雇用契約書に割印は必要?知っておくべき法的効力と正しい押し方を解説
公開日: 2025.8.4 jinjer Blog 編集部

毎年、多くの従業員と取り交わす雇用契約書。その製本や押印作業に追われる中で、「この割印は、法的に本当に必要なのだろうか?」「もっと効率的な方法はないのか?」と感じている人事労務のご担当者様も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、雇用契約書への割印に法的な義務はありません。しかし、契約の真正性を担保し、後のトラブルを防ぐという重要な役割を担っています。
本記事では、雇用契約書における割印の正しい知識から、書面契約が抱える課題、そしてその解決策となる「電子契約」のメリットまで、網羅的に解説します。
目次
雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
いざという時に慌てないためにも、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 雇用契約書における「割印」とは?契印との違い


まず、混同されがちな「割印」と「契印」の役割について、雇用契約書の文脈で正しく理解しましょう。
1-1. 割印とは
割印とは、2通以上作成した独立した文書の「関連性」や「同一性」を証明するために、それぞれの文書にまたがって押印する印のことです。
雇用契約書の場合、会社(使用者)と従業員(労働者)がそれぞれ1通ずつ保管するために、同じ契約書を2通作成するのが一般的です。この2通が完全に同一の内容であることを証明するために、割印が用いられます。
【割印の役割】
- 契約書の複製・改ざんの防止: 一方の契約書が後から不正に書き換えられることを防ぎます。
- 関連性の証明: 「基本契約書」と「秘密保持誓約書」など、複数の書類が一体の契約であることを示す場合にも利用されます。
1-2. 契印とは
契印とは、1つの契約書が複数ページにわたる場合に、そのページが連続した一体の文書であることを証明するための印です。ページの綴じ目や両ページにまたがるように押印します。
【契印の役割】
- ページの差し替え・抜き取りの防止: 契約書の一部が後から不正に差し替えられたり、抜き取られたりすることを防ぎます。
- 雇用契約書が2ページ以上になる場合は、この契印も必要となります。
1-3. 割印と契印の違い
割印と契印について説明してきましたが、両者の違いを簡単にまとめると以下のようになります。
| 種類 | 目的 | 押印の対象 |
| 割印 | 2通以上の独立した文書の同一性・関連性を証明 | 契約書の原本と控えなど |
| 契印 | 1つの文書が複数ページにわたる場合の連続性を証明 | 複数ページの契約書の綴じ目 |
このように、割印と契印は混同されがちですが、目的や押印対象が異なります。業務で正しく使い分けるためにも、違いをしっかり理解しておきましょう
2. 雇用契約書の割印は法的に必要か?


「割印がない雇用契約書は無効ですか?」という質問はよくありますが、答えは「いいえ」です。
割印自体に契約を成立させるような法的効力はなく、法律で義務付けられているものでもありません。割印がないからといって、雇用契約そのものが無効になることはありません。
しかし、割印は万が一のトラブルが発生した際に、「契約締結時に双方が合意した内容は、この書面に記載された通りである」と証明するための重要な証拠となります。特に、従業員数の多い企業では、多数の契約書を管理する上で、こうした形式を整えておくことがコンプライアンスの観点からも極めて重要です。
3. 雇用契約書の割印の正しい押し方


割印の効果を正しく発揮させるための、一般的な押し方とルールを解説します。
- 準備するもの:
1.会社保管用
2.従業員交付用の計2通の雇用契約書、
3.印鑑(代表者印でなくても、認印や角印でも可)、捺印マット
- 手順:
- 2通の契約書を、少し上下(または左右)にずらして重ねます。
- 重ねた2通の契約書の両方に印影がかかるように、上部の余白に押印します。
- 契約当事者が複数名いる場合(例:代表取締役と従業員)は、当事者全員の印で割印を押すのが最も丁寧な方法です。全員の印鑑を並べて押印します。
多少印影がかすれたり、ずれたりしても、どちらの書類にも印影が確認でき、照合して印鑑が一致することがわかれば、割印としての役割は果たせます。
4. 書面契約が抱える「割印」にまつわる課題


