労働基準法に規定されている通勤手当と距離の基準を解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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労働基準法に規定されている通勤手当と距離の基準を解説

通勤

ほとんどの企業が従業員の通勤手当を支給していますが、その支給ルールは労働基準法に基づいて決定しなければなりません。

同時に従業員に対しても明確に提示し、正確で無駄のない支給が必要です。計算方法や税金の取り扱いを知っておきましょう。

本記事では、労働基準法における通勤手当の基準や計算方法について解説します。

▼そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
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人事担当者など従業員を管理する役割に就いている場合、雇用に関する法律への理解は大変重要です。
例外や特例なども含めて法律の内容を理解しておくと、従業員に何かあったときに、人事担当者として適切な対応を取ることができます。

今回は、労働基準法の改正から基本的な内容までを解説した「労働基準法総まとめBOOK」をご用意しました。

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1. 労働基準法では通勤手当について何も規定されていない

通勤方法

雇用する側もされる側にとっても重要な法律である労働基準法ですが、通勤手当に関するものは一切規定されていません。

それは、通勤手当の支給が企業の義務ではなく、各企業の裁量によるものだからです。
通勤手当を支給しなくても違法ではありませんが、ほとんどの企業は支給しています。

そのため従業員にとって通勤手当は勤務に必要な経費だから支給されるのは当然と考えられがちですが、実際はそうではありません。

就業規則や賃金規定などに「通勤手当を支給する」と定められている場合のみ、通勤手当の支給義務が発生します。

1-1. 通勤手当は各企業の契約や規程によって定めるもの

支給額や上限設定など通勤手当の詳細は各企業が自由に決められるもので、個別の契約ごとに異なっていても問題ありません。

就業規則や労働契約などによって企業が決めた基準などのルールが適用可能な手当として給与と一緒に支給されます。

ただし、正社員と非正規社員で同じ業務をおこなっていたにもかかわらず通勤手当に差があるような不合理な待遇格差は、同一労働同一賃金制度(2020年4月施行)によって禁止されています。

関連記事:同一労働同一賃金はいつから適用された?ガイドラインの考え方や対策について

1-2. 距離や支払い方法は明確に定めなくてはいけない

通勤手当を支給する場合、通勤に必要な交通手段や距離、支払い方法などは明確に定めておく必要があります。

直線距離を基に計測する方法や、マイカー通勤の場合は実際の経路を用いて計算するなど、どのような方法を選ぶかは会社によって異なります。

いずれの場合も明確な定めを設けておく必要があり、支給額はそのルールに則って決定するようにしましょう。

1-3. 通勤日数が少ない従業員でも通勤手当は支給される

長期出張などで職場に通勤しない従業員でも、通勤手当は賃金と同じ扱いであるため会社が勝手に減額や無支給にはできません。

前もって出張や休職期間の通勤手当について就業規則や賃金規程に定めておくようにしましょう。

以下のような規定を定めておくと労使間のトラブルを防ぎやすくなります。

  • 所定労働日数の2分の1に満たない者の通勤手当は半額とする
  • 1週間以上就労しない日がある者の通勤手当は日割り計算とする
  • 長期出張・欠勤などの事由による1ヵ月以上の通勤実態がない場合の通勤手当は支給しない

また、最近ではテレワークが推進されており、通勤手当を見直す企業が増えています。

出社日数に応じて通勤手当を支給するケースや、減額された分は在宅勤務手当としてインターネット接続や電気代にかかった費用として支給するケースもあります。

関連記事:在宅勤務における通勤手当の扱いや支給額の目安・計算方法

2. 通勤手当は距離による基準または実費で支給される

支給

通勤手当のルールは各企業が決めるものですが、そのほとんどは通勤距離による基準または実費で支給されています。

電車やバスなど公共交通機関を使用した場合は定期代などが実費で支給され、マイカーや自転車通勤など実費での支給が難しい場合は通勤距離によって支給額が決められるケースがほとんどです。

