在宅勤務に交通費は必要?テレワーク導入時にクリアにしておきたい線引きや注意点
更新日: 2026.10.7 公開日: 2021.11.12 jinjer Blog 編集部

在宅勤務(テレワーク)を導入する際には「交通費」の取り扱いについても見直しが必要です。とくに出社にかかる交通費(通勤手当)の支給には法律上の義務がなく、各社の就業規則によって運用が異なります。
本記事では、在宅勤務における交通費の基本的なルールをはじめ、実費精算への変更ポイント、不利益変更や税金・社会保険料への影響といった運用上の注意点までわかりやすく解説します。
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在宅勤務とは?テレワークとの違いから導入を成功させるポイントまで解説
新型コロナウイルスの蔓延によって急激に普及したテレワーク。
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1. 在宅勤務に交通費は必要?


在宅勤務(テレワーク)であっても、出張や取引先への訪問などに伴い、交通費が発生する場合があります。一方で、その交通費を会社が負担するのか、従業員の自己負担とするのか、判断に迷うケースも少なくありません。ここでは、在宅勤務時の交通費の取り扱いを解説します。
関連記事:在宅勤務の導入に就業規則の変更は必要?ルール作りのポイントを解説
1-1. 業務上必要な交通費は会社負担が基本
在宅勤務を採用している従業員であっても、業務命令に基づく移動にかかる交通費は、業務上必要な経費として、原則として会社が負担するものと考えられます。
そのため、業務上必要な交通費について、会社が従業員に一方的に負担させることは、労働契約や就業規則などの内容によっては問題となる可能性があります。
ただし、出張の前後に私的な旅行を組み合わせる場合など、業務とは関係のない移動にかかる交通費まで会社が負担する義務はありません。このような場合には、業務上必要な交通費と私的な移動にかかる交通費を区分して取り扱うことが重要です。
なお、会社が業務とは関係のない私的な交通費を負担した場合には、従業員に経済的利益を与えたものとして「給与」として取り扱われる可能性があるので注意してください。
関連記事:旅費交通費とは?仕訳方法や交通費との違いもわかりやすく解説
2. 在宅勤務時の交通費と通勤手当の違いは?


在宅勤務を導入すると「出社しない従業員の通勤手当をどうするか」「一時的に出社する際の交通費をどう処理するか」が問題になります。これらは同じ「交通費」に見えても、性質が異なるため、分けて考えることが重要です。
2-1. 出社交通費(通勤手当)の支給は会社の義務ではない
従業員が出社するために必要な交通費(通勤手当)は、法律上の支給義務はなく、会社の就業規則で任意に定められます。
電車やバスなどの公共交通機関を利用する通勤手当は、最も経済的かつ合理的な経路・方法による場合、月15万円までが所得税上非課税です。そのため、通勤手当を支給する際の金額を決めるうえで、ひとつの基準となるでしょう。
さらに、在宅勤務を導入している会社では、従業員が一時的に出社した際の交通費について、「通勤手当」として扱うのか、「業務上必要な移動にかかった実費」として扱うのかを区別する必要があります。
| 当該日における労働契約上の労務の提供地 | 自宅と会社間の移動費用の取り扱い |
|---|---|
| 自宅 | 業務命令による一時的な出社であれば、原則として実費弁償 |
| 会社 | 通勤手当 |
参考:テレワークを導入した際の交通費や在宅勤務手当は社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含めるべきでしょうか?|テレワーク総合ポータル
つまり、在宅勤務を採用している従業員(労務の提供地:自宅)が業務命令により一時的に出社する場合、その移動費用を会社が実費で精算するのであれば、原則としてその費用は「給与」に該当せず、所得税の課税対象にもなりません。
2-2. 通勤手当の代わりに支給する在宅勤務手当とは
在宅勤務手当とは、在宅勤務に伴って従業員が負担する光熱費や備品費などを補助する目的で会社が支給する手当です。テレワーク手当とよばれることもあります。
在宅勤務では通勤にかかる費用が減る一方、自宅で仕事をするための電気料金や通信費などの負担が発生します。そのため、通勤手当を廃止・減額する代わりに、在宅勤務手当を設ける会社もあります。
最近では在宅勤務で働く人、出社して働く人、両方を併用して働く人など、勤務形態はさまざまです。在宅勤務手当を導入する際は、勤務形態によって従業員間に不合理な待遇差が生じないよう、対象者や支給金額などを慎重に検討することが大切です。
関連記事:在宅勤務(テレワーク)の導入で福利厚生は見直す?導入事例を紹介
3. 在宅勤務導入時に検討すべき交通費・通勤手当の支給方法


