育児休暇の給料は有給・無給?制度設計ポイントや育児休業との違いを解説
公開日: 2025.12.26 (特定社会保険労務士)
育児に関する休みについて整理しようとすると、「育児休業」「育児休暇」という言葉が混在しており、わかりにくいと感じたことはないでしょうか。実は、法律で定められている「育児休業」と、企業が独自に設ける「育児休暇」では、給料の考え方やルールが大きく異なります。
人事労務担当者としては、従業員から「育児休暇(休業)中の給料はどうなりますか?」と質問された際に、制度の違いや企業としての考え方を正確に説明できることが重要です。
本記事では、「育児休暇の給料」に焦点を当て、有給・無給の判断や制度設計のポイント、育児休業との違いを整理し、実務で迷わないための考え方を解説します。
育児・介護休業に関する法改正が2025年4月と10月の2段階で施行されました。特に、育休取得率の公表義務拡大など、担当者が押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本資料では、最新の法改正にスムーズに対応するための実務ポイントを網羅的に解説します。
◆この資料でわかること
- 育児・介護休業法の基本と最新の法改正について
- 給付金・社会保険料の申請手続きと注意点
- 法律で義務付けられた従業員への個別周知・意向確認の進め方
- 子の看護休暇や時短勤務など、各種両立支援制度の概要
2025年10月施行の改正内容も詳しく解説しています。「このケース、どう対応すれば?」といった実務のお悩みをお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 育児休暇中の給料は企業が自由に決められる


ただし、近年は採用市場の競争激化や、出産・育児期の離職防止といった観点から、短期間でも育児休暇を設ける企業が増えています。とくに有給の育児休暇は、従業員の取得に対する心理的ハードルを下げ、育児と仕事の両立を後押しする効果が期待できます。
自社の人材戦略や職場環境を踏まえ、どのような形が適切かを検討することが重要といえるでしょう。
2. 育児休暇制度の給料・ルールを整備する方法


- 育児休暇の対象者
正社員のみを対象とするのか、契約社員やパート・アルバイトも含めるのかを決めます。雇用形態によって取り扱いを分けること自体は可能ですが、同様の業務内容・勤務実態であるにもかかわらず、正社員にのみ育児休暇を付与する場合は、不合理な待遇差と評価されるリスクがあります。同一労働同一賃金の観点からも、対象となる基準や理由を整理しておきましょう。
- 有給・無給
育児休暇を有給の特別休暇とするのか、無給とするのかを明確にします。無給とする場合は、欠勤扱いにするのか特別休暇扱いにするのかもあわせて定めておきましょう。
- 年間の取得可能日数
年間で何日まで取得できるのかを設定します。1日から数日程度の短期取得を想定する企業が多い一方、企業によっては数週間以上とするケースもあります。連続取得・分割取得の可否など、取得方法も含めて定めておくと、運用しやすくなります。
- 対象となる子の範囲・年齢
対象となる子を実子のみに限定するのか、養子を含めるのか、また何歳までの子を対象とするのかを明確にします。年齢要件を設けることで、制度の目的に沿った利用を促しやすくなります。
- 申請方法・期限
取得にあたっての申請方法や申請期限を定めます。事前申請を原則とするのか、出産直後など緊急性の高いケースにどこまで柔軟に対応するのかについても、あらかじめルール化しておくと安心です。
- 勤務扱いにするかどうか
育児休暇を勤務扱いとするかどうかも重要なポイントです。勤続年数への算入、賞与査定や人事評価への影響をどうするのかを明確にしておくことで、不公平感やトラブルを防止できます。人事制度全体との整合性を踏まえて判断しましょう。
3. 育児休暇の制度設計ポイント


