労働基準法4条による「男女同一賃金の原則」を分かりやすく解説
更新日: 2025.10.27 公開日: 2021.10.4 jinjer Blog 編集部

労働基準法では4条で「男女同一賃金の原則」が定められています。簡潔にいうと、性別を理由に賃金に差をつけてはならないという法律です。ここからは「男女同一賃金の原則」に関して詳しく解説するとともに、違反する雇用の取り扱い、遵守するためのポイントなどを紹介していきます。
▼そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
労働基準法とは?雇用者が押さえるべき6つのポイントを解説
目次
人事担当者であれば、労働基準法の知識は必須です。しかし、その内容は多岐にわたり、複雑なため、全てを正確に把握するのは簡単ではありません。
◆労働基準法のポイント
- 労働時間:36協定で定める残業の上限時間は?
- 年次有給休暇:年5日の取得義務の対象者は?
- 賃金:守るべき「賃金支払いの5原則」とは?
- 就業規則:作成・変更時に必要な手続きは?
これらの疑問に一つでも不安を感じた方へ。当サイトでは、労働基準法の基本から法改正のポイントまでを網羅した「労働基準法総まとめBOOK」を無料配布しています。
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1. 労働基準法4条による「男女同一賃金の原則」とは?


労働基準法4条には「男女同一賃金の原則」が定められており、使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。と明記されています。
本章では労働基準法4条を分かりやすく解説していきます。
1-1. 労働基準法4条は女性であることを理由に賃金に差を設けることを禁止する法律
労働基準法4条の「男女同一賃金の原則」のポイントは、性別が女性であることを理由に、男女間で賃金に差をつけることです。
この差は少ない場合はもちろん、多い場合も差別的と定義されています。つまり有利であっても不利であっても、男女間で賃金に差があれば労働基準法4条違反に該当する場合があります。
また性別が女性であること以外にも、
- 女性労働者が平均して勤続年数が短いこと
- 生計維持者ではないこと
を理由に、賃金に差を設けた場合も、労働基準法4条違反となります。
1-2. 労働基準法4条に該当しない賃金の差
労働基準法4条では、女性であることや、女性は能率が低いといった性別に根ざした理由、あるいは生計維持者でないことなどを根拠に賃金差を設けることを禁止しています。
ただし、以下のように性別と無関係な客観的基準に基づく場合は、賃金差があっても法律違反にはなりません。
- 個人の技術力
- 能率
- 年齢
- 勤続年数
1-3. 男女の賃金差異の公表が義務化
政府は、労働基準法第4条に基づく男女同一賃金の実現を推し進めるために、様々な取り組みを実施しています。最近の動きとしては、2022年(令和4年)に女性活躍推進法を改正し、301人以上の従業員を雇用する事業者に対して、男女の賃金差異の公表を義務付けました。
具体的には、男性の平均賃金に対する女性の平均賃金の割合をパーセント表示することが求められます。また、対象期間、対象労働者の範囲、「賃金」の範囲などの重要事項の付記に加え、全労働者・正規雇用労働者・非正規雇用労働者でそれぞれの区分で賃金の差異を表示しなくてはいけません。
このように、男女間の賃金格差の是正に向けた取り組みは進んでいるため、今後の制度改正にも目を配ることが大切です。
参照:女性の活躍に関する「情報公表」が変わります|厚生労働省
1-4. 労働基準法4条「男女同一賃金の原則」の罰則
男女間で差別的な賃金の差を設けると、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
労働基準法の多くはこの罰則が適用されており、3番目に厳しい罰則です。
2. 労働基準法4条に違反する雇用とは


