在宅勤務における通勤手当の扱いや支給額の目安・計算方法
近年コロナ禍の影響もあり、各企業でテレワークが推進されています。
またIT技術の発達や働き方改革といった背景から、特に最近では在宅勤務を積極的に導入している例も多くあるでしょう。
満員電車によるストレスからの解放や通勤時間の短縮など、従業員側にとってのメリットも非常に大きいため、労働環境の改善のために取り入れられる利点もあります。
ただし出社の手間は省けるものの、雇用者側として考えたいのは通勤手当の負担です。
もしオフィスに出向く機会が少ないのであれば、その分の通勤手当もできれば抑えたいのが本音でしょう。
では実際に在宅勤務において、各従業員の通勤手当はどのように扱うべきなのか、以下から詳しく解説していきます。
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在宅勤務の定義や導入を成功させる4つのポイントを解説
目次
1. 通勤手当には法的な規定はない
そもそも通勤手当の基本的な定義として、従業員に対して雇用者に必ず負担するものではありません。労働基準法や国税庁などによる規定もないため、従業員の自己負担としていても全く問題はないのです。
しかし現実には、待遇として通勤手当を設けているケースが多く、支給されるのが一般的な認識になっています。通勤手当について詳しくみていきましょう。
1-1. 通勤手当は社会保険の対象となる賃金に含まれる
通勤手当は法的に必ず支給しなければならないものではありませんが、社会保険料の計算においては賃金の一部として扱われます。このため、企業は通勤手当を支給する際に、その分の社会保険料も考慮する必要があります。
社会保険上では通勤手当は労働の対価とみなされており、賃金の一部という扱いになることによって、通勤手当の支給がある場合は、従業員の給与に影響を与える可能性があるため、適切な管理が求められます。
1-2. 通勤手当における課税・非課税対象の違いに注意
社会保険料の対象となる一方で、税務上では月15万円以下であれば非課税対象という例外的な一面もあります。
ちなみにバスや電車などの公共交通機関のほか、車・バイク・自転車といった手段に対する通勤手当も非課税対象です。なお新幹線利用時も月15万円以下なら非課税ですが、グリーン車料金は含めることができません。
ただし課税において混同しないように注意したいのが、業務に関連する交通費です。例えば出張費や旅費は会社としての経費であり、通勤手当とは異なり、賃金には該当しません。実費の立て替えではなく、事前に必要な費用として支払っていても、給与とはきちんと分けて考えておきます。
2. 通勤手当は就業規則に従って支給
通勤手当は、原則会社の就業規則にもとづいて支給するものです。
反対に就業規則などの社内規定に通勤手当の支給を明記していなければ、支払う必要はありません。
もちろんルールの決め方も各企業の判断で問題ないため、負担する範囲も全額や一部など柔軟に設定できます。
そのほかにも、上限付きや定期券の現物配布という方法も可能です。あくまで通勤手当は、自社の就業規則に左右されると覚えておきましょう。
そもそも、在宅勤務を導入することで就業規則の見直しが必要になるので、その際に通勤手当の規定も改めるのがおすすめです。
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3. 在宅勤務の取り扱いによる通勤手当の考え方
通勤手当は原則賃金の一部になるため、在宅勤務の取り扱いによって、課税や社会保険料にも影響します。そもそも課税に関しては、所得税法等で「一定の合理性がある場合」に限って非課税としているため、注意が必要です。
具体的に大きく分けて以下のような場合です。
3-1. 労働契約での勤務地が事業所の場合
職場に出社する勤務形態を基本として、状況に応じて在宅勤務と使い分けるケースでは、通勤手当は一定の合理性があるとして通常どおり非課税になります。
職場に足を運んで出向くことを前提としているため、通勤手当は労働者に必要なものとみなされ、出勤回数が減って実質的には超過して支給していても課税対象にはなりません。
もし月に一度も出社できなかったとしても同様です。
ただし、通勤手当は給与の一部でもあるため、社会保険の標準報酬月額の報酬等に該当します。非課税ではないものの、社会保険料を決定する際の賃金には含んで考えなければなりません。
3-2. 労働契約での勤務地が自宅の場合
もともと在宅勤務を基本とする場合には、通勤手当の支給に合理性はないと判断されます。そのため家族手当や住宅手当といった、ほかの手当と同じく課税対象です。
そのため従業員側としては給与額は増えるものの、課税率は高くなるので注意しましょう。
なお同様に社会保険料においても、通常の給与と同じ扱いで報酬等に含んで考えます。在宅勤務を原則にするのであれば、単純に通勤手当は、賃金のプラスαになるものと認識しておきましょう。
4. 在宅勤務における通勤手当の相場
では在宅勤務で通勤手当を支払っていく場合には、どのように支給していくのが適切なのでしょうか。
実際のところ、在宅勤務における通勤手当の取り扱いが非常に難しいことから、通勤手当そのものを停止するケースが多々見られています。
それに代わって、在宅で仕事をする際の光熱費などを考慮して、在宅勤務手当に切り替える例が多く、その相場は月に3,000~5,000円程度です。
通勤手当は従業員ごとに計算方法も金額自体も異なるので、どうしても平等性を考慮するとなると、別の手当として一律支給する方法が増えているのが現状です。
関連記事:在宅勤務手当とは?支給額の相場や支払い方法を詳しく紹介
5. 在宅勤務の通勤手当を変えるには就業規則の変更が必要な場合も
前述にもあるように、通勤手当は会社の就業規則に則って支給していかなければなりません。
もし就業規則にて「通勤経路や手段に応じて相当額を支給」などの明記があり、勤務形態には触れていない場合、たとえ在宅勤務が増えても通常どおりに支払う必要があります。
逆に「通勤状況にあわせて実費精算」としているのであれば、通勤の有無に言及しているため、在宅勤務に対する通勤手当は支払わなくても問題ありません。
仮に在宅勤務がおこなわれることによって通勤手当の支給内容を変える際には、場合によっては就業規則が変わるので注意しましょう。
なお就業規則の変更には、労使の合意や労働基準監督署への届出などの手続きも忘れず進めていく必要があります。
関連記事:在宅勤務の就業規則の在り方や見直しのポイントを解説
6. 在宅勤務における通勤手当の計算・支給例
では在宅勤務において適切な通勤手当を設定していくためには、どのように金額を考慮していくべきなのか、計算や支給方法の一例についても見ていきましょう。
6-1. 定期相当額と実費で比較して低い金額を適用
かなり手間はかかりますが、やはり定期相当額と実費を計算した上で、比較検討するのが無難な方法です。実際に何日まで出社したら、定期相当額が実費を上回るのか算出し、例えば「○日よりも多い出社の場合は定期額を支給」などの個別対応をするのも一つの手です。
ただし後払い形式で「定期相当額と実費で低い金額を支給」といったケースでは、従業員側に不満が生じる可能性が高くなります。
また処理の工程も大きく増えるため、労務負担にも配慮が必要です。
7. 従業員と会社の双方の利益を考慮した通勤手当の設定が必要
通勤手当には法的な義務はなく、基本的にすべて会社の裁量に任される制度です。また従業員ごとで支給額も違うため、在宅勤務になっても通常の出社時と同じように運用していると、場合によっては不公平になってしまいます。
より適切な労働環境を作っていくためには、通勤手当の仕組みそのものを変えるなど、さまざまな面に配慮した改善が欠かせません。
会社側だけでなく、その会社で働く人たちにとっての利益も十分に考慮することが重要です。
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