在宅勤務導入時に就業規則は変更する?在宅勤務規程は作る?
更新日: 2024.11.25
公開日: 2021.11.12
OHSUGI
新型コロナウイルスの感染拡大を機に在宅勤務をスタートさせた企業も多くあります。在宅勤務を始めるにあたって就業規則の見直しをおこなう場合は、細かい部分の取り決めまで見直さなければなりません。
例えば在宅勤務そのものの定義から始まり、在宅勤務の対象者、サテライトオフィスなどの措置、服装規程や労働時間、残業や通勤手当の有無など、根本から見直すのがおすすめです。
ここからは厚生労働省が正式に発表している「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」をもとに、在宅勤務に対応した就業規則の決め方を解説していきます。
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在宅勤務の定義や導入を成功させる4つのポイントを解説
目次
新型コロナウイルスの蔓延によって急激に普及したテレワークですが、「急に始めたので、ルールがしっかりと整備できていなかった。もう一度見直してしっかりとルール化したい」などのお悩みも発生しているのではないでしょうか。
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1. 在宅勤務を導入するには就業規則の見直しが重要
在宅勤務が一般化する中、各企業で就業規則を見直すことが求められています。特に、従業員の働き方や業務内容に合った規程を設けることで、業務の円滑な進行が期待できます。
例えば、在宅勤務を開始する際には、業務の目的や具体的な定義を明確にする必要があります。また、在宅勤務に関する服装規程や業務報告の方法についても特別な考慮が必要です。これにより、従業員が必要なコミュニケーションを保ちながら業務を遂行できる体制を築くことができるでしょう。
特に労働時間に関しては、在宅勤務者がどのように労働時間を記録するかは重要なポイントとなります。このような明確な取り決めを設けることで、従業員の不安を軽減し、業務の効率化につながります。
また、在宅勤務に伴い発生する通信費などの負担についても、労使間での取り決めを明確にすることが重要です。従業員に不利益にならないよう、現行の就業規則を適切に見直し、改善を図る必要があります。
1-1. 就業規則を新たに作成するか、規則に加えるか
在宅勤務は、特に新型コロナウイルスの影響を受けて急速に普及した働き方ですが、これに伴い各企業は就業規則の見直しを余儀なくされています。
就業規則の見直しには、業務の特性や従業員のニーズに合った規程を設けることが求められます。例えば、在宅勤務に必要な業務の目的や、労働条件を明確にすることが重要です。
そのため、在宅勤務を実施するにあたっての手続きや条件をはっきりと提示することで、従業員が安心して業務に取り組める環境を整える必要があります。
また、在宅勤務中の業務報告やコミュニケーションの方法についても、新たなルールを設けることで、職場から離れていても円滑な業務推進が可能です。これにより、企業全体の生産性向上にも寄与することが期待できます。さらに、在宅勤務導入後は定期的に運用状況を確認し、必要に応じて規程を見直していくことも重要です。
このように、長期的な視点での見直しが、より良い就業環境の構築に繋がります。
2. 就業規則と在宅勤務規則規程の関係
従業員が遵守すべき労働条件を細かく定めたものを「就業規則」といいますが、在宅勤務に関する就業規則は、就業規則の一部として考えられます。
例えば、在宅勤務に関する規則を定めた場合、別に給与規程や旅費規程があり、その中で在宅勤務に関する規定が定められているという形がとられます。
新しい働き方として導入されつつある在宅勤務も、しっかり就業規則を定めなければいけない点に注意しましょう。特に、在宅勤務を導入する際には労働時間や勤務形態に関する具体的な規定を明示することが重要です。 これにより、従業員は自身の業務に対する期待や責任を理解しやすくなります。
また、在宅勤務におけるセキュリティ対策や業務報告の方法についても詳細に規定することが企業の信頼性向上に繋がります。 このように、在宅勤務規程を明確に定めることは、企業にとってのリスク管理や労働環境の向上にも寄与する要素となります。 したがって、在宅勤務を導入する際は、就業規則の見直しを通じて、全体のバランスを考慮した取り決めを行うことが不可欠です。
2-1. 在宅勤務規程の例
在宅勤務規程を策定する際は、具体的な例を参考にすることが重要です。厚生労働省によって、在宅勤務規程の規定例が公開されています。これを参考にすることで、必要な項目を漏れなく盛り込みつつ、法令に準じた適切な規程を作成することができるでしょう。
