誓約書の書き方や作成上のポイントを解説
更新日: 2024.5.8
公開日: 2022.9.16
MEGURO
入社誓約書や秘密保持誓約書など、ビジネスシーンではさまざまな「誓約書」を取り交わすことがあります。誓約書は契約書と違い、当事者の一方が守るべき約束事を明文化した文書です。法的効力はあるものの、公序良俗に違反する誓約書や、労働基準法などの強行法規に違反する誓約書を作成することはできません。この記事では、ビジネスシーンに欠かせない誓約書の書き方や作成時のポイントを解説します。
契約には会社の規定や法に基づいておこなわれます。
専門的な知識が求められるため、不明点があればすぐに法務担当者に連絡する人も多いでしょう。
そのため、法務担当者の中には、従業員からの質問が多く、負担に感じている方もいます。
そこで今回、ビジネスの場面で使用される契約書の種類や基本項目、契約締結の流れについて解説した資料を用意しました。
従業員の勉強用資料として社内展開すれば、契約に関する基本的な質問を受けることが少なくなるでしょう。
「同じことを何度も説明するのは億劫だ」
「従業員からの質問に時間をとられて業務が進まない」
という方はぜひご活用ください。
1. 誓約書とは?
誓約書とは、個人や法人に対し、守るべき約束事を明文化するための書類です。たとえば、競合他社への転職を禁止する競業避止義務や、企業秘密の漏えいを禁止する秘密保持義務などを誓約書として取り交わします。誓約書には法的効力がありますが、無効や取り消しになるケースもあります。ここでは、誓約書の定義や法的効力についてわかりやすく解説します。
1-1. 誓約書は当事者の一方が守るべき約束事を明文化した文書のこと
従業員の入社時やなんらかの損害が発生したときなど、当事者の一方と誓約書を取り交わすことがあります。たとえば、入社時の秘密保持誓約書が一例です。経済産業省の様式のように、誓約書の冒頭には次のような文言があります。
秘密保持に関する誓約書
この度、私は、貴社に採用されるにあたり、下記事項を遵守することを誓約いたします。
引用:各種契約書等の参考例|経済産業省
誓約書は契約書と違い、契約当事者それぞれが記名押印し、意思表示をおこなう書類ではありません。当事者のどちらか一方が、もう一方に対してなんらかの約束事を遵守する義務を負うのが誓約書です。
ビジネスシーンはもちろん、個人間の金銭の貸し借りなどにも誓約書が使われることがあります。
【誓約書】
・記名押印:誓約する側のみ記名押印をおこなう
・拘束力:誓約する側のみ義務を負う
【契約書】
・記名押印:当事者それぞれが記名押印をおこなう
・拘束力:当事者それぞれが義務を負う
1-2. 誓約書には一定の法的効力がある
契約書と同様に、誓約書には一定の法的効力があります。そのため、相手方となんらかの係争に発展したとき、誓約書を証拠の一部として提出することが可能です。もし誓約書が遵守されなかった場合、差し入れた側が損害賠償請求を起こすケースもあります。ただし、誓約書のみで契約関係を明らかにするというよりも、契約書などを補完する書類として用いられることが一般的です。
契約書類を減らすために、法務部門で確認して必要項目をすべて盛り込んでいる場合は誓約書のみでも構いません。ですが基本的には、責任の範囲や協議項目が発生した場合の対応方法などの情報が不足することがほとんどです。
とはいえ、契約に関する知識が乏しい従業員からすると「誓約書に署名しているから問題ない」と考えてしまうこともあります。
後で契約に関するトラブルが発生して困ることがないよう、全従業員が契約の基礎知識を持っておくことが大切でしょう。
当サイトで無料配布している「【従業員周知用】ビジネスにおける契約マニュアル」では、契約の基本知識から契約書の役割、契約に関するよくある質問についてまとめています。ほか従業員の勉強用資料として活用できるので、気になる方はこちらからダウンロードしてご覧ください。
1-3. 誓約書が無効・取り消しになる場合
ただし、誓約書は契約書と違い、差し入れた側が誓約する側に一方的な責務を負わせる文書です。そのため、誓約書の内容によっては無効・取り消しになる可能性があります。たとえば、誓約書が公序良俗に違反する場合です(民法第90条)。
“第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。”