ここでは労働基準法4条「男女同一賃金の原則」に違反する、雇用の取り扱いについてご紹介します。
労働基準法4条では、性別を直接理由にした場合のほか、間接的に理由にした場合も違反行為に当たる可能性があります。実際に裁判で争った判例とともにご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
2-1. 「女性は〇〇だから~」という理由で賃金に差を作っている
世間一般的な感覚や平均値などのデータを用いて、性別を理由に賃金の差を設けることは男女同一賃金の原則に反しています。
例えば女性の方が勤続年数が少ないデータがあるから賃金を減らすとした場合などです。それを理由に賃金に差をつけるのは違法行為にあたります。
また女性は家計を支えている第一人者ではない、これも原則に反している理由です。「女性は〇〇だから~」を念頭に置いた理由は差別にあたるため、注意が必要です。
2-2. 実際に労働基準法4条を違反した場合の判例
労働基準法4条を争点として争った判例は数多く存在しますが、単純に男女間に賃金の差を設けた以外にも
- 家族手当(岩手銀行事件(平成4年))
- 基本給(三陽物産事件(平成6年))
などの判例があります。
岩手銀行事件では就業規則によって規定された家族手当を支給せず、労働基準法上に違反していると判決が出ました。問題点は男性行員には妻に収入があっても家族手当を支給していたにもかかわらず、女性行員には夫に収入があった場合は家族手当を支給していませんでした。
また三陽物産事件では、基本給の規則が男女で異なっており、賃金の扱いが性別間で異なる点が争われました。
家族手当は賃金にあたるため、女性は世帯主ではないという理由で支払わない、または減額すると不当行為にあたります。
一方企業ごとに定める賃金の規則に関し、男女間で差がある場合も争いに発展し、納得できる理由がなければ労働基準法4条に違反している可能性があります。
三陽物産事件のほかにも、平成13年に起きた内山工業事件では男性にはⅠ表の賃金表、女性にはⅡ表の賃金表を適用し、明確な理由なく女性の給料を少なくしており、この場合も労働基準法4条に違反していると判例が出ました。
参照:労働事件 裁判例集(岩手銀行家族手当等請求)|裁判所
参照:全情報(三陽物産事件)|公益社団法人 全国労働基準関係団体連合会
参照:全情報(内山工業事件)|公益社団法人 全国労働基準関係団体連合会
3. 労働基準法4条を遵守するには?


労働基準法4条「男女同一賃金の原則」を遵守するには、賃金の取り決めを誰が見ても納得できるように設定するのが大切です。
ポイントは次の3つです。
- 男女雇用機会均等法を意識する
- 性別を理由に昇格・昇進に差を付けない
- 各種手当の規則も男女平等に設定する
本章では「男女同一賃金の原則」に違反しないためのポイントをご紹介します。
3-1. 男女雇用機会均等法を意識する
男女雇用機会均等法は、女性が社会で働くうえで不当な扱いを受けないために定められた法律です。性別による差別を明言してる法律であるため、労働基準法4条を順守するためのポイントが詰まっています。
男女雇用機会均等法では以下の3項目が、ポイントとなります。
- 性別を理由にした差別の禁止
- 婚姻・妊娠・出産などを理由にした不利益取扱いの禁止
- 派遣先に対する男女雇用機会均等法の適用
先ほども触れた勤続年数にだけでなく、妊娠・出産を理由に不当に賃金を減給するのは労働基準法4条に違反する可能性があります。
また派遣業をおこなっている場合は、派遣先でも女性の賃金に差が出ないよう配慮しなければなりません。
3-2. 性別を理由に昇格・昇進に差を付けない
「妊娠や出産を伴う可能性がある」「勤続年数が少なく途中でやめる可能性がある」などの理由で昇格・昇進に差をつけると、労働者との争いに発展する可能性があります。
労働基準法4条には直接該当しないかもしれませんが、例えば同じ労働内容、成績を残しているのにもかかわらず、女性を理由に昇給できないなどは実際の裁判でも争われています。この点にも留意しましょう。
3-3. 各種手当の規則も男女平等に設定する
労働基準法11条では賃金だけでなく、手当や賞与も賃金と同じくくりで扱われます。つまり判例でも争われた通り、手当に男女差があれば労働基準法4条に違反する可能性があります。
各種手当も男女平等になっているか、不当な取り決めがないか十分確認しましょう。
4. 労働基準法4条「男女同一賃金の原則」とは女性の不当な賃金格差をなくすためのもの


ここまで労働基準法4条「男女同一賃金の原則」に関して、詳しく解説しました。労働基準法4条は裁判で争われた判例も多く、差別によって生じた賃金の差の支払いを命じられた例もあります。
女性だけ別の賃金表を適用する、女性だけ基本給の取り決めを別の規則にするなど、直接的な差別だけでなく、女性は今後妊娠・出産するかもしれないから、女性は世帯主でない場合が多いからなど、間接的な理由も違反行為にあたるため注意が必要です。



人事担当者であれば、労働基準法の知識は必須です。しかし、その内容は多岐にわたり、複雑なため、全てを正確に把握するのは簡単ではありません。
◆労働基準法のポイント
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- 年次有給休暇:年5日の取得義務の対象者は?
- 賃金:守るべき「賃金支払いの5原則」とは?
- 就業規則:作成・変更時に必要な手続きは?
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