このように、実際のガイドラインを参考にすることで、効果的な在宅勤務規程の構築が可能になるでしょう。
3. 在宅勤務に対応した就業規則の見直しが必要な理由
原則として、在宅勤務に切り替えた場合でもこれまでの就業規則で対応可能とされています。
法的にも問題ありません。
ただし、既存の就業規則では規定のなかった以下の項目を新たに就業規則を定める必要があります。
- 通信費の負担
- 機材の調達
- 労働時間
- 残業に関する取り決め
ここでは労働基準法に則って、在宅勤務における就業規則見直しの必要性を解説していきます。
3-1. 労働基準法第89条による負担の取り決め
労働基準法第89条、第5号には「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」という取り決めがあります。
これは労働者に負担させる費用をあらかじめ明示する必要があるという取り決めで、明示のないまま雇用契約を結ぶと、労働条件の明示義務違反に該当する可能性があります。
よって、在宅勤務で新たに生じる通信費や機器の費用は、負担の有無を就業規則でしっかり提示しなければなりません。
関連記事:労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務
3-2. 在宅勤務によって働き方が大きく変わる
また、法律の観点以外にも、在宅勤務導入によって従業員の働き方が大きく変更される点も考慮する必要があります。例えば以下のようなことです。
- 在宅勤務の対象者
- 勤務場所
- 情報セキュリティ
- 連絡体制
- 評価制度
まずは在宅勤務に切り替える従業員の選別と、勤務場所の指定をおこないます。
在宅勤務は上司や同僚がいない分、自発的な行動が求められるため、新入社員などにとっては在宅勤務に適応できない可能性があります。
また在宅勤務で勤務場所を指定しない場合、カフェやレストランなどで業務をおこない、社内の情報が不意に流出する可能性も否めません。
情報セキュリティの観点からも、情報を持ち出さない、パソコンは自宅以外で使わないなどの就業規則を定めます。
さらに、在宅勤務を導入する際には、従業員が自宅で快適に業務を行える環境を整えることも重要です。具体的には、業務に必要な機器の貸与や、通信費の負担についての明確な取り決めを行います。
また、在宅勤務切り替えにあたり、これまでの連絡体制を見直す必要も出てきます。
社員に一任してしまうと、社員間でツールが乱立したり、個人用ツールの使用でセキュリティが損なわれたり、トラブルの発生原因となる可能性があります。
在宅勤務時はこのツールを使って連絡を取ると、使用するツールおよび利用規則を定めておきましょう。
特に、緊急時の連絡方法についてはしっかり話し合うべきです。
ツールには不具合が生じることも考慮し、連絡ツールが使えない場合にも業務の滞りがないようにしましょう。
ここまで在宅勤務にすることで生じる手間について解説したため、「面倒くさいな」などと感じられた方もいるかもしれません。ただし在宅勤務にすることで離職防止や生産性向上など、企業にとってプラスの効果も多く得られます。
このように、在宅勤務には様々な変化が伴いますが、まずは従業員としっかりコミュニケーションをとりながら、適切なルール作りを進めることが肝心です。
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関連記事:在宅勤務時のセキュリティ対策で押さえるべきポイント
4. 在宅勤務に対応した就業規則のポイント
在宅勤務規程を定めるにあたって、覚えておきたいポイントがあります。
具体的なポイントは次の通りです。
- 在宅勤務の対象者と定義
- 通勤手当や残業代
- 労働時間
- 費用負担
以上4つのポイントに沿って就業規則を決めていくのが大切です。
ここからは在宅勤務に対応した就業規則のポイントを解説していきます。
4-1. 在宅勤務の対象者を定める
在宅勤務の対象者を定める際には、業務内容や職種に応じて慎重に判断することが求められます。特に、チームでの密な連携が必要な業務や、新入社員など、経験の浅い社員には出社を推奨することが重要です。このような基準を明確に設定することで、従業員が各自の役割を理解し、無理なく業務を遂行できる環境を整えることができます。
また、在宅勤務を許可する際の条件を具体的に決定し、就業規則に明文化することで、社内の透明性を高めることにもつながります。在宅勤務が実践される場合、信頼できる管理体制を構築することが必要です。そのため、在宅勤務による業務の進捗状況や業務成果についても報告の義務を設けることが、効果的な運用を促します。
