ESGと人的資本経営の関係性とは?情報開示が注目される背景
更新日: 2024.11.15
公開日: 2024.4.3
OHSUGI
人的資本経営において、ESGは重要な鍵を握っています。ESGは、企業経営や投資の判断基準として注目を集めている考え方の一つです。
メディアでも大々的に取り上げられているため、耳にする機会が増えたのではないでしょうか。人的資本開示の義務化とともに、ますます注目度は高まっています。
一方で、「ESGと人的資本経営の関係性がわからない」「ESGとSDGsの違いを知りたい」など、疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ESGと人的資本経営は、密接な関係性にあります。ESGへの取り組みを検討している方は、正しい知識を身につけておくことが大切です。
本記事では、ESGと人的資本経営の関係性やESGとSDGsとの違いについて解説します。ESGで人的資本経営に関心がもたれている背景や導入するメリットも紹介するため、ぜひ最後までお読みください。
目次
2023年から人的資本の情報開示が義務化されたことにより、人的資本経営に注目が高まっており今後はより一層、
人的資本への投資が必要になるでしょう。
こういった背景の一方で、人事担当者の皆さんの中には「人的資本投資にはどんな効果があるのかわからない」「実際に人的資本経営を取り入れるために何をしたらいいの?」とお悩みの方も多くいらっしゃるでしょう。
そのような方に向けて、当サイトでは人的資本経営に関する実際調査の調査レポートを無料配布しています。
資料では、実際に人事担当者にインタビューした現状の人的資本経営のための取り組みから、現在抱えている課題までわかりやすくレポートしています。
「人的資本経営に関して、大企業や他社ではどのような取り組みをしているのか、課題や現状の実態が知りたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. ESGと人的資本経営の関係性
ESGと人的資本経営は、相互を補完し、企業の持続可能な発展を促進する関係性にあるといえるでしょう。両者に取り組むことで、企業は社会的評価や経済的成果の両面から利益を得られます。
1-1. EDGとは
ESGとは、「Environoment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)」の頭文字を取ったものです。企業の成長や社会的責任を果たすうえで、ESGの3つの観点は欠かせません。
ESGの具体的な取り組みは以下の通りです。
Environoment
環境課題への取り組み |
Social
社会課題への取り組み |
Governance
企業統治への取り組み |
・気候変動問題への対策
・温室効果ガス排出量の削減 ・再生エネルギーの使用 ・リサイクル ・生物多様性の尊重 |
・公正かつ適正な労働条件の遵守
・ダイバーシティ(社員の多様性)の促進 ・安全衛生の確保 ・ハラスメント防止 ・人権の保護 |
・法令の遵守
・情報開示 ・取締役会の構成の適正化 ・コンプライアンスの遵守 |
1-2. 人的資本経営とは
一方、人的資本経営とは従業員個人が持っている能力やスキルを、「資本」「企業価値を生み出す鍵」と捉える考え方です。つまり、人材を「投資」の対象として捉えます。
人材価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値の向上につなげる経営のあり方です。企業が人的資本に投資することは、ESGの社会課題への取り組みに関連しています。
ESGと人的資本経営は、企業が社会的責任を果たすうえで不可欠な要素で、相互に深い関係性があります。
2. ESGとSDGsの違い
ESGと混同しがちな用語にSDGsがあります。ESGとSDGsの違いは以下の通りです。
ESG | SDGs | |
意味 | Environment:環境
Social:社会 Governance:統治 |
持続可能な開発目標
(17のゴールと169のターゲットで構成) |
目的 | 世界規模の環境問題や社会問題の解決 | 2030年までに「持続的でよりよい世界」の実現 |
対象 | 「企業」や「投資家」 | 「国」や「自治体」など対象の範囲が広い |
両者は近い関係にありますが、ESGは「コンセプト」や「活動」を指し、SDGsは「目標」を指します。
ESGは、SDGsの実現に向けたプロセスの一つと考えるとわかりやすいでしょう。ESGに着目しながら事業活動をすれば、結果としてSDGsで掲げられている目標を達成できると考えられています。
