年間の労働時間の計算方法は?36協定に基づく上限も解説
更新日: 2026.7.31 公開日: 2020.3.11 jinjer Blog 編集部

企業の労務管理や人員計画において、年間の労働時間を正確に把握することは重要です。労働基準法では法定労働時間が定められており、時間外労働をおこなわせる場合も36協定に基づく上限規制が設けられています。
本記事では、年間労働時間の計算方法や、36協定に基づく時間外労働の上限規制のポイントを解説します。さらに、変形労働時間制などの柔軟な働き方の制度や、年間労働時間を削減するための具体的な社内施策についても紹介します。
目次
多様な働き方の導入や度重なる法改正により、労働時間管理はますます複雑になっています。
「この対応で本当に正しいのか?」という日々の不安は、コンプライアンス違反という「知らなかった」では済まされないリスクに直結します。
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1. 年間の労働時間の計算方法は?

労働者の1年間の労働時間は、「法定労働時間」または「所定労働時間」と、それ以外の「時間外労働時間」の合計です。
まず「法定労働時間」とは、労働基準法第32条で定められた、労働者を働かすことのできる上限時間を指します。

年間の労働時間とは、従業員が1年間に実際に働いた時間の総数を指します。企業の人員計画や労務管理をおこなううえで重要な指標です。
労働時間を把握する際は、「年間所定労働時間」と「年間実労働時間」を区別する必要があります。年間所定労働時間は、企業があらかじめ定めた労働時間の合計であり、一般的に次の計算式で求められます。
年間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 年間所定労働日数
例えば、1日の所定労働時間が8時間で、年間所定労働日数が250日の場合、年間所定労働時間は2,000時間(8時間×250日)です。
一方、年間実労働時間とは、実際に働いた時間の合計を指します。所定労働時間に残業時間や休日労働時間を加え、欠勤や休職などによる不就労時間を反映して算出します。
なお、2019年4月の働き方改革関連法の施行により、企業には従業員の労働時間を適切に把握することが義務付けられています。タイムカードやパソコンのログ記録などの客観的な方法を用いて、労働時間を正確に記録・管理しなければならないので注意しましょう。
関連記事:労働時間とは?労働基準法の定義や休憩時間との関係を判例を交えて解説
1-1. 年間の労働時間の上限の目安は約2,085時間
労働基準法では、法定労働時間として「1日8時間・週40時間」が定められています。この週40時間を年間換算すると、年間の法定労働時間の上限目安を把握できます。
例えば、1年を約52.14週(1年365日÷1週7日)として計算すると、次のようになります。
40時間 × 52.14週 = 約2,085時間
そのため、法定労働時間に基づく年間の労働時間の上限目安は「約2,085時間」となり、基本的にはこの水準を超えないように労働時間を管理することが求められます。
ただし、この数値は法定労働時間を単純に年間換算したものであり、実際の年間労働時間は、企業ごとの所定労働日数や勤務形態によって変動します。
2. 36協定における年間の時間外労働の上限規制とは?

36協定を締結し所轄労働基準監督署に届け出れば、従業員に法定労働時間を超える時間外労働を命じることが可能になります。これにより、法定労働時間を年間換算した「約2,085時間」を超えて勤務させることも制度上は認められます。
ただし、時間外労働には法律で上限規制が設けられており、企業はその範囲内で適切に労務管理をおこなう必要があります。ここでは、36協定における時間外労働の年間上限規制について詳しく解説します。
2-1. 原則として年間の時間外労働は360時間が上限
36協定を締結していても、時間外労働は無制限に認められるわけではありません。原則として、時間外労働の上限は「月45時間・年360時間」と定められています。
そのため、法定労働時間を年間換算した「約2,085時間」に、時間外労働の上限である「360時間」を加えると、合計は「約2,445時間」となります。一般的な36協定(特別条項なし)の範囲では、この水準が年間労働時間の一つの上限の目安と考えられます。
2-2. 特別条項付き36協定を締結すれば年間720時間まで延長可能
繁忙期や突発的な受注増加など、臨時的な特別の事情がある場合には、特別条項付き36協定を締結することで、時間外労働の上限を年間720時間まで延長できます。
ただし、特別条項を締結していても無制限に残業させられるわけではありません。年間720時間以内であることに加え、次のような上限規制も守る必要があります。
- 時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計について、2~6ヵ月平均が80時間以内
- 月45時間を超える時間外労働は年6回まで
※休日労働とは、労働基準法で定める法定休日に労働させることを指します。
2-3. 上限を超過すると違法となり罰則を受ける可能性がある
36協定で定めた時間数や、法令で定められた時間外労働の上限を超えて労働者を働かせた場合は、労働基準法違反となります。違反が認められた場合には、労働基準監督署による是正勧告や行政指導がおこなわれ、悪質なケースでは罰則の対象となる可能性があります。
例えば、36協定を締結せずに法定労働時間を超えて労働させた場合や、36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働をさせた場合には、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
また、長時間労働は従業員の健康障害や労務トラブルの原因となり、企業の社会的信用や人材採用への悪影響にも影響を及ぼしかねません。
そのため、企業は勤怠管理システムなどを活用しながら労働時間を正確に把握し、36協定の上限を超えないよう適切な労務管理をおこなうことが重要です。
関連記事:36協定に違反したらどうなる?違反時の罰則や対象者、対処法を解説
3. 労働時間を柔軟に運用できる働き方制度

