基本契約書の書き方は?個別契約書との違いや収入印紙の貼付ルールとあわせて解説
更新日: 2024.5.8
公開日: 2022.9.16
MEGURO
基本契約書とは、継続的な取引をおこなう際に締結する契約書のことです。印紙税法では第7号文書に該当し、ほとんど取引において印紙税が発生します。本記事では、基本契約書の書き方や個別契約書との違い、収入印紙の貼付ルールについて解説します。
目次
契約には会社の規定や法に基づいておこなわれます。
専門的な知識が求められるため、不明点があればすぐに法務担当者に連絡する人も多いでしょう。
そのため、法務担当者の中には、従業員からの質問が多く、負担に感じている方もいます。
そこで今回、ビジネスの場面で使用される契約書の種類や基本項目、契約締結の流れについて解説した資料を用意しました。
従業員の勉強用資料として社内展開すれば、契約に関する基本的な質問を受けることが少なくなるでしょう。
「同じことを何度も説明するのは億劫だ」
「従業員からの質問に時間をとられて業務が進まない」
という方はぜひご活用ください。
1. 基本契約書とは?
基本契約書は、継続的な取引をおこなう際に締結する契約書のことで、主に契約の目的や範囲、契約期間や更新時期など、取引全体の基本的なルールを定めます。
印紙税法の課税物件表では、「特約店契約書、代理店契約書、銀行取引約定書その他の契約書で、特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となるもののうち、政令で定めるものをいう」と定義されています。[注1]
国税庁のホームページによると、基本契約書は大きく3つの類型に分けることができます。
“(1)売買取引基本契約書や貨物運送基本契約書、下請基本契約書などのように、営業者間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱いまたは請負に関する複数取引を継続的に行うため、その取引に共通する基本的な取引条件のうち、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法または再販売価格のうち1以上の事項を定める契約書
(2)代理店契約書などのように、両当事者(営業者には限りません。)間において、売買に関する業務、金融機関の業務、保険契約の締結の代理もしくは媒介の業務または株式の発行もしくは名義書換の事務を継続して委託するため、その委託する業務または事務の範囲または対価の支払方法を定める契約書
(3)その他、金融、証券・商品取引、保険に関する基本契約のうち、一定のもの”
このように、継続的な売買取引や貨物運送、代理店契約や業務委託に関する契約を締結するときに基本契約書を作成することがあります。基本契約書には細かい条件を定める契約書として、個別契約書が紐づいて作成されるのが一般的です。
関連記事:契約類型とは?典型契約と非典型契約をわかりやすく紹介 | jinjerBlog
1-1. 基本契約書が必要な理由
そもそも、なぜ基本契約書を作成する必要があるのでしょうか。
まず一つメリットとしてあるのは、取引の基本ルールを基本契約書で定め、具体的な事柄を個別契約書で管理することで、これまでの契約条件を管理しやすくなることです。
また、取引において共通する契約内容については、改めて調整や確認をおこなう手間を省くことができるため、契約業務が効率化し、よりスムーズに契約を締結できるようになります。
一見すると、契約の際に「基本契約書」と「個別契約書」の2種類の契約書を作成するため、余計な手間がかかるように感じられますが、上記の通り、今後の取引を効率化しやすくなるという特徴があります。
2. 基本契約書と個別契約書の違い
取引全体のルールを決める基本契約書に対し、個々の取引のルールを決めるのが個別契約書で、双方は補完関係にあります。
たとえば、基本契約書でおおまかな契約期間や更新期限を決め、個別契約書で個々の取引の納期や単価、数量などを決めます。
基本契約書:取引全体の共通事項を決める
個別契約書:個々の取引の具体的事項を決める
2-1. 契約内容はどちらが優先される?
