契約解除書面の必要性とは?書き方のポイントや解約書面との違いを解説
更新日: 2024.5.8
公開日: 2022.9.9
MEGURO
ビジネスにおいて、何らかの理由で今まで継続していた契約を解除しなければならない場合があります。ただし、一度締結して法的効力を持った契約は、特定の条件を除き、適切な手続きをおこなう双方の合意がなければ解除できません。
本記事では、契約解除に必要な書面や手続きについて解説します。契約解除はトラブルが発生しやすい業務なので、正しい流れをしっかりと押さえておきましょう。
「契約書に契約不履行だったときの対応が記載されていない」
「担当者が自社に不利な契約書を持ってくるのはなぜ?」
「契約書に載っていない合意内容があった」
契約書には、取引内容はもちろんのこと、取引不履行だった場合や協議事項が発生した場合の対応についても記載しておく必要があります。
もし契約書に抜け漏れがあったとしても、締結された内容を一方的に破棄することは難しいでしょう。
ですが中には、契約書に載っていない合意内容があることが締結後に発覚することもあるかもしれません。
契約書のトラブルを防ぐためには、法務担当者が確認するだけでなく、担当する従業員が契約書に記載しなければならない項目を理解することが必要です。
本資料では、契約の基礎知識から、契約書に記載される主な項目などをまとめています。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員の勉強用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
1. 契約解除書面の必要性
契約解除とは、契約締結後に当事者の一方的な意思表示により、締結時にさかのぼって契約の法的効力を解消させることを指します。
契約解除意思を記録として残しておくことで、その後のトラブル発生を防ぐ役割があるため、契約解除をおこなう際は、書面を作成して相手方に送付するのが一般的です。
ただし、相手の合意なしで契約解除をおこなうためには、以下の解除事由に該当している必要があるので覚えておきましょう。
・法定解除:相手方に債務不履行があった
・約定解除:契約内容に解除条件を定めている
上記いずれかの事由に該当しないときは、一方的に契約解除を主張することは認められません。一方的な意思表示によって契約解除が可能なのは、限られたケースのみであることを認識しておきましょう。
1-1. 契約解除と解約の違い
『契約解除』と『解約』の意味が混同して使用されることがありますが、いつ契約を解消するのかという点に違いがあります。『契約解除』が締結時にさかのぼって契約を解消するのに対し、『解約』では将来に向けて契約を解消することを指します。
2. 契約解除の際に作成する書面
原則として、契約は双方の同意があれば、締結も解除も口頭でおこなうことができます。書面の作成については必須事項ではなく、契約書がなくても法的効力は発生します。
しかし、たとえ口頭で契約解除が可能であっても、ビジネスシーンで契約を解除するときは書面を作成するのが一般的です。なぜなら、書面を作成しなかった場合、「言った・言わない」の問題が発生し、トラブルに発展する恐れがあるためです。
それでは、契約解除の際はどのような書面を作成する必要があるのでしょうか。ここでは、2つの書類とその役割について解説します。
2-1. 契約解除通知書
契約解除通知書は、一方の当事者が契約解除を相手に求める際に作成する書面です。多くの場合、相手に契約違反や債務不履行などがあった場合に作成します。
たとえば以下のような場合は、契約解除通知書を作成することが一般的です。
・賃貸物件で家賃を滞納されたとき
・請負契約を解除したいとき
・クーリングオフ制度を利用したいとき
契約解除通知書は、契約当事者が一方的に契約解除の意思表示をする際に用いられるため、通常原本は1通ということになります。
[注1]民法 | e-Gov法令検索
2-2. 契約解除合意書
契約解除合意書は、当事者双方が納得して契約解除することを証明する書面です。
本来、双方が納得して契約解除する場合は、とくに書面を取り交わす必要はありません。しかし証拠となる書類がない場合、あとからトラブルになる可能性があるため、契約関係を明確にするために合意書を作成することが一般的です。
3. 契約解除書面の書き方ポイント
先ほど紹介した契約解除書面について、具体的な書き方を紹介します。
3-1. 契約解除通知書の場合
契約解除通知書には、以下のような内容を記載します。
・解除する契約の特定
・解除する理由
・解除までの猶予期間
相手の債務不履行を理由に契約解除する場合は、猶予期間を設定して催促したのち、期間内に履行がなければ解除が認められます。[注1]なお、猶予期間は任意で設定可能です。
ただし、相手が明らかに債務を履行できないケースや、履行を拒否しているケースでは、催告なく契約解除することができます。
3-2. 契約解除合意書の場合
契約解約合意書には、以下のような内容を記載します。
・解除する契約の特定
・解除が適用となる年月日
・原状回復義務の有無と内容
・清算条項
ポイントは、契約をなかった状態に戻すため、契約によって受けた給付などを相手に返還する「原状回復義務」について記載する点です。たとえば、「請負契約の着手金として受け取った金銭をいつまでに返す」という内容を記載します。協議して原状回復が不要となった場合も、その旨をしっかりと記載しておきましょう。
最後に、原状回復の義務以上の債務や債権がないことを証明するために、清算条項を記載します。この条項で合意書に記載されている内容以外の請求が発生しないことを明記しておくことで、今後のトラブル発生を防ぐことができます。
4. 契約解除の流れ
