KPIツリーとは?作り方や注意点、具体例をわかりやすく解説
更新日: 2024.4.3
公開日: 2023.3.10
OHSUGI
KPI(Key Performance Indicator)の設定方法がわからない人におすすめなのが、KPIツリーと呼ばれるフレームワークです。KPIツリーは、KGI(Key Goal Indicator)を分解し、必要なKPIを洗い出す手法を指します。ロジックツリーの書き方がわかっていれば、誰でもKPIツリーを運用することが可能です。本記事では、KPIツリーの作成方法や注意点を解説します。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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1. KPIツリーとは?
KPIツリーはKPIを効率よく管理するためのフレームワークです。KPIツリーは、大きな問題を細分化し、構成要素をツリー状に書き出していくロジックツリー(イシューツリー)の考え方が元になっています。KPIツリーの場合は、KGIを細分化し、KGIを実現するために必要な要素をツリー状に書き出していくことで、抜け漏れなくKPIを洗い出すことができます。
1-2. KPIとKGIとの違い
KGIがいまいち良く分からないという方のために、ここでKGIとKPIの違いについておさらいしておきましょう。
KGI(Key Goal Indicator)とは、日本語で「重要目標達成指標」を意味します。簡単に説明すると、企業や組織の最終目標(ゴール)を数値化して設定することを指します。
それに対しKPIは、最終目標(KGI)を達成するための中間目標となる指標です。KPIを一つ一つクリアしていくことにより、最終目標(KGI)を目指すことができるようになります。
2. KPIツリーを作る目的やメリット
KPIツリーを作る目的またはメリットは3つあります。
- KGIを達成するために必要な要素を把握できる
- 目標達成に向けたボトルネックを可視化できる
- 先行指標と遅行指標を分けて管理できる
2-1. KGIを達成するために必要な要素を把握できる
KPIツリーはKGIを出発点として、KPIをツリー状に整理していくフレームワークです。KPIツリーには「KGIと関連のあるKPIしか記載しない」というルールがあります。
たとえば「売上目標」をKGIとする場合、売上を増やすために必要な「商品購入者数」や「顧客単価」がKPIとなります。KPIツリーを作成することで、KGIの達成に必要な要素を一目で把握することが可能です。
2-2. 目標達成に向けたボトルネックを可視化できる
KPIツリーの作成により、KGIの達成に必要な要素を網羅的に洗い出せます。KGIに関わる要素を俯瞰し「どのKPIが目標達成プロセスのボトルネックとなっているか」を深掘りしていくことが可能です。
ボトルネックを早期発見することで、PDCAサイクルを回し、目標達成プロセスをすばやく改善できます。
2-3. 先行指標と遅行指標を分けて管理できる
KPIは先行指標と遅行指標(結果指標)の2つの種類に分けられます。一般的に、先行指標は「すぐに成果が表れるKPI」、遅行指標は「後から成果が表れるKPI」を指します。
ブログを用いたマーケティングを例に挙げてみましょう。たとえば、ブログ記事1件当たりの検索キーワード数や外部リンク数は、ブログ投稿後すぐに成果が反映されるため、先行指標に該当します。
一方、ブログ記事1件当たりのコンバージョン数は、ユーザーがブログを訪問し、実際に行動を起こすまで成果が反映されません。そのため、遅行指標として扱います。
目標達成プロセスでは、先行指標(KPI)→遅行指標(KPI)→KGIの順に課題をクリアし、目標を達成していく流れが一般的です。しかし、KPIによっては先行指標と遅行指標の区別が付きづらいケースもあります。その場合は、KPIツリーを作成してみましょう。
KPIツリーでは、KGIに近いKPIを遅行指標、KGIから遠いKPIを先行指標について扱います。KPIツリーを正しく作成すれば、先行指標と遅行指標をきちんと分けて管理することが可能です。
3. KPIツリーの作り方
KPIツリーを作成するときの流れは以下のとおりです。
- KGIを決める
- KGIを起点として順番にKPIを洗い出す
- ロジックツリーで可視化する
KPIツリーを作成する前に、KGIを決めてからKPIツリーの構成要素を洗い出しておくと作業がスムーズです。洗い出した後は、これ以上分解できなくなるところまで細分化していきましょう。
3-1. KGIを決める
KPIツリーは、KGIを起点にしてそれぞれの構成要素を洗い出していくので、KGIが決まっていないことにはKPIツリーを作成することができません。
そのため、まずは組織やチームが最終的に実現したい目標=KGIを設定するところから始めます。
3-2. KGIを起点として順番にKPIを洗い出す
KGIが決まったら、KPIの構成要素を洗い出しましょう。洗い出すときは、KGIを起点として一つずつ順番に作業を進めていきます。この時すべての構成要素を事前に洗い出す必要はありません。KPIの候補を事前にピックアップしておくことで、KPIツリーに書き出しやすくなります。
次に、最小の構成要素になるまでKPIを分解していきましょう。たとえば、KGIが「売上」だとしたら、その下のKPIが「受注数」と「顧客単価」、その下が「商談数」や「受注率」、さらにその下が「テレアポ数」や「メール開封率」といったように細分化していきます。
