軽減税率はなぜ導入されたの?わかりにくい軽減税率、メリットはあるの?
更新日: 2024.10.10
公開日: 2020.12.9
jinjer Blog 編集部
軽減税率が導入された理由としては、消費税増税による消費者の負担を軽減するためです。飲食料品など一部生活必需品の税率を8%に据え置くことで、所得が低い人ほど税負担が重くなる「消費税の逆進性」を緩和します。
軽減税率がもたらす企業側へのメリットとしては、軽減税率対象品目の売上低下の緩和ほか、テイクアウトや出前、宅配サービスの需要増加などが挙げられます。
今回は、なぜ新聞や一部の生活必需品に対して軽減税率が導入された経緯や、企業側のメリットや導入での注意点などをご紹介いたします。
2019年10月に軽減税率制度が実施されました。軽減税率の導入によって、経理業務に変化を強いられた企業も多いのではないでしょうか。
その中で、「軽減税率が導入されたけど、結局経理業務の何が変わって何が今までと変わってないんだ・・・?」と疑問を抱いている方も少なくないでしょう。
そのような方のために、今回軽減税率で「変わること・変わらないこと」まとめBOOKをご用意いたしました。資料には、以下のようなことがまとめられています。
・軽減税率制度の概要について
・軽減税率導入によって変化する経理業務
・引き続き管理しなければならない経理業務
軽減税率導入後の変化を簡単に理解して対応ができるように、ぜひこちらから資料をダウンロードして軽減税率で「変わること・変わらないこと」まとめBOOKをご活用ください。
1. 軽減税率が導入された経緯
軽減税率は、2019年10月の消費税10%引き上げとともに導入された制度です。お酒・外食を除く飲料食品と新聞(定期購読契約で週2回以上発行のもの)の税率を8%据え置き、消費税の増税による日々の生活の負担を軽減します。
1-1. 軽減税率導入の経緯
軽減税率が導入された経緯には、平成24年に成立した「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革をおこなうための消費税法の一部を改正する等の法律」による、消費税法の一部改正が大きく関係しています。
同法第7条第1号では、低所得者への税負担軽減対策として、「総合合算制度」「給付付き税額控除」「複数税率(軽減税率)」の導入を求める条文が記載されていました。
自民党および公明党の両党は、3年におよぶ議論の積み重ねの末、平成27年12月、消費課税にともなう軽減税率制度を具体化しました。
参考:社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律 抄(平成二十四年法律第六十八号)|e-Gov法令検索
1-2. 消費税の逆進性を緩和する
所得税などは、納税者の支払い能力に応じた税を負担するよう、高所得者になるほど税率が高くなります。
これを超過累進税率方式といいます。一方消費税は所得の多い・少ないに関わらず、すべての人に同じ税率がかかります。
食料品など節約に限界がある生活必需品は、所得による消費支出の差が出にくい部分といわれています。そのため、低所得者ほど消費支出の割合が高くなります。
そこで、日々の生活に必要な飲料品などの税率を低くする軽減税率を導入し、低所得者ほど税負担が重くなる「逆進性」を緩和することとなったのです。
2. 軽減税率導入による企業にとってのメリット
軽減税率の導入で企業が得られるメリットとしては、次の2つが挙げられます。
2-1. 対象商品の売上低下の緩和
軽芸税率の対象品目は、精米や肉、野菜、加工食品、ミネラルウォーターやお茶、清涼飲料水など、外食・酒類を除く飲食料品です。
スーパーやコンビニなどで販売されている一般的な食品や飲料は、軽減税率の対象として税率8%が適用されます。
消費税増税で小売店が抱える問題のひとつに、消費者、とくに低所得者の購買意欲低下があります。生活にかかせない飲食料品であっても、消費税が10%のままでは、売上への影響は避けられないでしょう。
軽減税率の導入で一部の商品の税率が8%に据え置かれれば、消費者の出費を軽減し、対象商品の売上の低下を緩和することが期待できます。
2-2. テイクアウトや出前の需要増加
酒類(アルコール度数1%以上のもの)と外食は軽減税率の対象外となり、標準税率10%が適用されます。
レストランはもちろん、ファーストフード店やそば屋、フードコートでの店内飲食、コンビニエンスストアのイートインコーナーなど、店内にテーブルや椅子、カウンターが設置され、トレーや返却の必要がある容器で提供された飲食は、すべて「外食」に該当します。