ここまで割印の重要性や押し方を解説してきましたが、従業員数が多い規模の企業では、書面での雇用契約締結業務そのものに、割印を含めた多くの課題が潜んでいます。
- 課題①:膨大な手作業と人件費
従業員一人ひとりに対して契約書を2部印刷・製本し、役職者の印鑑をもらい、割印・契印を押し、封入・郵送する。この一連の作業は、従業員数に比例して膨大な工数と人件費を要します。
- 課題②:郵送・返送のタイムラグとコスト
従業員に郵送し、署名・捺印後に返送してもらうまでには、相当な時間がかかります。郵送費や、返送用の封筒・切手の同封といったコストも無視できません。
- 課題③:物理的な保管スペースと管理コスト
締結済みの契約書は、法律で定められた期間(労働基準法第109条では5年、当面の間は3年)保管する義務があります。数百、数千人分の契約書を保管するためのキャビネットや倉庫スペース、そしてそれを管理する手間は大きな負担です。
- 課題④:コンプライアンス・セキュリティリスク
手作業であるがゆえの押し忘れ、送り間違いといったヒューマンエラーのリスクが常に伴います。また、物理的な書類の紛失や情報漏洩のリスクもゼロではありません。
これらの課題は、人事労務担当者の本来注力すべきコア業務を圧迫する要因となり得ます。
5. 雇用契約書の電子化で割印は不要に!得られる4つのメリット


電子締結では、PCやスマホなどのデバイス上で契約書に合意します。「誰が」「いつ」「何に合意したか」確認できるため、書類のステータス管理まで簡単におこなうことができます。
電子締結サービスを導入することで、企業は以下の4つの大きなメリットを享受できます。
4-1. メリット
- メリット①:押印・製本・郵送業務からの解放【業務効率化】
契約書の印刷、製本、押印、封入、郵送といった一連の物理的な作業がすべて不要になります。システム上で契約書データをアップロードし、相手方に送信するだけで、締結プロセスが完了します。
- メリット②:印紙税や郵送費、保管コストの削減【コスト削減】
郵送費や紙代、インク代、保管用のキャビネットや倉庫代といった物理的なコストもすべて削減できます。
- メリット③:契約締結までのリードタイム短縮【迅速化】
郵送にかかっていた時間を大幅に短縮できます。相手方が内容を確認し、オンラインで合意すれば即座に契約が成立するため、入社手続きなどをスムーズに進めることができます。
- メリット④:コンプライアンスとセキュリティの強化【内部統制】
「いつ」「誰が」「何をしたか」クラウド上で一元管理されます。これにより、ヒューマンエラーや紛失リスクを防ぎ、コンプライアンスと内部統制の強化に繋がります。
電子契約導入前の必須知識
雇用契約を電子化する前に、法律上、必ず守らなければならない最も重要なルールがあります。
それは、労働条件の通知(雇用契約書がこれを兼ねることが多い)を電子データで交付する場合、「労働者本人が、電子的な方法での交付を希望した(同意した)こと」が必須条件となる点です。
本人の明確な同意がないまま、一方的に電子契約書を送付することは労働基準法に抵触する恐れがあります。トラブルを避けるためにも、必ず事前に従業員の同意を得た上で、電子化を進めるようにしてください。
6. 雇用契約業務の未来は「電子化」へ


本記事では、雇用契約書における割印の役割と必要性、そして書面契約が抱える課題と、その解決策としての電子契約について解説しました。
- 割印は法的義務ではないが、書面契約の真正性を担保するために重要な役割を果たす。
- しかし、従業員数の多い企業ほど、割印を含む書面契約のプロセスは大きな負担となる。
- 電子契約は割印・契印を不要にし、コスト削減、業務効率化、コンプライアンス強化を実現する。
毎年繰り返される煩雑な雇用契約業務から脱却し、より戦略的な人事労務業務にシフトするために、契約プロセスの見直しを検討してみてはいかがでしょうか。



雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
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