データドリブン人事とは?効果や人事戦略におけるメリットを解説
更新日: 2025.5.1
公開日: 2025.1.1
jinjer Blog 編集部
データドリブン人事とは、従業員のスキルや経歴などあらゆるデータを収集・分析し、人事戦略に活用することです。データドリブンをおこなうことで、人事業務の標準化や効率化が期待できます。
データドリブン人事には、採用基準を明確にできる、適材適所に人材配置できるなどのメリットがありますが、その反面デメリットもあるので、どちらも理解したうえで導入を検討しなければなりません。また、データドリブン人事ならではの課題もあるので、しっかり把握しておきましょう。
ここでは、データドリブン人事の概要や効果、メリット、導入方法などを解説していきます。
企業として人事データを適切に管理することはとても重要ですが、
そもそもなぜ人事情報の管理が必要であり、その先に大きな活用価値があることについても、正しく理解できていますか?人事情報は、適切な人材配置、従業員のモチベーションの管理、公平な評価制度など、企業として健全な経営をおこなう上で欠かせない情報です。
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1. データドリブン人事とは
データドリブン人事とは、収集し分析した人材・人事データを人事戦略に活用することです。データドリブン人事戦略や、データドリブンHRとよばれることもあります。
人事戦略とは、以下を始めとする人事業務全般を改善して、組織の成功に貢献するための戦略を立てて実行することです。
- 採用
- 育成
- 配置
なお、データドリブンは以下の英単語を組み合わせた造語で、ビジネス用語の一つとしてグローバル会議でも使われています。
英単語 | ビジネスでの主な意味 |
Data | データ |
Driven | ~に基づいて判断・行動する |
データドリブン人事において、一般的に収集・分析する人材データや人事データは以下のとおりです。
基本属性 | 氏名・性別・生年月日・入社日・所属・役職・等級など |
経歴 | 学歴・転職歴・異動歴・役職歴・職務経験など |
能力 | 保有資格・語学力・スキルレベルなど |
業務 | 業務内容・目標・役割など |
評価 | 評価点・成果・表彰歴・昇給歴など |
マインド | キャリア志向・適性検査の結果・エンゲージメントサーベイの結果など |
勤怠 | 出退勤時間・遅刻・早退・欠勤・残業時間・有給取得率など |
健康 | 健康診断結果・ストレスチェック結果・休職者数など |
採用 | エントリー数・通過率・採用数・離職率など |
上記の項目は一例のため、自社の導入目的や課題などに合わせて収集データの項目を決定しましょう。
1-1.データドリブンが求められる背景
データドリブン人事が注目される背景の一つが、近年のビッグデータの活用です。現代社会では、人事もビッグデータの影響を受けることから、業務の進め方が多様化しています。
例えば、採用の判断を担当者の経験や勘に頼っている企業の場合、活躍する従業員の共通点をデータ分析し、採用要件を明確化して、活躍を見込める人材を効率的に採用できます。
また、データドリブン人事で収集・分析したデータは、人事業務だけでなく離職防止でも重要な役割を果たします。例えば、従業員へのアンケート結果を分析すると、離職しそうな従業員を見つけることも可能です。不満や不安を抱えている従業員がいることを把握すれば、早期にフォロー体制を構築できるので離職防止効果が期待できます。
ビッグデータとは
ビッグデータの本来の定義は、「量(Volume)」「種類(Variety)」「発生頻度・更新頻度(Velocity)」です。数テラバイトから数ペタバイトという多量のデータを持つという量的側面だけでなく、膨大なデータの記録から時系列、リアルタイム性などの質的側面も持っており、さらに利用目的も多様性があるというのがビッグデータです。
しかし、人事におけるビッグデータとは、従業員の学歴や過去の職歴、スキル、資格、担当部署、在職期間などのプロフィールだけでなく、スマホの位置情報や業務報告書やプレゼンなどの文章のように生のデータを抽出活用できるデータとなります。このビッグデータを分析することで、現在の部署でのパフォーマンスやポテンシャルの分析、リスクなどを的確に理解し、人材配置に活かすことができるのです。
