貸倒引当金とは?定義や科目、仕訳や計算方法まで網羅的にわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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貸倒引当金とは?定義や科目、仕訳や計算方法まで網羅的にわかりやすく解説

注意点

事業には多くのリスクが伴い、予定していた債権が簡単に回収できないケースがあります。中でも取引先の倒産は、回収できない最たるケースの一つです。まだ売り上げを回収していない状態で取引先が倒産すると、収益を回収することは困難になるでしょう。

このようなリスクに備え、会計処理をおこなう際に登場するのが「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」です。

本記事では、貸倒引当金の意味や目的、仕訳の方法、貸倒損失と異なる点など、貸倒引当金に関する内容を網羅してわかりやすく解説します。

会計の基本は「勘定科目」と「仕訳」
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説

「経理担当になってまだ日が浅く、会計知識をしっかりつけたい!」
「会計の基礎知識である勘定科目や仕訳がそもそもわからない
「毎回ネットや本で調べていると時間がかかって困る」

などなど会計の理解を深める際に前提の基礎知識となる勘定科目や仕訳がよくわからない方もいらっしゃるでしょう。

そこで当サイトでは、勘定科目や仕訳に関する基本知識と各科目ごとの仕訳例を網羅的にまとめた資料を無料で配布しております。 会計の理解を深めたい方には必須の知識となりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。


1. 貸倒引当金(貸し倒れ引当金)とは?わかりやすく解説

はてなマークを持つ人

ここでは、貸倒引当金とは何か、意味や目的について詳しく解説していきます。具体的な仕訳の仕方や計算方法に入る前に、貸倒引当金の概要についてしっかり押さえておきましょう。

1-1. 貸倒引当金は債権回収できない時に備えた勘定科目

貸倒引当金とは、債権回収予定していた資産が回収できなくなる、というリスクをあらかじめ見積もって費用計上しておくための勘定科目です。

本来取引がスムーズに進めば、契約に従って売掛金や受取手形を回収することができます。しかし、取引先の経営不振や倒産などを理由に、請求額を回収できない事態に陥る場面も少なくありません。これがいわゆる「貸し倒れ」という状態です。

こうした、貸し倒れの事態に備えてあらかじめ引当金を計上しておくことを、会計上では貸倒引当金の設定と呼んでいます。

1-2. 貸倒引当金を設定する目的

貸倒引当金を設定する一番の目的は、期間内に正確な損益を反映させることです。
企業会計原則の中にも「費用収益対応の原則」というルールがあり、費用と収益を対応させなければならないという決まりとなっています。

3月31日が決算期の企業を例にみてみましょう。1月に10万円の商品を掛けで販売しましたが、代金を未回収のまま4月に取引相手が倒産してしまいました。
この場合だと、収益と費用(貸倒損失)が事業年度をまたぐ形となってしまい、同じ会計期間内で帳簿の整合性が合わないことになります。

こうならないためにも、あらかじめ貸倒引当金を計上しておくことで、貸倒損失といった不測の事態にも対処でき、会計上の整合性を保つことができるようになるのです。

ただし法人税法において貸倒引当金を損金算入できるのは、資本金が1億円以下の中小企業等にしか認められていない点に注意しなくてはいけません。

参照:No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定|国税庁

2. 貸倒引当金の対象となる債権とならない債権

対象

貸倒引当金として計上しておくことができるのは、すべての債権ではありません。
どんな債権が貸倒引当金の対象となり、またはならないのかご説明します。

2-1. 貸倒引当金の対象となる債権

貸倒引当金の対象となる主なものは、「売掛金・受取手形」「貸付金・立替金」の2つです。売上や営業資産として経営を支えている債権が相手都合で回収できなければ、貸倒引当金対象となるものは多くなります。

2-1-1. 売掛金・受取手形

企業間の取引において、先に商品を取引先に渡すことで後払い契約となる、売掛金や受取手形を利用することが一般的です。
期日を決めて正式な取引を交わした上で回収を約束しますが、取引先の経営悪化や倒産などに陥ってしまった場合、売掛金や受取手形の回収が難しいでしょう。これは貸倒引当金として処理可能です。
事業の中で、営業面に関わる資産であり、固定資産ではなく常に売上に関わり変動する現金や預金という収入に該当する売上債権が、貸倒引当金対象となります。