在宅勤務(テレワーク)を導入すると、従業員の出社頻度が減るため、これまで支給していた出社にかかる交通費(通勤手当)の見直しが必要になることがあります。また、所得税や社会保険料への影響も確認しておく必要があります。
3-1. 支給ルールを就業規則に明記する
在宅勤務(テレワーク)における交通費の取り扱いは、就業規則に明記しておくことで、労使間の認識の相違やトラブルを防ぎやすくなります。とくに次のようなルールをあらかじめ定めておくことが重要です。
- 在宅勤務時に出社する場合の交通費(通勤手当)の取り扱い
- 在宅勤務中に発生する業務上の交通費の対象範囲や精算方法
また、就業規則を変更する場合には労働基準法に定められた手続きが必要です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、変更後の就業規則を所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。
その際、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者から意見を聴取し、その意見を記載した意見書を添付します。さらに、変更後の就業規則は従業員に周知する必要もあるので注意しましょう。
関連記事:就業規則の変更手順とは?届出義務や提出・周知方法を解説
3-2. 通勤手当の変更が不利益変更に該当しないか確認する
在宅勤務の導入によって出社にかかる交通費(通勤手当)を減額・廃止する場合、労働条件の変更にあたるため、労使双方の同意があれば可能です。
一方、従業員の同意が得られない場合、会社が一方的に就業規則を変更して、労働者に不利益となる労働条件の変更をおこなうことは原則として認められません。
ただし、変更内容が合理的であり、かつ、変更後の就業規則を労働者に周知している場合は認められることがあります。なお、合理性は不利益の程度や変更の必要性、内容の相当性、労働組合との交渉状況などを踏まえて判断されます。
したがって、在宅勤務の導入に伴って通勤手当を減額・廃止する場合は、単に就業規則を変更して従業員に周知すればよいわけではありません。通勤手当を減額・廃止する必要性や、従業員が受ける不利益の程度などを踏まえて、変更内容の合理性を慎重に検討することが重要です。
参考:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール|厚生労働省
関連記事:雇用契約の条件は途中で変更できる?契約期間内に変更する方法をご紹介
3-3. 通勤手当の廃止による従業員からの交通費請求に注意する
出社から在宅勤務へ切り替える際に通勤手当を廃止したとしても、取引先への訪問など、業務上必要な移動にかかる交通費まで従業員の自己負担になるわけではありません。会社の業務として必要な移動であれば、通常はその交通費を会社が負担する必要があります。
例えば、出社時の通勤経路と取引先への訪問経路が重なっているため、これまで訪問にかかる交通費を別途支給していなかったケースもあるでしょう。しかし、在宅勤務への切り替えに伴う通勤手当の廃止後は、業務上必要な移動にかかる交通費を別途精算する必要があります。
そのため、通勤手当を廃止する際は、これまで通勤手当で負担していた通勤費と、業務上必要となる交通費を明確に区別し、それぞれの負担や精算方法を整理しておくことが重要です。
3-4. 在宅勤務手当の課税・非課税の区分を確認する
在宅勤務手当には、通勤手当のような所得税上の非課税限度額が設けられているわけではありません。例えば、「月額5,000円」「在宅勤務1日につき500円」など、在宅勤務に必要な費用の実費にかかわらず定額で支給し、返還を求めない場合は原則として給与として課税されます。
一方、在宅勤務に通常必要な費用について、実際にかかった費用の実費相当額を精算する方法で会社が支給する場合は「給与」に該当せず課税対象とはなりません。
参考:在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)|国税庁
関連記事:在宅勤務手当(テレワーク手当)とは?課税・非課税や金額相場を解説!
3-5. 社会保険料への影響を把握する
社会保険料(労働保険料)の算定基礎には、名称にかかわらず、労働の対償として支給される手当を含める必要があります。
そのため、通常の通勤手当は算定基礎に含まれます。しかし、在宅勤務をしている従業員が業務命令によって一時的に出社する場合の交通費については注意が必要です。
労務の提供地が自宅で、業務命令による一時的な出社にかかった交通費を実費で精算する場合は、原則として実費弁償となり、社会保険料の算定基礎には含まれません。一方、その日の労務の提供地が会社である場合、原則として通勤手当として扱われ、算定基礎に含まれます。
参考:テレワークを導入した際の交通費や在宅勤務手当は社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含めるべきでしょうか?|テレワーク総合ポータル
4. 在宅勤務時の出社交通費(通勤手当)を減額する際のポイント