このように、最小の構成要素になるまでKPIを分解することで、行動に落とし込みやすくなるのがポイントです。また、KGIに到達するまでにどこに問題があるのかも、明確にすることができます。
3-3. ロジックツリーで可視化する
KPIの洗い出しが終了したら、ロジックツリーを作成して可視化します。KGIを起点にして、分解した要素を枝分かれするようにKPIを設置していきます。
エクセルでもロジックツリーを作成することができますが、ネット上で無料のテンプレートが配布されていますので、そういったものを活用して作成しても良いでしょう。
4. KPIツリーを作るときの注意点
KPIツリーを作るときの注意点は3つあります。
- 四則演算の関係になっているか確認する
- KPIの単位を必ず揃える
- 抜け漏れや重複がないか確認する
KPIツリーはロジックツリーがベースになったフレームワークです。ツリー同士は足し算や掛け算など、四則演算の関係になっている必要があります。また、同じツリーのKPIの単位は必ず揃えましょう。
4-1. 四則演算の関係になっているか確認する
KPIツリーでは、すべてのKPIが互いに四則演算の関係になっている必要があります。
たとえば、ECサイトを例に考えてみましょう。ECサイトの売上は、購入者数×顧客単価の掛け算で表せます。ECサイトの購入者数は、サイト訪問者数のうち購買行動に至った人のことを指すため、訪問者数×コンバージョン率の掛け算で求められます。
また、訪問者数の中には、初めてECサイトを利用した新規訪問者と、何度も利用しているリピート訪問者の2種類が存在します。訪問者数を分解すれば、新規訪問者数+リピート訪問者数の足し算で表すことができます。
- 売上=購入者数×顧客単価
- 購入者数=訪問者数×コンバージョン率
- 訪問者数=新規訪問者数+リピート訪問者数
このようにKPIを分解していくときは、KPI同士が四則演算の関係になっているかどうかチェックすることが大切です。また、エクセルを活用すると数字の管理もしやすくなります。
4-2. KPIの単位を必ず揃える
KPIの単位は必ず揃えましょう。売上を(円)で記載する場合は、顧客単価などのKPIも(円)で統一します。また、購入者数の単位に(人)を使う場合は、訪問者数、新規訪問者数、リピート訪問者数などのKPIも(人)で記載します。
4-3. 抜け漏れや重複がないか確認する
KPIツリーを作成する際は、抜け漏れや重複が無いように注意しなくてはいけません。このときに意識したいのが、MECE(ミーシー)と呼ばれる考え方です。
MECEは互いに重複せず(Mutually Exclusive)、全体的に漏れがない(Collectively Exhaustive)を表す略語です。KGIを分解していくときは、KPIの抜けや漏れ、重複がない(=MECE)かどうか必ず確認しましょう。
KPIの抜け漏れが目立ったり、類似している要素が多かったりすると、KPIツリーが機能不全に陥る可能性があります。
5. KPIツリーの具体例を紹介
ここまで、KPIツリーの作成方法や注意点についてみてきました。実際にKPIツリーを作成する際は、職種や業種に応じた目標設定(KGI)ならびにKPIを設定しなくてはいけません。
ここでは、職種や業種別でのKPIツリーの具体的な一例をご紹介します。
5-1.営業職の場合
営業職の場合、KGIとして設定されることが多いのが「売上アップ」です。
売上アップを目指すために必要な要素が「受注数」や「顧客単価」でしょう。さらに、受注数を上げるには「商談数」や「受注率」といった要素も必要となってきます。
「売上アップ」というKGI達成に何が必要かをまずは整理し、上流から下流に向けて細分化させていくことで、営業職が取るべきアクションも分かりやすくなります。
5-2.製造業の場合
製造業の場合は「生産効率」をKGIに設定して、KPIツリーを作成するパターンがよく見受けられます。
「生産効率」をKGIとしたとき、「生産量」と「コスト」が直下のKPIです。さらに枝分かれして「稼働率」や「不良率」「材料費」「労務費」などが下層のKPIとなってきます。
製造業においてもKPIツリーの活用は、生産効率を高めるための有効な手段となり得ます。
5-3. ECサイトの場合
ECサイトの場合も、KPIツリーの頂点となるのが「売上アップ」です。ECサイトの売上は、サイトにどれだけ来訪者があったか、そのうちどの位の人が購入したかといった要素が大きく影響してきます。
そのため、ECサイトのKPIツリーの指標として主に用いられるのが、「ECサイトへの来訪者数」や「来訪者の商品購入率」「顧客単価」などが挙げられます。
6. KPIの管理方法がわからない場合はKPIツリーを利用しよう
KPIを設定することで、チームや個人の最終的なゴール(=KGI)を達成するまでの道のりを可視化し、定量的に評価できます。
KPIの運用を任せられたものの、具体的にどうやってKPIを管理すればよいのかわからないときは、ロジックツリーの考え方が元になったKPIツリーを活用しましょう。KGIから逆算し、構成要素を抜け漏れなく分解していくことで、誰でも簡単にKPIを設定できます。
無料のテンプレートもサイト上には多く存在するので、作り方が分からない方はそういったツールを活用してみても良いでしょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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