2-1-2. 貸付金・立替金

売上資産、つまり営業資産としての流動資産が貸倒引当金対象となることを先ほどお話ししました。
企業間で何らかの立て替えをおこなった場合、企業は無関係に個人を対象とした貸付をした場合、伝票上や帳簿上では貸付金や立替金という勘定科目で仕訳をしています。こちらも本来、回収されるべきものです。
貸付金や立替金が、相手企業の経営悪化や個人の家計状況悪化などで収入が大幅減額したり倒産したりした場合に、回収困難や不可能になったとき、貸倒引当金の対象となります。

2-2. 貸倒引当金の対象とならない債権

貸倒引当金の対象とならないものは、「前払金・仮払金」「敷金」などがあります。

こちらから取引先や個人に提供している現金や預金という資産は、経理上または財務上では「債権ではない」と判断されて、貸倒引当金とはみなされないため注意が必要です。

2-2-1. 前払金・仮払金

会社経営でよく仕訳に上がるのが、「前払金」や「仮払金」という科目です。
前払金や仮払金を、企業や個人の倒産や破産も含め未回収の債権として請求しても、認められないことが多いです。
いわゆる貸倒れになってしまいますが、貸倒引当金対象にはならないのです。
前払金や仮払金はリスクが大きいため、安易に使うことがないように気を付けてください。事前に知っておくと、前払金や仮払金を最小限に抑えるなどの工夫ができます。

2-2-2. 敷金

賃貸契約としての敷金も、貸倒引当金として扱うことができません。
個人で借主となっている場合には貸倒引当金として計上しておくことはほとんどありませんが、経営者として事業所を借りている場合はいくつかのケースが想定されます。
例えば、最初に敷金を払い、貸主の経営不振で敷引きなどが契約通りに支払われない、変換されないというトラブルです。
こういった場合であっても、敷金は貸倒引当金対象として認められません。

3. 貸倒引当金の2つの勘定科目

将来の貸し倒れを見積もって計上する際には、貸倒引当金の他にも「貸倒引当金繰入」や「貸倒引当金戻入」といった勘定科目も使用します。

ここでは、この2つの勘定科目の概要について解説します。

3-1. 貸倒引当金繰入額

貸倒引当金繰入額とは、決算の際に当期分の貸倒引当金のうち当期分を計上するときに用いる勘定科目です。

売掛金や未収金など営業に関わる金銭債権は「販売費及び一般管理費」に、貸付金や立替金など営業と関係ない債権については「営業外費用」に計上します。また、大規模な取引で臨時的かつ巨額な金銭債権がある場合は、特別損失に計上されることもあります。

3-2. 貸倒引当金戻入額

貸倒引当金戻入額とは、想定していた貸倒引当金の試算が債務者の経営状態が改善するなどし、概算額が下がった場合に使われる勘定科目のことです。
貸し倒れが起きなかった場合にも、この勘定科目を使用します。

関連記事:貸倒引当金戻入について仕訳例や繰入を踏まえて詳しく紹介

4. 貸倒引当金の仕訳例

仕訳帳

貸倒引当金についてのイメージが掴めてきたところで、ここからは具体的な仕訳例について解説していきます。「基本的な貸倒引当金の仕訳」「期末で見直す際の仕訳」「実際に貸倒れが発生した際の仕訳」3つのパターンごとに詳しくみていきましょう。

4-1. 貸倒引当金を計上する際の仕訳例

貸倒引当金の計上は、決算のタイミングでおこなうのが基本です。後述の計算方法によって求めた貸倒引当金の額を計上します。貸倒引当金は負債に該当するため、仕訳をする際は貸方に計上します。

(例)売掛金に対して貸倒引当金の繰入限度額を計算し、貸倒引当金1万円を計上

借方 貸方
貸倒引当金繰入 10,000円 貸倒引当金 10,000円

4-2. 貸倒引当金を期末に見直す際の仕訳例

貸倒引当金は、毎期末に見直す必要があります。なぜなら、貸倒引当金は見込み額であるため、必ずしもその額どおりに貸し倒れが生じるとは限らないからです。
期末に見直しをおこなう際には、差額補充法と洗替法(あらいがえほう)という2つの方法があります。