1-2.データドリブンの重要性
データドリブン人事の重要性は、以下のような目的に向けて人事が積極的に関わり、人的資源を最大化して有効活用できることです。
- 経営目標の達成
- 企業ミッションの遂行
- 企業ビジョンの実現
データドリブンでは、組織・個人の経験や価値観などによる判断ではなく、人材データ分析に基づく客観的な判断から人事施策を立案・実行できるため、人的資源を有効活用するために欠かせません。
また、現代ではあらゆる価値観が多様化しています。情報化社会になり選択肢が増えたことで、物だけでなく仕事に対する概念や価値観も変化しているので、データドリブン人事で個人の価値観を測って理解することも重要なのです。
2. データドリブン人事の3つの効果
人事業務におけるデータドリブン人事で得られる効果は、以下の3つです。
- 従業員データを客観的に判断できる
- 採用基準の明確化
- 人材を適材適所に配置できる
ここでは、これらの効果について解説していきます。
2-1.従業員データを客観的に判断できる
データドリブン人事では、従業員データを客観的に判断できるという効果があります。
従業員のデータを主観的に判断してしまうと、管理者の経験や好みなど個人的な感情が入ってしまいます。すると、従業員が持っている能力やスキル、得意分野などを的確に判断できなくなる可能性があります。
また、万が一「好き・嫌い」で判断してしまった場合、大事な才能を潰してしまうかもしれません。
客観的に判断できれば、採用・評価・配置などを的確におこなうことが可能です。例えば、自社で活躍する従業員の特徴をデータ分析して客観的に判断すれば、同様の特徴をもつ人材を採用できるので、採用活動を効率化できます。
2-2.採用基準の明確化
採用基準を明確にしてデータ化することで、公平でわかりやすい人事評価や人事考課を実現できます。
採用基準というのは、「明確化しなければならない」と思っていても、その手順がわからず一般的な基準を採用している企業も少なくありません。しかし、自社に適した人材を採用するには、現在働いている従業員の能力データの可視化が必要不可欠です。
能力データを可視化すると、それぞれの従業員の得意・不得意・不足しているスキルがわかりやすくなりますし、各部署でどのような人材が活躍しているかを把握できます。
つまり、能力データを可視化して採用基準をめいかくにすることで、人材育成におけるキャリアパスの構築などに役立てることもできるのです。
2-3.人材を適材適所に配置できる
人材を適材適所に配置するには、従業員の経歴・能力・マインドなどのデータ分析が効果的です。
一般的な人事データには、経歴や資格、能力などのデータしかありません。従来の人事業務であれば、これだけのデータでも対応できたかもしれませんが、より効率よく適した人材を配置するためには、他の情報も取り入れたデータ分析が必要となるでしょう。
データドリブンでは従業員のキャリア志向がわかる「マインド」やストレスチェックによる「健康」、現在に至るまでの離職率などがわかる「採用」などのデータも収集します。経歴や能力と併せて、これらの項目までデータ分析ができるので、適材適所な人材配置ができることから、組織全体の生産性の向上も期待できます。
3. データドリブン人事の4つのメリット
データドリブン人事のメリットは、以下の4つです。
- 人事業務の標準化
- 意思決定のスピードアップ
- 人事業務の効率化
- 人事評価の公平性・納得度の向上
さまざまな人事業務において人材・人事データに基づき判断・行動するため、特定の個人に依存する業務遂行を避けられます。つまり、人事業務の標準化が進むため、業務の分担や引き継ぎもしやすくなるでしょう。
個人の考えや価値観での判断ではなく、客観的なデータによる判断のため、意思決定のスピードアップも見込めます。
データの収集・分析の流れを構築し、それぞれの業務に対して活用するデータを決めると、人事業務の効率化が見込めるでしょう。
可視化したデータを用いる人事評価は、明確な評価基準を必要とするため、人事評価の公平性の向上が期待できます。結果として、従業員の人事評価への納得度が増すでしょう。
4.データドリブン人事のデメリット
データドリブン人事で唯一のデメリットとなるのが、データだけに頼りすぎてしまうということです。
