キャッシュアウトとは?意味や注意点を詳しく解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.12.26
jinjer Blog 編集部
キャッシュアウトは、金融や株式取引の話題で目にすることがある言葉です。
最近はサービスの名称としても見かけるようになりましたが、キャッシュアウトには意味の異なる2種類があります。
本記事ではキャッシュアウトの意味から、会社法におけるキャッシュアウトの手法や注意点を解説します。
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1. キャッシュアウトとは?
まずはそれぞれのキャッシュアウトの意味や使い方を知っておきましょう。
1-1. キャッシュアウトフロー
キャッシュアウトフローは、起業の資金が流出したことや、流出した金額に対して使われる用語です。
資金が流入した場合は「キャッシュインフロー」、資金の流れそのものは「キャッシュフロー」と呼びます。
もともとは金融用語として使われてきましたが、近年は金融機関から現金を引き出すサービス「キャッシュアウトサービス」にも用いられるようになりました。
1-2. 会社法におけるキャッシュアウト(スクイーズアウト)
少数株主を会社から締め出すことを「スクイーズアウト」と呼びます。その中でも現金を対価にした場合は「キャッシュアウト」と表現することが多いです。
つまり、現金を対価に少数株主を撤退させることが、会社法におけるキャッシュアウトです。
キャッシュアウトにより、敵対的な少数株主を会社から締め出すことが可能になります。
その結果、株主総会決議がスムーズに進められることや、株主対応のコスト削減ができることなど、さまざまなメリットが発生します。
2. キャッシュアウトの手法
会社法におけるキャッシュアウトは、主に4つの手法でおこなわれます。具体的な方法や要件をみていきましょう。
2-1. 株式等売渡請求をする
株式の議決権を9割以上保有している特別支配株主が、少数株主に対して株式を売り渡すように請求する方法です。
請求された場合は、少数株主に拒否権はなく、株式の売買を必ず行わなくてはいけません。そのため特別支配株主は、少数株主から強制的に株式を取得できます。
この方法が可能になったのは、2014年の会社法改正からです。
企業側の承認があれば実施可能であるため、従来の方法と比べると素早くキャッシュアウトができます。
会社法改正からはキャッシュアウトの主な手法として定着しつつある手法です。
2-2. 全部取得条項付種類株式を利用する
全部取得条項付種類株式は、株主総会の決議により会社が全部を取得できる株式のことを指します。
これによって、株式の全部を親会社が取得できればキャッシュアウトが可能です。
全部取得条項付種類株式を発行するには、株主総会特別決議で以下の決議を行う必要があります。
種類株式発行会社になるために定款を変更する
普通株式を全部取得条項付種類株式に定款を変更する
全部取得条項付種類株式を取得する
3番目の全部取得条項付種類株式の取得の対価になり得るのは、金銭だけでなく種類株式、社債などの財産も含まれます。
キャッシュアウトを目的として全部取得条項付種類株式を利用する場合は、対価を普通株式とし、少数株主に株式が残らないように配分することで締め出しをおこないます。
2-3. 株式併合を利用する
株式併合とは、複数の株式を併合して1つにする方法です。
10株を1株に併合、100株を1株に併合するなど、複数の株式をまとめることで、1株あたりの価値を引き上げることが可能です。
実行するには、会社法の定めにより、議決権の3分の2以上で株主総会特別決議をおこなう必要があります。
株式併合でキャッシュアウトをおこなう際のポイントは「持ち株が1株未満になると株式としての効果がなくなる」という点です。
たとえば3人の株主が70株・8株・3株をそれぞれ保有していたとしましょう。
10株を1株に株式併合した場合、それぞれの持ち株は7株・0.8株・0.3株になります。
持ち株が1株未満になると株式の効果がなくなり、株主はその権利を行使できなくなります。
そのため、7株の株主には権利が残りますが、ほかの2人は現金を対価として締め出されることになります。
これによりキャッシュアウトが可能です。
株式併合は前述した全部取得条項付種類株式によるキャッシュアウトよりも進めやすいため、会社法改正前は比較的多く選ばれていました。
2-4. 株式交換を応用する
株式交換と前述した株式併合の2つを使ったキャッシュアウトの方法です。
株式交換は、会社が発行する株式の全部を、別の会社に取得させることを指します。
キャッシュアウトを目的として実行する場合は、子会社の少数株主に対して有効です。
株式交換によるキャッシュアウトの流れは以下のとおりです。
子会社の株式を親会社の株式に交換する
親会社で株式併合を実行し、保有株式を調整する
子会社の株式を親会社の株式に交換することで、少数株主が保有する株式は親会社のものになります。
ここで親会社が株式併合を実行すると、保有株数次第で少数株主は株主の権利を失います。
株式併合と同様に、少数株主の株式保有割合を調整できるため、これによってキャッシュアウトが可能です。
3. キャッシュアウトを実行するときの注意点
キャッシュアウトは少数株主の締め出すという性質から、事前準備や訴訟のリスクに備えなくてはいけません。4つの注意点を知っておきましょう。
3-1. 自社に適した手法を選ぶ
キャッシュアウトを実行する場合は、まずは自社がどんな状況にあるのか正確に把握し、適した方法を選ばなくてはいけません。
近年のキャッシュアウトで増えている株式等売渡請求は、自社が特別支配株主である必要があります。
該当しない場合は、全部取得条項付種類株式の取得や株式併合によって、少数株主から株式の回収が必要です。
3-2. 余裕をもってスケジュールを決める
キャッシュアウトでは、株主総会の特別決議が必要になるケースが多いです。
その場合は、基準日設定をおこなう必要があり、設定には14日以上の公告が必要になります。
その後、株主への招集通知をし、発送から14日以上あけてから株主総会を開催し、決議を取らなくてはいけません。
最低でも1カ月はかかるため、キャッシュアウトのスケジュールは余裕をもって決めておきましょう。
3-3. 株式の取得にかかる資金の準備が必要
キャッシュアウトを実行するには、株式回収のために資金が必要です。
会社の株価にもよりますが、多額の資金が必要なケースがほとんどであるため、十分な資金を用意する必要があります。
キャッシュアウトによるメリットと必要資金、資金力を十分に検討し、実行しましょう。
3-4. 少数株主からの訴訟リスクがある
キャッシュアウトは、基本的には少数株主から強制的に株式を買い上げる方法です。
そのため、反対する株主が権利を行使し、会社法に則ってさまざまな訴えを起こす可能性があります。
訴訟のリスクを抑えるためにできる対策をおこない、万が一の際にも対応できるように準備しておきましょう。
4. キャッシュアウトの実行には準備期間が必要
会社法によるキャッシュアウトは、少数株主を会社から排除し、決議や運営をスムーズに進めることを指します。
キャッシュアウトの手法は4つあり、会社に適した方法を選ばなくてはいけません。
いずれの方法を選んだ場合でも、最低でも1カ月は準備期間が必要です。株式の回収には多額の資金も必要になるため、十分に準備して実行しましょう。
少数株主からの訴訟に備えることも忘れてはいけません。
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