取引状況によっては、基本契約書と個別契約書の内容に矛盾が発生する可能性もあります。このように、基本契約書と個別契約書が対立した場合に備えて、どちらが内容として優先されるのか、あらかじめ基本契約書に優先条項を設けておきましょう。
また、個別契約書の内容がそれぞれ食い違うケースもあります。契約トラブルを避けるため、定期的に基本契約書と個別契約書の内容をチェックし、矛盾がないか確認することが大切です。
必要な契約書の種類や違い、内容が食い違った場合の対応方法がわからない担当者も多いでしょう。そのため、日々法務部門に確認や質問が届き、回答が追いつかないこともあるかもしれません。通常業務に悪影響を与える前に、従業員一人ひとりが契約の基本知識をもつようにすることが重要です。
当サイトで無料配布している「【従業員周知用】ビジネスにおける契約マニュアル」では、契約の基本知識から契約書の役割、また契約に関するよくある質問集やリーガルチェックの確認項目など網羅的に記載しております。
従業員への周知用資料としても活用できるので、従業員から法務担当者への問い合わせ対応等の効率化にもつながります。大変参考になる内容となっておりますので、気になる方はこちらからダウンロードしてご覧ください。
3. 基本契約書の書き方
基本契約書の様式やフォーマットは、自由に決めても問題ありません。ただし、契約内容を明確化するため、以下の5つの項目を基本契約書に記載しましょう。
・契約する目的と契約期間
・報酬の支払方法
・秘密保持義務
・禁止事項と契約解除事由
・優先条項
基本契約書の書き方がわからない場合は、経済産業省などが公開している契約書の参考例が役に立ちます。ここでは、経済産業省の様式を参考にしながら、基本契約書の書き方のポイントを解説します。
3-1. 契約する目的と契約期間
双方の合意に基づいて、契約の基本的な目的や契約期間を定めます。基本契約書を作成する場合、契約期間は3ヶ月を超えることが一般的です。
3-2. 報酬の支払方法
契約の対価を支払う方法や時期を定めます。個々の取引の支払時期に関しては、個別契約書で定める場合もあります。
3-3. 秘密保持義務
契約内容によっては、秘密保持義務を定める必要があります。たとえば、商品の製造を他の企業に委託する請負契約を締結するケースです。もし秘密保持義務を定めない場合、商品を製造するノウハウが流出し、不正に利用されるリスクがあります。たとえば、以下は経済産業省が作成した取引基本契約書(製造請負契約)の参考例です。
“甲又は乙は、基本契約又は個別契約により知り得た相手方の営業上又は技術上の情報のうちで、相手方が秘密である旨を明示したもの(以下「秘密情報」という。)を、次項に定める場合を除き、相手方の承諾を得ない限り、第三者に開示若しくは漏えい、又は本契約の目的以外に使用してはならない。
ただし、開示を受けた当事者が、書面によってその根拠を立証できる場合に限り、以下の情報は秘密情報の対象外とするものとする。
① 開示を受けたときに既に保有していた情報
② 開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
③ 開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出した情報
④ 開示を受けたときに既に公知であった情報
⑤ 開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報甲又は乙は、法令に基づき前項に規定する秘密情報の開示が義務づけられた場合には、事前に相手方に通知し、開示につき可能な限り相手方の指示に従うものとする。”
3-4. 禁止事項と契約解除事由
契約にあたって禁止する事項や、債務不履行などの契約違反が発覚したときの契約解除事由を定めます。損害が発生したときの取り扱いについても決めておきましょう。
3-5. 優先条項
基本契約書と個別契約書の内容が対立した場合、どちらの条項を優先させるかを取り決めます。一般的には、取引の共通ルールを定めた基本契約書ではなく、個別具体的なルールを定めた個別契約書を優先させます。一方、基本契約書を優先させることで、ガバナンスを強化できるというメリットもあります。
4. 基本契約書には収入印紙を貼付する
基本契約書は「継続的取引の基本となる契約書」であるため、国税庁が印紙税法で定めている『第7号文書』に該当します。第7号文書に該当する場合は課税文書とみなされ、印紙税の納付が必要となります。
ここからは具体的に、基本契約書に貼付が必要な収入印紙の税額について解説します。
4-1. 基本的な印紙税額は4,000円
第7号文書に該当する基本契約書を締結する際には、取引金額にかかわらず4,000円の印紙税が発生します。
ただし、契約期間が3か月以内かつ、更新の定めがないものは例外となります。余分に印紙税を納めるようなことがないように、どのような場合にいくらの印紙税が発生するのかをしっかりと認識しておきましょう。
第7号文書に該当する契約書の例は下記の通りです。
・売買取引基本契約書
・特約店契約書
・代理店契約書
・業務委託契約書
・銀行取引約定書 etc.