労働時間を柔軟に運用できる制度として代表的なものに、「変形労働時間制」「フレックスタイム制」「裁量労働制」があります。それぞれ労働時間の考え方が異なるため、制度の仕組みを正しく理解することが重要です。
3-1. 変形労働時間制
変形労働時間制とは、一定期間を平均して原則週40時間以内となる範囲で、特定の日や週の労働時間を柔軟に設定できる制度です。例えば、1年単位の変形労働時間制では、1ヵ月を超え1年以内の対象期間について、業務量の繁閑に応じて労働時間を配分できます。
通常の労働時間制度では、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせた場合、原則として時間外労働となり割増賃金の支払いが必要です。
一方、変形労働時間制では、あらかじめ定めた勤務計画の範囲内であれば、特定の日に8時間、週40時間を超えて勤務しても直ちに時間外労働にはなりません。
変形労働時間制を導入するためには、対象期間や各日の労働時間、労働日などを定めた労使協定の締結や就業規則への規定など、法令に基づく手続きが必要です。また、勤務シフトを事前に確定しておく必要があり、運用ルールを明確に整備しなければならないので注意しましょう。
関連記事:変形労働時間制とは?1ヵ月・1年単位の違いや導入方法をわかりやすく解説
3-2. フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、清算期間における総労働時間をあらかじめ定め、その範囲内で従業員が始業・終業時刻を自主的に決定しながら働く制度です。清算期間の上限は3ヵ月であり、1年間を清算期間として総労働時間を管理することはできません。
また、清算期間における実労働時間が、あらかじめ定めた総労働時間を超えた場合は、その超過時間分の賃金を支払う必要があります。加えて、清算期間の法定労働時間の総枠を超えて労働した時間については、時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。
参考:効率的な働き方に向けて フレックスタイム制の導入|厚生労働省
関連記事:フレックスタイム制とは?導入手順や企業が知っておくべきメリット・デメリット
3-3. 裁量労働制
裁量労働制とは、業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ね、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ定めた「みなし労働時間」を働いたものとみなす制度です。
例えば、1日のみなし労働時間を8時間と定めている場合、実際に9時間働いたとしても、原則として8時間労働したものとして取り扱われます。また、実際の労働時間が6時間であっても、8時間働いたものとして賃金計算がおこなわれます。
なお、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は、その超過分について時間外労働の割増賃金が必要です。また、深夜労働や休日労働については、裁量労働制であっても割増賃金の支払い義務があります。
さらに、裁量労働制を導入している場合でも、企業には労働時間の状況を把握し、健康・福祉確保措置を講じる義務があります。そのため、制度導入後も適切な労務管理を継続することが重要です。
関連記事:裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説
4. 年間労働時間を削減するための取り組み

年間労働時間を適正な水準に抑えるためには、単に残業を減らすだけでなく、労働時間を計画的に管理し、業務効率を高める仕組みづくりが重要です。ここでは、年間労働時間の削減に効果的な取り組みを紹介します。
4-1. 年間スケジュールを早期に策定する
労働時間を短縮するためには、まず業務量の偏りを解消することが重要です。プロジェクトの進行状況や繁忙期・閑散期など、年間を通じた業務の発生状況を早い段階で把握し、計画的に整理しておきましょう。
例えば、業務量が多い時期と少ない時期をあらかじめ予測し、閑散期に研修や事前準備を実施すれば、繁忙期への負担集中を軽減できます。さらに、従業員の休暇希望も踏まえた長期的な人員配置計画を立てることで、特定の時期や部署への業務負荷の偏りを防げます。
4-2. 勤怠管理システムを活用して時間外労働を可視化する
勤怠管理システムを導入すると、従業員ごとの労働時間をリアルタイムで把握できます。時間外労働の状況を可視化すれば、特定の部署や従業員に業務が集中していないかを早期に発見できるようになります。
その結果、業務の再配分や人員配置の見直しなどの対策を講じやすくなるでしょう。また、残業時間が一定の基準を超えた際にアラートを出す機能を活用すれば、長時間労働の未然防止にもつながります。
4-3. ノー残業デーを設けて長時間労働を抑制する
社内全体で残業をしない日を設けるノー残業デーは、従業員に対して「時間内に業務を終える」という意識を根付かせるのに有効です。この日の目的を「早く帰るため」だけでなく、「生産性を高めるため」「自己啓発の時間を確保するため」などと明確に位置づければ、従業員の意欲向上にもつながります。
ただし、単にノー残業デーを設定するだけでは、他の日に残業が集中してしまう可能性があります。そのため、業務の見直しや業務効率化の施策とあわせて実施し、組織全体で長時間労働の改善に取り組むことが重要です。
関連記事:ノー残業デーを導入する企業のメリット・デメリットを解説!形骸化させない継続のコツとは
5. 上限規制に引っかからないために年間の労働時間を正確に計算しよう

企業の労務管理においては、年間の労働時間を正確に把握することが、法令遵守の観点から極めて重要です。働き方改革関連法の施行により、労働時間の適切な管理は事業者の義務となっており、36協定で定めた上限を超える場合には、法令違反として罰則が科される可能性があります。
そのため、勤怠管理システムなどを活用して労働時間を可視化し、継続的に実態を把握・改善していくことが不可欠です。改めて自社における労働時間の計算方法や管理体制を点検し、コンプライアンスを徹底した健全な職場環境の整備を進めていきましょう。
多様な働き方の導入や度重なる法改正により、労働時間管理はますます複雑になっています。
「この対応で本当に正しいのか?」という日々の不安は、コンプライアンス違反という「知らなかった」では済まされないリスクに直結します。
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- 曖昧になりがちな「勤務時間」と「労働時間」の明確な違い
- 年間労働時間の算出など、給与計算にも関わる重要知識
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- 罰則リスクを回避するための正しい勤怠管理のポイント
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