一方、イートインコーナーがある店であっても、持ち帰ることを前提に提供された食事に関しては、軽減税率が適用されます。
例えば、ハンバーガーショップ税抜価格600円のハンバーガーセットを購入した場合、店内飲食だと660円、テイクアウトでは648円と、12円の差が出るというわけです。
軽減税率の導入で、これまで頻繁に外食をしていた消費者も、テイクアウトや出前を選ぶ傾向が強まる可能性がります。
宅配ピザや持ち帰り弁当など、テイクアウトサービスを提供している事業者にとっては、軽減税率が追い風となり、売上増加につながることも考えられます。
また、店内飲食のみの飲食店であっても、新たにテイクアウトメニューや宅配サービスを展開することで、新たな顧客を獲得できる可能性があります。
関連記事:軽減税率の導入によるメリット・デメリットを徹底解説
3. 軽減税率導入で企業が注意すること
軽減税率の導入にあたって、企業が注意すべき点は次の2つです。
3-1. 軽減税率か標準税率かの適格な判断
軽減税率によって2つの税率が混在することで、飲食料品を扱う事業者は、販売している商品の税率を適格に区分しなければなりません。
例えば、同じ栄養ドリンクコーナーに陳列されている商品であっても、「機能性飲料」と称される商品は清涼飲料水に含まれるため、軽減税率の対象となります。
一方、「医薬品」「医薬部外品」に該当する栄養ドリンクは、税率10%です。また、アルコールが含まれる飲料や調味料にも注意が必要です。
軽減税率対象外となる酒類とは、酒税法により、「アルコール度数1%以上の飲料」と定められています。
調味料であるみりんは、アルコール度数14%前後あるため、実は酒類に分類される商品です。軽減税率は適用されず、税率は10%となります。
参考:酒税法 第二条「酒類の定義及び種類」|e-Gov法令検索
3-2. 経理処理・事務処理への影響
軽減税率の導入は、飲食料品や新聞を取り扱う事業者以外の企業にも影響があります。
例えば、取引先への贈答用として飲食料品を購入したとします。酒類でなければ軽減税率の対象となるため、経理処理の際に対応が必要です。
軽減税率対象品目を扱う事業者に関しては、販売商品や商品の提供形態によって混在する2つの税率に対応するための事務処理が必要です。
領収書や請求書を発行する際は、軽減税率対象品目とそれ以外の税率を区分し、税率ごとの税込合計金額を記載しなければなりません。
仕入れや支払いをおこなう企業側も、支払い先の納品書や請求書について、各品目がきちんと税率区分されているか、税率ごとの税込合計金額が記載されているかなどをしっかり確認しなければなりません。
関連記事:軽減税率の対象品目は?その線引きや気をつけるべきポイント
4. 軽減税率への理解を深めて正しい環境を整える
軽減税率は消費税増税に伴う消費者、主に低所得者の税負担を軽減するために導入された制度です。企業側にとっては、対象商品の売上低下緩和ほか、テイクアウトや宅配の需要増加を利用した事業展開によって、新たな顧客獲得のチャンスにつなげることも可能です。
導入にあたってのコストや、経理処理などの事務負担が増えることが懸念されますが、権限税率に対する理解を深め、適切な対策を講じておきましょう。
関連記事:軽減税率は全ての企業が対象企業です。求められる対応を徹底解説
2019年に制定された軽減税率制度によって、税率が混在した経費処理が必要になりました。軽減税率でこれまでよりも仕訳が複雑になることに加えて、引き続き手間に感じている業務も続けなくてはなりません。
「軽減税率をしっかりと理解した上で、今後どのような管理が必要なんだろう・・・」とお悩みの方は軽減税率で「変わること・変わらないこと」まとめBOOKををぜひご覧ください。
・軽減税率制度の概要について
・軽減税率導入で変わること、変わらないこと
・今後、手間をかけずに経理業務の効率化を進めるための方法など、軽減税率をはじめとした経理業務の効率化に関する内容を総まとめで解説しています。
「軽減税率の導入で経理業務の何が変化し、どのような管理が今後も必要になるのか知りたい」という経理担当者様は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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