在宅勤務の導入によって出社日数が減る場合、出社にかかる交通費(通勤手当)の減額を検討することになるでしょう。
ただし、制度の内容によっては、通勤手当を減額しないほうが会社と従業員の双方にメリットがあるケースもあります。ここでは、通勤手当を減額する際に確認しておきたいポイントを解説します。
4-1. 在宅勤務率や今後のプランを確認する
出社にかかる交通費(通期手当)の減額を検討する際は、在宅勤務者がどのくらいいるのか把握するとよいでしょう。
また、今後在宅勤務を増やす予定なのか、減らす予定なのかこのあたりも決めておくのをおすすめします。通勤手当の減額はコストの削減が目的です。そのため、まずは現状のコストと今後の計画を把握して、定期券代支給から実費計算にすることでどれくらいのコストを削減できるのか検討します。
この確認をおこなわないまま実費精算に変更すると、想定したほどコストを削減できなかったり、かえってコストが増加したりする可能性があります。そのため、交通費を実費精算に変更する場合は、まず現在の負担額を把握しておくことが重要です。
4-2. 就業規則を確認する
出社にかかる交通費(通勤手当)を減額する際は、就業規則を変更する必要があるのか確認しましょう。就業規則を変更する場合は、労働基準法に定められた手続きを適切におこなう必要があります。
また、通勤手当の減額が労働条件の不利益変更にあたる場合は、その変更に合理性があるかどうかが大きなポイントです。手続きや変更内容に問題があると、労使間のトラブルにつながる可能性があるため、必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。
当サイトでは、就業規則の見直しなど在宅勤務の導入時に起きうる課題とその解決方法をまとめた「テレワーク課題解決方法ガイドBOOK」を無料で配布しております。在宅勤務の導入に伴って不安な点がある方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
4-3. 定期代の割引率をよく考える
完全に在宅勤務へ切り替える場合、実際に出社した際の交通費を実費で精算する方法が考えられます。一方、週に数回程度出社する場合は、出社日数や通勤経路によっては、都度きっぷやICカードで支払うよりも定期券を購入したほうが安くなる場合があります。
定期券が何日程度の利用で元を取れるかは、鉄道会社や区間、定期券の期間によって異なります。とくに6ヵ月定期は、1ヵ月定期を6回購入する場合より割安に設定されているので、出社日数が少なくても定期券のほうが有利になるケースがあります。
そのため、実費精算へ切り替えるかどうかを判断する際は、従業員ごとの出社日数や通勤経路を踏まえ、定期券と都度払いのどちらが安くなるかを比較するとよいでしょう。
4-4. 定期券の払い戻しができるか確認する
定期券を購入した直後に通勤手当の制度が変更された場合など、定期券の払い戻しに伴って従業員に負担が生じる可能性があります。
このような場合は、従業員の負担を考慮し、会社が払い戻しによって生じた差額の一部を補填するなど、必要に応じて対応を検討するとよいでしょう。
なお、鉄道会社によって、定期券の払い戻しができる条件や手数料、払い戻し額の計算方法は異なります。そのため、従業員が利用している鉄道会社の取り扱いを事前に確認しておくことが重要です。
5. テレワーク導入時は交通費の取り扱いを明確にしておこう


在宅勤務(テレワーク)であっても、業務命令による出張など、業務上必要な交通費については会社が負担する必要があります。一方、通勤手当はこれとは別に考える必要があります。
在宅勤務の導入によって出社日数が減少する場合、通勤手当を減額・廃止し、在宅勤務手当の導入を検討する会社も少なくありません。ただし、通勤手当の支給基準を変更する場合は、就業規則の変更などの手続きが必要となる可能性があります。
また、不利益変更には労働契約法上のルールにも注意が必要です。労使トラブルを防ぐためにも、在宅勤務時の交通費や在宅勤務に伴う費用の負担についてあらかじめルールを明確にしておきましょう。



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