確かに、データを分析して、それに基づいて適切な人材配置ができる、効率よく人事をおこなえるというのは良いことですが、人間にはデータだけでは分析しきれない「性格」や「個性」というものがあります。
従業員は、機械ではなく人間なので、データを重視しすぎると「性格」や「個性」を潰してしまうリスクもあるのです。
人事は「人」に対しておこなうものなので、従業員の性格や個性を見ながらデータドリブンを活用するというスタンスが重要になります。
5. データドリブン人事の5つの課題
データドリブン人事の課題は、以下の5つです。
- 適切なデータの収集と整理
- 従業員の理解・協力
- 適切なデータ分析方法の選択
- データの一元管理化
- 十分なセキュリティ対策
導入目的に沿う適切なデータを収集し、収集したデータを整理しなければ人事業務に活用できません。またデータ収集には、従業員の理解や協力が必要です。
従業員から理解を得るために、以下のような事柄についての周知を徹底しましょう。
- データの収集方法
- 収集データの活用方法
ただし、データを集しても、適切なデータ分析方法を選択しなければ、望む効果が得られません。人事に活かせない分析方法を選ぶと、評価や配置などに対して従業員から不満の声が上がる可能性もあります。
また、人事業務の効率化を進めて効果的にデータを活用するために、データは一元管理しましょう。さらに、データドリブン人事では膨大なデータを扱うため、十分なセキュリティ対策を検討しなければなりません。
導入を検討する際には、これらの課題をクリアできるかも併せて考えることが重要です。
6. データドリブン人事の導入方法
データドリブン人事の一般的な導入方法は、以下の流れです。
- 従業員のデータ収集
- 従業員データの可視化
- 従業員データの分析
- 分析によるアクションプランの作成
ここでは、これらの流れについて解説していきます。
6-1.従業員のデータ収集
まずは、従業員のデータ収集をおこないます。データドリブンでは、かなり細かい情報まで収集するので、事前に従業員にデータ収集の目的や効果を説明しておきましょう。
また、集めた情報は、常に更新することも重要です。従業員は常に同じ環境で働いているわけではなく、結婚や出産など家庭環境の変化、離職や休職、人事異動や資格の取得などさまざまな変更があるので、「データ収集をして終わり」ではありません。
ただし、頻繁に情報収集をするのは難しく、従業員の業務にも差し支えるので、管理者との連携など最新データを取得できる仕組みを構築しておきましょう。
6-2.従業員データの可視化
データを収集したら、次は人材データの可視化をおこないます。データを可視化するには、従業員に対してアンケートをおこなったり、必要であればヒアリングをおこなったりすることもあるでしょう。
これらを元に可視化をおこないますが、データは従業員の個人情報になるので、例え上司であってもすべてを見て良いというわけではありません。人事や業務に不要な情報は見せないのが原則なので、管理者にどの部分を閲覧させるのかをしっかり決めておきましょう。
「どこからどこまでを開示するのか」というのは、データドリブン人事の導入で一番難しい部分になるので、人材データの可視化は細心の注意を払って検討してください。
6-3.従業員データの分析
データの可視化を適切に設定したら、次は従業員データの分析をおこないます。従業員データには多角的な情報が含まれおり、さまざまな切り口で分析できるので、活用する人は「目的」を明確にしましょう。
例えば、「○○部署で即戦力となる人材を育成する」という目的がある場合、「人事評価でSを取った回数」や「昇格までの勤続年数」などを知る必要があります。そのためには、評価項目や現在の役職、所属部署や勤続年数などのデータを分析し、○○部署に適しているかを確認するという流れになります。
もしも、総括的に分析したいという場合は、ピープルアナリティクスが有効的です。
6-4.分析によるアクションプランの作成
データドリブン人事の分析が完了したら、アクションプランの作成をおこないます。
例えば、「優秀な人材として活躍している従業員の分析」で、「学歴は関係していない」という結果が出た場合は、「学歴や出身校の採用基準を見直す」というアクションプランが出来上がります。