3. ESGで人的資本経営と情報開示に関心が持たれている背景
ESGにおいて人的資本経営とそれにおける情報開示が着目されている背景は、大きく分けて2つあります。
- 企業の社会的責任が注目されている
- ESGが投資の判断基準となっている
3-1. 企業の社会的責任が注目されている
企業の社会的責任(CSR)に注目が集まっていることが、人的資本経営が注目されている理由の一つです。CSRとは、企業がビジネスを展開するうえで持つべき多面的な責任の総称を指します。
ESGの面で「持続可能性(サスティナビリティ)」について懸念されるようになりました。持続可能性が懸念されるようになった背景には、以下の理由が考えられます。
- 企業の労働環境を見直す動きが勢いを増した
- 企業の活動によって起きている環境問題が深刻化している
- 世間で企業の信頼性を揺るがす不祥事が続いた
企業が自社の成長のみを重視した経営を続けていると、社会との共存はできません。短絡的に利益を得られたとしても、持続的な成長は見込めないでしょう。
そのため、企業は社会的責任を果たすことが要求されており、対外的にその情報を開示する必要があります。例えば、従業員の多様性を認め、ジェンダー平等や有期雇用にも配慮した雇用をすることで企業は社会的責任を果たせるでしょう。
ESGを踏まえた経営をおこなうことで、持続可能な社会を実現することが期待されています。
3-2. ESGが投資の判断基準となっている
ESGが投資の判断基準になっていることがもう一つの背景です。ESGの概念が普及し、海外の投資家を中心に、無形資産が注目されるようになりました。
無形資産とは、文字通り目に見えない資産のことで人的資産や知的資産などが含まれます。例えば、個々の知識やスキル・人脈・ソフトウェア・M&Aの営業権などです。
有形資産投資が伸び悩んでいるのに対し、無形資産投資は年々増加傾向にあります。
また、米国では2020年8月に、日本では2021年6月に「人的資本の情報開示」が義務化されました。義務化により、企業が人的投資経営、情報開示に対応するニーズが高まったことも考えられます。
関連記事:なぜ人的資本経営が注目されているのか?注目されている背景をわかりやすく解説!
4. ESGのために企業が人的資本経営を導入する3つのメリット
ESGのために企業が人的資本を導入する3つのメリットは以下の通りです。
- 従業員のモチベーション向上につながる
- 投資家に注目されやすくなる
- 新たなビジネスチャンスに気づくきっかけになる
- 人材確保につながる
4-1. 従業員のモチベーション向上につながる
人的資本の導入により、従業員の満足度が高まり、仕事に対するモチベーションの向上が期待できます。
社員の待遇を見直したり残業時間を削減したりするなど、仕事の負荷も職場環境を構成する要素の一つです。
また、人的資本経営の導入で個人の能力を可視化できることから、従業員一人ひとりの知識やスキルレベルを把握しやすくなります。適材適所で業務を振り分けられ、本来のパフォーマンスを発揮できる場を提供できるでしょう。
社員がより意欲的に業務に取り組むための土台として、肉体面だけではなく精神面の健康や幸福を感じられることが重要ともいわれています。
従業員に配慮した職場の環境づくりを目指しましょう。
4-2. 投資家に注目されやすくなる
人的資本を導入することで、投資家に注目されやすくなります。投資家が事業活動の利益だけではなく、社会貢献性を投資先に求める傾向が強まっているためです。
時代背景には、企業の市場価値として重視すべきポイントが、有形資産から無形資産へと変遷していることがあるでしょう。
人的資本経営を取り入れている企業は、社会的地位も高いと評価され、投資家の目に留まりやすくなります。実績につながると投資家からの評価も高まるため、資金調達においても有利になる可能性があるでしょう。
4-3. 新たなビジネスチャンスに気づくきっかけになる
人的資本経営に取り組むことで、新たなビジネスチャンスに気づくきっかけを得られます。社員が意欲的に働ける環境であれば、イノベーションや新たなビジネスモデルが生まれやすくなるでしょう。
特に、持続可能性を意識した商品やサービスは、需要が高く注目されやすい傾向にあります。
企業の特性を活かした商品やサービスを探る必要はありますが、新たなビジネスチャンスにつながる可能性は十分に考えられるでしょう。
4-4. 人材確保につながる
人的資本経営による人材育成は、社会的信頼を得るきっかけとなりやすく、人材の確保につながります。