引用:民法|e-Gov法令検索
誓約書の作成が相手方の錯誤(無意識な誤り)に基づく場合や、差し入れた側の詐欺・強迫に基づく場合も、誓約書を取り消すことができます(民法第95条、第96条)。
“第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。”
引用:民法|e-Gov法令検索
また、誓約書が労働基準法などの強行法規に違反する場合も無効となります。たとえば、残業代を請求しないことを約束させる誓約書(労働基準法第37条)や、職業選択の自由に反するような競業避止義務を負わせる誓約書などは、法令違反に当たります。相手方とのトラブルを避けるため、誓約書が無効・取り消しになるケースについても知っておきましょう。
2. 誓約書と念書の違い
誓約書とよく似た文書として「念書」があります。念書は誓約書と同様、相手方になんらかの責務を負わせるための文書です。念書は誓約書とほぼ同じ法的効力を持っていますが、ビジネスシーンで用いられる誓約書に対し、よりプライベートな場面で用いられることが一般的です。たとえば、個人間の金銭の貸し借りで、消費貸借契約を補完するための文書として念書が用いられることがあります。
3. 誓約書の書き方
誓約書に記載する項目は、大きく分けて5つあります。
・誓約者の情報:誓約者の氏名や住所、所属先などを記載し、押印する
・作成日:誓約をおこなった年月日を記載する
・事実関係:誓約書を作成するに至った理由やトラブルの原因を記載する
・誓約内容:誓約者が負う責務や、守るべき約束事を記載する
・罰則:誓約内容に違反した場合の罰則を記載する
誓約内容は第1条、第2条と章立てするか、箇条書きで記載すると見やすい文書になります。また、誓約内容に違反した場合の罰則を取り決めることも大切です。たとえば、経済産業省が作成した秘密保持誓約書の参考例では、以下のような罰則を設けています。
“第3条(損害賠償)
前2条に違反して、第1条各号の秘密情報を不正に開示又は不正に使用した場合、法的な責任を負担するものであることを確認し、これにより貴社が被った一切の被害を賠償することを約束いたします。”
4. 誓約書作成上のポイント
誓約書を作成するときのポイントは2つあります。まず、誓約書の内容が労働基準法などの強行法規に違反していないか確認することが大切です。強行法規に違反した誓約書は無効になるため、不安な場合は専門家にリーガルチェックを依頼することをおすすめします。また、誓約書の作成が初めての人は、経済産業省などが公開している様式やテンプレートを参考にしましょう。
4-1. 強行法規に抵触していないか確認する
誓約書は契約書と違い、差し入れた側が誓約する側に一方的な責務を負わせる文書です。誓約書を作成するときは、誓約内容が強行法規に抵触していないか必ず確認しましょう。誓約書を作成するときのチェック項目は3つあります。
詐欺や強迫など、誓約者が納得できないような強制的な文言になっていないか
労働基準法など、強行法規に違反するような内容になっていないか
誰が(Who)、いつ(When)、Where(どこで)、なにを(When)、なぜ(Who)、どのように(How)するかの5W1Hが明確化されているか
もし誓約書の内容に不安がある場合は、弁護士などの専門家にリーガルチェックを依頼しましょう。
4-2. 経済産業省の様式やテンプレートを参考にする
誓約書を作成するときは、既存の様式やテンプレートが参考になります。誓約書の場合、経済産業省が「従業員等の入社時」「従業員等のプロジェクト参加時」「従業員等の退職時」「他社による工場見学時」などのシーンを想定した参考例を公開しています。[注1]
ただし、参考例をそのまま流用するのではなく、誓約内容に合わせて書き直すことが大切です。
[注1] 各種契約書等の参考例|経済産業省
5. 誓約書の書き方や念書との違いを確認しよう
誓約書は、相手方に守ってもらいたい約束事を明文化する文書です。当事者それぞれが拘束される契約書と違い、誓約者のみが記名押印をおこないます。誓約書の内容が公序良俗に違反する場合や、労働基準法などの強行法規に違反する場合、誓約書が無効になる可能性があります。誓約書の正しい書き方や、念書との違いについても知っておきましょう。
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