なお、業務委託契約については「請負」と「準委任」に大きく区別され、「準委任」の場合には第7号文書とみなされません。契約書のタイトルだけでなく契約内容を把握したうえで、課税文書かどうか判断することを心がけましょう。
万が一の場合に備えて、これまで取り扱っていなかった契約を締結する際は、一度弁護士などの専門家に相談して、課税文書か否かの判断をしてもらうのがおすすめです。
参照:印紙税額一覧表|国税庁
4-2. 印紙代が200円で済む場合もある
契約期間が3か月以内の基本契約書は第7号文書に該当しないと説明しましたが、そのほかの課税文書に該当する可能性を認識しておきましょう。
たとえば、100万円の金額が記載された工事請負契約書を締結する場合、第2号文書に該当するので「200円」の印紙税が発生します。ただし、3か月以上の契約の場合には「4,000円」の印紙税が発生するので、その場合と比べると大幅な節約につながります。
そのため、定期的に契約内容の見直しが必要な場合などは、契約期間を3か月以内に絞って、印紙税額を上手く調整するとよいでしょう。
4-3. 印紙税の過払いは払い戻しできる
課税文書かどうかの判断を誤り、万が一印紙税の過払いが発生していた場合、5年以内であれば払い戻しできる可能性があります。
税務署や国税庁のホームページから所定の申請書をダウンロードすることが可能なので、すでに過払いしてしまってお困りの方は申請をおこないましょう。
参照:[手続名]印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続|国税庁
5. 基本契約書の締結フローを効率化するには?
基本契約書は取引を開始するうえで重要な契約書の一つです。迅速に取引を開始するためにも、契約書の締結フローはできる限り効率化しておきたいものです。
ここからは、契約書の締結フローを効率化する方法について紹介します。
5-1. 雛形を活用して基本契約書を効率的に作成する
前項では、基本契約書の書き方について解説しましたが、インターネット上には基本契約書の雛形が配布されているサイトもあるため、その雛形を活用してもよいでしょう。
ただし、その雛形をそのまま使用してしまうと、想定していないリスクが発生してしまう可能性もあります。しっかりリーガルチェックをおこない、相手方との取引に応じた契約内容に調整してから締結することをおすすめします。
5-2. 電子契約を導入して捺印や製本の手間を削減する
基本契約書を作成し終わったあとは、ほかの契約書と同様に捺印や製本のフローが発生します。
迅速に取引を開始するにはこの締結フローを効率化することが非常に重要で、電子契約の導入がおすすめです。電子契約を導入しておけば、電子上で締結まで完了させることができるので、捺印や製本、郵送などにかかる工数を大幅に削減することが可能です。
契約書を締結する頻度が多く、作業工数に課題を感じている企業では、一度電子契約の導入を検討してみるとよいでしょう。
6. 基本契約書の書き方や個別契約書との違いを確認しよう
基本契約書とは、継続的な取引の共通事項を定めるための契約書です。印紙税法上は、契約期間が3ヶ月を超える契約書や、更新期限の定めがある契約書が基本契約書に該当します。
基本契約書に対して、個々の取引の具体的事項を定める契約書を個別契約書と呼びます。基本契約書と個別契約書は相互に補完しあう契約書です。契約トラブルを避けるため、基本契約書と個別契約書の内容に矛盾がないか定期的に確認することが大切です。
また、早く取引が始められるように、契約書の作成から相手方への郵送はできる限りスムーズにおこないたいものです。契約業務を効率的におこなうには、オペレーションを書面契約から電子契約に切り替えるのも一つの策です。
毎月の契約業務に手間を感じている場合には、電子契約の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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