3-1. 有給・無給の判断基準
育児休暇を有給とするか無給とするかは、制度設計の中でも特に悩みやすいポイントです。有給とする場合、従業員が取得しやすくなり、育児と仕事の両立を後押しできるメリットがあります。
一方で、企業側には人件費負担が発生するため、日数や対象者を限定するなどの工夫が必要です。
無給とする場合でも、育児を理由とした休暇であることから、単なる欠勤扱いにするのか、賃金不支給の特別休暇とするのかは慎重に検討しましょう。欠勤扱いとすると勤怠評価や賞与算定に影響するケースがあるため、特別休暇として位置づける方が制度趣旨に沿う場合もあります。
いずれの場合も、賃金支給の有無だけでなく、勤怠・評価への影響を含めて定めておくことが大切です。
3-2. 就業規則への反映方法
育児休暇制度を導入する場合は、就業規則に自社のルールを明確に記載することが必要です。育児休暇の目的や対象者、取得できる日数、有給・無給の区分、申請方法などを具体的に定めておくことで、運用時のトラブルを防止できます。
あわせて、子の看護等休暇や育児休業・産後パパ育休との違い、併用の可否についても整理しておきましょう。とくに育児休暇を有給とする場合、年次有給休暇や他の特別休暇とどちらを優先して取得するのかは、現場で迷いやすいポイントです。既存の休暇制度との関係性を整理し、全体として整合性の取れた規定とすることが、実務上の重要なポイントとなります。
4. 育児休暇と育児休業の違い


育児休業は、育児・介護休業法に基づく法定制度で、一定の要件を満たせば取得が保障されます。休業中は原則として企業から給料は支払われないケースが多いですが、その場合も雇用保険から育児休業給付金が支給されます。
一方、育児休暇は法律上の制度ではなく、企業が独自に設ける任意の休暇制度です。そのため、有給・無給の別や支給ルールは企業が自由に決められます。ただし、無給の場合であっても、育児休業給付金は受給できない点は注意しましょう。
従業員から給料の有無や取り扱いを質問された際は、どちらの制度を指しているのかを切り分けて、説明することが大切です。なお、育児休業給付金の仕組みや支給要件については、関連記事で詳しく解説しています。
関連記事:育児休業給付金とは?2025年4月の改正点や支給条件、申請、計算方法をわかりやすく解説!
5. 育児休暇の給料|企業事例


5-1. 短期・中期の有給育児休暇を複数組み合わせて設計している企業
ある大手企業では、法定の育児休業とは別に、出産前後や育児初期に取得できる複数の有給育児休暇制度を整備しています。
具体的には、配偶者の出産時に取得できる5日間の「配偶者出産休暇」や、子どもが小学校6年生まで年10日間育児目的で取得可能な「キッズ休暇」を設けており、育児への関与を段階的に支援する仕組みとしています。いずれも欠勤扱いとはならず、給料が支給される点が特徴です。
また、育児休業中に無給期間が生じる場合でも、積立有給休暇を充当できる制度を設けるなど、収入面の不安軽減にも配慮しています。短期の育児休暇と育児休業を組み合わせることで、育児参加のハードルを下げ、男女問わず利用しやすい制度として定着させている事例といえます。
5-2. 最長6年間の育児休暇を柔軟に取得できる制度を設けている企業
あるIT企業では、法定の育児休業期間を大きく上回る、最長6年間にわたる育児休暇(休業)を柔軟に取得できる独自制度を整備しています。この制度の特徴は、取得期間やタイミングを一律に定めず、家庭の状況や本人の希望に応じて分割・再取得ができる点にあります。
給料については原則無給としつつも、育児休暇や育児休業の利用が人事評価やキャリアに不利にならないことを明確に打ち出しており、安心して制度を利用できる環境づくりが徹底されています。
また、休暇前後の業務引き継ぎや復職支援にも力を入れ、チームで業務をカバーする仕組みを構築しています。給料を支払うかどうかだけでなく、「長く働き続けられること」を重視した制度設計が、人材定着につながっている好事例といえるでしょう。
6. 育児休暇の給料設定を整備して両立支援につなげよう


給料の有無にかかわらず、制度の内容やルールが整理されていれば、従業員は安心して判断でき、人事担当者も自信をもって説明ができます。制度を形だけで終わらせず、自社の実情に合った形で運用し、仕事と育児の両立を支える仕組みとして定着させていきましょう。



育児・介護休業に関する法改正が2025年4月と10月の2段階で施行されました。特に、育休取得率の公表義務拡大など、担当者が押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本資料では、最新の法改正にスムーズに対応するための実務ポイントを網羅的に解説します。
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