マイカーや自転車で通勤する場合など通勤にかかる実費の計算が難しいケースでは、自宅から職場までの距離によって算定されます。

その場合の距離は直線距離が採用されるのが一般的です。

最近では地図アプリなど簡単に距離が計測できるツールを活用する企業が増え、より詳細で正確な交通費が支給できるようになりました。

3. 通勤手当の支給における規程の作成方法

労働基準法では通勤手当について何も規定されていないため、各社で公平な支給ルールを定める必要があります。ここでは規定作成時に参考になるポイントを解説します。

3-1. 通勤手当の支給条件を記載する

通勤手当の支給に関する規程を作成する際のポイントは、まず支給条件を明確にすることです。例えば「住居から勤務地までの距離が1kmを超える場合に支給する」「徒歩通勤の場合は支給しない」など、具体的な基準を設けることが重要です。

次に、使用できる交通機関や交通用具、および通勤手当の算出方法を定めます。都心では駐車場の確保が難しいため、「公共交通機関を原則とし、利用が困難な場合のみマイカー通勤を認める」といったルールを設定することでトラブルを防げます。途中入社・退職者については、日割計算による支給が望ましいです。

遠方からの通勤が増えている現在、新幹線通勤などにも対応した支給限度額の設定も考慮する必要があります。例えば「通勤手当は月額50,000円を上限とする」など、具体的な金額を明示しておくとよいでしょう。

通勤手当の基本要件の記載例
・通勤手当は、従業員の住居から勤務先までの距離が1kmを超える場合に支給します。
・通常の経路について、1カ月の通勤定期券の実費を原則として支給し、特急料金などの特別料金は除外します。
・月途中での入社・退職者、および欠勤・休職者は、日割計算で実出社日に応じて支給します。
・通勤手当は、1カ月当たり50,000円を支給限度とします。

上記を参考に通勤手当に関する規程を設定しましょう。

3-2. 自動車やバイク通勤者の規定を決める

自動車やバイク通勤者のための通勤手当の支給方法については、実際の通勤距離と燃費、ガソリン代を基に具体的な計算方法を規定することが重要です。例えば、通勤距離(往復)÷燃費×ガソリン代(1Lあたりの単価)=1日分の通勤交通費として算出する方法や、法律で定める非課税限度額を基準にした支給額設定が一般的です。

また、自動車やバイク通勤の場合は、入社時や更新時に運転免許証や自動車保険の保険証券の写しを提出させることが推奨されます。無免許運転や運転免許の失効に気づかず通勤中に事故が発生すると、会社の責任問題となりかねません。従業員が通勤途中で加害者となった場合、本人の資力だけでは賠償が難しいケースでは、会社に対して損害賠償請求が起こされるリスクも考慮する必要があります。

従って、法定の自動車賠償責任保険に加え、任意の自動車保険の加入を自動車通勤の条件とすることが、会社としてのリスク回避策となります。こうした具体的な規定を通勤手当に関する会社規程にしっかりと盛り込むことで、労務面でのトラブル防止が図れます。

3-3. バス通勤者の規定を決める

バス通勤者に対する会社規程を明確に定めることは、担当者が通勤手当の支給に関して困惑することを防ぐ上で重要です。例えば、住居から最寄り駅までの区間や会社最寄駅から会社までの区間でバスを利用する従業員について、具体的なルールを設けると効果的です。「住居から最寄駅までの距離が○km以上の場合はバス代を支給する」といった形で一律の取扱いを定めることで、担当者が公正かつ効率的に対応できます。また、定期券やバス代の実費を支給する方法を採用する企業が多いですが、支給方法や上限額についても詳細に規定しておくと良いでしょう。これにより、バス通勤者が安心して通勤手当を受け取れる環境を整備できます。

3-4. 自転車通勤者の規定を決める

自転車通勤者には、環境への配慮や健康への関心の高まりからその数が増加しています。しかし、通勤手当に関する法規や実務的な観点から、自転車通勤者への対応を適切に規定する必要があります。企業としては、まず自転車利用者のための駐輪場を確保し、違法駐輪による近隣住民への迷惑を避けることが重要です。