このように、明確なルールを設けることで、在宅勤務の導入による混乱を防ぎ、従業員が安心して働ける環境を整えることが重要です。
4-2. 通勤手当や残業代
在宅勤務をすることで通勤費を変更する場合には就業規則や賃金規程または在宅勤務規程にどのような計算方法で通勤費を支給するのか記載をする必要があります。
また、判定が難しい残業代に関しては、明確な取り決めをおこない、社員に徹底した周知活動をおこないましょう。
上司に残業申請をして、その分仕事するという手もありますが、各種管理ツールや監視ツールを活用すると、より明確に分かりやすくなります。
関連記事:在宅勤務に交通費は必要?クリアにしておきたい線引や注意点
関連記事:在宅勤務における監視の必要性やツール活用のポイント
4-3. 労働時間
会社に出社しない分、労働時間の管理が難しくなります。
この場合、勤怠管理システムの利用や、出勤時間・退勤時間の申請の有無など、労働時間に関する新たな規定が必要になります。
特に業務の開始と終了は、従業員に報告を義務付け、管理できるようにする必要があります。
関連記事:テレワーク・在宅勤務導入後の労働時間管理におすすめな方法3選
4-4. 費用負担
先ほども少し触れましたが、費用負担に関しては特に注意して就業規則を決めましょう。出勤時は会社が負担していた通信費が、実質社員の負担になってしまうので、負担分をしっかり明記する必要があります。対応は企業に委ねられますが、中には交通費の分をそのまま通信費の手当てとして支給したり、「テレワーク手当」を新たに決める企業もあります。この際、業務に必要な機器やソフトウェアの費用負担についても考慮する必要があります。在宅勤務では、従業員が自宅で快適に業務を行えるよう環境を整えることが求められるため、必要な設備の貸与や補助制度の導入が効果的です。
また、労使間で十分に話し合いを行い、合意の上で明確に規定することで、後々のトラブルを防ぐことができます。
社員にヒアリングをして、よりよい手段を選ぶのも一つの手です。どのような方法が最も適切かは、企業の方針や従業員の意見を反映させながら、柔軟に対応していくことが重要です。
関連記事:在宅勤務手当とは?支給額の相場や支払い方法を詳しく紹介
5. 就業規則を定める際に気を付けたいポイント
最後に、新たな就業規則を決める際の注意点があります。具体的にはつぎのとおりです。
就業規則を変更した場合は、従業員代表の意見書を添付し、労働基準監督署に届出をする
従業員に周知をする
就業規則は労働基準法にも定められており、10人以上の労働者を雇う場合には必ず必要になる規則です。法律違反にならないように注意しましょう。
5-1. 労働基準監督署に届け出を出す
就業規則を変更した場合には、労働基準監督署への届出が必要です。具体的には、変更案が経営陣から承認を受けたら、従業員代表の意見書を添付して、管轄の労働基準監督署に提出します。
なお、本社と各事業所の変更内容が同じであれば、「本社一括届出制度」を利用して、まとめて届け出ることも可能です。提出時には、就業規則、届出書、意見書のそれぞれを2部ずつ用意し、窓口、郵送、電子申請などの方法で提出します。これにより、法令を遵守しつつ、円滑に手続きを進めることができるのです。
参考記事:就業規則の変更を届出る際の提出方法と気をつけるべき4つの注意点
5-2. 授業員に周知させる
就業規則は、労働基準法第106条に基づき、従業員に周知させる必要があります。具体的には、常に各作業場の見やすい場所に掲示したり、書面を交付するなどの方法で、従業員がいつでも内容を確認できる状態を整えることが求められます。これは、就業規則が労働者の権利を守るために重要であり、作成や変更が行われる際には、法的手続きを遵守し、従業員を適切に保護するための措置です。周知が不十分な場合、周知義務違反として罰則が科される可能性があるため、特に注意が必要です。
しっかりと周知された就業規則は、労使関係を円滑にするための重要な要素となります。
6. 在宅勤務に切り替える場合は就業規則に定める必要がある
新たに在宅勤務に移行する企業は、在宅勤務に合わせた就業規則を決めなければいけません。
これは、在宅勤務が出勤時の働き方と大きく異なり、既存の就業規則が当てはまらない可能性があるからです。
また、在宅勤務の就業規則を定める際にも、基本的な労働基準法からは外れてはいけません。
在宅勤務に切り替えた際、従業員を混乱させないようしっかり事前準備をおこないましょう。
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