実際に契約解除をおこなう際は、どのような流れで申し出て、書面を取り交わせばよいのでしょうか。この章では、契約解除の流れについて解説します。
4-1. 契約や取引の状況を確認する
はじめに、契約書で定められている内容や取引の状況を確認しましょう。まずは、そもそも契約解除が可能なのかを確認しておいてください。
また、契約解除できたしても、契約終了後にも効力が残る「残存条項」というものが存在するケースもあるので注意が必要です。たとえば、秘密保持契約や金銭を後払いで授受している場合は、契約が終了しても債務や債権が残ります。トラブルを防ぐためにも、こういった契約や取引に関する留意点を整理しておきましょう。
4-2. 相手方にメールなどで通知する
契約内容や取引内容を検討して「契約解除をおこなう」という判断に至ったら、相手方に契約解除の意向をメールや電話で通知します。
債務不履行など相手方に非があった場合でも、なるべく穏便に契約解除を進めるために早めの通知をおこなっておいた方がよいでしょう。
4-3. 契約解除書面の通知・締結をおこなう
最後に、契約解除書面の通知・締結を進めていきます。書き方ポイントを参考に取引応じた適切な内容を書面に記載しましょう。
先述したように、契約解除のためには「法定解除」もしくは「約定解除」のどちらかの要件を満たしていなければいけません。相手の債務不履行や合意がないまま一方的な意思で契約解除はできないため、十分に注意しましょう。
5. 契約解除をおこなう際の注意点
最後に、契約解除をおこなう際の注意点を紹介します。
5-1. 書面は内容証明郵便で確実に届ける
契約解除の際、トラブルになりやすいのが「言った・言わない」の問題です。たとえ契約解除通知書を送付しても、送った証明ができなければ、相手に「届いていない」と言われてしまうと反論が難しくなります。そのため、書類を送る際は配達の記録が残る「内容証明郵便」の利用がおすすめです。
また、内容証明郵便は債権回収に対する意気込みをアピールする効果もあるため、相手にプレッシャーをかけられるという利点もあります。
5-2. 違約金が発生するケースがある
契約内容によっては、契約解除をおこなう際に違約金が発生することがあります。
不動産の売買契約がその代表的な例で、買主もしくは売り主が契約解除を申し出る際は、違約金を支払うことが一般的です。不動産関係以外の契約においても、契約書に「違約金を支払えばいつでも契約解除できる」などと記載されている場合は、金銭の支払い義務が生じるケースがあります。
契約解除を検討する際は、違約金の有無についてもしっかりと確認しましょう。
5-3. 契約解除書面のテンプレートはそのまま使用しない
インターネット上では契約解除書面のテンプレートが配布されていますが、内容をよく確認せずにそのまま使用するのはできるだけ避けた方がよいでしょう。
元々の契約内容によって、契約解除書面で取り決めなければならない内容は異なります。テンプレートを利用したことによって、必要な内容を記載しきれずに不利益を被る可能性もあるでしょう。
そのため、テンプレートはそのまま使用せずにリーガルチェックをおこない、自社の取引に適した契約解除書面を作成するようにしましょう。
契約の内容を正しく理解しなければ、契約解除書面を作成することはできません。特に取引先の契約不履行で解除する場合、「契約の内容と異なる」などの理由で取引先と揉める可能性もあります。なかには、契約締結後に担当者がメールで合意してしまった内容があった、など法務担当者が知らない契約項目が出てくることもあるでしょう。
契約を取り付ける担当者自身でも契約書の重要性や締結の意味を理解すれば、契約解除時のトラブルを避けることに繋がります。
当サイトで無料配布している「【従業員周知用】ビジネスにおける契約マニュアル」では、契約の定義や契約が有効または無効になる条件、契約書に記載される主な項目について解説しています。また契約を変更するときはどうしたら良い?というような従業員からのよくある質問もまとめているので勉強用資料として活用できます。気になる方はこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
6. 適切な手続きでトラブルのない契約解除を
何らかの理由で契約解除するときは、契約内容をしっかりと確認したうえで、適切な手続きを必要があります。正当な理由なく一方的に契約解除することはできないため、十分に注意しましょう。
必要な書面や手続きは、状況や契約内容によって異なります。「契約解除通知書」または「契約解除合意書」を使い分けて、スムーズかつトラブルのない契約解除を目指しましょう。
「契約書に契約不履行だったときの対応が記載されていない」
「担当者が自社に不利な契約書を持ってくるのはなぜ?」
「契約書に載っていない合意内容があった」
契約書には、取引内容はもちろんのこと、取引不履行だった場合や協議事項が発生した場合の対応についても記載しておく必要があります。
もし契約書に抜け漏れがあったとしても、締結された内容を一方的に破棄することは難しいでしょう。
ですが中には、契約書に載っていない合意内容があることが締結後に発覚することもあるかもしれません。
契約書のトラブルを防ぐためには、法務担当者が確認するだけでなく、担当する従業員が契約書に記載しなければならない項目を理解することが必要です。
本資料では、契約の基礎知識から、契約書に記載される主な項目などをまとめています。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員の勉強用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
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