「異業種からの中途採用社が多かった」という結果であれば、採用時に「異業種からの転職大歓迎」という文言を入れることで、効率よく人材採用がおこなえるでしょう。
データドリブン人事は、分析によるエビデンスに基づいてアクションプランを作成できるので、採用や部署異動などを効率化できます。
7. データドリブン人事を活用した事例
データドリブン人事を活用した事例は、以下のとおりです。
早期離職防止 | 早期離職者の特徴や傾向を分析し、採用に活かしたり必要なフォローアップ対策を構築したりする |
残業削減 | 勤怠管理データを分析し、残業の多い部署や時期を特定して残業削減対策を講じる |
キャリア形成支援 | キャリア形成支援の一環として、自身の人事評価履歴を閲覧できる仕組みを構築する |
人材配置 | 人材データを活用し、人材配置を最適化するマッチングシステムを構築する |
データ分析により、新たな課題が発見されることも少なくありません。課題を解決できると、より満足度の高い組織づくりが実現できます。
8. データドリブン人事の活用方法
データドリブン人事をどのように活用するかは、各企業の課題や目的によって異なりますが、主に以下の2つに活用されることが多いようです。
- データドリブンによる人事戦略
- データドリブンによる業務改善
ここでは、これらの活用方法について解説します。
8-1.データドリブンによる人事戦略
データドリブンは、人事戦略に活用できます。
近年は、労働人口の減少によって、人材の確保が困難になっている企業が増えています。そのため、単に人を配置して能力や適性を判断するという方法はできないのが実情です。
つまり、現在は「限られた人材をいかに適したポジションで活用できるか」が重要となっているのです。そこで活用できるのが、データドリブン人事によるタレントマネジメントです。タレントマネジメントとは、従業員のスキルや経験を活かして、的確な人材配置をおこなう手法です。
データドリブンには、タレントマネジメントに必要な情報がすべて入っているので、従業員のスキルや経験を可視化できます。これにより、従業員に適した業務を効率よく割り振ることができるため、人事戦略に多いに活用できるのです。
8-2.データドリブンによる業務改善
データドリブンは、業務改善にも活用できます。
データドリブンを活用すれば、従業員の労働時間や労働による成果などのデータを分析できるので、効率が悪い部分や改善点を把握することが可能になります。これを元に、改善策を実施すれば、正しい方向性を持った業務改善をおこなえます。
例えば、時間外労働が上限に達している従業員が多いというデータがある場合は、業務の効率化のための対策をおこなうといった施策をおこなうことで従業員の心身の健康被害を防げるかもしれません。
また、業務改善にかかる時間を短縮できれば、クリエイティブな業務に必要な時間や人的リソースの確保も可能になるでしょう。
9. データドリブン人事を理解し自社に導入しよう
データドリブン人事とは、人事や人材のデータを収集・分析して人事戦略に活用することです。また、戦略人事の実現に際して重要な役割を担います。
データドリブン人事を導入すれば、客観的な判断・適材適所な人材配置・生産性の向上の実現が可能になるでしょう。
ただし、データを収集するには従業員の協力が必要不可欠ですし、重要な個人情報を集めることになるのでセキュリティ強化などの準備も必要になります。また、適切な分析をおこなわなければ、時間と労力だけがかかり、業務に活かせないなんてことにもなりかねません。
しかし、人事業務の効率化や標準化、人事評価の公平性や納得度の向上などのメリットも得られるデータドリブン人事は、多くの企業で活用されているので、本記事で開設した導入方法や活用ポイントなども参考にしつつ、ぜひ導入を検討してみましょう。
企業として人事データを適切に管理することはとても重要ですが、
そもそもなぜ人事情報の管理が必要であり、その先に大きな活用価値があることについても、正しく理解できていますか?人事情報は、適切な人材配置、従業員のモチベーションの管理、公平な評価制度など、企業として健全な経営をおこなう上で欠かせない情報です。
当サイトでは、人事データの必要性や活用価値をわかりやすく解説した資料を無料配布しています。
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