①差額補充法
期末時点での引当金の残高と新たに算出した必要な引当金との差額を追加したり、戻したりして計上する方法です。

(例)前期の貸倒引当金が20万円が残っており、当期は30万円であった場合、差額の10万円だけを繰入れて、貸倒引当金の総額が30万円になるように計上

借方 貸方
貸倒引当金繰入額 100,000円 貸倒引当金 100,000円

(例)逆に前期の貸倒引当金が30万円が残っており、当期は20万円であった場合、差額の10万円だけを戻し入れて、貸倒引当金の総額が20万円になるように計上

借方 貸方
貸倒引当金 100,000円 貸倒引当金戻入額 100,000円

②洗替法
期末時点の引当金の残高をすべて戻し入れて、その後あらたに算出した引当額を計上する方法です。

(例)前期の貸倒引当金が20万円が残っており、当期は30万円であった場合、20万円をすべて戻し入れて新たに30万円を計上

借方 貸方
貸倒引当金 200,000円 貸倒引当金戻入額 200,000円
貸倒引当金繰入額 300,000円 貸倒引当金 300,000円

4-3. 貸倒れが発生したときの仕訳例

実際に貸倒れが起こった際は、貸倒損失として仕訳します。貸倒引当金を設定していた場合は、その額より上回った差額分を貸倒損失として計上するのがポイントです。

(例)前期売掛金の20万円について貸倒れが発生し、該当の売掛金に対して貸倒引当金15万円を計上していた場合

借方 貸方
貸倒引当金 150,000円 売掛金 200,000円
貸倒損失 50,000円

5.貸倒引当金の法定繰入率をもちいた計算方法について

計算

貸倒引当金に関して計算方法は大きく分けて一括評価と個別評価の2つがあります。ここからこの2つの計算方法に関して解説していきます。

関連記事:貸倒引当金における法定繰入率とは?計算方法や注意点を解説
関連記事:貸倒引当金の計算方法を一括評価・個別評価それぞれ徹底解説

5-1.一括評価と個別評価

一括評価に関しては売掛金や貸付金のような金銭の債権、個別評価はそれ以外の金銭債権以外のものに使用されます。

一括評価の中でも実績繰入率と法定繰入率の2つがあり、実績繰入率は「期末の債権額×繰入率」で計算します。
法定繰入率は資本金が1億円以下の中小企業だけに認められているものであり、業種によっても繰入率は異なってくるので事前に確認しておきましょう。

関連記事:貸倒引当金における個別評価を形式基準や一括評価との違いから詳しく紹介

6. 貸倒引当金と貸倒損失の違い

請求書 違い

貸倒引当金は貸倒損失と似ており、どちらに区分するべきか迷うこともあるでしょう。ここではそれぞれの違いを見ていきます。

6-1. 貸倒引当金の定義

貸倒引当金は、過去に発生した債券の中で資金を回収できない可能性をあらかじめ「資産の減少として見積もっておくことです。資産の再評価ともいわれています。将来の資産の価値を測定し、今の金額より低いときはそこまで減額させることが目的です。

ただし現時点で資産の価値が低いというわけではありません。資産を計上した後、負債として減額して将来の資産の予想に値するのが貸倒引当金です。

6-2.貸倒損失の定義

貸倒損失は、当期に発生している債権の中で当期中に回収できないと判明したものを損失として計上することです。適正な損益計算を目的としています。
上記の貸倒引当金とは異なり、当期の売上減少による損失として計上します。利益を適正に計算し、適正な損益計算をするのが貸倒損失です。

7.貸倒引当金の損金算入について

貸倒引当金において法人税法では将来的に貸倒の可能性が想定されている損失額を損金として算入ができます。
企業だけじゃなく、個人事業主も計上でき、節税対策としても有効な手段の一つです。

関連記事:貸倒引当金の計上で損金算入によって期待できる節税効果とは

8. もしもに備えて貸倒引当金を理解しておこう

ポイント 請求書

事業経営にはさまざまなリスクを伴います。自社さえ安定していれば問題ないというわけではありません。取引先企業の経営状態により、売掛金や手形を回収できないこともありえます。その場合、事業経営にも大きな影響を与えるため、回収できない可能性をあらかじめ予想しておくことも必要です。

貸倒引当金は、売掛金や未収金などの金銭債権に対して、回収不能となる恐れを事前に見積もっておくためのものです。貸倒引当金に関する正しい知識を身につけ、適切に債権管理をおこなうことが、将来的なリスクの低減にもつながっていくでしょう。

会計の基本は「勘定科目」と「仕訳」
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説

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「毎回ネットや本で調べていると時間がかかって困る」

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