見積書の有効期限を設定する理由や注意点は?有効期限が過ぎた場合の対処法
更新日: 2024.1.17
公開日: 2022.4.14
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取引先との契約の際、必要不可欠なものである見積書には、有効期限を設定するのが一般的です。その理由は、有効期限を設けることで早期契約を促すほか、原材料の価格変動、人件費の値上がりなどの影響によるリスクに対応するためです。
一度有効期限を設定した見積書は、民法により発行元の自由で撤回できません。しかし、有効期限が切れた見積書は効力がなくなるため、赤字受注を回避することが可能です。
今回は、見積書の有効期限について、設定すべき理由や設定時の注意点、有効期限が過ぎたときの対処法などを詳しく解説します。
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1. 見積書の有効期限を設定する理由
見積書は、取引先との取引内容を明確に提示するための重要な書類です。見積書を作成する際、多くの場合は有効期限を設定して記載します。
見積書の有効期限とは、提示した見積書の取引条件で契約できる期間のことです。有効期限を過ぎてしまった場合は、再度見積書を作成しなければなりません。
見積書の有効期限を設定する理由は、単に取引先に期限を提示するだけでなく、次の2つの理由があります。
1-1. 顧客に対して契約への決意を促すため
見積書には金額や納期などの取引条件が記載されており、顧客はその内容を見て取引するかどうかを意思決定をします。有効期限を設定し、「この取引条件で契約できる期間はここまで」とはっきり提示することで、顧客に契約への決断を促す役割があります。
なお、見積書には見積有効期限のほか、見積書自体の発行日、具体的な納入予定日などを記載する必要があります。そのほか、必要事項は漏れなく記載しなければなりません。
1-2. 商品やサービスの価格変動などに対応するため
BtoB(企業間での商談)では、稟議書を作成し承認を得る必要があるため、見積書を発行して受注するまでに時間がかかる場合があります。
そのため、原材料の価格変動や販売終了などの影響で、見積書の記載額では利益が得られず、または赤字受注になる可能性があります。
たとえば日雇いの作業員が多い建設業界の場合、需要の変動に伴い人件費も大幅に変わっていきます。また、重機や車両を動かすための燃料費についても、ガソリン価格が高騰した際、何倍にも跳ね上げる可能性があります。
見積書に有効期限を設定することで、このような事態が発生した際、赤字受注を回避することができるのです。
2. 見積書の有効期限を設定する際の注意点
見積書の有効期限を設定する際の注意点としては、次の2つが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1. 業種に適した有効期限を設定する
見積書の記載する有効期限の期日について、法律的な明確な決まりや制限はありません。会社の都合によって期限を設けることができます。一般的な期間としては、2週間から6ヵ月のあいだで設定しますが、業種によって適切な期間も変わってくるでしょう。
有効期限の設定に決まりがない限り、1年や2年など長期に設定することも可能ですが、よほどのことがない限り、現実的ではありません。
有効期限の設定は前述のとおり、相手の発注意欲を促すためのほか、原材料の価格変動や販売制限によってサービス内容が大きく変化する可能性もあるため、適切な有効期限を設定し、期限が切れたあとに見積書を改めて発行できるようにしておくことが目的です。有効期限が1年以上になると、誘引力が低下するだけでなく、価格変動にも対応できなくなる可能性があるからです。
見積書には「見積提出後2週間」「作成日より1ヵ月」など、わかりやすく記載します。
2-2. 有効期限を設定した契約は発行者の自由で撤回できない
見積書に有効期限を設定するうえで最も注意したいのが、見積書で設定した有効期限は、民法上、撤回できないということです。民法第523条第1項では、見積書を発行する際に有効期限を設定した場合、発行者が取引先などに対して契約の申込みをしたことになるため、有効期限内に契約を撤回することはできないと定められています。[注1]
また、第2項では、見積書の発行=見積り内容に沿った契約をするという通知としています。つまり、見積書に有効期限を定めることで、有効期限を過ぎたときに内容承諾の通知がこない場合、見積書は効力を失うため、見積り内容に沿った契約を締結する必要がなくなるということになります。[注1]
この規定によって、有効期間内に価格変動が生じた際でも、赤字受注を回避できます。
3. 見積書の有効期限が過ぎてしまった場合の対処法
有効期限が過ぎた見積書は効力がなくなってしまうため、取引を継続する場合は見積書の再発行が必要です。取引先に見積りの内容を改めて確認するとともに、取引内容に変更があるかどうか問い合わせてみましょう。
また、見積りの内容に変更がなくても、見積書を発行した時期によって金額が異なる場合があるため、注意が必要です。
例として、特許事務所が特許出願費用の見積書を再発行するケースを挙げてみましょう。特許庁の手数料や特許事務所の代理人手数料などは、時期によって改定される可能性があります。
そのため、先回の見積書と同様の発明について特許出願費用の見積りを作成したとしても、再度見積りを行うタイミングによっては、改定に伴い金額が変動することもあるのです。
また、時間の経過によって、特許出願した発明の内容が大幅に改良された場合、依頼主が先回見積書取得の際の発明内容に加え、改良後の発明についても特許出願を希望する、または1つの発明に対して出願内容の追加を希望するケースもあるでしょう。
このような場合、2つ分の発明の特許出願費用を見積りしなければならないため、当然見積り金額も変更になります。
4. 見積書の有効期限を設定して赤字受注などのトラブルを未然に防ぐ
顧客と取引をするうえで見積書は必要不可欠な要素です。見積書に有効期限を設けることで、顧客に早めの発注を促すだけでなく、原材料の価格変動や人件費の高騰などが原因で起こる赤字受注を回避できます。
見積書の発行から受注までの期間が長い場合は、とくに注意が必要です。見積書の有効期限を設定するのに、とくに規定はありません。業種や会社の都合に適した有効期限を設定し、トラブルを未然に回避しましょう。
なお、有効期限を設定した契約は撤回できないため、見積書を作成する際は慎重に行うことが大切です。
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