従業員に配慮した職場の環境づくりや企業利益の拡大が、企業イメージ向上の一役を担うからです。
世間から「この会社で働いてみたい」と思われれば、優秀な人材確保も可能になります。
5. 人的資本経営の推進において注意すべきポイント
人的資本経営を成功させるためには、従業員の多様性を尊重し、公平な評価制度を確立することが不可欠です。これにより従業員の能力や特性が活かされ、組織全体のパフォーマンスが向上します。また、従業員の意見を積極的に取り入れることで、企業の組織文化を豊かにし、働き甲斐のある職場を築くことが期待されます。
ESGの観点で人的資本経営を推進する際には、情報開示ありきの施策にならないよう注意が必要です。特に大手企業では、人的資本開示の義務化が進む中、開示項目を他社と比較して充実させることに重きを置くと、短期的な株主資本主義に陥るリスクがあります。
人的資本開示は重要ですが、目的ではありません。株主や投資家だけでなく、従業員やコミュニティなど全てのステークホルダーに対して持続可能な経営を実現する手段として考えることが大切です。経営者は明確な戦略とその背景を持ち、それに基づく現状の分析と未来の見通しをもとに、ステークホルダーとの対話を行うことが求められます。このアプローチにより、人的資本経営の真価を発揮し、社会全体でのサステナブルな経営が推進されるのです。
関連記事:人的資本開示とは?情報開示が義務化された19項目や対象企業への指針を解説
6. ESGの観点で人的資本経営の推進を成功させるポイント
ESGの観点で人的資本経営を成功させるには、まず従業員一人ひとりの視点に立って考えることが大前提です。これは企業が設定する目標を達成するだけでなく、従業員がどのように感じ、働く環境をいかに改善するかを重視する必要があることを意味します。例えば、企業として女性管理職を増やす目標がある場合、実際に女性従業員にとって働きやすい環境が整備されていなければ、その目標は達成困難です。
具体的には、従業員とのコミュニケーションを密にし、彼らの声を反映した働きやすい環境の構築が重要です。このアプローチはエンゲージメントの向上にも直結します。エンゲージメントは単なる開示項目ではなく、他のESG項目にも影響を与える重要な要素です。働きがいのある職場を築くことが、持続可能な企業運営の基盤となり、人的資本経営を成功に導く鍵となります。
6-1. 従業員のエンゲージメントを高める
ESG視点での人的資本経営において、エンゲージメントを高めることが重要です。これを実現するためには以下の4つのステップが役立ちます。まずは、従業員サーベイを行い、従業員の現状を把握することから始めます。続いて、サーベイ結果から具体的な取り組みテーマを選定し、そのテーマに基づき打ち手の機会を広げます。最後に、取り組み内容を決定し、実行に移します。これらのステップを通じて、従業員の働きがいが向上し、結果として企業全体の成長が期待されます。
7. ESGへの理解を深め人的資本経営を推進しよう
ESGは、企業の成長や社会的責任を果たすうえで非常に重要な要素です。人的資本経営を推進し、従業員を育てることは企業の成長や利益につながります。
ESGを踏まえて人的資本経営に取り組むことで、相互作用を期待できるでしょう。
人的資本の開示が義務化され、近い将来、無形資産投資が有形資産投資を上回る日が到来するかもしれません。ESGへの理解を深め、人的資本経営を積極的に取り入れてみてください。
企業価値を持続的に向上させるため、いま経営者はじめ多くの企業から注目されている「人的資本経営」。
今後より一層、人的資本への投資が必要になることが想定される一方で、人事担当者の皆さんの中には「そもそもなぜ人的資本経営が注目されているのか、その背景が知りたい」「人的資本投資でどんな効果が得られるのか知りたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて、当サイトでは「人的資本経営はなぜ経営者から注目を集めるのか?」というテーマで、人的資本経営が注目を集める理由を解説した資料を無料配布しています。
資料では、欧州欧米の動向や企業価値を高める観点から、人的資本経営が注目される理由を簡単に解説しています。
「注目されている背景を知って、人的資本経営への理解を深めたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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