消費税の簡易課税制度やインボイス制度が与える影響とは
更新日: 2024.1.17
公開日: 2022.1.31
jinjer Blog 編集部
まもなく、2023年10月よりインボイス制度が導入されます。本格的な導入となるのは2029年からとなりますが、これまで免税事業者だった場合、これからのことを慎重に考えなければいけません。
インボイス制度による自分や自社への影響を考えるとき、ぜひ覚えておいてほしいのが簡易課税制度です。こちらも消費税に関する制度ですが、場合によってはインボイス制度によって結果的に増えてしまう負担を軽減できる可能性があります。
本記事では、消費税の簡易課税制度やインボイス制度が与える影響について、詳しく解説します。
目次
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1.消費税の簡易課税制度とは
消費税は、商品やサービスを購入するために金銭のやり取りがあった際に、必ず納税義務が発生します。事業者の場合、消費税の納税義務に関する1つの境界を「1,000万円」としています。これは、その年度における売上が1,000万円に満たないのであれば、消費税の納税義務を免除する免税事業者になれるというものです。
売上が1,000万円以上の事業者は課税事業者となり、消費税を納める義務があります。しかし、いくら年間の売上が1,000万円を超えるといっても、中小企業などによっては税負担が大きく感じることがあるかもしれません。課税事業者の税負担を少しでも軽減するための措置が、簡易課税制度です。
簡易課税制度とは、消費税を申告するにあたり、選べる計算方法の1つです。その年の課税対象となる売上額が、5,000万円に満たない場合に選択できます。
本来、消費税とは、仕入れなどのために支払った消費税と取引のなかで受け取った消費税を差し引いたものを支払うのが原則とされています。この差額を計算する方法を、原則課税といいます。
簡易課税制度は、取引のなかでこちら側が受け取った消費税を計算する点においては、原則課税と共通しています。簡易課税では、この受け取った消費税の合計金額に対して、みなし仕入れ率と呼ばれる一定の割合を示した数字で乗じて算出します。
原則課税とは異なり、自分が支払った消費税について書類や詳細な情報などを細かく記録する必要がないため、実務負担を大きく軽減できるでしょう。また、みなし仕入れ率を用いて納税額を計算するため、結果的に原則課税で計算するときよりも納税額を少なくできる可能性があります。
2.簡易課税制度を利用するために必要な手続き
簡易課税制度を利用して消費税を計算するためには、必要な手続きを行わなければいけません。まずは、簡易課税制度の適用が認められるための条件について見ていきましょう。簡易課税制度の適用が認められるためには、以下2つの要件を満たす必要があります。
2-1.規定の期間における課税対象の売上高が5,000万円以下
ここでいう規定の期間とは、簡易課税制度を適用したい年度の2年前を指しています。合わせて、課税対象となる売上高についてもよく確認しておきましょう。
基本的に、取引は課税取引と非課税取引、そして不課税取引に区分されます。非課税取引は、本来であれば課税対象となる取引であるものの、国の政策上対象から外している取引のことです。不課税取引は、そもそも消費税を納める必要のない取引です。
簡易課税制度を利用するには、適用したい年の2年前における課税大量となる売上高が5,000万円以下である必要があります。
2-2.必要な書類を提出している
1つ目の要件を満たしているのであれば、あとは必要な書類を提出するだけで簡易課税制度が適用されるようになります。この届け出は、簡易課税を利用したい会計期間の前日までに提出することが必須です。
もし、その年が事業を始めた初年度だった場合、その初年度の会計期間中に必要な届け出を提出することでも、簡易課税の要件を満たすことができます。
3.簡易課税制度のメリット
簡易課税制度を利用することで得られる2つの大きなメリットについて、改めて整理しておきましょう。
3-1.事務負担を軽減できる
簡易課税によって消費税を計算するのであれば、受け取った消費税に対してみなし仕入れ率を用いるだけで簡単に行えます。原則課税とは異なり、仕入税額控除のために請求書など支払った消費税を証明するための書類や詳細な情報を管理しておく必要がありません。
事務負担を大きく軽減できるのは、嬉しいポイントでしょう。
3-2.結果的に納めるべき税金の額を少なくできるかもしれない
簡易課税制度では、みなし仕入れ率を用いて納税額を算出します。原則課税のように受け取った消費税と仕入れた際の消費税の差額よりも、みなし仕入れ率を用いて算出した納税額が少なくなれば、結果として節税が可能となります。