また、通勤手当の支給においては、交通費がかからない自転車通勤者にも一定の手当を検討する価値があります。特に、雨天時にバスなどの公共交通機関を利用する場合の費用負担を軽減するため、通勤距離に応じた手当の支給を行うと良いでしょう。さらに、自転車通勤者には賠償責任保険の加入を推奨し、交通事故やトラブルに備えることが重要です。

こうした対策を講じることで、自転車通勤者に対する企業の配慮を示し、従業員の満足度向上と法規遵守を実現できます。

4. 労働基準法で通勤手当の上限は規定されていない

規定

通勤手当に関しては労働基準法で一切規定されているものがないため、通勤手当の上限についても規定はありません。

しかし、通勤手当は場合によって所得税の課税対象となることもあるので注意が必要です。

労働基準法では通勤手当の上限は規定されていませんが、課税対象とならない非課税上限額が事実上の上限という考え方もできるでしょう。

4-1. 通勤手当の非課税上限額に注意

通勤手当を支給するにあたっては、その内容によって通勤手当が課税対象となるため注意が必要です。

公共交通機関やマイカー通勤で有料道路を利用した分について1ヵ月15万円までは非課税ですが、それを超えた分は所得税の課税対象となります。

距離によって支給額が算定される場合は、片道の通勤距離によって非課税上限額が変わります。

通勤距離(直線距離・片道) 非課税上限額
2km未満 0円(全額課税)
2km~10km未満 4,200円
10km~15km未満 7,100円
15km~25km未満 12,900円
25km~35km未満 18,700円
35km~45km未満 24,400円
45km~55km未満 28,000円
55km以上 31,600円

また、非課税となった分についても社会保険料を計算する際は所得として計上する必要があります。

テレワーク推進により通勤手当の減額分を在宅勤務手当とした場合、在宅金手当は課税対象となります。しかし、一部非課税とする指針「在宅勤務に係る費用負担に関するFAQ(源泉所得税関係)」を国税庁が発表していることもあり、今後変更となる可能性もあるでしょう。

参考:在宅勤務に係る費用負担に関するFAQ(源泉所得税関係)|国税庁

4-2. 出張などの交通費は非課税

通勤手当と交通費は同じように見えて全く違います。

まず、通勤手当には所得税の非課税分には上限額が設定されています。勘定科目も人件費です。

一方で交通費は従業員が営業や出張など業務中の移動にかかった費用で、勘定科目は出張費や旅費交通費になります。

交通費は従業員が立て替えてから後日会社に請求・精算をするのが一般的で、どれだけかかっても従業員の所得税について非課税です。

5. 労働基準法には通勤手当に関する規定はない

就業規則

通勤手当は従業員が出勤するのに必須なものであり、ほとんどの企業が支給していることから労働基準法に何らかの規定があると考える人は多いでしょう。

しかし、実際は通勤手当について労働基準法では支給基準や上限額などの規定は一切ありません。通勤手当の支給は義務ではなく、それぞれの企業が自由に規定できるものです。

また、同じ業務をおこなっているにも関わらず、正規社員と非正規社員の通勤手当に差額が生じることは同一労働同一賃金制度によって禁止されています。

通勤手当の支給額によっては一部所得税の課税対象となるケースもあります。労働基準法では上限額について何も規定されていませんが、非課税上限額を超えた通勤手当の支給は従業員の税額負担が増えることにつながるため、慎重な判断が求められるでしょう。

企業内のトラブルを防ぐためにも、通勤手当を支給する場合は事前に就労規則や賃金規定などで支給についての詳細を定めることをおすすめします。

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人事担当者など従業員を管理する役割に就いている場合、雇用に関する法律への理解は大変重要です。
例外や特例なども含めて法律の内容を理解しておくと、従業員に何かあったときに、人事担当者として適切な対応を取ることができます。

今回は、労働基準法の改正から基本的な内容までを解説した「労働基準法総まとめBOOK」をご用意しました。

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