関する情報を提供しなければなりません。
これには、基本給、賞与、各種手当、福利厚生などの情報が含まれます。この情報提供がないと、派遣元会社は派遣社員の公正な待遇を確保できず、法令違反となるリスクがあります。
5. 紙ベースでの派遣契約書管理が抱える課題


ここまで見てきたように、派遣社員の受け入れには、複数の契約書や台帳の正確な管理が不可欠です。しかし、これらの業務を従来通りの紙ベースで行うことには、特に従業員規模の大きい企業において、無視できない課題が潜んでいます。
-
管理の煩雑さ
複数の派遣会社から、多数の派遣社員を受け入れている場合、一人ひとりの基本契約、個別契約、管理台帳、更新履歴などを紙で管理するのは非常に煩雑で、担当者の大きな負担となります。
- コンプライアンスリスク
契約更新の時期や抵触日の管理漏れは、意図せず法令違反を犯してしまうリスクに直結します。手作業での管理では、どうしてもヒューマンエラーが発生しやすくなります。
-
非効率な業務フロー
派遣会社から送られてくる契約書を印刷・製本し、社内稟議にかけて押印し、返送する…といった一連のプロセスは、多くの時間と手間を要し、業務のボトルネックとなりがちです。
これらの課題を解決し、派遣社員の受け入れ管理をより安全かつ効率的に行うための選択肢として、書類管理システムの導入が考えられます。契約書の受け取りや保管を電子的に行うことが可能です。これにより、印刷、押印、郵送、ファイリングといった物理的な作業から解放されます。
6. 派遣関連書類の管理を効率化させよう


派遣社員を受け入れる派遣先企業には、労働者派遣法に基づく様々な義務があります。特に「労働者派遣個別契約書」と「派遣先管理台帳」は、その中核となる重要な書類です。これらの内容を正しく理解し、コンプライアンスを遵守しながら適切に管理することが、人事労務担当者には求められます。
もし、現状の紙ベースでの管理に限界やリスクを感じていらっしゃるのであれば、業務の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。



雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
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