4.簡易課税制度のデメリット
簡易課税制度によって、売上高が5,000万円に満たない中小企業などは助かる部分がある一方で、逆にデメリットとなる可能性もあります。覚えておきたい2つのデメリットを確実に押さえておきましょう。
4-1.複数の事業を手がけていると逆に事務負担が増える場合がある
会社によっては、複数の事業を手がけている場合もあるでしょう。このような会社で簡易課税による計算をする場合、業種ごとに消費税を細かく区分しておかないと、控除額の算出はもっとも低いみなし仕入れ率を用いて行わなければいけません。
控除額が少なくなってしまうのは、簡易課税のメリットを潰すことになります。そのため、業種ごとに消費税を細かく区分しなければいけません。結果的に、事務負担が増えてしまう恐れがあります。
4-2.結果的に税負担が大きくなるかもしれない
簡易課税制度を導入したからといって、必ずしも税負担を少なくできるわけではありません。事業のなかで設備や仕入れのために大きな経費などがかかっている場合、みなし仕入れ率を用いて計算することで、却って税負担が大きくなる恐れがあります。
これら細かいところまですべてを踏まえたうえで、簡易課税制度の利用を検討するべきです。
5.インボイス制度導入による影響
インボイス制度が導入されることで、課税事業者は仕入税額控除を受けるために、今後は仕入れ先から適格請求書等を発行してもらう必要があります。適格請求書等の発行は、必要な手続きを行ったうえで、同様に課税事業者であれば請求書の書き方を更新するだけで対応できます。
これまで、年間の売上高が1,000万円に満たない免税事業者の場合、インボイス制度の導入による対応を検討しなければいけません。免税事業者は、インボイス制度が導入されたあとも消費税の免除が適用され続けます。しかし、そのままでは適格請求書等の発行ができません。
よって、適格請求書等を発行できないために、課税事業者から仕事をもらえなくなる可能性が出てきます。課税事業者からしてみれば、わざわざ仕入税額控除ができない取引をする必要はないためです。
免税事業者がインボイス制度に対応して適格請求書等を発行するためには、課税事業者になる必要があります。たとえ売上高が1,000万円を超えてなかったとしても、必要な手続きを行うことで課税事業者となり、適格請求書等の発行が認めてもらう届け出を提出できるようになります。
しかし、課税事業者になるということは、これまで免除されていた消費税の納付を行う必要が出てくることを意味します。課税事業者になる税負担は、これまでの免税事業者に大きな負担になるかもしれません。
そこで検討されるのが、原則課税ではなく、簡易課税を利用して納税額を計算する方法です。先述のとおり、年間の売上高が5,000万円に満たないのであれば、必要な届け出を提出することで簡易課税制度によって納税額を算出できるようになります。税負担を少しでも軽減できれば、インボイス制度の導入による負担も少なくできるかもしれません。
簡易課税制度を利用する際に用いるみなし仕入れ率は、業種ごとに異なります。例として、以下を参考にしてください。[注1]
事業区分: 該当する事業 :みなし仕入れ率
第一種事業 :卸売業 :90%
第二種事業 :小売業 :80%
第三種事業: 農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業 :70%
第四種事業: 飲食店業 :60%
第五種事業: 運輸通信業、金融・保険業、サービス業 :50%
第六種事: 不動産業 :40%
[注1]国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分
6.簡易課税制度を活用してインボイス制度の対応を検討する
インボイス制度の導入によって影響を受ける事業はとても多いです。この機会に、課税事業者になるべきか、免税事業者のままでいるべきか、簡易課税制度を利用して税負担を軽減させるか、慎重に検討してみるとよいでしょう。
簡易課税制度を利用すれば、課税事業者になっても税負担をある程度少なくできるかもしれません。事務負担も少なくできる可能性があるので、そのメリットは大きく感じられるでしょう。
しかし、簡易課税制度を利用したために、却って事務負担や税負担が大きくなる可能性もあります。細かい部分までよく吟味したうえで、インボイス制度への対応を考えることが大切です。
2023年に迫ったインボイス制度の導入に備えて、必要なポイントを押さえておきましょう。
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